文春新書『英語学習の極意』著者サイト

文春新書『英語学習の極意』著者サイト

Aug 15, 2009
XML
3年ぶりの 「ダンス オブ ヴァンパイア」 帝劇公演。
演出も舞台芸術も進化し、分かりやすく、かつ華麗になった。その辺のことは、ブログ後半に。

このミュージカルで山口祐一郎さんが歌う 「抑えがたい欲望」 は、吸血鬼のクロロック伯爵が、愛する女性のいのちを奪い続ける悲しみを歌い上げたもの。

ぼくの大好きな曲で、カラオケボックスにCDプレイヤーを持ち込んで歌っていたことがある。

この歌を歌ってしまうと、カラオケボックスでオーダーできる歌謡曲を歌うのがバカらしくなって、他人とカラオケに行っても専ら聞き役に回っている。

ぼくの意固地さ、好みにうるさいところが、こういうところに出る。

Professor_Abronsius.jpg

さて、吸血鬼研究の大家、アブロンシウス教授。

3年前に市村正親さんがみごとに演じた役を引き継いだ石川 禅さんは藝の広い人なので、どんな教授が誕生するか、今回観劇のいちばんの楽しみだった。

市村アブロンシウスの濃厚さに代わって、フットワークの軽い教授が完成していた。
さすが石川 禅さんで、教授の皮膚に禅さんの血がとくとく流れているのが聞こえた。



舞台美術の大きな変化は、クロロック伯爵の城のホール。

3年前の帝劇公演は簡素なデザインだったが、ヨーロッパ諸国の公演では城のホールはゴチック様式のごてごて感に満ち、城に住まう吸血貴族たちも華麗なコスチュームで登場する。

今回の帝劇公演は、城のホールに多数の肖像画を飾り、大道具の階段も電飾で飾るなど、ウィーン公演のCDの解説に出ている写真に近づいた感じだ。

吸血貴族たちのコスチュームも華麗さを増して、娘サラがあこがれるのにふさわしいお城の舞踏会になった。

演出の変化をいくつかご紹介しよう。

クロロック伯爵の初登場のシーン。
3年前には舞台用のクレーンに乗って登場なさり、ミュージカルを観なれていなかったぼくは 「美川憲一だ!」 と思ってしまった。

今回は登場シーンの直前に客席中央通路を静々と歩きながら舞台中央に上がり、客席に背を見せたまま歌いだすという、落ち着いた演出。

もうひとつ。
劇の最後、吸血鬼が総出でダンスが始まるところ。

3年前にはストーリーが唐突に終わり、あれよあれよという間に吸血鬼が総出で踊りだし、あれ? あれ? という唐突感があった。

今回は、ストーリー最後の悲劇をゆっくりと間をもたせながら演じさせ、そのいっぽう悲劇の進行を知らぬアブロンシウス教授が自らの業績を誇るフィナーレ前半を歌い終え、

舞台上の3人が客席の中央通路を走りつつ退場することで、ストーリーが終結したことを形で見せつつ、
舞台はすばやく吸血鬼ダンサーが埋め尽くす。

見ていて、納得感のある演出だった。

Herbert+Koukol.jpg

クロロック伯爵に仕える、言葉が不自由なせむしの下男クコールの駒田 一さん(左) は、その怪演と幕間の掃除姿ですっかり夏の帝劇のアイドル。

クロロック伯爵の息子ヘルベルトの吉野圭吾さん (右) は、3年前のアドリブ感あふれる軽やかなステップに代わり、今回は練られた台本に沿って演じて確実に笑いを取る。(演出に変化がありました。)

みんなが寄り合いつつキャラクターを育てているのが感じられる、演劇の楽しさ。

Alfred+Sarah_before.jpg

サラ役の大塚ちひろさん。
3年前にはひたすら可憐な女性と見えたのが、すっかり肝が据わってアルフレートをいつも通り越し、結局のところ劇の最後の悲劇でようやくアルフレートはサラの心に近づくことができるのですね。

だから、最後の悲劇は究極のハッピーエンドかもしれない。

そういう深読みができるのが、この作品の楽しさ。



カーテンコールで再び客席総立ちで
「真っ赤に流れる血が欲しい
モラルもルールもまっぴら……」
とフィナーレを歌うとき、
「ミー&マイガール」 のランベス・ウォークみたいに観客のための振り付けが加わったのも、3年前にはなかった。

そして、劇場ホールに出ると

Alfred+Sarah_after.jpg

あれ?
壁に貼ってあったアルフレートとサラの肖像写真の口もとが……。

(8月26日まで帝国劇場で。そのあと9月2日~27日は博多座で。)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Aug 16, 2009 12:32:04 AM
コメント(0) | コメントを書く
[映画・演劇(とりわけミュージカル)評] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

