森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.08.15
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カテゴリ: 認識の誤り
認知(受け取り方)の偏りや誤りは、感情、身体、行動に悪影響を与える。
例えば訪問営業の仕事をしている人が、ほとんどのお客さんは冷たく断ってくる。
そのせいで自分のプライドや自尊心はいつも傷つけられる。
などと受け取っていると、感情面では得意先に訪問することが不安や恐怖になってくる。
身体面では顔が引きつり、明るさが失われ、会話がぎこちなくなる。
行動面では次第に仕事をさぼるようになる。
このように負のスパイラルが雪だるま式に加速してしまう。
誤った認知のせいで、悲惨な結果を招いてしまう。

ただこれとは逆に、認知(受け取り方)の偏りや誤りがプラスに働くこともまれにある。
普通の子どもなのに、担任の教師に、「この子はまれにみる知能指数の高い子である」と暗示をかけておく。
すると担任の教師は、その子に特別に目をかけて指導するようになる。
教師も力が入り、それに応えて子どもも意欲的になり実際に成績が伸びるということがある。
これは、「ピグマリオン効果」といわれている。
ただこう言う、プラスの認知の誤りはよいが、めったにない。

神経症で苦しむ人は、マイナス、ネガティブな認知で実態以上の問題を抱えて苦しんでいる。
これを対人関係で見てみよう。
異性から見た自分自身に自信のない人は、「自分はどうせモテないだろう」とか、「うまくいっても、どこかで嫌われてしまうだろう」といったネガティブな受け取り方をする。
そのような予期を持っていると、異性に対する行動も不安の多い、消極的な行動になってしまう。

たとえば、男性Dさんには、彼女にしたい女性がいた。
そろそろ彼の胸の内を告白すべきかと思っていた。
しかし、彼は「男としての魅力が自分にないのではないか」という考えに悩まされていた。
つきあってくれなんて言ったら、笑われるに決まっている。
「友だち同士のつもりでいたの。恋人としては付き合えないから、もう合わない方がいいかもね」
そんなふうに言われるに決まっている。
会えないくらいなら、友だちでもいいから一緒にいたい。
Dさんはネガティブな予想を立ててしまった。

これに対して彼女の方はどうだったか。
決して男性的とは言えないがいろいろと細かい気遣いのできるDさんに、相手の女性は好意をもっており親密なつきあいを望んでいたが、Dさんが何も言ってこないことが次第に気になってきた。
「この人、私に優しく接してくれていい感じの人だけど、好きともなんとも言ってこない。
これは私に気があるんでも何でもなくて、きっと人がいいだけで、別に相手が私でなくてもよかったのかも」

結局、Dさんはその女性に打ち明けることができなかった。
その女性もDさんのことをいい人だと思いながらも、特に気になる男性とは思わなくなってしまい、次第に会う機会を減らしていった。
実に残念な結果である。読者の皆様も思い出すことがあるかもしれない。

これは一つの事例ですから、この反対のケースももちろんあり得る。
でもこれは自分勝手な思い込み、先入観、決めつけで相手の気持ちを推測しているだけで終わってしまっている。
真実は闇に包まれたままである。
このようなやり方では、自分も相手もみすみすチャンスを逃してしまう。
そして将来、その時のことを思い出しては後悔の念で嘆き悲しんでしまう。

この場合、事実をつかむための努力はできなかったのだろうか。
彼女に彼氏がいるのかどうかは手をまわして調べればすぐに分かるはずである。
それならまだあきらめもつく。
友だち付き合いはしているのだから、彼女に結婚についてどんなことを考えているのかぐらいは聞けるのではないだろうか。
結婚したいという願望があるのか、結婚相手の性格とか、どんな家庭を築きたいのか。
それらが自分の希望と似通っていれば、あとは見切り発車でよいのではなかろうか。

自分で言うのが難しかったら周囲の友だちなどに協力を仰ぐ手もある。
何も自分ひとりで立ち向かわなくても方法は他にもある。
第三者から「彼があなたのことを好きらしい」というのは、相手に好感を持ってもらえると思う。

森田ではチャンスの神様は、前髪はあるが後ろ髪はないと言われる。
前髪をつかみ損なったら、もう自分にチャンスは巡ってくることはないと思っていたほうがよさそうである。
(ネガティブマインド 坂本真士 中公新書 129ページ参照)





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Last updated  2016.08.15 06:21:40
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