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僕が初めて降り立った海外の地は旧東独のLeipzigだった。当時の東独は、町に余計な色が無く、外国人向けのドルかドイツマルクしか使えない高級ホテルの中でさえ、清楚で静かだった。まだ暗い朝、ホテルの窓から見える、車が殆ど通らない大通りを仕事に向かう人が歩く姿に、18/19世紀にタイムスリップをしたような錯覚を感じさせられた。トーマス教会の壁の石から聴こえる足音の静寂な余韻は、存在する音に重みを与えていた。バッハについて特別な思い入れがあった訳ではない僕だったが、彼の作品が、時代そして街から与えられた彼の大きな使命だったように感じさせられる空間だった。今、CDから流れる音楽を聴き、その時の事をふと思い出した。前に、ブログで紹介した、日本で録音したエル=バシャ(Abdel Rahman El Bacha)のバッハ平均律クラヴィーア曲集第1巻のCDが何日か前に完成し、ようやく静かに、集中し、今、自宅のステレオで視聴できた。ポリフォニー(多声)のピアノでの演奏の意味を改めて感じさせられるパフォーマンスは、まるでバス、テノール、アルト、ソプラノの人の声のような錯覚さえ受ける。彼が、何故この収録にベヒシュタインをチョイスしたのか、静かに彼の音楽に向き合うと理解できる。全ての瞬間の音が生み出すハーモニーと、旋律の絡みの変化の奥行きの深さに感動する。人間は凄い。。。CDの紹介レーベル:TRITON, CD No. :OVCT-00077J.S Bach 平均律クラヴィーア曲集 第1巻(24の前奏曲とフーガ)アブデルー=ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)使用ピアノ:C.BECHSTEIN D-280発売元 :オクタヴィア・レコード
2011.01.30
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先日、川崎市多摩区役所のロビーで内藤晃さんのコンサートが行なわれた。プレイエルのピアノを会社から運ぶ事になり、調律に伺った。ロビーはコンサートを想定して製作された訳ではないだろうが、空間が広く、石の壁の響きの魅力に包まれ、調律ができた。教会の中、お城の中の響を思い出した。コンサート会場は、お子様から高齢者まで、広い年齢層の方々200人以上の方々に埋め尽くされ、コンサートホールの中とは違う、やはり教会の中で感じるような雰囲気に満たされていた。特に、内藤さんのピアノの響きが小さくなった時、遠くから聞こえる幼児の鳴き声と、聴衆から放たれる響きを聴きたいという意思の緊張感が重なり、独特な雰囲気を一層強くしていた。コンサート終了後、内藤さんの周りに集まった方々の表情が演奏会の成功を物語っていた。ホールの中以外でのコンサート、特に政治を司る市庁舎の中と言うのは、人の集いを促し、意見を交換する機会を提供できる訳なので、非常に意義深い物ではないだろうか。町作りの手段として、他の行政でもこのような場を積極的に作ってもらいたい。共有の感動、知恵の交換が、我々を覆う閉塞感を打ち消してくれるような気がするのだが。。
2011.01.22
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