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a.ここはかつて人が住んでたんやな、
b.気味の悪いもんすね、深い森のなかに廃屋(ハイオク)が点在してる光景って、
a.きっと今じゃ妖怪の住みかやから、気味悪いの当然やけど、昼でもこんな暗いから、夜は泣いちゃうな、きっと1人だと、オトナでも、
b.そんなときに限って明かりがもれてるんすよ、奥の一軒家から、人を安心さすように、
a.分かっててもその光の方へどうしてもカラダが行っちゃうんやな・・・なんか怖くなってきた、この恐怖をバネにこの坂を登ってしまうぞ、
b.廃村を抜けて急に明るくなりました、そして見晴らしも、
a.いわゆる丹波(タンバ)の山並みってやつ、
b.やはり山が深いっすね、なんべん見ても、この地域は、
a.高さはないけど、重なってるんだな、幾重(イクエ)にも、パイ生地みたいに、
「幾重にも山かさなりて丹波( たんば )かな」、
b.今回はそれほど苦労することなく峠越えできました、
a.じっさい走らんと分からんもんやな、ともかく楽に越えられて良かった、
b.そして我々は、福知山市から京丹波町へと入ってまいりました、
a.峠のふもとに、こじんまりと姿の良いお宮さんが、
b.お宮さん?
a.大家のオバチャンは神社のことをお宮さんって言うんや、そのマネ、
b.京都の人はよく「さん付け」で呼びますからね、お豆さん、おかゆさん、おいもさん、
a.おお、広い道に出てきた、府道26号線か、
b.同じ府道でも今走った521号線と大違いっすね、
a.まあ一桁( ひとけた )違うからなあ、しかし、この道いきなり激坂になってきた、
b.クルマだったらなんて事無いんでしょうけど、自転車にはかなりジワジワ来ますね、この坂、
a.一気に100mほど登ってんちゃうか、切り返さんと、ああまさに自転車が一番イヤになる瞬間、
b.オマケにクルマがこれ見よがしにスイスイ追い抜いて行きます、
a.おのれ、この坂越えたらみっちり休ませてもらうしな、冷たいコーラと共に、
b.まあ自販機あればの話ですが、
a.おお、坂の下に立派な公園、神社、そして自販機まで、旅人を待ち受けているように、
b.助かりますね、こういうちょっとしたベンチや木陰のサービス、
a.ここ京丹波町は、数年前に一度来たことがあるから、ずいぶん気が楽になってきた、もっとも、このあたりは、初めてやけど、
b.ここからどうしますか、おすすめは府道26号線ですが、これだとJR園部( そのべ )駅までずいぶん遠回りになります、
a.一刻も早くJR園部駅へ到着したがってる、カラダが、
b.だったら交通量若干ありますけど、国道173号線で行きましょう、
a.そこからどうなるんや、
b.数字の羅列でかまわなければ、こうなります、国道173のあとはすべて府道なんすけど、444〜702〜453〜54、
a.金庫の暗証番号みたいやな、右回し左回しは無いんか、
b.いやデジタルやさけえ(=なので)、左右はおまへんねん(=ありません)、こんで大金ガッポリでんな、大将、
a.ほな行きまひょか、
b.あんじょう(=うまいぐあいに)、気いつけて行っておくれやしておくれやっしゃ、
a.なるほど、これが国道173号線か、追い越し禁止のオレンジラインがまぶしいぜ、
b.三桁(ミケタ)とは言っても、やはり国道はどこか凛(リン=きっちり)としてますね、
a.今までの道がヒドすぎたしな、まあそんな道の方が好きなんやけど・・・で、あの山の向こうになるんかなあ、JR園部駅って、
b.まあざっくり言うと、向こうの山の左手の裾野(スソノ)を行くから、エグい登りはもう無いんすけど、距離はまだちょっと、
a.どれほど、
b.20キロほど、
a.ひさしぶりに、自転車、三時間ほど見たくもない、それほどしんどい、そこの自販機で休ませちくりい、
b.またすか、
a.この先は休み休み行かしてもらうからな、
b.たしかに、平坦な道が続くと緊張がほどけて、しまい込んた疲れがどっとあふれ出てきますね、
a.おまけに日影がどこにもないから、これがまたじわじわ効くんや、
b.道もこれといって面白味ないし、
a.けっこうラクそうに見えてる今が一番つらいときなのかも、
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