お隣さんの国:韓国からの手紙

お隣さんの国:韓国からの手紙

2004/10/15
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カテゴリ: 発達障害



「まあ、こんなところで会うなんて」
とか言って、向こうはニコニコしている。

はんらは、顔に見覚えがない。
怪訝な顔をしていると、そのアジュンマが言った。
「私は あなたを知っているんだけど、あなたのほうは、私の顔を知らないのね。子どもたちが同じクラスだったんだけど。」
「誰のお母さんなんですか?」
「ムンギョンの母です。」

ムンギョンのお母さん!!!
ムンギョンのお母さんとは、以前、電話で話したことがあった。


コーちゃんが3年生にあがるとき、はんらたちはテグから天安市に引っ越して来た。
しばらくすると、コーちゃんが
「ムンギョン、ミンジョン、ユナの 女3銃士が、ボクを叩いたり 悪口言ったりする~!」
と言い出した。

まあまあ、女の子が男の子を叩くとは!!

そんなある日、ムンギョンのお母さんから電話があったのだ。
「うちのムンギョンが、お宅のコーちゃんが嫌がらせするのでやめてほしい、って言ってるんですけど。」
という電話だった。

はんらは、こういう電話や苦情には慣れている。
というのも、コーちゃんは見た目は全く普通の子どもなのだが、発達障害があって、コミュニケーションの取り方が下手なので、よく誤解を受けたりトラブったりしているからである。

うまく表現ができなくて、先に手が出てしまったり、言ってはいけないようなことを言ってしまったり、周りの雰囲気が読めなくて 場違いなことをしていたりしてしまうのだ。

日本では
「子どもの喧嘩に親が出て行くなんて」
という風潮があるかもしれないが、韓国では、子どもの喧嘩が親の喧嘩に発展する。

韓国人の親は、自分のかわいい子どもに何かあると、黙ってはいない。
だから、はんらも よく あちこちの親御さんから、いろんなことを言われている。

その時の対処が難しい。
「自分の子どもが被害者だ」
と思っている韓国人の親は、たいてい興奮して熱くなっている。

また、韓国ではまだ「発達障害」というものが あまり知られていないので、
「発達障害があって・・・」
という一言で理解してもらうのは、難しい。

その上、はんらの韓国語にも問題がある。
意志疎通に困りはしないが、微妙なことを話し合うには、実力が伴わない。

コーちゃんは 悪者ではない。
ただ、悪気がなくても 友達に不快感を与えてしまうことがあることを 理解してもらうには、はんらの下手な韓国語で電話で話していては 無理だ。

でも、仕方ない。

はんらは、その電話で、ムンギョンのお母さんにこう言った。
「うちの息子は、お宅のムンギョンに いつも叩かれてる、って言ってるんですけどね。」

「え?! うちのムンギョンが?! 叩いているですって??」
電話の後ろで、ムンギョンが大声で弁解したり、コーちゃんの悪口を言っているのが聞こえて来た。

「お宅の息子が嫌がらせをするので、うちのムンギョンが叩いちゃったんじゃないでしょうかね~?」
とムンギョンのお母さん。

「ムンギョンはうちの息子が嫌がらせをするから叩いたと言い、うちの息子はムンギョンが叩くから 嫌がらせしたと言っている。
お互い、自分の子どもの言うことは正しいと思うから、こうして言い合っていても仕方ないんじゃないか。
うちの息子には、ムンギョンに嫌がらせしないように言っておくので、ムンギョンにもうちの息子を叩かないように言っておいてほしい。」
ということで、その時の電話は終わった。

その後は、コーちゃんの話によると、コーちゃんもムンギョンも、お互いに関わらないようにしているということだった。

4年生のクラス替えのとき、コーちゃんは
「どうか、女3銃士と一緒のクラスになりませんように」
と願っていたが、ムンギョンとは同じクラスになった。
しかし、3銃士はみんなバラバラのクラスになったらしい。

そして、2学期になって、ムンギョンは転校して行った。


「ムンギョンのお母さん! お引越ししたんじゃなかったですか?」
とはんらが聞くと
「新しいマンションで、周りに店が少ないので、バスに乗って市場まで よく出てくるの。」
だそうだ。

「ムンギョンは活発だから、新しい学校にもすぐなじんだでしょう。」
と聞くと、転校先でも 早速クラスの副会長に立候補して、副会長になったそうだ。
「じゃじゃ馬で困っている。」
と苦笑していた。

「コーちゃんのお母さん、故郷が懐かしいでしょう。大変ですね。」
などと、いろいろ話しているうちにバスが来て、ムンギョンのお母さんは、名残惜しそうに去って行った。

一時は憎たらしいと思ったことのある(^^)ムンギョンのお母さんだったが、こうして話してみると、実にいい人であった。

結局、はんらは コーちゃんの悪い面も知っているけど、いい面もいっぱい知っている、他の人や友達に、コーちゃんのいろんな面を理解してもらいたい、と思っているように、ムンギョンのお母さんも、他の子のお母さんも、みんなそんなふうに思っているんだろう。

じゃじゃ馬のムンギョンも、一風変わったコーちゃんも、わんぱく坊主も引込み思案も みんなが 未来の世界を作っていく ひとりひとりである。

個性のあるみんなが、お互いの個性を尊重し、理解し合って、よりよい世の中を作っていけますように、と思うと同時に、ムンギョンのお母さんが引っ越していく前に、親しく付き合えていたらよかったなあ、とも思った。





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Last updated  2004/10/15 05:10:54 PM
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はんら @ Re[1]:喫茶どんぐり(09/26) New! 幹雄319さんへ 私も近かったら常連さんに…
幹雄319 @ Re:喫茶どんぐり(09/26) New! お店もかわいいし、美味しそうですね。 行…
はんら @ Re[1]:喫茶どんぐり(09/26) New! maki5417さんへ 日本の喫茶店の軽食はい…
maki5417 @ Re:喫茶どんぐり(09/26) New! チキンライスとかドリアとか 美味しそう…
はんら @ Re[1]:喫茶どんぐり(09/26) New! faithさんへ ヨン様の頃にも一斉に増えた…

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