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『恩讐の鎮魂歌』に続く御子柴礼司シリーズ第4弾。 御子柴が幼女殺人容疑で逮捕され、関東医療少年院に入院してからおよそ30年、 全く顔を合わすことのなかった妹・梓が、突然法律事務所に姿を現す。 母・郁美が、父の他界後に再婚した成沢拓馬を殺害した容疑で逮捕されていた。 母の弁護をすることになった御子柴は、犯行現場や事件関係者を訪ね歩くと共に、 御子柴が逮捕された後の家族の足跡を辿り、その過酷な実態を知ることになる。 元科捜研・氏家京太郎の助力を得て、法廷の場で成沢拓馬の陰謀を暴き出した御子柴は、 最終弁論閉廷後、郁美から父・園部謙造の死の真相を聞かされたのだった。***このシリーズで初めて読んだのが『復讐の協奏曲』。以後、シリーズを刊行順に読み進めてきましたが、これで文庫既刊のお話が全て繋がりました。単行本は、既にシリーズ第6弾『殺戮の狂詩曲』が刊行されています。
2024.02.25
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推しがファンを殴って炎上するも、推し活を続ける女子高生の姿を描いたお話。 しかし、推しはラストコンサートを最後に、芸能界を引退してしまいます。 本作は、第164回芥川賞受賞作品。 作者の宇佐見りんさんは、21歳での芥川賞受賞となり、 これは、綿矢りささん、金原ひとみさんに次ぐ歴代三番目の若さだとか。 そして、2021年本屋大賞では9位を獲得しています。『この世の喜びよ』に比べると、スイスイ読み進めることが出来ましたが、言葉遊びもストーリーもライトなものでした。
2024.02.24
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私にとって初めて読む一穂ミチさんの作品である本作は、 掌編を含む7つのお話を集めた短篇集で、第43回吉川英治文学新人賞受賞作。 この作品で、2022年第19回本屋大賞第3位を獲得した一穂さんは、 『光のとこにいてね』で、2023年も第20回本屋大賞第3位を獲得しています。 ***『ネオンテトラ』は、不妊と夫の浮気に悩む34歳の女性が、中3の姪の男子同級生と出会い、家族に虐待される彼に手を差し伸べ、姪が出産した彼の子供を養子に迎えるというお話。『魔王の帰還』は、前の高校をやめた弟と、夫と離婚する姉が、実家に戻って父母と暮らし始め、弟の女子同級生と共に金魚すくい選手権に出場する中で、それぞれの未来が開かれていくお話。『ピクニック』は、育児と夫の無理解に悩んだ末に生後10か月の幼子を失った女性と、その際に過失致死容疑で逮捕された母親が、実は女性の姉の死にも関わっていたというお話。『花うた』は、兄を殺された妹と、刑務所で服役中の加害者とが手紙のやりとりを繰り返す中、加害者が事故で読み書きや記憶の面で著しい機能低下に見舞われるも、二人は夫婦になるお話。『愛を適量』は、交通事故を機にかつての熱量を失い、妻とも離婚した公立高校教師の父の前に、12歳を最後に会っていなかったFtMの娘が現れるも、500万円と共に姿を消すというお話。『式日』は、高校時代の後輩から父親の葬式に出席して欲しいと頼まれた先輩が、火葬の最中に後輩と一緒にバスに乗って出かけ、お互いについて語り合うというお話。『スモールスパークス(あとがきにかえて)』は、余命宣告をされた父に花嫁姿を見せる、そのために結婚を迫ってきた別れた妻と、元義父の法要で16年ぶりにに会った男のお話。 *** 時間かけんのだるいって思ったらやめればいいし、 今の自分を続けたいんならやればいい。 ただ、生徒に笑われたからっていうのはNGな。 あいつらがあんなことを言ったせいだってなっちゃうだろ。 理由とか原因を他人に紐づけてると人生がどんどん不自由になる。(p.260)本著の中で、最も印象に残った言葉。自分で決めなきゃね。さて、『ネオンテトラ』や『ピクニック』などは、読後感があまり良くなかったです。『魔王の帰還』などは、前方に明かりが灯もった感じがするお話でしたが……こういうタイプのお話を好む方も多いのだと思いますが、私にはあまり合わないようで……一穂さんの作品は、しばらく手にしないような気がします。
