森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.08.14
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それでは気分変調性障害で苦しんでいる人の例で見てみましょう。
Aさんは、自分はいつも人の中で浮いてしまうと悩んでいる人です。
最近始めたアルバイトでも、他の人たちは親しそうに話しているのですが、Aさんだけはとめこめないのです。
別にいじめられているわけではなく、感じよく挨拶をしてくれるので、どう見てもAさん側の問題のようでした。Aさんは、自分はやはり人間としてどこか欠けているのだ、と思っていました。
Aさんと周りのやり取りについてよく聞いてみると、Aさんから周りへの働きかけは、堅苦しい挨拶をするだけということが分かりました。
それ以外の状況では、話しかけることはおろか、微笑みかけることすらほとんどしていないのです。
また、ほかの人たちが話しているときにも、Aさんは決して近寄らず、興味がありそうな顔もしていないことが分かりました。

Aさんは気分変調性障害で苦しんでいる人です。
そういう病気を持ちながらアルバイトをはじめられたのです。
その前向きな姿勢は評価できると思います。
初めての仕事、初めての人間関係の中でいろいろと気苦労は多いことと思います。
常に抑うつ気分がありますので、症状のない人から比べるとつらい事と思います。
採用の時、気分変調性障害に理解があればよいのですが、それを言うと不採用になることがありますので公言するのは難しいかもしれません。

そんな時に役に立つのは森田です。
私は症状がきついときは月給鳥という鳥になったつもりで、会社に行っていました。
とにかく仕事をある程度こなして、生活費を稼いでくること。これだけに焦点をあてていました。
これは先輩からのアドバイスでした。気が楽になりました。
そして集談会でアドバイスされた事に素直にくり組んできました。
特に小さい仕事をていねいにやるということでした。

そのうち雑仕事がしだいにうまくできるようになりました。
宴会などの幹事もできるようになりました。
すると不思議なことに対人的な悩みよりも、仕事の出来具合が気になるようになりました。

Aさんの場合、無理は禁物です。
何しろ気分変調性障害という病気を抱えているのですから。
これは最初によく自覚しておいてほしいと思います。ぼちぼちとやってください。
Aさんはアルバイトを始めたばかりですから、他の仕事仲間は自分の悩みのことは全く気がついていないと思います。
そういう時を利用して、できるだけ早めに仕事を覚えるようにしたら如何でしょうか。
きっと良い方向に向かうと思います。

その上でAさんの対人関係について考えてみましょう。
Aさんは、「自分はやはり人間としてどこか欠けているのだ」とおっしゃっています。
これは気分変調性障害の人の特徴的な考え方です。
気分変調性障害は、水島広子さんがおっしゃられているように病気です。
病気が治れば、そんなに自己否定するようなことは考えなくなると思います。
自分は心配性でイライラすることも多いが、これは感受性が豊かであるということでもある。
そういう個性を持っている人間なのだと思えるようになるでしょう。

対人緊張が強いというのは、自分の考え方が片寄っている、認識の誤りがあるということだと思います。
それを少し緩めてやることが有効です。
森田理論学習では仲間とともにそのことに取り組んでいます。

Aさんのような悩みは私にもあります。
人がおもしろそうな話をしているところに入っていって、「何様のつもり」と思われるようなことがあってはいけない。
また過去の自分のミスや失敗、自分の弱みを取り上げてからかわれたり、バカにされるようなことがあってはならないと自己防衛的に構えているのです。
仮に雑談の輪に入ろうとしても、何も面白い話ができるわけでもないと思っているのです。
これは雑談恐怖症です。雑談恐怖症は、自分が非難されるということをひどく恐れているのです。
また、雑談の場でその場を取り仕切りたいという自己中心的な面もあります。

このような状況の中でAさんは、仕事仲間にどんなことを期待しているのでしょうか。
多分「自分から話しかけなくても、自分は、本当は人と親しく話をしたがっている。
でもうまくできないという自分の状況を気づいてくれて、気を使って仲間に加えてもらいたい」と思っているのではないでしょうか。
これは虫のよい話です。一度でも自分の気持ちを、相手に伝えておけば実現可能ですが、一度も伝えたことがありません。相手に超能力でもない限り、実現不可能な要望です。

気分変調性障害の人は、自分の意見や希望を堂々ということなど「とんでもない」と思っているのです。
自分の内面を明かせば、自分の欠点や弱みが筒抜けになってしまう。
また拒否されたり、無視されたり、否定されると大きな傷を負ってしまいます。
自分が何かを言うことで波風を立てることを恐れていますし、そもそも自分の意見や希望を言うことは「わがまま」なことだと思っています。

Aさんの気分変調性障害を治し、対人緊張を軽くするためにはどんなことに取り組めばよいのでしょうか。
薬物療法も必要かもしれません。これは精神科医に相談してみてください。
考え方の誤りや偏りは、カウンセラーや自助グループの学習の中で修正していくことが必要です。
水島広子さんの対人関係療法、認知療法、論理療法、森田理論学習などが有効となるでしょう。
(対人関係療法でなおす気分変調性障害 水島広子 創元社参照)





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Last updated  2015.08.14 06:59:44
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