不感蒸泄を考慮せずに、尿に排泄されるNa、Kだけで検討して1日の適切な摂取量は、
Na3〜5g、K>2.1g
民族、気候風土を考慮せずに検討しては、正しい結果が見えてこない
といつもこの手の解析では思う
ナトリウムとカリウムの適切な1日摂取量は/BMJ
提供元:ケアネット 公開日:2019/03/26
世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の栄養摂取量として、ナトリウムは2.0g未満に制限を、
カリウムは3.5g以上摂取を推奨している。
今回、カナダ・マックマスター大学のMartin O'Donnell氏らが行った調査(PURE試験)では、
これら2つの目標を同時に満たす者はきわめてまれで、
死亡/心血管イベントのリスクが最も低いのは、
ナトリウム摂取量が3〜5g/日で
カリウム高摂取量(≧2.1g/日)の集団であることが明らかとなった。
研究の成果は、BMJ誌2019年3月13日号に掲載された。
ナトリウムについては相反する知見が報告されているが、多くでは摂取量と死亡に『J字型の関連』が示されて
いる。
これに対し、カリウムは一般に摂取量が増えるに従って死亡が直線的に低下することが報告されている。
一方、ナトリウム/カリウム比と臨床アウトカムとの関連を示唆する観察研究の報告もある。
18ヵ国、10万人の早朝空腹時尿から摂取量を推算
研究グループは、ナトリウムとカリウムの摂取量の代替測定値として尿中排泄量を測定し、心血管イベント
および死亡との関連を、現在のWHO推奨1日摂取量との比較において検討する目的で、国際的な前向きコホート研究を実施した(欧州研究会議[ERC]の助成による)。
18の高/中/低所得国の都市部および農村部の住民10万3,570例(35〜70歳)から、早朝空腹時尿を採取した。
主要アウトカムは、摂取量の代替測定値としてのナトリウムとカリウムの推定24時間尿中排泄量と、
全死因死亡および主要な心血管イベント(心血管死、脳卒中、心筋梗塞、心不全)との関連とした。
解析には、多変量Cox回帰を用いた。
ナトリウム排泄量を
低(<3g/日)、
中(3〜5g/日)、
高(>5g/日)の3つに、
カリウム排泄量は中央値2.1g/日を基準に
高(≧2.1g/日)と
低(<2.1g/日)の2つに分け、
これらを組み合わせた6つのカテゴリーについて解析を行った。
WHO推奨の同時達成は0.002%、ナトリウムはJ字型の関連
参加者の41.8%が中国からで、ナトリウムとカリウムの尿中排泄量の平均推定値は、それぞれ4.93g/日、
2.12g/日であった。
フォローアップ期間中央値8.2年の時点で、7,884例(6.1%)が死亡または心血管イベントを経験した。
尿中ナトリウム排泄量の増加はカリウム排泄量増加と正の相関を示した(補正前、r=0.34)。
また、ナトリウムの超低排泄量(<2g/日)とカリウムの高排泄量(>3.5g/日)を同時に満たした参加者は、0.002%ときわめて少なかった。
ナトリウム排泄量が高値および低値の双方の集団で、死亡/重大な心血管イベントのリスクが高く、
J字型の関連を示した。
カリウム排泄量と死亡/重大な心血管イベントには反比例の関連が認められた。
6つのカテゴリーのうち、ナトリウム中排泄量(3〜5g/日)/カリウム高排泄量(≧2.1g/日)の群
(全コホートに占める割合:21.9%)が、死亡/心血管イベントのリスクが最も低く、
イベント発生率は6.4%であった。
これを参照群として比較すると、死亡/心血管イベントのリスクが最も高かったのは、
低ナトリウム/低カリウムの群
(イベント発生率:9.4%、ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.11〜1.37、
全コホートに占める割合:7.4%)であり、
次いで高ナトリウム/低カリウムの群(8.8%、1.21、1.11〜1.32、13.8%)、
低ナトリウム/高カリウム群(6.8%、1.19、1.02〜1.38、3.3%)、
高ナトリウム/高カリウム群(7.5%、1.10、1.02〜1.18、29.6%)の順であった。
また、中ナトリウム/低カリウム群は、参照群に比べリスクが高かった(7.8%、1.10、1.01〜1.19、24.0%)。
『カリウム排泄量が増加』するに従って、ナトリウム高排泄量との関連で増加した『心血管リスクが減衰し、
ナトリウム高排泄量と心血管リスクとの関連はカリウム低排泄量の集団で最も顕著だった。
著者は、「本研究の知見は、『WHOの推奨』の実行可能性に『疑問を呈する』ものである。
ナトリウム摂取と死亡/心血管イベントのJ字型の関連は、現行のWHOの低ナトリウム食(<2.0g/日)の推奨を
支持せず、ナトリウム/カリウム比の使用には同意しないものである」としている。(医学ライター 菅野 守)
原著論文はこちら
O'Donnell M, et al. BMJ. 2019;364:l772.
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2019年04月23日
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