やむ気配がない。
微睡みの中で、ハッとする。
内腿は、まだ振動している。
心地よさを感じて、漸く、瞼が持ち上がる。
気付くと、バスローブ姿で、ソファに横になっている。
シャワーの後、髪を乾かして、そのままリヴィングのソファで寝てしまったらしい。
バスローブのポケットから、振動する携帯を取り出す。
画面を確認すると、彼女の事務所の番号。
携帯の番号は、彼女と秘書たちしか知らない。
彼女は、まだ議会中のはず、こんな時間になに?
レンタカーを取りにいって、買い物をしたことを思い出しながら、急いで電話にでる。
「はい、ワタシです」
「大変です、先生が…」
男性秘書の声、その先が言葉にならない。
「落ち着いて、順に話してください、先生がどうかされたんですか?」
男性秘書が深呼吸する気配。
黙って待つ。
「先生が、攫われました」
「いつ?」
「お昼です、いつものようにいつもの場所で打ち合わせました、その後に…」
また、シドロモドロになりそうになるのを遮る。
「分かりました、すぐそちらに伺います、集められるだけの情報を集めておいてください」
それだけ言って、携帯を切る。
マナーモードを解除しておく。
バスローブ姿のまま、バスルームに入る。
洗面台の蛇口を開けて、冷たい水で顔を洗う。
お昼寝程度の時間しか寝ていないが、目が覚める。
自分の部屋に入って、クローゼットを開ける。
スーツケースを取り出し、ベッドの上て開ける。
着替えの中から紅い小さな塊を一つ、手にしてベッドに抛る。
バスローブのベルトを緩め、両肩から落とす。
自由落下するローブを、腰でキャッチする。
ローブの袖をハンガーに通して、クローゼットの扉のフックに掛ける。
ベッドに振り返る。
視界の隅、姿見に映る裸身。
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