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analog純文

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2009.06.21
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カテゴリ: 昭和期・後半男性


 取り上げている小説は、村上春樹の旧作4冊。

『東京奇譚集』(新潮社)
  『神の子どもたちはみな踊る』(新潮社)
  『スプートニクの恋人』(講談社文庫)
  『国境の南、太陽の西』(講談社)


 これらどの作品を取っても、とても重いテーマを描きながら、なぜこんなに面白いのか、なぜこんなに多くの読者の心をチャームするのか、少し「うんざり」しながら(ムラカミ・ワールドの人物なら「やれやれ」と呟くところですね)、考えてみました。

 何となくぼんやりと思いついたのは、これらの作品の話とは、ことごとく僕達が人生の中で憧れながら実行に至らなかった冒険をする(あるいは「しない」)という話なのだ、ということでした。
 そんなこと、ありませんかね。

 そう思ってこの作家の作品を遡って思い出してゆくと、実に同じテーマが、様々な意匠を換えて取っ替え引っ替え描かれていることに気がつきました。それは、こんな原型の話です。

  1.男が、精神的な双生児のような運命の女と出会う。
  2.二人は別々の人生を歩み始め、絶対的孤独を感じる。
  3.男は、日常生活を捨てて女を手に入れる冒険に旅立つ(あるいは旅立てない)。
  4.男は女を手に入れることができず、より深い孤独が残される。

 基本的にこのパターンですね。
 これを「パラレル・ワールド」で飾りつけると、いわゆる「ムラカミ・ワールド」の大概の作品になりそうな気がします。

 さらに「2」および「3」の部分なんですが、もう少しここを補足するとこうなります。

  A・ストイックである。
  B・意志的な努力家である。
  C・金銭的社会的成功者である。
  D・ふんだんにセックスが出てくる。
  E・そして孤独である。

 うーん、どうでしょう。こんな分析をしてみたんですがね。
 噴飯ものですかね。
 しかし、こうしてみると、村上春樹の作品って、ちょっとしたインテリゲンチャのおとぎ話ですかね。(よく見たらチャンドラー?)

 結局、村上春樹の小説の魅力というのは、村上春樹独特のソフィスティケイトされた表現や比喩、そして「孤独感」というよりは、我々読者には現実にはできっこない冒険への「意志」と、その冒険が敗れる、いわば「敗者の美学」じゃないでしょうかね。

 えー、少し、横道にそれます。
 僕たちが、現実の世界で、なぜ「ムラカミ・ワールド」の人物のように振る舞えないのかのポイントなんですけど。どこだと思いますか。

 上記の1~4の項目でいえば、僕は、「1」の「運命の女」への断定にあると思います。
 ムラカミワールド人物は、実に断固として「運命の女」を「独断」「断定」してしまいますね。

 ところが、どうです? 
 我々の現実において、この「断定」は、なかなかできるものじゃないと思いませんか。
 もしこれがあっさりできるのならば、幸・不幸はともかく、その後の人生について、少なくとも自分では大いに納得できるものになるでしょうね。

 以下、次回。
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Last updated  2009.06.21 08:26:36
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analog純文 @ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩 @ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
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今猿人@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03) この件は、私よく覚えておりますよ。何故…
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