2020/9/2日経電子版 写真 新材料「サシム」はゴムの伸びとプラスチックの強さを併せ持ち、くぎを押し付けて局所的に力を加えても穴が開きにくい(出所:ブリヂストン)
新材料ゴム×プラスチック 夢かなうかブリヂストン
ブリヂストンが開発した新材料「SUSYM(サシム)」。その特徴はゴムとプラスチックが分子レベルで結合し、両材料の機能を併せ持つこと。同社は「両者を共重合させた世界初の材料」と胸を張る。
■最大の魅力は「技術者に夢を見させる力」(日経クロステック/日経ものづくり 高市清治)
サシムはゴムのように弾力性があり、プラスチック並みの強度を持つ。例えば、くぎを刺してもなかなか穴が開かない。熱可塑性を持ち、穴が開いたり傷が付いたりしても、熱を加えるだけで塞がってすぐ修復できる。さらに材料の組み合わせ方や製造条件で特性を大きく変えられるという。
個別の特性それぞれもさることながら、サシム最大の魅力は「技術者に夢を見させる力」だろう。
ブリヂストンは2019年の東京モーターショーで、サシムで造ったコンセプトタイヤを披露した。驚いたのはその反響だ。さまざまな企業の技術者がやってきてはサシムのタイヤ以外への活用法を提案してきたのだ。
例えば「フィルム状に成形して、製品の透明な部分の強度を高められないか」、あるいは「破損してもすぐに修復できる自動車のボディーや内装に使えないか」といった提案だ。いずれもブリヂストン自体が当初は考えもしていなかった用途である。従来にない特性を有するサシムの可能性に多くの技術者が気付き、多様な用途を思い描かせたのである。
こうした反響を受け、ブリヂストンもサシムの可能性に期待し始めた。先端技術担当フェローの会田昭二郎氏は、「さまざまな特性のサシムが造れる。その可能性は無限に広がっている」と話す。
■ゴムより強く成形が容易 透明シートも可能
サシムはブリヂストンが開発した希土類金属のガドリニウム化合物を重合触媒にして、プラスチック系モノマーとゴム系モノマーを共重合させたポリマー全般を意味する。同社が18年5月に発表した「High Strength Rubber(ハイストレングスラバー)」は、そんなサシムの第1弾だ。くぎを刺してもなかなか穴が開かなかったり、熱を加えると傷を修復できたりする特性はサシムの特性バリエーションの1つとなる。
同社によると、ハイストレングスラバーの耐亀裂性は天然ゴムのおおよそ5倍以上、引っ張り強度は1.5倍以上、耐摩耗性は2.5倍以上だったという。
通常のゴムは、先端が鋭利なくぎを押し付けるとすぐに穴が開いてしまう。サシムは局所的に力がかかっても、均質に分散したプラスチックの分子が破断に堪えるのでなかなか穴が開かない。
一定の温度に達すると溶けて融着する熱可塑性もプラスチックに由来する特性の1つ。一部が破断しても熱を加えれば融着して修復される。含有するプラスチック分子の長さの調節により融着温度も任意に調整できるという。
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