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2023年11月26日

1・1 疫学の定義−疫学の難しさは定義すらよくわからない。誰も教えてくれない疫学の核となる概念をシンプルに表現したとてもわかりやすい定義を紹介します−

 疫学は、多くの人から単なる保健統計だと誤解されているようです。さらに、疫学の定義はとても多く、研究者の数よりも多い1)ともいわれています。そんなわけで、疫学の概念がとてもわかりにくくなっています。そこで、誰も教えてくれなかったとても簡単で、わかりやすいDr. Richeの定義を紹介します。

「疫学とは、人間集団での因果関係を明らかにする科学をいい、その目的は健康の保持増進と疾病の予防である」

 この定義は、前段と後段に別れ、前段が疫学の基礎となる概念で、後段は疫学の応用である目的となります。

前段は
「疫学とは、?@人間集団での?因果関係を明らかにする?B科学である」
となります。

?@ 人間集団
人間集団とは、疫学の研究対象は「人」であるということです。動物や物ではありません。そして、この対象は、集団であるということです。一般的には集団でなければ疫学でない2)とされていることから、人間集団としてありますが、現在ではN-of-1 RCTのような実験の対象となる人が1人(number: N)という研究も臨床疫学の分野では存在しますので「人での」でもよかったのですが、伝統的・原則的に、「人間集団」としました。

?A 因果関係
 「因果関係」は、原因と結果の関係をいいます。疫学の分野での原因は、「曝露」といわれます。その例としては「喫煙」などの健康に影響を及ぼす要因をいいます。それに対する結果は、「帰結」といい、肺がん死亡率や肺がん罹患率など集団の健康状態を表わす指標をいいます。

?B 科学
疫学は学問です。学問とは、「真理の追究」です。また、科学ともいいかえることができます。疫学で行われる真理の追究は、因果関係であり、つまり、疾病(又は健康)の原因を明らかにすることです。
疫学でなければ疾病の原因となる危険因子を探すことができないし、薬などの効果を確認することもできません。人類に与えられた、因果関係を明らかにする唯一の方法が疫学なのです。

後段は
「その目的は?@健康の保持増進と?疾病の予防である」
となります。つまり、疫学で明らかになった因果関係を用いて健康の保持・増進と疾病予防に役立てます。具体的には次のようになります。

?@ 健康の保持増進
明らかになった健康によい曝露(例えば毎日の運動習慣)を続ければ、健康の保持・増進になります。
?A 疾病の予防
明らかになった疾病の原因(曝露)を避ければ、疾病の予防になります。例えば、コレラ菌に汚染された水を摂取しなければ(曝露をさければ)コレラの予防になります。

それでは、日本疫学会による疫学の定義3)と比較してみたいと思います。日本疫学会の定義は以下のとおりです。

「明確に定義された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして、健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学である」

「明確に定義された人間集団」の意味は、例えば50代の男性の喫煙者の集団などをいいます。つまり、簡単にいえば「人間集団」と同じ意味です。

「健康関連のいろいろな事象の頻度と分布」のうち「健康関連のいろいろな事象」の代表例は疾病ですので、それを疾病で説明すれば「健康関連のいろいろな事象の頻度」は、「罹患率」のような集団の疾病の指標を意味し、「健康関連のいろいろな事象の分布」は、疾病がどの地域で起きているかなどをいいます。要するに「健康関連のいろいろな事象の頻度と分布」は因果関係の結果・帰結を意味するのです。そして、「それらに影響を与える要因」とは、因果関係の原因・曝露を意味します。
従って、

「健康関連のいろいろな事象の頻度と分布(因果関係の結果・帰結)およびそれらに影響を与える要因(因果関係の原因・曝露)を明らかにして」

となり、結局は「因果関係を明らかにして」とまったく同じことをいっているのです。
その後の「健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるため」は「その目的は健康の保持増進と疾病の予防である」と同じ意味です。したがって、日本疫学会の定義と著者の定義はまったく同じもので、著者の定義は、より簡潔に、よりわかりやすくしただけなのです。

 以上のことから、「疫学」がでたら、「因果関係」が頭に浮かぶようにしていただきたいと思います。因果関係は原因(曝露)と結果(帰結)の関係です。疫学が人での因果関係を明らかにする科学だとわかっていただければ、疫学の勉強を進める時に、わかりやすく、楽になると思います。特に科学的根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine:EBM)を正しく理解するのには必要不可欠です。


1)三砂ちづる「疫学への招待 周産期を例として」医学書院、2005年、1項
2)William Anton Oleckno「しっかり学ぶ基礎からの疫学」(柳川洋、萱場一則監訳)南山堂、 2000年、49貢
3)牧本清子ら「標準保健師講座・別巻2 疫学・保健統計学」医学書院、2023年、2頁










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