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「毎日更新」読レポ第2085
カール・ロジャーズ
~カウセリングの原点~
著:諸富祥彦
発行:㈱KADOKWA
第7章 「静かなる革命」
ロジャーズの「政治哲学」(1/5)
『パーソナル・パワー―個人のうちなる潜む力とその革命的なインパクト』(Carl Rogers on Pesonal Powr:Inner Strength and its Revolutionary Inpact)(Rogers,1977)は、ロジャーズが自らのすべての仕事の意義を「政治」という観点でとらえ直した本である。
「カウンセリングのロジャーズが政治?どういうこと?立候補でもしたっけ?」そう思われた方もいるかもしれない。ロジャーズが自分の仕事の「意義」を「政治」という視点からとらえ直したことが、その後の彼の仕事を大きく変えたのである。
そのきっかけは、ある大学院生から「クライアント中心療法の政治についての質問」をうけたことにある。ロジャーズが「クライアント中心療法に政治などないよ」と答えると、その大学院生はゲラゲラ笑いだした。ロジャーズはたずねた。「なぜそういう質問をしたの?」。学生は次のように答えたという。「臨床心理学のエキスパートになろうと3年間大学院で頑張りました。正確な診断を下すことを学んだのです。 クライアントの態度と行動を変化させる種々の技法を学んできました。解釈と指導という名前の巧妙に操作する仕方も学びました 。その後 先生の著作を読み始めたのですが、僕が学んできたことすべてが反対なのです 。 先生は力(パワー)は自分にはなく、相手の中にあるとおしゃり続けてきました 。先生は、 僕が3年かけて築きあげた権力と統制の関係を完全に逆転させてしまったのです 。それなのに先生は、クライアント中心療法には何の政治もないとおっしゃるんですか!」
ロジャーズは率直であり、どこまでも柔軟である。
聞き流しても仕方ない一学生との、このちょっとしたやりとりで、大きな気づきを得て、それが後の仕事の流れを変えていくことにつながったのである
。この出来事をきっかけに
ロジャーズは、「自分はその専門家としての活動を通じて、実はずっと、ある政治を実践してきたのだが、そのことを十分に認識していなかった」と自覚し始めた
。もちろん、ここでロジャーズが言う、「政治」は、いわゆる政党政治ではない。心理学的・社会的用法におけるそれである。
と著者は述べています。
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