春の終わりから冬にかけてはけっこういろいろなきのこを楽しむことができる土地柄なのだが、春はやっぱり野草と山菜の時期。そろそろかなーと思っていたが・・・
↑「1本目のホダ」と呼んでいた折れた木に発生したヒラタケ
↓「収穫適齢期を惜しくも逃したシャカシメジ」といった風情のヒラタケ、同じ木
今年は春のスタートもヒラタケから収穫できそうな予感がある。この時期にヒラタケが発生するのは数年ぶり。ヒラタケというきのこは「秋〜春」という3シーズンにかけて発生するといわれる。だからこの時期に発生すること自体さほど珍しくはないらしい。でもこのあたりではけっこうレアケース。
ヒラタケのことは秋まで置いておいて、春はやはり野草、山菜のシーズンである。前回かその前かに予告しておいた「春を告げる野草」を収穫した。このあたりは平均にくらべると多少遅めではあるが、今年も春の到来を告げてくれた。コイツです。
日本でも最も有名な野草の1つに数えられると思う。単勝1.1倍って感じだが、いちおう予想。
◎ フキノトー
○ ハシリドコロ
△ キク
もちろんみなさんも「◎ フキノトー」のことをご存知かと思う。でも改めてこうやって見てみると、なかなかかわいらしいもんでしょ?ジロジロ見てやってください。例年だいたい300個くらい出てくるかなー。収穫するのは100個くらいのもんだと思う。まあだいたいそんなにバクバク食うようなもんでもない。
なお、「○ ハシリドコロ」というのは比較的強い毒を持つ、花がフキノトーによく似た植物(だったと思う)。時期が同じかどうかはわからないが、けっこう似ているそうだから、野生のフキノトーを収穫する人は注意すべきである。
ちなみに「ハシリドコロ」の由来は「中毒症状が走り回るくらいつらい」とか「走り回るほど頭がおかしくなる」とか、なんかそんな感じの症状だったように思う。症状がつらくて走り回った経験が私にはないので、どちらかといえば後者の由来が正しいのではないかという気がする。いずれにしても、中毒は避けるべきである。
フキノトーというくらいだから、当然「フキ」の香りがする。フキよりもこっちのほうが香り自体は強いかもしれない。正直私は植物に関する知識が恐ろしく少ないので、フキとフキノトーの関係をよく理解していない。ミョウガとミョウガタケの関係と同じくらい不明である。
フキノトーって食いごろはいつ?フキノトーを採っちまうとその後のフキはどうなるの?フキノトーって全部の株に出るの?などといった数々の疑問を一切解決せずに、いたずらにちょん切って片っ端から収穫することにしている。ミョウガってどうなるの?のパターンもこれと同じである。
まあこれを読んでくれているお子さんはいないと思うし、いたらいたでひとクサレ注意のことばでもかけてやりたい気分になるわけだが、子供のころ、はじめてコイツを食ったとき、こんなにクソまじぃもんがこの世にあるとはと驚愕したのをよく覚えている。
当時はけっこう都会に住んでいたので、フキノトーが口に入ることもほとんどなく、基本的には毎年平和な春のはじめを迎えていたのだが、おせっかいな近所のおばはんがフキノトーを大量に仕入れてきて、これをウチに持ってくるわけですよ、猛烈に運が悪い春には。
すると母親はなぜかスイッチが入っちゃって、こんなに貴重なものを!などと目に涙を浮かべそうな勢いで辞令を述べ、その晩は恐怖の「フキノトー料理」が登場するのだ。死にそうになりながら1つ食って、もう2度と箸をつけないでいると、必ず言うのだ。
いっぱいあるんだから、食べなさい。
冗談じゃねえ!こんなもん1個までだ!これ以上食ったら死んじまうわ!と思いながら「もういい」と私は答える。これで「ああそう」なら何の問題もない。ところが私の母親はそんなに素直な人間ではないのだ。
「なんで?こんなにおいしいのに」
「いらない」
「食べなさいよ、おいしいでしょ?」
「おいしくない、まずい」
「何言ってるの?おいしいわよ」
「もういらない」
「あんたはなんでそんなに食わず嫌いなの?だまされたと思って食べなさい」
「・・・」
私は1つ実食しているのに「食わず嫌い」のレッテルを貼られ、食った結果私の舌は「まずい」と判定を下したにもかかわらず「おいしいでしょ?」と無根の疑問を持たれ、挙句は「おいしいでしょ!」と怒鳴り始める始末。あまりにも理不尽すぎる。今にして思うと、母は理不尽というよりただのバカだったのではないかの疑いも生じるレベルである。いや、当時もそんなふうに思った記憶が確かにあるぞ。
理不尽はこれだけで終わらない。「もうあんたはバカだねぇ・・・どうしてこんなにおいしいものを食べないの?ほんとにバカだねぇ・・・」最上級のしかめっ面で、こんなことをほざく。このくそばばあ!と、私は内心思っていた。
もしかしたらこの人はバカか?と思った人に「バカ」を連呼される始末。だから私にとってフキノトーは「理不尽な味」なのだ。
大人の読者の方であれば、フキノトーを一度くらいは食ったことがあるだろう。万一まかり間違ってコレをお子さんが読んでいたとするなら、悪いことは言わない。やめといたほうがいいぜぇ、フキノトー・・・
味をひとことで言うなら「クッソにげえ」のがフキノトーの最大の特徴。香りだっておそらく子供には不向き。何しろあの「フキの香り」を強烈にした感じなのだから。だからきっと子供からすれば「クッソにがくてくせえ食い物」と感じられるはず。こんなもん食わないに越したことはない。
しかしあれから少なくとも30年以上は経過した現在、実に不思議なことに、このフキノトーが「なんとなくうまい」と感じられるようになってきているのだ。さすがに「フキノトーのてんぷら」なんつったら苦すぎて食えたもんじゃないんだけど、花のひとかけらをみそ汁に散らしたり、うどんやそばのだしに浮かべたりすると、なんだかけっこううまく感じられるようになっているのだ。
しかも、見てみぬふりをしつづけたフキノトーを、一念発起で収穫して食ってみたほんの数年前から、なんとなく「うまい」感じを覚えるようになったのである。
まあ100個とってきても、実質私が食うのは1個分にも満たない程度なんだと思う。残りは家族がてんぷらだフキみそだと喜んで食うから、フキノトーもけっこう収穫しがいがあるのだ。
だからといって少年時代に受けた理不尽な屈辱が正当化されることは絶対にない。これだけは言っておかなければならない。それは金輪際絶対にありえない!
そんなくそばばあ・・・いや、私の母ももうすぐ90目前。1.5?qも離れたスーパーまで単独で買い物に行くというから、相当理不尽なゴリ押しもやはりダテではなかったんだなぁと思う今日この頃である。
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