2024.02.24
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2022年6月の刊行。 著者は、日本経済新聞社金融部長の河波武史さん。 巻末には、1873(明治6)年の第一国立銀行(のちの第一勧業銀行)設立から 2022(令和4)年の木原正裕氏FG社長就任までの関連年表が掲載されています。 ***「序章 みずほの宿痾」では、2018年の真冬のダボスでの著者と当時のFG社長・佐藤康博氏に同行していた坂井辰史氏との出会いや、2022年に、その坂井氏の後任社長として木原正裕氏が記者会見に臨むまでを振り返り、みずほ20年の宿痾を読み解く作業をスタートさせます。「第1章 度重なるシステム障害」では、社長就任から3年を経て、新基幹システム「MINORI」の本格稼働を始め、業績回復に成功していたはずの坂井社長が、2021年2月28日と3月の3件のシステム障害を受け、3月17日に記者会見を開くに至った経緯や、みずほと金融庁の人事を巡るトラブル、背景にあったみずほの企業体質について言及しています。「第2章 トップ総退陣へ」では、2021年11月に金融庁が発出したみずほへの業務改善命令と、坂井社長と藤原頭取が揃って退陣した経緯を記しています。「第3章 世界トップクラス銀行の誕生」では、1998年8月に第一勧銀・富士銀・日興銀が統合、資産規模世界最大の銀行が誕生するも、興銀のそごう問題、第一勧銀のマイカル問題で躓き、2002年4月、ようやく新生みずほ発足にこぎつけるも、統合初日にシステム障害が発生。さらに、2000年代に入って一段と深刻になっていた不良債権問題に対して、竹中平蔵氏が推進した「金融再生プログラム」では、辛うじて国有化は免れたもののリーマン・ショックで邦銀最大の損失を出し、システム投資の原資を欠いてしまったことに言及。「第4章 統合10年たっての内なる戦い」では、2011年3月11日の東日本大震災発生直後、大規模なシステム障害が発生し、5月にはワンバンク・ワントップ構想を正式表明するも、2013年9月に反社融資問題が勃発し、翌年4月に委員会設置会社に移行した経緯を記しています。著者は、ここでみずほ迷走の3要因について言及し、再起の道について提案します。「第5章 新社長の船出」では、20022年1月の木原正裕氏FG社長就任に至る経緯と、今後のDXでの改革や海外銀行のデジタル化戦略について言及。「第6章 みずほ、再生への道」では、1989年からの日本金融転落について概観し、みずほ再生に向けての再生プランと、日本全体の金融再生プランを示します。 ***本著が刊行されてから、既に1年8カ月が経とうとしています。みずほ銀行の売上高は、2021年3月期が3兆,2180億9500万円、2022年3月期が3兆9630億9100万円、2023年3月期が3兆6,651億円となっています。そして昨日、東京株式市場で日経平均株価が1989年末につけた最高値を約34年ぶりに更新し、終値が前日比836円52銭(2.2%)高い3万9098円68銭となりました。このことは、日本経済にとって、そしてみずほにとって、吉兆となるのでしょうか。
2024.02.23
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副題は「毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ」。 中野信子さんによる一冊で、2020年3月に刊行されたもの。 本著の中には、随所に著者自身の複雑な思いや感情が溢れ出ていると感じます。 以前読んだ『なんで家族を続けるの?』では、内田也哉子さんとの対談で、 自身の家族についても色々と語っておられるのですが、 その内容を知ったうえで次の記述を読むと、それがひしひしと伝わってきます。 個人的なことをなるべく書かないようにしてはいますが、 それでも、ちくちくと自分の心を刺してくる思い出したくないものが、 予期せず記憶の中によみがえってくるのを制するのには骨が折れました。 