森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.06.16
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私は森田理論の認知度が社会に浸透してくれることを願っています。
多くの人の幸せづくりに役立つからです。
ところが現実は、風前の灯火のような寂しい状況になっています。
今日はこの原因と打開策を考えてみたいと思います。

森田先生の時代は、社会の傾向としては、立身出世を夢見て、都会で一旗揚げて、故郷に錦を飾りたいという人が多かった時代です。
そうなれない自分に対して、常に葛藤を抱えて苦しんでいた時代です。
大きな夢や目標を持っていた人たちが、神経症で苦しんでいたのです。

「形外先生言行録」という森田先生の追悼集などを拝見すると、その肩書は実に驚くほと立派な人が多い。実業家、官僚、大学教授、医者、教師、有名大学の学生などがその対象であった。
つまりその当時神経症で苦しんでいた人たちは一般大衆ではなかったということです。
勉強ができて、将来を嘱望されていたその時代のエリートたちであったということです。

一般庶民はその日一日をいかに生き延びていくのかに必死で、神経症で苦しむという時間の余裕はなかったということです。特に戦時体制下と終戦後は生き延びることに力を入れざるを得ませんでした。そういう時代は、神経症で苦しむ人は少なかったのです。

時は移り一億総中流社会と言われる高度経済成長の時代がやってきました。
1960年から1990年始めの日本は、飛ぶ鳥を落とすような経済発展を遂げてきました。
そして日本は世界第2位の経済大国に躍進しました。
多くの国民の生活が豊かになってきたのです。
すると精神的にもゆとりが出てきました。
こういう社会環境が整って、神経症のすそ野が一般大衆まで広がってきました。
私たちの自助組織も参加人数が多すぎて、まともな学習会が開催できない状態になりました。
どんどん根分けをして集談会の数を増やしてきました。
会員もどんどん増えてゆきました。森田理論学習の大衆化現象が起きたのです。

ところが、1993年を頂点にして森田の自助組織はどんどん衰退の一途をたどっています。
パブルがはじけたのが1990年ですから、その後3年間は何とか持ったのです。
我々の自助組織もどんどん参加者が減少しています。
そして組織の維持に支障きたすほどの状況に陥っています。
これは森田理論があまねく一般大衆に支持される時代は過ぎ去ったということです。

その背景は経済の低迷です。
その後日本はデフレ経済に陥り、未だに回復できていません。
主だった企業は日本に見切りをつけて中国などに目が向いています。
中国のGDPの増加は日本、アメリカ、ドイツをはじめとした先進国の投資によるものです。

日本のデフレの進行は、そのまま国民所得の減少と結びついています。
1980年頃は、年収は500万円から600万円、700万円台の人が普通でした。
今はどうでしょうか。派遣社員や非正規社員の場合は200万円から400万円台の人が普通です。賞与もない。昇給もままならない。
これでは結婚もできない。仮に結婚しても子供を産むこともできない。
パートや派遣社員、臨時社員が主力になり、その日一日をどう生き延びていくのかが最大の国民の関心事になっているということです。これはあなたの責任ではありません。
構造改革、民営化、自由化、規制緩和、グローバル化を進めた政治家の責任です。
政治家の責任は大きい。本来ならば責任を取ってもらわなければならないところです。
現在も反省するどころか、日本の成長は中国経済に頼るしか道はないと言った状況です。
親中派、媚中派の国会議員や経団連、御用学者と言われる人たちは、日本国民をどん底まで叩き落すつもりなのでしょうか。日本のGDPの85%は内需で支えられているということを忘れているとしか思えない。

私たちは、バブルがはじけて数年のうちに、生活をどう維持していくのかが最大の関心事で、精神的に悩む余裕がなくなってきたのです。我々の自助組織では高齢化が進行しています。
現在の状況は、以前に森田理論の恩恵を受けた人たちが、その余韻に浸っているようなものです。我々がいなくなった後を思うと胸が痛みます。

経済が低迷し、希望や夢がなくなると、覇気がなくなります。
自立や夢や希望を口にすることさえはばかられる時代になってきたのです。
それとともに不安の中身が昔とはかなり変わったと言えます。
昔、森田に頼っていた人たちは、不安の中身を即答できる人が多かったのです。
現在は自分の悩みを即答できる人は少なくなっています。
また即答できても、そんなに深刻さを感じられない。

輪郭のはっきりしない ぼんやりとした将来不安、あるいはぼんやりした対人関係に関する問題 を抱えている人が増えています。しかもその不安が慢性化している。
つまり全体としてみると、昔と比べて不安の程度が軽くなっている。
不安が軽いということは、欲望も小さくなっているということです。
森田理論の適応者はご存じのように、 生の欲望が強い人 というのが一つの条件になっています。
肝心の生の欲望が少ないというのは、森田理論との親和性は薄いと判断せざるを得ないのです。

さてこのような時代において、森田療法を次世代に引き継ぐことが可能なのでしょうか。
神経症の治療としての森田療法の存続は大変困難になると思われます。
人生観の確立のための森田理論の継承はどうでしょうか。
この方面の将来性は前途洋洋だと考えています。
またそうならないと、人類が絶滅に近づいていくとみています。

神経質者の生き方としての森田理論は、学校教育や社会教育の必須科目として学ぶ価値が十分にあります。森田理論を学ばずして、人生哲学を身につけることは難しいと思います。
森田理論は時代を越えて普遍性のある理論ですので、未来永劫後世に伝えていかなければなりません。森田の自助組織はそこに特化した活動を期待されているものと考えています。

現在の状況では、森田理論学習を自然消滅させないで、後世に受け継ぐことを最優先させて取り組みたいと考えています。そして変化の波を待ちたいと思います。
森田理論の理念が必要とされる時代は、すぐにやってくると思っております。





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Last updated  2021.06.16 17:47:42
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