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楽天ラウンジでの最後の映画紹介は、前回に続き、“生涯のベスト10(洋画編)”の残り5本をご紹介します。前回は、衝撃を受けた5本でしたが、残りの5本は、映画の醍醐味を味わえるセレクトになりました。 6本目はセルジオ・レオーネ監督が西部開拓時代に生きる人々の人間模様を描く「ウエスタン(原題:Once Upon a Time in the West)」(1968年・英米合作)。 レオーネ監督は、クリント・イーストウッドを一躍スターに押し上げた「荒野の用心棒」(1964年)、「夕陽のガンマン」(1965年)などのヒットでマカロニ・ウエスタンの代表監督として知られています。本作は西部開拓時代を舞台にしながらも、原案にはダリオ・アルジェントやベルナルド・ベルトルッチも参加しており、女性が主人公の壮大なイタリアン・オペラとして観ることが出来ます。 単身、未開の地へやって来たジルを演じるクラウディア・カルディナーレ、ハーモニカを吹く無口なガンマンを演じるチャールズ・ブロンソン、ならず者の親分フランクを演じるヘンリー・フォンダ、ジルを見守るシャイアンを演じるジェイソン・ロバーズ。豪華スター俳優4人には、それぞれエンニオ・モリコーネによるテーマ曲が与えられ、曲にシンクロさせて彼らが登場し、それぞれに交差しながら物語が進行していきます。 レオーネ監督のはったりの利いたアクション・シーンや超クローズアップ撮影は、現代も多くの監督がマネていますが、映像と音楽と感情の流れがあいまったレオーネ監督のアーティスティックな手法には及んでいません。ペキンパー監督同様、ワン・アンド・オンリーの存在だと思います。 本作では、古き良き開拓時代の終焉が抒情的に描かれると共に、夢を追ってやって来た人々の苦労が、たくましく生きるジルを通して描かれており、女性にもおススメです。 7本目はジャン=ポール・ベルモンド主演、ジョゼ・ジョヴァンニ監督・脚本の犯罪映画「ラ・スクムーン」(1972年・仏)。 伝統的な仏ギャング映画“フィルム・ノワール”の中で、70年代の代表作に数えられる1本です。自身がギャングであったジョヴァンニが獄中で知り合った男の半生を抒情性豊かに映画化。ラ・スクムーン=死神と恐れられた主人公ベルモンドと、ミシェル・コンスタンタン演じる無二の親友、そして彼の妹でベルモンドの恋人クラウディア・カルディナーレの三人の愛と戦いを描く十数年の物語です。 男の美学を追求した情感溢れるタッチは仏映画独特のもので、身震いするほどのかっこよさ。「冒険者たち」(1967年)、「サムライ」(1967年)、「さらば友よ」(1968年)などで一時代を築いたメロディメーカー、フランソワ・ド・ルーベによる手回しオルガンを使ったテーマ曲と、そこに登場するベルモンドの伊達姿。一度観たら脳裏から永久に離れません。特にラストシーン!男の背中に感じる哀愁という言葉は、このシーンのためにあるのです。 8本目はリチャード・ハリス主演のパニック・サスペンス「ジャガーノート」(1974年・英国)。 大西洋上、ブリタニック号に仕掛けられた時限爆弾から乗客1,200人を救うべく決死のミッションに挑むプロの男たち! 監督はビートルズ映画や「スーパーマン」シリーズでお馴染みのアメリカ人、リチャード・レスター。アメリカ発のパニック映画と、英国伝統の冒険活劇が奇跡の融合をみせた本作は、70年代に大流行したパニックブームの中で今尚、熱い支持を集める傑作です。爆弾解除サスペンスの定石である、赤と青のコード、どちらを切るかは、この映画から始まりました。(ちなみについ最近では「崖っぷちの男」(2011年)でもやっています!) パニック映画といえば、「タイタニック」(1997年)のように、大破していく船と逃げ惑う乗客を描くと思われがちですが、本作では、危機に立ち向かうプロフェッショナルたちによる男のドラマを描いています。「羊たちの沈黙」(1990年)のアンソニー・ホプキンス、「LOTR」のビルボ・バギンズ役のイアン・ホルム、オマー・シャリフ、シャーリー・ナイトら英国スター総出演。中でも爆弾処理犯の主人公ファロンを演じるリチャード・ハリスと、助手のチャーリーを演じる「欲望」(1966年)のデヴィッド・ヘミングスの手に汗握る爆弾処理シーンには心拍数が急上昇! 余興係のロイ・キニアといった脇キャラまで丁寧に描き、人間ドラマと極限のサスペンスを緩急をつけて見せきる演出は、今の映画にはない職人技が光っています。 