両親とは特筆すべき大きな確執があったわけでもなく、 二人ともいたって平凡な人物であったにもかかわらず、 それでも子として傷を受けているのですから、 世の中の大多数の人は何らかの解決できない思いを 親に対して抱えているものと考えるのが自然であるように思います。(p.3)ごく個人的に聞いた自身の友人や後輩の話を、「毒親」の例としていくつも採り上げてみたり、六本木ヒルズの森タワー入口にある巨大な蜘蛛の彫刻の女性作者の母親に対して、彼女が行動することを妨げていた状況を慮ることがほぼなかったりすることに、この問題に対する著者の思いや感情の本質が見られる気がします。先日読んだ『バカと無知』に出てきた『記憶はある種の「流れ」であり、思い出すたびに書き換えられている』という言葉や「トラウマ治療が生み出した冤罪の山」や「トラウマとPTSDのやっかいな関係」に記されていたことが、本著を読みながら、何度も頭に浮かんできました。『「毒親」の正体』や『母という病』等を、併せ読むことをお勧めします。
2024.02.18
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副題は「脳科学から見た『メカニズム』『対処法」『活用術』」。 中野信子さんによる一冊で、2019年6月に刊行されたもの。 「第1章 損するキレ方、得するキレ方」では、 相手に搾取されないよう、賢く”キレる”スキルを身に付けることを提案。 「第2章 キレる人の脳で起こっていること」では、 ”キレる”場合を6つに分けて、脳で起こっていることを解説。「第3章 キレる人との付き合い方」では、12のケースについて、”キレる”人にどのように関われば良いかを指南。「第4章 キレる自分との付き合い方」では、自身が”キレる”ケースを6つに分け、どのようにコントロール、表現すれば良いか助言。そして、最後の「第5章 戦略的にキレる『言葉の運用術』」では、自分自身を守るためには、対人関係の会話の中で使う日本語の運用能力を向上させ、言葉で上手に切り返せるようになることが重要だと述べています。「気持ちはキレていい。言葉でキレてはいけない」が、強く心に残りました。
2024.02.18
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先にドラマを見始めてから、原作を読み始めましたが、 ドラマが終わるよりも先に、原作を読み終えました。 キャラクターの設定をはじめ、各エピソードや全体としてのお話の流れも、 ドラマは、原作をアレンジした別物となっています。 昨年末に読んだ『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅹ』に記されていた、 「すべてを許せる神のような心境にならないかぎり、映像化の要請に応じてはならない。」 という姿勢が、作家さんたちの間では共有されているものだとばかり思っていましたが…… 今、世間を騒がせている状況は、本当に心が痛みます。 ***手術、化学療法、放射線療法に次ぐ第4のがん治療法である万能免疫細胞療法。その際に用いられる治療用の特殊細胞は、火神細胞と呼ばれており、その生みの親・火神郁男が診療部長を務める星嶺大学医学部付属病院統合外科は、ありとあらゆる手術のエキスパート集団で、中でも竜崎大河はエースとして活躍していた。そんな統合外科病棟のナースエイドとして新たに着任した桜庭澪は、全身性多発性悪性新生物症候群(シムネス)を患っていた姉を失い、それを自分のせいだと自らを責め続けていた。しかし、澪の部屋に空き巣が入ったことから、事態は大きく動き出す。 ***最後は、随分バタバタとした中で最終ページに辿り着いてしまった感が強く、さらには、本作の核となるような重要部分が未解決部分として残ったままです。恐らく、続編への含みを持たせてのことでしょう。そう遠くはない未来に、読むことが出来るような気がします。
2024.02.12