フリーページ

泉ユキヲの観た・読んだメモ 44


観劇・読書メモ 1


観劇・読書メモ 2


観劇・読書メモ 3


観劇・読書メモ 4


観劇・読書メモ 5


観劇・読書メモ 6


観劇・読書メモ 7


観劇・読書メモ 8


観劇・読書メモ 9


観劇・読書メモ 10


観劇・読書メモ 11


観劇・読書メモ 12


観劇・読書メモ 13


観劇・読書メモ 14


観劇・読書メモ 15


観劇・読書メモ 16


観劇・読書メモ 17


観劇・読書メモ 18


観劇・読書メモ 19


観劇・読書メモ 20


観劇・読書メモ 21


観劇・読書メモ 22


観劇・読書メモ 23


観劇・読書メモ 24


観劇・読書メモ 25


観劇・読書メモ 26


観劇・読書メモ 27


観劇・読書メモ 28


観劇・読書メモ 29


観劇・読書メモ 30


観劇・読書メモ 31


読書メモ 32


読書メモ 33


34 観た・読んだメモ


35 観た・読んだメモ


36 観た・読んだメモ


37 観た・読んだメモ


38 観た・読んだメモ


39 観た・読んだメモ


40 観た・読んだメモ


41 観た・読んだメモ


42 観た・読んだメモ


43 観た・読んだメモ


購読雑誌リストアップ


泉ユキヲの美術館・画廊メモ 了


美術館・画廊メモ 1


美術館・画廊メモ 2


美術館・画廊メモ 3


美術館・画廊メモ 4


美術館・画廊メモ 5


美術館・画廊メモ 6


美術展・画廊メモ 7


美術館・画廊メモ 8


美術館・画廊メモ 9


美術館・画廊メモ 10


美術館・画廊メモ 11


美術館・画廊メモ 12


美術館・画廊メモ 13


美術館・画廊メモ 14


美術館・画廊メモ 15


美術館・画廊メモ 16


美術館・画廊メモ 17


美術館・画廊メモ 18


美術館・画廊メモ 19


美術館・画廊メモ 20


美術館・画廊メモ 21


美術館・画廊メモ 22


美術館・画廊メモ 23


美術館・画廊メモ 24


美術館・画廊メモ 25


美術館・画廊メモ 26


美術館・画廊メモ 27


美術館・画廊メモ 28


美術館・画廊メモ 29


美術館・画廊メモ 30


美術館・画廊メモ 31


美術館・画廊メモ 32


美術館・画廊メモ 33


美術館・画廊メモ 34


美術館・画廊メモ 35


美術館・画廊メモ 36


美術館・画廊メモ 37


美術館・画廊メモ 38


泉幸男のブックマーク


トランクルーム 1


トランクルーム 2


旧ホームページ掲載の記事から


中国詩人 牛 漢 の作品「半身の木」


松山市周辺の新たな鉄道整備案


伊澄航一俳句館


南川 航 詩集『ハイウェイの木まで』


「平成かなづかひ」のご説明


ぼくの小学一年生ケッサク作文


プロフィール

Izumi Yukio

Izumi Yukio

お気に入りブログ

レビュー​『ベルナデ… New! ITOYAさん

月一バンコク 20… New! masapon55さん

大掃除 New! Urara0115さん

長男さんからのリク… New! ヨンミョン1029さん

埼玉県 所沢の駅ビ… New! アップラウンジさん

イスラエル・ヒズボ… New! seimei杉田さん

11/25「ぽかぽか」の… New! ききみみやさん

喉が痛いのに「濡れ… 福禄太郎さん

早坂暁の傑作中の傑… モイラ2007さん

廣田美乃個展「ENTRA… ギャラリーMorningさん

コメント新着

リベラリスト@ Re:特定アジア、「特亜」という用語(11/04) 日本の繁栄を僻んでる? 今では日本が中国…
通りすがり@ Re:「ございます」 を 「御座います」 と書く若い人たち(02/03) 私は30代後半ですが、中学生の頃から手書…
名無し@ Re:「ございます」 を 「御座います」 と書く若い人たち(02/03) 嫌味ったらしい文章ですね、こんなメール…
佐々木@ Re:リニア新幹線の迂回ルートごり押しは、長野県の恥だ(06/21) 11年越しの返信を失礼します。 現在、静岡…
背番号のないエース0829 @ 第二次世界大戦 映画〈ジョジョ・ラビット〉に、上記の内…

バックナンバー

Nov , 2024
Oct , 2024
Sep , 2024
Aug , 2024
Jul , 2024
Jun , 2024
May , 2024
Apr , 2024

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: