【不眠症カフェ】 Insomnia Cafe

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2014.01.22
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カテゴリ: M【映画】 女優
私自身、バレーの話にも少し飽きたので
(読者も飽きていると思う)
過去ログを再録

今回で、もう、余命も短いと自覚したので(笑)
私がエネルギーに溢れ、危険の中で
むしろ、危険を楽しんでいた
私の青春であるベトナム回想の記事を再録しようと思う
自分が再読するため
(と言いながら,今、もう読んでしまったが)(笑)

迷惑だとうと思うが
ブログは自己本位のものなので
私の好きにやらせて欲しい(笑)

なお
若い頃の栗原小巻が、中国人の可憐な(笑)ヒロインを演じるが
とても中国人には見え無い

岸田今日子が,フランス人との混血の女性を演じるが、とてもフランス人との混血とは見え無い
当時は,混血タレントが居なかったので、岸田今日子をあてたのか



   ―――― 過去ログ ――――


○ 過去ログ  『ゴメスの名はゴメス』 スパイの群れの中で


CSの日本映画専門チャンネルで気になる番組を見つけたので録画した
1967年に日本テレビ系列で放映されたテレビドラマ・全5話である
原作は結城昌治
監督は高橋治(後に直木賞作家となる)

◆ ゴメスの名はゴメス(TVドラマ・全5話)

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なぜ気になったかというと

原作の舞台がベトナムであったこと
私自身が,昔、この原作を読んだこと

原作は「ベトナムの湿った熱気が漂う」と評されていたので
ベトナム戦争時、サイゴン(現ホーチミン)に駐在していた私としては
郷愁と興味を感じて一読したのだが

私のような実体験者からすれば、
「ベトナムの湿った熱気が漂う」と言うほどではないと感じた記憶がある

同じように映画「グッド・モーニング・ベトナム」にも、同じような事を感じた
もっとも、後者は,タイでロケしたらしいので,サイゴンらしくないのも当然である
他のベトナム戦争を舞台にしたいろんな映画も,必ず見る事にしているが,同じようなものである

私は,このブログで「ベトナム戦争の想い出」というジャンルを作って,20編ほどの記事を書いているが、これは、単なるブログ記事として書いているので,小説的な情緒描写などは意図していない
しかし、あの、昔のサイゴン独特の饐えたような湿気の空気は、
ぜひ、エッセイなどで書いてみたいと思う


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この古いテレビ映画について少し感想を書いてみよう

まあ、要するに、スパイの暗躍する魑魅魍魎の世界(サイゴン)(このテレビ映画では香港)でのストーリーなのだが

イスラエルで地質調査の出張での2年間を過ごした坂本(仲代達也)が,帰国途上、香港在住の親友であり同僚の香取に会いに香港に立ち寄る
空港に出迎えてくれた香取は,なぜか?その直後姿を消す
彼を追って仲代達也は,ギャングとおぼしき人物達や魑魅魍魎達の間を懸命に走り回るのだが

原作は結城昌治による日本初のスパイ小説と評価されていた
その陰影のある登場人物達がそれまでの日本の小説には無いものを持っていたのかも知れないが

私からすれば
実際に,サイゴンでは、スパイに囲まれて生活していた
(事務所の現地従業員の半数がスパイだった)、
おまけに、恋人まで後でわかったのだが、スパイだった(笑)
という経験をした私からすれば、

「現実は、こんな単純なもんや、おまへんで~」
というところだ(笑)

そう言えば、東欧でも,スパイにつきまとわれた
これも、本当
その内、スパイ特集でも書くか?(笑)

有名な英国系の作家達
イラン・フレミング、サマーセット・モーム、グレアム・グリーン、ジョン・ル・カレ達も,英国のMI6のスパイ(工作員)だったのだから,世にスパイは多いのだ(笑)

ただ、この小説は,スパイ小説・ミステリー小説だったのだろうが
テレビ・ドラマの方は、ハードボイルド調である

しかも、仲代達也が、やたらに力んだ,正義感の主人公というやつ
別に言い方をすると、世の中がわかっていない単細胞

昔、このブログでこういう一節を書いたことがある

----

演劇・文学などのフィクションにおける「character論」においては、
「flat character」 と 「round character」 と言うことが言われる。
フラットな人物像とは、いわば二次元・平面のような、
人間としての「特性」の少ないもの。
現実的には陳腐なステレオタイプの人間像を指すわけで、
近ごろの言い方をすれば「キャラが立っていない」状態を指す。

それに対してラウンドな人物像とは、
立ったキャラで、球形の、三次元の、
つまり奥行きのある人間像であり、
特性が多く、しかも矛盾した特性も含むリアルな人間像。
フィクションではこのラウンドな人間像を創造できるかどうか?という所が key point になる。

----

まあ、そういうことだ
非常に危険な状況であることが見て取れて,
また周囲のほとんどすべての人間に
「危険で殺されるから、これ以上、本件に関わるな!」
と警告されるのに
それを一顧だにしないという仲代達也の不可解な勇気(笑)

古代的な、英雄物語の主人公かい?と言いたくなるような非現実的な人間像
高橋監督の演出、ちょっと単純すぎる
まあ、昔は、これでもよかったのだろう

やはり、私の好きな,松本清張の推理小説の主人公のように
平凡な一般人が事件に巻き込まれる方が、ずっと感情移入が出来るではないか?
主人公が怖がりで弱気な男の方が,ずっと、スリルがあるではないか?

松本清張の「平凡な主人公」というのは、推理小説界の大発見だ(笑)
状況でスリルを感じ、主人公の内面に感情移入してスリルを倍加させる

このテレビドラマでは
同情的に見れば、悪漢どもの悪を、陰を。際立てさせるために,主人公を単純な正義感で,日本人離れした強気の行動型にしたのだろうが、

こういうスパイ物の実体験のある私と,現代の複雑な感覚から見れば
完全に失敗している

こういうバカなハードボイルドには、どうも、なじめない
私は,陰のある人間が好きだな~

というか
フラットな人間は、物足りないものだ






   ―――― 批評など ――――


日本映画専門チャンネルのHPより

ゴメスの名はゴメス(TVドラマ・全5話)

出演
仲代達矢/芥川比呂志/栗原小巻/岸田今日子
監督 原作
高橋治 結城昌治
脚本 公開年
星川清司 1967
上映時間 放送話数
42分 全5話

あらすじ
失踪した会社の同僚の行方を探すために香港に赴任した坂本(仲代)は、到着早々不可解な出来事が続き、ついに坂本を尾行していた男が「ゴメスの名は…」という言葉を残して殺された。同僚の安否は、そしてゴメスとは何者なのか…。香港やイスラエルの砂漠を舞台に、熾烈なスパイ戦を通じて“不安な現代”を浮彫りにした結城昌治の本格派スパイ小説をドラマ化したサスペンス。35ミリフィルムで撮影され、再編集版が「ゴメスの名はゴメス 流砂」のタイトルで同年に劇場公開された。