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『言ってはいけない』の橘玲さんによる一冊。 本著では、脳科学の知見や心理学の実験結果が次々に紹介されていくので、 著者はその分野の専門家かと思ってしまいますが、作家さんのようです。 読み終えると、久々に付箋だらけの一冊が出来上がっていました。 *** わたしたちは自分をつねに「人並み以上」だと思っていて、 能力のない者が実力を大幅に過大評価する一方、 第一印象で相手を「平均的」と見なすため、 能力の高い者は(相手も同じくらいだろうと思って)自分の成績を過小評価し、 結果として、バカと利口が「熟議」すると悲惨なことになってしまうのだ。(p.66)これは「平均効果」について記された箇所。著者は、このことが民主的な社会がうまくいかない不穏な理由であり、SNS上での対立が、収拾のつかない混乱へと拡大していくことに繋がっているとしています。まずは、ヒトはそういうふうに出来ているということを知っておくことが大切なのでしょう。 決定的なのは2003年、 自らも自尊心の重要性を信じていた心理学者のロイ・バウマイスターが、 自尊心と子どもの成長の関係を調べようと1万5000件もの研究をレビューし、 予想に反して「自尊心を養っても学業やキャリアが向上することはなく、 それ以外でもなんらポジティブな効果はない」という決定的な事実を発見したことだった。 他の研究者による検証でも同様の結果が出たことで、 現在では(すくなくともまともな)心理学者は 「自尊心を伸ばす教育が子供の成長に重要だ」と主張することはなくなった。(p.123)そうだったん……ですか?この件については、世間ではどの程度認知されているのでしょうか?今でも、多くの教育現場では「自尊心を高めること」が良しとされているのでは?「なんらポジティブな効果はない」は、かなり衝撃的です。 近年の脳科学のもっとも大きな発見のひとつは、脳には記憶が「保存」されていないことだ。 脳はビデオカメラのように、起きたことを正確に記録し、 いつでも再生できるようにしているわけではない。 脳にハードディスクが埋め込まれているのではなく、何らかの刺激を受けたとき、 そのつど記憶が新たに想起され、再構成される。 記憶はある種の「流れ」であり、思い出すたびに書き換えられているのだ。(p.257)この記述に関連する「トラウマ治療が生み出した冤罪の山」や「トラウマとPTSDのやっかいな関係」等における事例には、本当にゾッとさせられました。これについても、ヒトはそういうふうに出来ているということを知ったうえで、色々と判断し、考え、行動していくことが大切になってくるのでしょう。
2024.02.12
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『追憶の夜想曲』に続く御子柴礼司シリーズ第3弾。 医療少年院時代の担当教官・稲見が殺人容疑で逮捕されたことを知った御子柴は、 宏龍会の山崎や元東京弁護士会会長・谷崎の力を借りて国選弁護人になると、 川口署で稲見に接見、殺害現場となった特別養護老人ホーム伯楽園を訪ねます。 入所老人たちが「恐怖という名の衣」を身に纏っていると感じた御子柴は、 殺された介護士・栃野が、10年前の船舶事故で女性から救命胴衣を奪い死に至らしめたこと、 伯楽園では、日常的に介護士たちによる施設内虐待が行われていること、 現場に居合わせた入所老人たちが、何かを隠そうとしていること等々に気付いていきます。「緊急避難」を争点に無罪判決を勝ち取り、教官の恩に報いようとする御子柴でしたが、稲見は自らの信念で刑罰が与えられることを強く望んでおり、思うように進展しません。判決後も、「教唆」を理由に即日控訴しようとする御子柴に、稲見は自らの思いを語ります。御子柴は絶望と自己嫌悪に侵食されていきますが、そこに津田倫子からの手紙が届いたのでした。 ***このシリーズで初めて読んだのが『復讐の協奏曲』。以後、シリーズを刊行順に読み進めてきましたが、やっと、『悪徳の輪舞曲』を残すだけとなりました。次のお話では、御子柴が実母の弁護をするようです。
2024.02.04
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