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2021年09月11日

sounds of a bottle

もうすぐ陽が落ちる。

それからが勝負。
三々五々、ライトを点ける車が、行きかう車列に滑り込む。

例のビルに辿りつく。
そのまま通り過ぎて、道路の同じ側にあるコンビニへ、駐車場の端に車をとめる。
エンジンをきる。
運転席で、タイトスカートの両膝を揃えて、車を降りる。
履き替えたピンヒールを響かせて、コンビニに入る。

ペットボトルの飲料とスチール缶のコーヒー、一つずつ買う。
袋に入れてさげると、コンビニを出て、何食わぬ顔でビルに向かう。

あたりに怪しげな車はない。
二人と踏んで、躊躇うことなくビルに入る。
灯のない、解体前のビル。

陽が落ちると建物の中は、寧ろ外より暗い。
埃っぽい中を、静かに一歩ずつ進む。
最上階ではないにしても、何階か上のフロアにいるはず。
音を立てないよう、階段をゆっくり上る。

暗がりを、耳だけでなく五感を鋭くして進む。
階段を上がってフロアに着く度に、耳をすませる。
外の喧騒が遠く聴こえるだけで、物音一つしない。

何一つ聴き漏らさないよう注意しながら、また階段を上る。
次は4階。
フロアに辿りつく前に、砂を踏むような音。
身体を固めて立ち止まる。

耳をすます。
少し離れているが、微かにヒトの声、日本語ではない。
ゆっくりと、残りの階段を上る。

上りきると声の方向に進む。
聴き取れる距離。
聞き覚えのあるニュアンスとアクセント、お隣の国の奴等か。
細身の男は、そうは見えなかったが。

フロアの中ほどの部屋、といっても内装は撤去してあるので、コンクリートの壁で仕切られているだけの区画。
光がなくて暗い分、小さな灯でも、よく分かる。
小さな灯がもれる部屋とは反対の暗い区画、そこに身を潜めるワタシ。

買い物袋からペットボトルを取り出す。
暗い区画から、下手で放物線を描くように、階段下にペットボトルを抛る。
静かな建物の中に響く。

落ちていくペットボトルの音。
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posted by afakenation at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 9.rescue
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