森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2022.03.18
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柏木哲夫医師の話です。
外泊許可をめぐって看護師との会話です。

その1・・・85歳の大腸がんの末期患者が外泊予定日に38度の熱が出たので医師の立場から予定を取り消した。
受け持ちの看護師がやって来て、 「先生、Aさんは外泊すべきだと思います」 という。私はその言い方にムカッとして「しかし、熱があるからな」と返した。
それに対して「今日を逃せば、もう外泊はできないと思います」と反論してきた。
私は「いや、またチャンスがあると思うよ」と言うと、「今の患者のニーズを満たすことがホスピスだと思いますが」と返してきた。
私は「熱があるのに外泊を許可して何か起きたら私の責任だからね」と言い返した。看護師と私は険悪な状態になった。関係修復に時間がかかった。

その2・・・82歳の前立腺癌で末期患者のBさんがいた。
この方も外泊予定日に熱が出た。尿路感染だった。外泊予定を取り消した。
別の看護師がやって来て 「先生、Bさんが外泊できなかったのが、私、悲しくて」 と言う。私は「せっかく一生懸命いろいろアレンジしてくれたのに、残念だけど、熱があったからね」と答えた。
看護師は「もし外泊して何かあったら大変ですものね」という。
私は「ただ、患者さんや家族の望みを満たすことがホスピスだからね。もう一度、検討し直そうか」と返した。
看護師は「いえ、残念ですけど今回の外泊は見送った方がよいと思います。きっとまたチャンスがあると思います」と言う。
私も看護師も「外泊許可が出せなくて残念だ」という気持ちでいっぱいだった。
(人生の実力 柏木哲夫 幻冬舎 180ページより要旨引用)

この2つは同じようなケースですが、その後の展開に雲泥の差が生じました。
その1では、人間関係が険悪になりました。
その2では、相手を思いやってやさしい気持ちになりました。
どこが違っていたのでしょう。これは森田理論にもかかわることです。

その1では、看護師も柏木医師も「自分の意見」をもとにして会話しています。
自分の意見を述べ合うということは、自分にその気持ちがなくても、自分の言い分を相手に押し通すことになります。
結果として相手の意見を非難・否定することになります。
話は平行線をたどり、2人とも気まずい思いをすることになります。
これを防ぐには、どちらかが自分の意見を取り下げることが必要になります。
いづれにしても後味が悪くなります。
それよりも、最初から「その2」のような対応を心掛けた方がよいと思います。

その2では、「自分の意見」ではなく「自分の素直な感情や気持ち」をもとにした会話になっています。
「自分の素直な感情や気持ち」は、相手に自分の主張を押し付けません。
相手がどんな対応を取ろうと、それは相手の自由ということになります。
これを森田では「純な心」と言います。
「純な心」からの会話を心掛けると、相手は自分の素直な感情に対して、素直に応答してくるという現象が現れます。
磁石のプラスとマイナスが引き寄せられるようなものです。
これで人間関係が改善されるのでしたら利用しない手はないと思いますが如何でしょうか。





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