Nonsense Story

Nonsense Story

2005.07.10
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カテゴリ: 童話もどき



「ぼくは男の子だから大丈夫だよ! 早く!」
「何言ってるの! 今は子供の誘拐に男の子も女の子もないんだから! あんたも一緒に逃げなきゃ」
 ミツル達が言い合っている間に、男がむくりと起き上がった。
「ちょっとちょっと、きみ達、何を言ってるんだい?」
 イタタとお尻を掻きながら、男がミツル達の方へ寄ってくる。ミツルは咄嗟に男に飛び掛って、お姉ちゃんに近づかせないようにした。
「ミツル!」
 生温かい風を切り裂くようなお姉ちゃんの悲鳴が上がった。
「おじさん、子供を連れて行く悪い人なんだろ! 連れてくならぼく一人にしてよ! お姉ちゃんは逃がしてあげて!」
 ミツルは男のビール樽みたいなお腹にしがみつくようにして叫んだ。すると突然、そのビール樽が破裂寸前みたいに振動した。
 ミツルがびっくりして顔を上げると、男はブブーッとふきだしていた。ビール腹の振動は見る間に大きくなり、それにあわせて、がっはっはという野太い声が、ミツルを揺さぶる。
 男はたまらないというように大笑いしていたのだった。
「はっはっはっは。坊や達は、おじさんのことを犯罪者だと思ってるんだね? そりゃケッサクだ! あっはっはっは」
 ミツルは男のお腹から手を離して、笑い続ける男をポカンと見上げた。
「おじさん、悪い人じゃないの? ぼく達をさらって行こうとしてたんじゃないの?」
 ミツルが首をかしげて訊ねると、男は笑いすぎて出てきた涙をぬぐいながら、ごめんごめんと謝った。
「怖がらせてしまってごめんよ。おじさんは、坊や達が誰か悪い人にさらわれたりしないように、見張りに来たんだよ」
「見張りに?」
「うん。僕はね、すぐそこの駐在所の人間なんだ」
「駐在・・・・・・? じゃあ、おまわりさんなの?」
「うん、そうなんだ」
 男は懐中電灯を拾い上げると、二人に向かって微笑みかけた。


つづく








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Last updated  2005.07.11 00:39:54
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ふーたろー@ Re[5]:奇妙な隣人 9.5.猫 3(06/11) あやきちさんへ 返信大変遅くなって申し…
あやきち@ Re:奇妙な隣人 9.5.猫 3(06/11) お久しぶりです、お元気でしょうか? 今…
ふーたろー5932 @ ぼっつぇ流星号αさんへ お返事遅くなりまくりですみません! こ…
ぼっつぇ流星号α @ いやー 猫がいっぱいだーうれしいな。ありがとう…
ふーたろー5932 @ 喜趣庵さんへ お返事遅くなってすみません! 本当に元…

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