Serendipity

2018.11.01
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カテゴリ: つぶやき
最近いろいろなメディアで、「キャッシュレス決済」について語られるのを目にすることが増えてきた気がします。

キャッシュレス決済とは、買い物をするときに現金を使わずに支払いを行うことで、例えば、クレジットカードや電子マネー(WAONとかnanacoとかSuicaとか…)で支払いをしたり、近年ではスマホ決済というものも出てきています。

お札や小銭を使わないで支払いを済ませられるのは本当に便利だと思います。小銭を出すような細かい作業がなくなるから支払いに時間がかからないし、お札や小銭の数え間違いといった古典的なミスもなくなりますよね。

だから、いい点はたくさんあると思います。

ただ、私が物申したいのは、「それを万人に強要するのは、今の時点では行きすぎなのではないか…?」ということなんです。


・・・・・・


先日テレビのバラエティー番組に、近頃人気の俳優の方が出ていらしたのですが、その方は買い物をするとき、ご自分はキャッシュレス決済しかしないのだそうです…そして、自分より前にレジで支払いをしている人が小銭を細かく出したりしてゆっくり支払いをしているのを見ると、イライラしてしかたがないのだとか。

もうひとり、こちらはとあるニュース系の情報番組で、知的で温和なイメージの年配の女性コメンテーターの方が出ていらしたのですが。その方もまた、最近はキャッシュレス決済しかしないのだそうで…そしてやはり、自分が急いでいるときなどにレジの前の人が現金払いしているのを見ると、「どうしてキャッシュレスで支払わないのかな?」と、ついイラついてしまう…とおっしゃっていました。

他にもこういう話には最近事欠かなくて…新聞の投書欄でも、一般の方が同じようないらだちを投稿しているのも目にしました。


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しかし、私は思うのです。

上記のような方々の主張は、つきつめれば、



というもののように、私には聞こえるのです。

確かに、仮にキャッシュレス決済を行うことが法律で定められているのであれば、または明らかに公序良俗に反するのであれば、もしくは他者に対して著しい精神的・身体的損害を与えるのであれば…その主張は正しいと思うのです。

でも、キャッシュレス決済はそのどれでもなくて。

今の時点では、ただやりたい人がやればいいだけのもの。

それなのに、「自分と同じことをしていない」というだけで、イライラしたりするのは、あまりにも身勝手な気がしませんか…?


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ところで、先日のことです。

近所のスーパーでレジに並ぶと、私の前に並んでいた人は、白杖をついた盲目の人でした。

私、恥ずかしながら、この年まで生きてきて、目の見えない方が支払いをするその方法を初めて目の前で見たのです。

その方は、レジの店員さんが品物の値段を伝えると、その店員さんにお財布を渡して、

「ここから取ってください。」

と、言ったのです。

自分のお財布を、見ず知らずの店員さんにゆだねなければ、買い物ができない人がいるのだ…と、その光景は私にとって衝撃的なものでした。


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実は私も、緑内障という視野が徐々に欠けていく病気を患っています。進行はゆっくりではあるけれど、失明のリスクもある病気です。

だから、あの日たまたま目にした盲目の方の姿は、未来の自分の姿なのかもしれない…

そう思うと、はたして自分にあんなことができるのだろうかと、震えるほど怖くなりました。

そして、気付いたのですが。

いわゆる『五体満足』に生まれてきた自分は、これまで目が見えるのが当たり前だと思って生きてきていて、見えなくなる可能性なんて本当に1ミリも考えたことがなかったのです。

でも、今の自分は緑内障の恐怖と闘っていて。

そして、そんな今の自分は、昔の自分のことを本当に傲慢だったなあと思うのです。

目が見えること…それはあって当たり前のもの。

そうじゃない人も、たくさんいるのに、ね。


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話はキャッシュレス決済に戻ります。

現実的な話、世の中にはクレジットカードが作れない人もいます。職業や収入によっては、審査に通らなかったりしますよね。

それでは、スマホなら持っているのが当たり前?
毎月のスマホ代を維持できない人がいる可能性はありませんか?…スマホを持てたとしても、使い方がわからない人は?…身寄りのないお年寄りだったら、スマホの使い方なんてわかるでしょうか?

「多くの人が持っているものであれば、どんな人でも持っているのが当たり前」

とか。

「私がやっているんだからお前もやれ」

とか。

もしそんな考え方が主流になってしまうようなら、それはあんまりだよ~、と、私は思います。

だって世の中には、持ちたくても持てない人も、やりたくてもやれない人もいると思うんです。


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「いそがしい」という言葉を漢字で書くと「忙しい」となります。

この漢字の部首は「りっしんべん」。もともとは「心」という漢字が変形した部首なのだそうです。

だから、「忙しい」とは、「こころをなくす」とも読めるのです。

私には、キャッシュレス決済でイライラしているような人は、「忙しい」からなのか、心をなくしてしまっているように思えます。

彼らは、もし目の前に支払いが不自由な障害を持つ人がいて、その人が支払いをするとき、手を差し伸べて助けてあげられるでしょうか?

それともやっぱり、なんとしてでもキャッシュレス決済にすればいいのに…と、思うのでしょうか。


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私は、世の中を「持てる人」の視点から見てはいけないと思っています。ここで私が書いている「持てる人」とは、経済力・健康・環境などに恵まれていて、標準かそれ以上の生活ができている人のことを意味しているのですが…。

そんなふうにいろいろなものを「持てる人」だからこそ、「持てない人」の苦しみのことを考えてほしいと思う。

持てる人が作り上げようとしている一見便利な世の中が、人びとを忙しくしていて、そしていつの間にか、人びとの中には心がなくなってしまっているような気がするのです。

それって、いいことだと思いますか?

…私は、誰もがもっとゆっくり生きていいと思う。

そうすることで、なくしてしまった心を取り戻し、自分と状況や考え方などいろいろなことが異なる多様な人に対し、やさしい気持ちを持てるようになる…そんな当たり前のことが、本当に当たり前である世の中になってほしいと思っています。





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最終更新日  2018.11.01 22:36:28
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こんにちは!bonaと申します。

これまで翻訳業界を中心に、英語を用いていろいろな職業を経験してきました。

このブログには、それらの職業から学んだこと、好きな音楽や読んだ本などの紹介、そして日々の暮らしの中で気づいたこと・考えたことなどをつづっています。闘病中の緑内障のことも……。

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