Serendipity

2018.03.04
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カテゴリ: つぶやき
​久しぶりの日記になってしまいました。

この間何をしていたかというと、テレビでピョンチャンオリンピックを見ておりました。

ずっと応援してきた男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が、逆境に打ち勝ち、ソチ大会に続く2度目の金メダルを獲得したのがとてもうれしかったです。

とても感動したし、もうただただすごい人だなあと、感服するばかりでした。

羽生選手がジュニアから上がってシニアの大会に出始めた頃、まだシニアの演技時間の長さに慣れていなくて演技直後にバテてしまったときがあったのですが、その姿がとてもかわいくて、その頃からずっと応援してきたけど・・・いまやもうすっかり雲の上の人という感じがします。

有言実行の絶対王者であり、その一方でひとたびリンクを離れれば周囲に対して「超」気配りができる、しっかり者の羽生君。時々ふつうの若者っぽさも垣間見られるけど、出身地である被災地のことを決して忘れないやさしさ。

彼はこれからどんな大人になっていくんだろう。

ケガとか喘息とかさまざまな困難を抱えているけれども、まずは身体を大切にして、次の目標に向けて無理せず頑張っていってほしいな。そして、彼のこれからの人生がよりいっそうすばらしいものとなることを願っています。


・・・・・・


その一方、ある情報番組で、メダルに手が届かなかった選手たちの姿をまとめたVTRが流されたのを目にしました。

これにもすごく感動してしまい、思わず泣きそうになりました。

選手たちはみんな、メダルを目指して頑張って、死に物狂いで努力してきたに違いないと思います。だから、できることならみんなにメダルをあげたいほどだけど・・・オリンピックの女神さまが微笑んでくれる選手の数には限りがあるんですよね・・・。

それも、オリンピックって考えれば考えるほど過酷な大会ですよね。
4年に一度しか開かれないから、オリンピックが開かれるまさにその年に自分の選手としてのピークを合わせられるかどうかとか、同時代にどんなライバルがいるかとか・・・。


・・・・・・


ところで、1月末に、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)というテレビ番組に、元フィギュアスケート選手の村主章枝さんが登場した回があったのですが、とても考えさせられる内容でしたので以下にお伝えしたいと思います。

村主選手は、トリノオリンピック・女子フィギュアスケート金メダリストの荒川静香さんと熾烈なライバル関係にあった、とても優秀なフィギュアスケート選手でした。

実際、トリノオリンピック直前に開かれた全日本選手権では、村主さんは荒川さんに勝利していたのです。けれども、オリンピック本番で金メダルを手にすることができたのは荒川さんの方だったのです。そのとき村主さんは4位入賞で、表彰台に立つことは叶いませんでした。

そして、ここから村主さんの長く辛い闘いが始まることとなるのでした。

勝利をあきらめることができなかった村主さんは、20代前半で引退する選手が多い中、なんと33歳まで現役を続けたのです。

かつては何度も全日本女王に輝いた村主さんでしたが、年を取るにつれて成績は低迷する一方で、最後の頃には10代の若い選手に交ざって地方予選から出場せねばならないまでに成績が落ちてしまったのだそうです。また、その過程でいろいろな人が村主さんを見限って離れて行ったそうです。

フィギュアスケートは大変お金のかかるスポーツだと言われています。長く現役を続けたことでご両親の貯金を使い果たしてまで、メダルを求めて挑戦し続けた村主さん。それを止めることができたのは、妹さんが放ったこんな言葉だったそうです。

「有終の美を飾って終われる選手なんて、ほんの一握りなんだよ。
それ以外の選手というのは、みんな志半ばでやめていく。
だけども、その時点では半ばかもしれないけど、その思いがあるから次に進んでいけるんだよ。」


・・・私は村主さんのこのお話を、涙をこらえながら聞いていました。


・・・・・・


村主さんが追い求めたのは、きっとオリンピックの金メダルだったのだろうと思うけれど、私たちもそれぞれの人生において、どんなに頑張って追い求めても得られなかったものがあるのではないかと思います。

身近な例でいえば、受験とか、就職とか、恋愛とか・・・。

ものすごく欲しかったものがあって、それを得るために死ぬほど頑張ったのに、結局それを得ることができず、あきらめなければならなかった・・・それは、とても辛く、悔しく、耐えがたい経験です。

