小玉智子のお買い物ブログ

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2012年07月10日
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 これまでに観た映画の中から“生涯のベスト10”を選ぼうと考えてみたものの、年齢やその時の状況によってもベスト10は常に変化していくものです。そこで洋画に関しては、「傑作・名作100本」というような本や雑誌の特集などに出てくる王道作品はなるべく選ばずに、自身が強く影響を受けた作品の中から順不同で10本を選んでみました。

 1本目はアカデミー賞作品・監督・脚色賞を受賞したジョン・シュレシンジャー監督作「真夜中のカーボーイ」(1969年・米)。
 テキサスからニューヨークへ出てきた青年ジョーとスラム街に暮らすラッツォとの友情を描くアメリカン・ニューシネマの代表作ですが、シュレシンジャー監督はロンドン出身のユダヤ系英国人。人間への鋭い観察力と辛辣さで、いたたまれなくなるほどリアルに当時の若者像を描き出しています。その一方で、社会の底辺でもがく彼らの生き様を抒情性豊かに描き、若者たちの孤独を見事に捉えています。
 主演はアンジェリーナ・ジョリーの父であるジョン・ヴォイト(ジョー)と、アメリカン・ニューシネマに欠かせない名優ダスティン・ホフマン(ラッツォ)。特にホフマンの神がかった演技は必見です。ジョン・バリーの音楽も素晴らしく、未だにこれを越える青春映画には出会っていません。

 2本目は「7月4日に生まれて」(1989年)、「JFK」(1991年)等でお馴染みの社会派監督、オリヴァー・ストーンが「プラトーン」(1986年)でアカデミー賞監督になる直前に撮った「サルバドル/遥かなる日々」(1986年)。
 フォト・ジャーナリスト、リチャード・ボイルの実体験を基に書かれた小説の映画化です。
 ベトナム帰還兵である監督は、ベトナム戦争への恨みを描いた作品で知られていますが、私は「サルバドル/遥かなる日々」に最も大きな衝撃を受けました。エルサルバドル内戦の真実を暴くというジャーナリズム精神は勿論ですが、オリヴァーが描いているのは“ゲス野郎に芽生える良心”。ジェームズ・ウッズ演じるリチャードは酒と女に溺れ、取材費を使い込み、日々の生活にも困る身分ですが、あることをきっかけにジャーナリストの使命に目覚めていきます。オリヴァー自身が役に乗り移ったかのようなリチャードのキャラ。そしてウッズや相棒を演じるジェームズ・ベルーシの名演。まだ若く無名の監督が描く荒削りながら真に迫るストーリー、観客をぐいぐい引き込んでいくパワフルな語り口…。オリヴァーのその後の活躍を予感させる活きの良さと、力強いメッセージに魂を揺さぶられました。

 3本目は“バイオレンスの巨匠”サム・ペキンパー監督作「ガルシアの首」(1974年)。故・淀川長治氏が“最も醜い反戦映画”と評した「戦争のはらわた」(1977年)、西部開拓時代への郷愁を綴る「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(1973年)も捨てがたいですが、中年男女の悲哀を描く本作は、歳を重ねて観直す毎に新たな発見があり、今ではベスト作となりました。
 初めて観た時は、バイオレンス描写の凄まじさと、首を届けようと命を賭ける男の執念やヴィジュアルの異様さにばかり気を取られます。でも、二度、三度と観るうちに、苦しい生活から抜け出し、わずかな幸せを勝ち取ろうと最後の賭けに出たベニーの気持ちが痛いほど伝わります。
 「夜の大捜査線」(1967年)での悪徳警官、「デリンジャー」(1973年)での名台詞「孫子の代まで語り草」が印象的な激シブ俳優、ウォーレン・オーツの名演も忘れてはいけません。
 ペキンパー監督は、映画に人生の全てを捧げ、映画に食いつぶされた映画人の一人。考え抜かれた編集やスローモーションを多用したバイオレンス描写では、ワン・アンド・オンリーの存在であり、テーマ性やストーリーの明確さでも作家性を貫いた尊敬すべき存在です。

 4本目は、クリント・イーストウッド監督・製作・主演のボクシング映画「ミリオンダラー・ベイビー」(2000年)。
 幸せな家庭を知らずに育ったマギー(ヒラリー・スワンク)は、ボクシングを通して生きる価値を見出し、トレーナーのフランキー(イーストウッド)と親子よりも深い絆で結ばれていきます…。この作品に出会うまで、まさか男性映画の象徴でもある俳優クリント・イーストウッドが撮った作品をベスト10に入れようとは思いもしませんでしたが、クリント様も大家族の主。娘や孫娘への愛情が作品に表れています。
 安楽死や尊厳死、宗教的な問題も取りざたされましたが、そうしたテーマが物語上にあっても無くても、マギーの境遇を思うと、本当に幸せと思える瞬間を味あうことが出来て良かったと思います。マギーの純粋で真っ直ぐな生き様に心を打たれました。
 本作は低予算映画ですが、予算がなくてもよいストーリーとよい役者が揃えば、これだけの作品を作る事が出来る…というお手本のような作品。アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞。映画の神様が降りてきた奇跡の1本です。

 5本目は、ウィリアム・スタイロン原作のピューリッツァー賞受賞小説を、メリル・ストリープ主演で映画化した「ソフィーの選択」(1982年)。
 監督は「大統領の陰謀」(1976年)や「ペリカン文書」(1993年)などサスペンスを得意としたポーランド系ユダヤ人のアラン・J・パクラ。40年代、南部からニューヨーク、ブルックリンへと出てきた青年スティンゴは、そこでソフィー (メリル・ストリープ) とネイサン (ケヴィン・クライン) に出会います。ソフィーの腕にはアウシュヴィッツ強制収容所の刻印が刻まれていました…。
 20代の時に初めて観て号泣した作品です。若者の成長物語からナチスのホロコーストへと転じるドラマティックなストーリーと、メリルとケヴィンが演じる魅力的な登場人物たちに引き込まれます。メリルは本作でアカデミー主演女優賞を受賞しており、全出演作中でも代表作といってよい作品です。
(本作は、なぜか日本ではDVD化されておらず、米国版を観るか、昔に発売されたビデオレンタルをレンタル店で探すしかありません。)

 次回は、6本目から10本目までをご紹介します。





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最終更新日  2012年07月10日 23時48分31秒


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