森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.01.11
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子どもに「早く風呂に入りなさい」「早く食事をしなさい」「勉強しなさい」などと強制することがあります。会社では上司が部下にノルマ達成のために指示命令を出して強制する。
集談会でも遅々として行動が伴わない人に、実践・行動するように強制している。

強制と言うと、自分の「かくあるべし」を相手に押し付けて、無理やり行動を押し付けているように思う。「かくあるべし」を押し付けると、相手は反発する。人間関係は悪くなる。
相手も自分がやりたいと思ったことではないので、意欲が持てない。
イヤイヤ行動することは、苦痛である。強制労働ほど人間性を棄損させるものはない。

これに対して、藤田英夫さんは、強制力は人間力を発揮するために必要なものだ言われる。
その理由は、我々人間は、頭では立派なことを考え、それらを口にしながらも、ついついそれとは逆の易き方へと流れていってしまうという特徴を持っているからである。
生産的欲求は、消費的欲求にしてやられてしまうからである。
ですから強制力のマイナス面ばかりではなく、プラス面も見ていく必要がある。

我々人間は、諸状況による強制の中で活かされ、生きているのではないか。
自然から与えられている環境も、時間も、人間によって作られた法、社会的な制度やルールも、躾も、総ては人の自由を縛る強制力を有している。
我々は外からの力による強制だらけの中で人生を味わい、過ごしているのだ。

藤田さんは、すべての強制を是としているのではない。
それは誰のための強制かではっきり分かれる。
対象たる我が子、我が生徒、我が部下のためのそれなのか、自分のため、自分の都合、「自己満足」のためのそれなのかである。
「人間力」を出させるための強制か、「道具力」を出させるための強制かである。

「人間力」、中でもそれが枯れ果てている人のそれを芽生えさせるには、当事者からすれば、暴力的とでも感じられるほどの他力を要する。
それこそが、その当事者にとっては至高の助けになるのである。

もちろんそれが、人びとをして切れさせ、さらにだめにさせてしまうリスクもある。
助けになるかその逆になってしまうか、それは紙一重のことかもしれない。
それを分けていくのは、一に「上」の人間としての有り様にかかっている。
(人間力をフリーズさせているものの正体 藤田英夫 シンポジオン 308ページより引用)

たしかに人間は意欲的、創造的、生産的に生きていきたいと思っている。
反面、楽したい、さぼりたい、現状維持に甘んじたいという気持ちもある。
両者が綱引きをしているようなものだ。

現在に満足してしまうと、それ以上に挑戦することはしなくなる。
苦労や困難に立ち向かうことはしなくなる。
消費的欲求がますます強くなり、他に依存していくようになる。
そこには生の喜びは感じられない。
ただ生きながらえているだけで、精神的には耐え難い苦しみが発生する。

それを打ち破るには、他からの刺激である。
いわゆる強制力がそのきっかけとなる場合があるということだと思う。
自分の自己満足や征服欲、コントロール欲求を満たすために「かくあるべし」を相手に押し付けることは厳に慎まなければならない。
相手の「人間力」を目覚めさせるための強制力は、ぜひとも発揮させなければならない。
何年か経って、あの時のあの人の強制力を持った言動で、今の自分があると感謝されるような強制力を発揮していきたいと思う。





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Last updated  2020.01.11 07:57:08
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