   ―――― ある読書会のブログから ――――

00年07月01日(火) ベトナムの光彩~結城昌治「ゴメスの名はゴメス」を読んで~ 松浦綾
■[レポート]ベトナムの光彩~結城昌治「ゴメスの名はゴメス」を読んで~ 松浦綾夫
ベトナムの光彩
~結城昌治「ゴメスの名はゴメス」を読んで~
松浦綾夫
 紀元前1世紀から中国に支配されたベトナムは安南と呼ばれ、19世紀にフランスの植民地となり、その後日本の支配下に置かれた。戦後、南北にひきさかれ、米ソ対立の主戦場と化し、そのあいだ枯葉剤の散布など、近代戦争の実験場となった。
 つまり、生半可な国ではない。ずっと支配されどおしの国としてあった。
 マルグリット・デュラスの「愛人」は、フランス植民地下時代のベトナムに住んだ少女(デュラス)が年上の富裕な青年に抱かれる話だった。
 開高健の「輝ける闇」にもベトナム戦争の従軍作家を志望した「私」が現地の若い娼婦と濃密な性愛をくりかえす。
 「ゴメスの名はゴメス」もまたたいそうエロティックな小説だ。
 冒頭、日本からベトナムへ来たばかりの「わたし」が会社の同僚・香取をたずねて出てきたのは、二十歳くらいのリエンという女だった。香取の現地妻だったようだ。実は「わたし」は香取に気づかれないよう香取の妻と関係をもっていた。そして、黒い髪を長く伸ばし、黒い瞳が印象的な、どこか子どもっぽいリエンを最後には「わたし」も抱く。フランス人とベトナム人の混血であり、ダンサーであるヴェラ(娼婦であり、のちにスパイとわかる)とも「わたし」は官能的なデートをする…。
 幾重にも、肉が重なる。しかも、実存がかかった交わりだ。
 なぜベトナムはこうもエロティックなのだろう。
 ベトナムという国の支配・被支配の歴史。隷属した人々の怒りやゆがんだ心性は「ゴメス」のなかでもあちこちで滲む。だが、全体の鍵をにぎる兵隊帰りで一度は死んだ記者・森恒が魅せられたように、ベトナムの明るい陽射しと熱帯植物の繁茂が、まがまがしいまでの健康さが、その暗鬱さを忘れさせてしまう。東洋人らしい黒髪に黒瞳の、南国的な色鮮やかなアオザイに、安南陶磁のような白い歯をのぞかせ人なつこい微笑みを浮かべる女たち。「紫、金、真紅、紺青、ありとあらゆる光彩が今日最後の力をふるって叫んでいた」(「夏の闇」)と開高健が描いたベトナムの夕陽。陽光あふれる土地に生きる、健康な肉体をもつ女たちとねじれ、軋み、傷んだ家=国のありかた――。
 「ゴメスの名はゴメス」では、見えざる敵に追われるようになった「わたし」が、ベトナムの背後の、もっとおおきな「帝国」間の対立や策謀に巻きこまれてゆく。おってもおってもとかげの尻尾きりのように、敵の正なる姿は見えてこない。「わたし」は結城昌治のほかの作品の主人公のように、愚直なほどに、誰彼となく、話を聞きまわる。聴く。「暗い落日」から「軍旗はためく下に」までつらなる、聴く、という流儀だ。
 「わたし」はこれから始まろうとする戦争、そして日本が植民地統治した時代の、もう終わった戦争、ふたつのねじれのなかで翻弄される部外者である日本人の立ち位置が描かれる。リエンは可憐だ。生い立ちからして不幸で、ただ養父のいうままに男に抱かれるしかない。その生をうけいれることしかできない。その肉体こそベトナムの姿とかさねられているのかもしれない。結城昌治の小説の<女たち>は運命的に悲運をおわされ、しかし気高く生きようとする女たちが多い。そういう女は小説のなかで美しく輝く。
 これは日本のスパイ小説の嚆矢とされている。だが、そうした結構よりも、ベトナムで 「わたし」が出会う人々の、生まれた国や出自によって異なる信条、さらに人間が存在すること自体の不気味さ、個人が生きることの不在感のほうが強く印象に残る。
 「軍旗はためく下に」でかなり早い時期に戦時の日本兵の加害者としての行為を、聞き書きというスタイルであらわした結城昌治の問題意識は「ゴメスの名はゴメス」にも揺曳している。日本の戦争、ベトナムの戦争、二つのパラレルな戦争のあいだで、一個の人間の生をこえてしまうおそろしいもの、暗い影が、どこまでもつきまとってくる。
 呼びかけている。





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最終更新日  2016.09.03 11:44:19
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