森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.08.22
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生活の発見会発行の「学習会シリーズ」という本に次のような説明があります。

集談会のメンバーで「治った」と明言する人にあまりあったことがないという話をしましたが、こうして「治る」という意味を考えてくると、
いずれにしろ、森田の「治る」ことの究極の目標は「人間としての成長」です。

私たちは「神経症が治る」という言葉をよく使います。
この方は、この表現は適切ではないといわれています。
「あまり気にならなくなった」という表現がよいのではないかと説明されています。
私もこの考えに賛同します。

不安神経症の場合は、心機一転、頓悟の経過を経て、突然に治るということが起きます。
確認行為を続けている人も、突然強迫行為をやめた瞬間から症状から解放されます。
神経症が治るというのは、この人たちのことを言うのだと思います。

一般的に強迫神経症の人は、スパッと竹を割ったような治り方はしないものです。
よくタマネギの薄皮をはがすような治り方をするといわれます。

たとえば、対人恐怖症の人の場合で説明します。
職場で孤立して、仕事が手につかなくなります。
朝目ざめても職場に行くことができない。
不安や恐怖に押しつぶされるようでイライラします。
休職して、薬物療法、認知行動療法、カウンセリングなどを受けます。
その途中で森田療法にも出会いました。一筋の光明が見えた瞬間です。
森田理論の「不安を抱えたまま、なすべきことに手を付けましょう」という魔法の言葉に促されて、早速実践課題に取り組みます。
このことに愚直に取り組んだ人は、1年もたたないうちに、蟻地獄の底から地上に這い出しています。仕事に対して前向きに取り組んでいるので、職場の仲間から評価されるようになります。
この状態は普通の人と何ら変わらないわけですから、一般的には治ったといえると思います。
これで大丈夫と思う人は結構なことです。

しかしこの段階は表面的に治ったかに見えるだけで、対人恐怖のもとになっている不安や恐怖は依然として続いている。積極的に行動できるようになると、悩みはますます増えてくる。
対人恐怖症に伴う生きづらさは一向に解消されていない。
ここで気分本位になって、行動力が鈍ってくると、もとの状態に戻っていく。
神経症に苦しんでいたころよりも、精神的な葛藤がより深刻になってくる場合があります。
つまり症状のぶり返しが起きてくるのです。
プロ野球の打率と同じで、調子が良い時は高い打率を維持できるが、スランプに陥ると打率はどんどん下がっていくのです。治るということに自信をなくしてしまいます。
他人から見ると症状を克服したように見えるが、本人としては対人恐怖症を乗り越えたとは思えないのです。

この段階で苦しんでいる人は次の段階に進むことが大事になります。
それは森田理論学習の深耕によって、対人恐怖症は治すということはできないということの自覚を深める段階です。どんな手段を用いても、対人恐怖症は治すことはできない。
人を見ると、自分の安全をおびやかし、精神的に自分に危害を加えるのではないかと思う感情が泉のようにこんこんと湧き出てくる。これを食い止める手立てはないと観念する段階です。
ここまで到達した人は、対人恐怖症から解放されます。

しかしこれは嫌な感情に完全服従するということですから、乗り越えるハードルは高いです。
でも結果的に乗り越えたかのような、状況にまで持っていくことはできる。
それは何かというと、対人的な不安や恐怖はそのままに放置して、自分のなすべきことや挑戦してみたいことにどんどん手を出していくことです。人生を楽しむということです。
気分本位になって逃避しない。不安や恐怖を取り除こうとしない。
そんなことに関わるよりは生活をもっと豊かにしていこう。
興味や関心のあることに目を向けて、人生をとことん楽しもうというふうに考えて行動するのです。

ここでは神経症を治すことをやめた人が、結果的に神経症から解放されるというパラドックス現象が起きているのです。神経症を治すという言葉に引っ掛かっている人は、いつまでも治らない。治すという言葉を忘れて生活していたという人が、結果として神経症を克服しているということです。これが、神経症は治るのではなく、「気にならなくなった」という意味です。
治るという言葉に変えて、「神経症が気にならなくなる」「神経症に振り回されなくなった」という方向性を目指したいものです。





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Last updated  2021.08.22 06:20:04
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
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