2016年12月11日
深町秋生 「果てしなき渇き」
第3回『このミス』大賞受賞作品、というのを見て、「あぁ、そうか。そういうジャンルだったのか」と、まず思った。勝手に、若者の風俗を過激に描く的な、そういう作品だと思って映画を観て、「あれ?こんな話だったんだ」と思っていたからだ。
読んでみると、やはり思い出すのは馳星周。傷を抱えたアウトローな一匹狼の主人公が事件に巻き込まれ、奔走する。まぁ要はハードボイルドってことか。ありきたりと言えばありきたりな、ミステリー/サスペンス/ハードボイルド小説の定型に、現代的な風俗が混ざってくる。書けば書くほど、「ハードボイルド小説ってそうだよな、『ったく、最近のガキは・・・大人を舐めやがって!』的な激高っぷりとか」と思うのだが、面白かった。一気に最後まで読んだ。
デビュー作だけあって、とにかく勢いがある。
一人称と三人称が混ざってしまっていたり、不良グループや未成年売春、ドラッグ、パーティーなどの描写に苦笑してしまうような野暮ったさがあるのは確かなんだけど、それでも読ませ続けられる力があった。
映画観てから原作読むパターンはあんまり無いんだけど、今回はそれで大正解だったかも。これ、下手すりゃテキトーなVシネとかにも出来るよね。
だって基本的には「うちの娘に限ってそんなー!」「ヤクザの仲間になって、売春組織の元締めで、ドラッグも捌いてるだってー!」「ヤメデカになにが出来んだよー!」だもの。こう書いてたら2流アイドルちゃん主演で、スケ番とか出てきそうだもの、竹内力とか、濡れ場多めで。
映画のファンが読んで面白いとはあまり思えないんだけど、力のある作家のデビュー作で、秀作だとは思う。私がハードボイルド小説なのもあるけどね。
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