ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年02月23日
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カテゴリ: 社会系エッセイ
父の棺の前で久しぶりにいとこと話し込んだ。

母の実家はかなりオープンな家で、昔ながらの農家だったのだけれど、とにかく人が多く、人の出入りが多い。
プライバシーもへったくれもないような家なのだけれど。
その実家は結局、末の弟が継いでいて、たしか四男坊である。
その奥さんがその状況にも平気なタフな女性で、昔からすごい人だなと思っていたのだけれど、よくよく今回聞いて見ると、そもそもそのHおばさんの実家もまた、人の出入りの激しい家で、仕事柄多くの人足たちに食事を用意しなければならないような状況だったらしい。
つまり実家と嫁ぎ先の状況がそっくりだったわけで、だからこそ違和感なくあの家になじめたのだなと納得した。

このHおばさんがなかなか料理上手で、昔よく母が実家に行くと、このおばさんの作った五目寿司をもらってきて、私も食べた記憶があるんだけれど、たっぷりの料理を作ることがいやでなく、料理好きのおばサンなのである。

それで、話をしていた、いとこのKちゃんは、ずっとその母の実家に住んでいて、おばさんたちと一緒に住んでいたので、今回そのあたりの裏話を聞くことができたんだけど。

Hおばさんは料理うまいけど、その前にいた母の妹の「Tおばさんだって料理うまいよね」っと聞いたら、Kちゃんが「いやTおばさんはそうでもなかった」と言うことなのである。
ちなみにTおばさんは母の妹。
つまり、Hおばさんが嫁に来てからがらっと食事が変わって、料理がよくなって初めてシチューなんかの洋物が出てくるようになったというのである。

じゃあその前はどうしていたのかと言うと、コロッケとかいろいろお惣菜を買ってきて食べていたことも多いというのである。
実際、農作業に忙しかったんだから、ご飯なんかそんなに気合いれて作っている暇なんかないのである。
私は長年母の料理は下手だと思っていたのだけれど、そもそも実家で習っていないし、当時はほとんど惣菜で済ませていた事を思えば、無理のない話である。
よくよく考えればさすがの母も煮物なんかは結構うまい。
下手な母でも、長年作っていれば腕は上がるものなのである。

そういえば私のダンナに聞いた話でも、今でこそ姑の煮物なんかはかなーり上手いのであるけれど、ダンナが子供の頃はやはり農作業が忙しくて、「できあいの惣菜が多かったよ」と言う話を聞いた事があった。
つまりまともに料理をするようになったのなんて、時代的にも、日本の社会全体で見ても、やはりごく最近の話なのである。

時代の流れで、経済的な余裕もできたし、都会での農業もさすがに衰退し、農業よりも畑は駐車場やマンションに変わり、すでに農家の面影もないという状況なればこそ、ということであるらしい。
主婦がきちんと料理をするなんて言うのはごく最近の事なのである。
あるいは、昔ならごく上層部の余裕のある家庭の話なのである。

だから、女は料理を作るものだとか、料理を作るのがうまいはずだとか、お袋の味、なんて言うものはどこのどいつが作った神話なんだかわからないけれど、ほとんどただの思い込み、価値観の押し付けに過ぎないんじゃないかと、ことここにいたってつくづく考えてしまった。

私の周りの女性陣だって本当に料理の上手な人にはなかなかであわない。
友人Aは、「ダンナに作った弁当が後ですごくまずかったとダンナに言われた」と話してくれたし、友人Bは「最近仕事でカレーをいっぱい作ってるから、カレーは上手になったわよ」とか、「仕事柄料理もしなきゃなんないんだけど、あんまり得意じゃないのよねー」とか言う。
友人Cは「餃子なんて自分で作った事ないよ」と言ってたっけ。

主婦が子供のいない昼間に集まってランチするのだって、お互いの家に行って自前の料理を作るような面倒な事は絶対やりたくないという暗黙の了解の上なんだしね。

私だって、本気で料理を作ったのは結婚してからで、その後十数年かかってやっといくらかレシピも増えたけど、週に一度はサボりたいと思う。

だから、日曜の昼間にテレビで、どこかの公園で、通りがかりの若いお嬢さんを捕まえて料理を作らせたら、とんでもない料理が出来上がって、みんなであきれ返るというシチュエーションの番組があるけれど、その番組の前提には「女は料理ができるはずで、イマドキのオンナノコはしょうがないね」というテーマで構成されているんだけど、そんな設定は真っ赤な嘘もいいところで、女なんてよっぽど料理好きか、しっかりした家庭のしっかりした母親に育てられているか、早くに母親を亡くして仕方なく一家の家事を請け負っていると言うようなオンナノコでもない限り料理なんてできないのが当たり前。

だから、この番組を見たら、これから結婚する男の人は新妻がとんでもない料理を出してくるんだからよーく覚悟しておいたほうがいいよと言う事を認識すべきなのである。

そして新婚早々スペシャルに上手な料理をだしてくれる奥さんだったら、宝くじにあたるよりすごいんだから、自分の幸運を天に感謝してほしいと思う。

ついでに言えば、自分ちの奥さんが料理が下手でも、世の中そんなものなんだから、そのくらいで奥さんの評価をさげるなんてとんでもない話だし、人並みにおいしい料理をつくってくれる奥さんなら感謝していいと思うよ。

だから奥さんたちも料理が下手ぐらいでダンナに悪いなんて思わないで、もっと自己主張してもいいんじゃないかと思う。

ちなみに私の料理の腕はふつーである。と、思います。

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最終更新日  2006年04月10日 07時52分12秒
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