でも、村主さんの妹さんがおっしゃったように、「その思いがあるから次に進んでいける」と思えれば・・・。

果たせなかった思いは、きっと未来につないでいけるのではないでしょうか。


・・・・・・


最後になりますが、今回の日記のテーマと重なるような詩があったのを思い出しましたので、これを引用させていただき、本日の日記を終えたいと思います。


『あの坂をのぼれば』 杉みき子


―あの坂をのぼれば、海が見える。 
少年は、朝から歩いていた。 
草いきれがむっとたちこめる山道である。 
顔も背すじも汗にまみれ、休まず歩く息づかいがあらい。 


―あの坂をのぼれば、海が見える。 
それは、幼いころ、添い寝の祖母から、 
いつも子守唄のように聞かされたことだった。 
うちの裏の、あの山を一つこえれば、 
海が見えるんだよ、と。 
その、山一つ、という言葉を、少年は正直に 
そのまま受けとめていたのだが、それはどうやら、 
しごく大ざっぱな言葉のあやだったらしい。 
現に、今こうして、峠を二つ三つとこえても、 
まだ海は見えてこないのだから。 
それでも少年は、呪文のように心に唱えて、のぼってゆく。 


―あの坂をのぼれば、海が見える。 
のぼりきるまで、あと数歩。 
半ばかけだすようにして、少年はその頂に立つ。 
しかし、見下ろす行く手は、またも波のように、 
くだってのぼって、その先の見えない、 
長い長い山道だった。 
少年は、がくがくする足をふみしめて、 
もう一度気力を奮い起こす。 

―あの坂をのぼれば、海が見える。 
少年は、今、どうしても海を見たいのだった。 
細かく言えばきりもないが、やりたくてやれないことの 
数々の重荷が背に積もり積もったとき、 
少年は、磁石が北を指すように、 
まっすぐに海を思ったのである。 
自分の足で、海を見てこよう。 
山一つこえたら、本当に海があるのを確かめてこよう、と。 

―あの坂をのぼれば、海が見える。 
しかし、まだ海は見えなかった。 
はうようにしてのぼってきたこの坂の行く手も、 
やはり今までと同じ、果てしない上がり下りの 
くり返しだったのである。 
もう、やめよう。 
急に、道ばたに座りこんで、 
少年はうめくようにそう思った。 
こんなにつらい思いをして、 
いったいなんの得があるのか。 
この先、山をいくつこえたところで、 
本当に海へ出られるのかどうか、わかったものじゃない。 
額ににじみ出る汗をそのままに、草の上に座って、 
通りぬける山風にふかれていると、 
なにもかも、どうでもよくなってくる。 
じわじわと、疲労が胸につきあげてきた。 
日は次第に高くなる。 
これから帰る道のりの長さを思って、 
重いため息をついたとき、少年はふと、 
生きものの声を耳にしたと思った。 
声は上から来る。 
ふりあおぐと、すぐ頭上を、光が走った。 
翼の長い、真っ白い大きな鳥が一羽、 
ゆっくりと羽ばたいて、先導するように次の峠を 
こえてゆく。 

―あれは、海鳥だ! 
少年はとっさに立ち上がった。 
海鳥がいる。 
海が近いのにちがいない。 
そういえば、あの坂の上の空の色は、 
確かに海へと続くあさぎ色だ。 
今度こそ、海に着けるのか。 
それでも、ややためらって、行く手を見はるかす 
少年の目の前を、ちょうのようにひらひらと、 
白いものが舞い落ちる。 
てのひらをすぼめて受けとめると、それは、 
雪のようなひとひらの羽毛だった。 

―あの鳥の、おくりものだ。 
ただ一片の羽根だけれど、それはたちまち少年の心に、 
白い大きな翼となって羽ばたいた。 

―あの坂をのぼれば、海が見える。 
少年はもう一度、力をこめてつぶやく。 
しかし、そうでなくともよかった。 
今はたとえ、このあと三つの坂、 
四つの坂をこえることになろうとも、 
必ず海に行き着くことができる、 
行き着いてみせる。 
白い小さな羽根をてのひらにしっかりとくるんで、 
ゆっくりと坂をのぼってゆく少年の耳に 
―あるいは心の奥にか― 
かすかなしおざいのひびきが聞こえ始めていた。 






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最終更新日  2018.03.04 08:00:05
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