森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2022.07.28
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カテゴリ: 森田番外編
時代小説家、藤沢周平氏の文庫本は合計2300万部も売れているという。
映画やドラマにも取り上げられている。
何処に魅力があるのだろうか。興味は尽きない。
しばらく藤沢周平氏の魅力について取り上げてみたい。

女優の竹下景子氏は次のように紹介されている。
藤沢先生の作品を読んでいると、登場人物のほとんどは下級武士や市井の人など、無名で私たちと何ら変わらない人たちであることに気づきます。
藤沢先生は、そんな庶民のささやかな暮らしぶりをすくい上げてきた人で、そこでは絶望や、思いもよらない不幸に遭遇したりしますが、結末では必ず「薄明かり」のような、うっすらと明るいものが見え隠れする。
あるとき、「それが藤沢先生の温かさ、人に対する優しさの投影」なのだと気づきました。それは、いま生きている私たちに向けられた「いとおしさ」のようなものであり、「ささやかに」生きていくことの大切さを教えてくれるものだという気がします。
(藤沢周平「人はどう生きるか」 遠藤崇寿・遠藤展子 悟空出版 133ページ)

作家の宮部みゆき氏は次のように説明されています。
人間50年、60年と生きてくれば、思い出したくない過去、消してしまいたい過去の1つや2つあるものです。
それらをそう簡単にきれいさっぱりと忘れることは出来ないのだから、それを引きずりながら、その過去を引き受けて生きることも大切。
そこから逃げないという覚悟も必要かもしれない。
そして、そうやって生きてきた結果、その先に小さな幸せや小さな理解が生まれたとしたら、それはもう、誰に遠慮することもなく「その人」が大手を広げて、しっかり掴んでいいんです。
一生懸命に生きる人たちにやさしい、それが藤沢ワールドです。

続いて、落合恵子氏曰く。
一生懸命生きてきて、いろんな失敗やいじめを体験するかもしれないけれど、でも、最後に「生きるってことはそんなに捨てたもんじゃない」と思える人生でないとおかしいという主張が、藤沢先生にはある。
(同書 167ページから168ページ)

佐高信氏は次のように述べておられる。
雪の原野に立ち尽くす迷子の子供がいたとして、これを助けようとしない大人はまずいません。でもその助け方にも二通りあって、ひとつは、その子を咄嗟に毛布にくるんで自分の車に連れて行き、自分の家に着くと、すぐ暖炉の横に立たせて、暖かい牛乳を飲ませるという処し方。
もちろんこれも素晴らしい人助けですが、藤沢さんのやり方は違うと思う。
まあ、彼には、車も暖炉もないかも知れませんが、彼なら、まずその子供のところに一目散に走って行って、抱きしめると思うんです。
そして寒さに震えて泣いてる子供を抱きしめて、周りの雪を彼にまぶしながら、必死に身体をさすると思うんです。
まず、自分の手で抱きしめて、自分の手でさする。
つまり、なにより先に、人間の温もりで温めてあげようという思い、その思いが子供に伝わり、子供は元気を取り戻す。
藤沢さんの場合はこれです。(同書 169ページ)

藤沢周平氏は次のように言っている。
男も女も、人間はみなずるく、それでいて優しくはかない。
人のあさましさ、醜さを見るからこそ、人は人に優しくなれる。
人間は、いくつになっても再起ができる。
人生はリセット可能。そしてそれは遅すぎるということはない。

藤沢周平氏の小説は、生きる勇気を与える作品ばかりだと思います。
私は藤沢作品の大ファンです。短編もあり、長編もあります。
私は、「海鳴り」「蝉しぐれ」「三屋清左衛門残日録」「一茶」「霧の果て」「喜多川歌麿女絵草紙」「漆の実のみのる国」などの長編が印象に残っています。

特に「海鳴り」は何度も繰り返して読んでいます。
紙問屋を経営する主人が、ふとしたことから同業者の奥さんと不倫関係になり、他の同業者から恐喝されるという話です。
最後は切羽詰まって心中するしかないと思っていました。
藤沢氏も最初はそのような形で終わらせようとしていましたが、情が移ってきて心中させることは忍びないという気持ちになったといわれていました。

人生に行き詰まった時、自分に寄り添って、「それで十分ですよ。完璧な人なんていないのですから」とささやいてくれているように思います。
涙が出る映画、感動する音楽と同じように、藤沢氏の小説を読むと優しい気持ちにさせられます。生涯に渡って読み続けることになりそうです。

江戸時代の歴史小説ですが、登場人物は何らかの問題を抱えている人たちばかりです。食べることに困り、不治の病と闘い、仕事で行き詰まった人、理不尽な運命に翻弄されている人、人間関係に大きな問題を抱えている人達です。
そういう人たちが、運命に翻弄されながらも、決して人生を投げていない。
人に冷ややかに見られながらも、懸命に生きている。そこに共感できるのです。

藤沢周平氏がどうしてそのような心境になられたのか。興味が尽きない。
それは自身の病気や思うようにならなかった仕事、最愛の妻の早すぎる死と無縁ではなかったと思う。明日は、藤沢周平氏の一生を見てゆきたい。





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Last updated  2022.07.28 23:47:55
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