森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.12.23
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カテゴリ: 認識の誤り

森田先生のお話です。
最近、朝日新聞に、五重奏ということが出ていた。
それは本を読みながら、会話をし、字を書き、計算をするとか、同時に5種類のことをするということです。
聖徳太子は1度に8人の訴えを聴かれたとのこと、すなわち八重奏である。
私どもも平常、2つや3つの仕事は同時にやっている。
たとえば、病院などでも、患者の家人に面接しながら机上の雑誌を読み、一方には看護婦に用事を命令するとか言うようなものである。 三重奏である。
我々の日常は、だれでも、同時にいくつもの方面のことを考えているのは普通のことである。
強迫観念でも、苦しみながら何でもできるものである。
神経質の人の考え方の特徴として、それを自分で出来ないことと、理論的に独断してしまうのである。
(森田全集第五巻  99ページより引用)

観念的に考えると、物事は集中して行わないと間違いだらけになると考えやすい。
プロ野球でも、いくら大観衆がいてもピッチャーはバッターを牛耳ること一点に注意を集中しているではないか。
それが逆に、自分の投球動作が気になる。監督やコーチのしぐさが気になる。
あるいは、自分のピッチングの組み立てを解説者がどう話しているだろうかと気になる。
そんなことにとらわれていては、相手打者に対する強い闘争心が分散されて、力が入らなくなり、微妙なコントロールに狂いが出てくるのではないか。
バッターだってそうだ。自分のバッティングフォームが気になる。
あるいは自分の名前を連呼されて大声援を受けて、そちらのほうに気をとられていては、バッティングに集中できない。
大声援が耳に入らないぐらいに、バッティングに集中していないと、 140キロを超えるような速球やキレのある変化球には、とてもではないが対応できないはずだ。

森田理論では、こういう態度のことを「部分的弱点を絶対視」、あるいは「防衛単純化」とも言います。これらは認識の誤りであるといいます。
「部分的弱点の絶対視」とは、神経症に悩んでいる時、自分の苦しい症状一点に注意を集中させて、これさえなければ、私の人生はうまく回転していくはずだと思っていることです。
そして、何とかその苦しみから逃れようと格闘を続けているのです。
しかしその多くの努力は不毛に終わります。
努力すればするほど苦しみの加速度は増してゆきます。
そして蟻地獄の底に落ち込んでいくのです。
森田理論学習では、症状のみに注意が向いて、主観の世界にどっぷりと使っていた状態から、注意の外向化を目指してゆきます。そして活動的で前向きな生活態度に転換を図ってゆきます。
この態度を森田理論では「無所住心」といいます。
周囲のこと全てに気が付いて、しかも何事にも心が固着しないで、水が流れるごとく 、心が自由自在に流転してゆく有り様であります。

谷川を勢い良く流れる小川を連想されるとよいと思います。
鴨長明が方丈記の中で 、「行く川のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ 消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し」 といっています。森田理論そのものの考え方を示しています。
不安一点に注意を集中させ、精神交互作用で神経症に陥らないためには、この言葉を机の前に貼って戒めとしておきたいものです。

「防衛単純化」は、不安の要因は無数にあります。それらのすべてに対処することは非常に困難であるように思われます。
そこで、その中から最も自分が気になっていると思われる不安、恐怖、違和感に対して焦点を絞っていく態度です。
これさえなければ、十分に自分の能力を発揮できると感じて、この障害と思われることに専念していく態度のことです。少し考えただけでも、容易に神経症の蟻地獄に陥ってしまいます。
私たちの日常生活を見ていると、たくさんの不安や違和感に取り囲まれています。
それらに一時的にはとらわれたとしても、どうすることも出来ない不安や違和感は、それらを抱えたまま次の仕事や家事、課題や問題点に取り組んでいくという態度が大切なのではないでしょうか。






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Last updated  2017.12.23 06:30:08
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