9本目はイギリスの名匠デヴィッド・リーン監督が描く「ライアンの娘」(1970年)。「アラビアのロレンス」(1962年)、「ドクトル・ジバゴ」(1965年)と同じ脚本、撮影、編集、音楽(モーリス・ジャール)による大作ですが、2作に隠れて目立たない名作です。 独立戦争前のアイルランドの港町で暮らす人々が、時代の波に翻弄されながらもたくましく生きていく姿を描いた本作は、特に女性におススメの作品です。 リーン監督作の特徴は雄大な自然を余すところなく捉えた美しい風景をバックに繰り広げられる様々な人間模様。本作はアイルランドのディングル半島で撮影されていますが、冒頭からあまりの映像の美しさに、いきなり心を鷲づかみにされます。そして、欲望のままに行動する美しい若い妻ロージーと、ロバート・ミッチャム演じる夫である教師の無償の愛を描く人間模様は、男女の愛の本質に迫るもので見応えがあります。 壮大な景色と冒険譚では「王になろうとした男」(1975年)や「冒険者たち」(1967年)などとも迷いましたが、ロケ撮影への執念のこだわりと、そこに生きる人々を丁寧に描き出す作品の重厚感とスケール感ではリーン作品以外にないでしょう。これぞ、映画館の大画面で味わうべき映画の代表格。アカデミー賞撮影賞、助演男優賞受賞作です。 最後にご紹介するのは“アメリカの良心”フランク・キャプラ監督&ジェームズ・スチュアート主演で贈る感動ドラマ「素晴らしき哉、人生!」(1946年・米)。 人生に絶望し自殺しようとする主人公ジョージの前に天使が現れ、ジョージがいなくなった世界を体験させます。そこにはジョージの想像を越えた事態が待っていました。 これまで誰かに勧めて感動しなかった人は一人もいないという程、人の心を打つ作品です。鑑賞後には誰もが“人間に生まれて良かった”と心から思えるはず。アメリカでは今もクリスマスに必ずTV放映や上映会があり、映画ファンを越えた国民に、世代を越えて語り継がれている作品です。私もこれを観た時、「人生には辛い事も多いし、悪人も存在するけれども、本来、人間は善良なんだ。」と、心の底から勇気をもらい、力づけられました。自殺者が急増する現在こそ、多くの方に観て欲しい不朽の名作です。 今回選んだ10本には、SFファンタジー、コメディといったジャンル映画は選出できませんでした。またの機会に、ジャンル別のベスト10も選んでみたいと思います。 引き続き、“生涯のベスト10(邦画編)”などを、映画ブログ(FC2ブログ:cinemanc)にてご紹介していきますので、興味がありましたら、見に来てください。 これまで、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。
2012年07月12日
これまでに観た映画の中から“生涯のベスト10”を選ぼうと考えてみたものの、年齢やその時の状況によってもベスト10は常に変化していくものです。そこで洋画に関しては、「傑作・名作100本」というような本や雑誌の特集などに出てくる王道作品はなるべく選ばずに、自身が強く影響を受けた作品の中から順不同で10本を選んでみました。 1本目はアカデミー賞作品・監督・脚色賞を受賞したジョン・シュレシンジャー監督作「真夜中のカーボーイ」(1969年・米)。 テキサスからニューヨークへ出てきた青年ジョーとスラム街に暮らすラッツォとの友情を描くアメリカン・ニューシネマの代表作ですが、シュレシンジャー監督はロンドン出身のユダヤ系英国人。人間への鋭い観察力と辛辣さで、いたたまれなくなるほどリアルに当時の若者像を描き出しています。その一方で、社会の底辺でもがく彼らの生き様を抒情性豊かに描き、若者たちの孤独を見事に捉えています。 主演はアンジェリーナ・ジョリーの父であるジョン・ヴォイト(ジョー)と、アメリカン・ニューシネマに欠かせない名優ダスティン・ホフマン(ラッツォ)。特にホフマンの神がかった演技は必見です。ジョン・バリーの音楽も素晴らしく、未だにこれを越える青春映画には出会っていません。 2本目は「7月4日に生まれて」(1989年)、「JFK」(1991年)等でお馴染みの社会派監督、オリヴァー・ストーンが「プラトーン」(1986年)でアカデミー賞監督になる直前に撮った「サルバドル/遥かなる日々」(1986年)。 フォト・ジャーナリスト、リチャード・ボイルの実体験を基に書かれた小説の映画化です。 ベトナム帰還兵である監督は、ベトナム戦争への恨みを描いた作品で知られていますが、私は「サルバドル/遥かなる日々」に最も大きな衝撃を受けました。