個人的に、気候の変化はそこまで気にしていないのだが、自然災害に加え、自身にとってより身近な「きのこの変化」を目の当たりにすると、いやでも何かが変わってきていると認めざるを得ない。
↑ひと目見て「美しい」と思った。が、これ、いったいなんのきのこだ?
黒っぽく鈍い光が目に飛び込んできた。あ、コテングタケモドキか?と思ったが、時期が違う。近寄ってみると、灰色のようなレモン色のような、実に複雑な色合いであり、タマゴテングタケ?とも思った。
コテングタケはツボを持たないが、コテングタケモドキはツボを持ち、コテングタケ以上の猛毒きのこ。その上を行く猛毒といえば、やはり猛毒御三家の中でもトップを担うタマゴテングタケだ。それにしても、今はもう11月。さすがにこの時期に猛毒御三家とかテングタケ系とかが顔を出すことは考えられない。
つぶさに観察してみると、ツボがあり、ツバがない。しかし条線はある。とすると・・・条線を持たないことが多い猛毒系ではなさそう。コテングタケモドキでもタマゴテングタケやタマゴタケモドキでもないことがこの時点で確定した。
では何か?このあたりで大量発生するウスキテングタケはツボと条線を持つが、けっこう頑丈なツバがある。この不思議なきのこにはツバがなかった。ただ、ベニテングやイボテングのような「傘のボツボツ」とともに、雨でツバが落ちてしまうことは十分にありうる。
ただ、ウスキテングタケのクリーム色は、タマゴテングタケのレモン色とは明らかに異なる「単色」である。タタマゴテングやコテングタケモドキは、非常に複雑で神秘的な色合い。傘の色だけを見ると、ウスキテングという感じではない。
ではなにか。うーん・・・正直わからん。いずれにしても食いたいと思うきのこではない。食ったらタダでは済まない「凶悪きのこ」の気配は十分感じられる。釈然としないまましばらく歩いていると・・・
↑はい!?なぜ今このきのこが・・・
これ、どう見てもタマゴタケである。10月の下旬に見たことはあるが、さすがに11月に入ってタマゴタケはねえよなぁと思い、またまたつぶさに観察してみた。ツボあり、条線あり、ツバあり、柄のだんだら模様あり・・・やっぱりタマゴタケだ。
しかし今は冬きのこのヒラタケが全盛期を迎えようとしている時期だ。タマゴタケのおいしさは十分知っているし、今年は正直タマゴタケ不足でもあった。収穫したいなぁ・・・と思った。でもやめた。なんとなく不吉なきのこであるように感じられたからだ。
この時期、タマゴタケと同じような色合いのベニタケ系きのこは多く、実際チチタケなんかをちょぼちょぼ収穫している。だからよけいにこの色のタマゴタケがベニタケ終盤に発生することがものすごく奇異に感じられたのだ。
いやー・・・いよいよ今年は時期がめちゃくちゃだなぁなどと思いながらさらに歩を進めると、久々、コイツに遭遇した。見るだけでも緊張感が走る「狂暴きのこ」である。
↑絵にかいたようなドクツルタケ
写真ではツバを確認できないが、まだ幼菌なので、ツバが剥がれ落ちてきていないだけ。ツバになるだろうなぁと思われる膜が、ちゃんと傘裏にへばりついていた。大きなツボがあって、条線がない。これは完全に「猛毒御三家」のドクツルタケである。
それにしても、なぜ今この時期にドクツルタケなの?と、デジャヴのような違和感に襲われる。タマゴテングならありうるが、11月のドクツルやシロタマゴテングはさすがにねえよなぁ・・・まあドクツルタケに襲われたわけではないので、デジャヴを身にまといながら、さらに歩いていくと・・・
↑大型ヒラタケ(右)と、ちょっとうれしいヌメリスギタケ(黄色い小ぶりのきのこ)
やっと晩秋らしい美味なきのこに出会うことができた。なんだか安心したなぁ・・・明日はヌメリスギタケの味噌汁。このへんはヌメリスギタケモドキのほうが多いので、モドキのないヌメリスギタケはとてもうれしい。
【このカテゴリーの最新記事】