Serendipity

2018.10.14
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カテゴリ: 読書メモ
​​​​​​​​前回の日記では、雑誌『リンネル』のインタビュー記事で、作家の村田沙耶香さんが口にされていた 「幸せのモデルケース」 という言葉について考えました。

村田さんによると、近頃世間には「多様性」を大事にしようという風潮があるけれども、人びとの本音には「幸せのモデルケース」のようなものがあるような気がしているそうです。

そして村田さんは、本来は生きているということだけでも奇跡のようなことなのだから、「幸せのモデルケース」にとらわれず、人生を、自分が一番好きなことや楽しいと思えることを大切にしながら、自分の意志で生きてほしい…というようなことをおっしゃられていました。

…そう言われてみれば、私自身にも、自分の心の中に育んできた「幸せのモデルケース」のようなものがあって。

それは、

”結婚して、夫と子供がいて、なおかつやりがいのある仕事を持ち、公私ともに輝いているヒト”

みたいな感じだよなあ…ということに気付きました。


・・・・・・


英語のことわざに、 The grass is greener. というものがあります。

その他にもalwaysを加えて

The grass is always greener.

としたり、

The grass is always greener on the other side.

とか、

The grass is always greener on the other side of the fence.

としたり…

いろいろな言い方があるのですが、いずれにせよ、意味としては日本語の

「隣の芝は青い。」

にあたります。

隣の芝は青い

読み方:となりのしばはあおい


自分のものより、他人のもののほうが良く見えるということを意味する表現。より一般的には「隣の芝生は青い」という。

*​ Weblio辞書 ​より引用しました。

そうそう、他の人が持っているものって、自分が持っているものよりもよく見えたりしちゃいますよねぇしょんぼり


・・・・・・


と、そんなことを考えていた頃、私は読み忘れていたある一冊の本を本棚から取り出して読み始めました。

野原広子さんの『離婚してもいいですか?翔子の場合』というコミックエッセイです。











内容を簡単にまとめますと…

主人公の翔子は平凡な専業主婦。

家事と2人子どもの育児に毎日がんばっているのですが、夫はそんな翔子のことを認めてくれません。

家庭ではいつもいばっていて、翔子が専業主婦であることがなんだか気に入らない様子。

家事にも育児にもまったく協力してくれず、翔子にはいじわるなことばかり言います。


*こちらのサイトで、12話まで無料で読めます!(「コミックエッセイ劇場」へのリンクです。)
↓↓↓


離婚してもいいですか?翔子の場合


・・・・・・


***ここから先は、このお話のネタバレがかなり入りますので、この先の展開や物語の結末を知りたくない方は読まないでいただけたらと思います。***


さて、そんな夫に耐え続けていた翔子でしたが、ある日ついに心を病んでしまいます。

病院で診察を受けた翔子は、自分が自分の感情を表に出さず我慢ばかりしてしまうのは、実は自分を抑圧的に育てた父親が原因なのではないかということに気付きます。

その一方で、ついに現実的に離婚を考え始めた翔子は、シングルマザーとして生きていくための経済力を得るため、慣れない介護の仕事を始めます。

仕事は辛いことも多かったけれど、シングルマザーとして働いている人も多くいることを知ったり、資格を取ったりして、翔子はだんだん自信を持ち始めます。

その後、夫の浮気疑惑がきっかけで家出をしたり、夫や自分の父親に初めて自分の怒りをぶつけたりして、翔子は少しずつ解放されていくかのように見えたのですが…

物語の終盤で翔子が下した決断は…しばらくは離婚せずに夫と暮らしてみる、というものでした。

離婚は経済的にまだ無理だろうというのが、その主な理由でした。

夫の方はどうかというと、仕事を始めて自信をつけ、自分の感情を素直に表現できるようになった翔子の変化に驚き、以前よりも優しく、家事にも協力的になるのですが…

翔子はあいかわらず、夫のことが嫌いなのです。それでも、妥協して一緒に暮らしていくのです。

それが、この物語の結末です。


・・・・・・


この物語のラストシーンで、翔子たち一家は公園に遊びに行きます。

みんなでアイスを買って、傍目には和気あいあいと過ごすのですが…。

翔子の本音はというと、夫に「一口ちょうだい」と言われて自分のアイスを食べさせてあげるのですが、夫が口をつけたそのアイスを、もう自分は食べたくないと思うほどに、夫のことが嫌いなのです。


そんなとき、翔子はその公園にもう一組の家族連れがいることに気付きます。

優しそうなパパと、幸せそうな奥さんと、かわいい子どもの姿…。

幸せそう

うらやましい

なんてうらやましいんだろう



翔子はそう思うのですが、それと同時にふと、気付くのです。


でも

あの奥さんも

私たちを見て

そう

思ってたりして



・・・・・・


この物語を読んで、なんというか、目が覚めたような気がしました。
衝撃的な作品でした。

私は心の奥底で、「優しくて素敵な男性に出会えればなあ」とか、「結婚していればなあ」とか、「子どもがいる人がうらやましいなあ」とか…自分が持っていないものばかりを数え上げ、追い求めていたような気がします。

でも、恋人ができれば、結婚すれば、子どもが持てれば幸せになれる…なんてそんなの、ただの幻想にすぎないのかもしれないなあと思ったのです。

もちろん、恋人ができたり、結婚したり、子どもを産むことができたりすれば、幸せなこともたくさんあるんだろうけど…でも、幸せを得るのと同時に、新たな困難や苦しみも生じるわけなんですよね。

その困難や苦しみのレベルは人によって違うのだろうとは思いますが、なかには翔子のように激しく苦しむ人もいるわけで…。


…ああ。

私はただ、隣の家の、青いように…ただひたすらに青く輝いているように見える芝生を、うらやんでいただけなのかなあ、と。

なんだかハッとさせられたのでした。


・・・・・・


だからといって、今のままでいいとは思っていないのですが。

それでも、もっと公平な目で、「今の自分でも持っているであろう幸せ」にも気付かねばならないなあと思いました。

そして、単に「一般的な人生のモデルコース」を歩んでいくことを目指すのではなくて、自分が幸せになるために本当に必要な人生のコースを見極めて、歩んでいかねばならないなあと思いました。

だから、まずは

「自分なりの幸せを見つけること」

それを目標にし、そしてその目標を忘れずにいたいと思います。


(*今回ご紹介した『離婚してもいいですか?翔子の場合』ですが、実は私は雑誌『レタスクラブ』の付録というかたちで読みました。そのため、完全版である単行本は読んでおりません。完全版には「その後の翔子と夫」などの話も収録されているらしいので、機会があれば読んでみたいと思います。)​​​





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最終更新日  2018.10.14 00:47:51
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