エルサルバドル内戦の真実を暴くというジャーナリズム精神は勿論ですが、オリヴァーが描いているのは“ゲス野郎に芽生える良心”。ジェームズ・ウッズ演じるリチャードは酒と女に溺れ、取材費を使い込み、日々の生活にも困る身分ですが、あることをきっかけにジャーナリストの使命に目覚めていきます。オリヴァー自身が役に乗り移ったかのようなリチャードのキャラ。そしてウッズや相棒を演じるジェームズ・ベルーシの名演。まだ若く無名の監督が描く荒削りながら真に迫るストーリー、観客をぐいぐい引き込んでいくパワフルな語り口…。オリヴァーのその後の活躍を予感させる活きの良さと、力強いメッセージに魂を揺さぶられました。 3本目は“バイオレンスの巨匠”サム・ペキンパー監督作「ガルシアの首」(1974年)。故・淀川長治氏が“最も醜い反戦映画”と評した「戦争のはらわた」(1977年)、西部開拓時代への郷愁を綴る「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(1973年)も捨てがたいですが、中年男女の悲哀を描く本作は、歳を重ねて観直す毎に新たな発見があり、今ではベスト作となりました。 初めて観た時は、バイオレンス描写の凄まじさと、首を届けようと命を賭ける男の執念やヴィジュアルの異様さにばかり気を取られます。でも、二度、三度と観るうちに、苦しい生活から抜け出し、わずかな幸せを勝ち取ろうと最後の賭けに出たベニーの気持ちが痛いほど伝わります。 「夜の大捜査線」(1967年)での悪徳警官、「デリンジャー」(1973年)での名台詞「孫子の代まで語り草」が印象的な激シブ俳優、ウォーレン・オーツの名演も忘れてはいけません。 ペキンパー監督は、映画に人生の全てを捧げ、映画に食いつぶされた映画人の一人。考え抜かれた編集やスローモーションを多用したバイオレンス描写では、ワン・アンド・オンリーの存在であり、テーマ性やストーリーの明確さでも作家性を貫いた尊敬すべき存在です。 4本目は、クリント・イーストウッド監督・製作・主演のボクシング映画「ミリオンダラー・ベイビー」(2000年)。 幸せな家庭を知らずに育ったマギー(ヒラリー・スワンク)は、ボクシングを通して生きる価値を見出し、トレーナーのフランキー(イーストウッド)と親子よりも深い絆で結ばれていきます…。この作品に出会うまで、まさか男性映画の象徴でもある俳優クリント・イーストウッドが撮った作品をベスト10に入れようとは思いもしませんでしたが、クリント様も大家族の主。娘や孫娘への愛情が作品に表れています。 安楽死や尊厳死、宗教的な問題も取りざたされましたが、そうしたテーマが物語上にあっても無くても、マギーの境遇を思うと、本当に幸せと思える瞬間を味あうことが出来て良かったと思います。マギーの純粋で真っ直ぐな生き様に心を打たれました。 本作は低予算映画ですが、予算がなくてもよいストーリーとよい役者が揃えば、これだけの作品を作る事が出来る…というお手本のような作品。アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞。映画の神様が降りてきた奇跡の1本です。 5本目は、ウィリアム・スタイロン原作のピューリッツァー賞受賞小説を、メリル・ストリープ主演で映画化した「ソフィーの選択」(1982年)。 監督は「大統領の陰謀」(1976年)や「ペリカン文書」(1993年)などサスペンスを得意としたポーランド系ユダヤ人のアラン・J・パクラ。40年代、南部からニューヨーク、ブルックリンへと出てきた青年スティンゴは、そこでソフィー (メリル・ストリープ) とネイサン (ケヴィン・クライン) に出会います。ソフィーの腕にはアウシュヴィッツ強制収容所の刻印が刻まれていました…。 20代の時に初めて観て号泣した作品です。若者の成長物語からナチスのホロコーストへと転じるドラマティックなストーリーと、メリルとケヴィンが演じる魅力的な登場人物たちに引き込まれます。メリルは本作でアカデミー主演女優賞を受賞しており、全出演作中でも代表作といってよい作品です。(本作は、なぜか日本ではDVD化されておらず、米国版を観るか、昔に発売されたビデオレンタルをレンタル店で探すしかありません。) 次回は、6本目から10本目までをご紹介します。
2012年07月10日
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