2012年12月16日
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カテゴリ: シリーズ京歩き

伏見区上鳥羽の浄善寺というお寺には、「恋塚」と呼ばれる石塔が残されています。

「恋塚」とは、何ともロマンチックな言葉の響き・・・。

この「恋塚」には、遠藤盛遠(後の文覚上人)と袈裟御前の恋物語が伝えられているのですが、
しかし、それは、そのロマンチックなネーミングとはうらはらに、
悲しくも、そして、残酷でさえある、恋のお話なのでありました。

今回は、この「恋塚」にまつわるお話について、まとめてみたいと思います。


*****


平安時代の末、院の警護にあたる北面の武士に、遠藤盛遠という男がいました。

年若く血気盛んな、気性の激しい男でありましたが、ある日、一人の女性を見染めます。

その名は、袈裟御前。


やがて、盛遠は、その女性が実は自分のいとこであり、
しかも、今は、同僚である渡辺渡に嫁いでいるということを知ります。

永らく会わないうちに、こんなに美しい女性になって、それが、渡の妻になっているとは・・・。

盛遠の袈裟に対する恋慕の思いは、日に日に高まっていきます。


そうした中、やがて、盛遠は袈裟の家に乗り込んでいき、
袈裟の母に対して刀をつきつけ「渡と縁を切れ」と迫ったりするようにまでなっていきます。

盛遠からの強引な求愛に対し、思い悩む袈裟御前。

そして、悩んだ末に袈裟は、ついに、ある決断をします。


「今夜、寝静まった頃、寝所に押し入って、私の夫を殺してください。」

段取りをつけ、夫を寝かせておくようにしておきますから・・・。


ついに思いが通じたと、喜ぶ盛遠。

袈裟に教えられた通りに、渡の部屋に忍び込んで、ひと思いに刀を振り下ろし、その首をはねます。

しかし、その次の瞬間、盛遠は、自分がとんでもない過ちをおかしてしまったことに気づきました。

自分がはねたのは、なんと、渡ではなく、愛する袈裟の首。


そうです。袈裟は、母と夫を守るため、その身代りとして、渡の寝所に入っていたのでありました。


己の罪深さを思い知った盛遠は、強い悔悟の念におそわれ、
髪をまるめて、出家することとなりました。


*****


その後の盛遠は、文覚と名乗り、修行のため全国を行脚してまわりました。

やがて、都に戻った文覚は、当時荒廃していた神護寺や東寺などの
諸寺を次々に再興。

後白河法皇からも信頼されるほどの名僧となっていきます。

また、当時、伊豆で流罪生活を送っていた頼朝に対し、
挙兵を促したということでも、その名を歴史に残すことになりました。




浄善寺.jpg




「恋塚」のある浄善寺です。

この寺は、寿永元年(1182年)袈裟御前の菩提を弔うため
文覚上人により建立されたものと伝えられています。

実際に行ってみると、きれいに清められ整えられている、気持ちの良いお寺でありました。




恋塚.jpg



袈裟御前の首を埋めたと伝えられている「恋塚」。


この五輪塔には、きっと、毎日花が手向けられているのでしょうね。

この悲しい物語に対し、多くの人が、これまで袈裟の供養を続けてきているようです。

文覚上人の供養の思いも、袈裟には通じているのでしょうか。


今も、浄善寺と「恋塚」は、何気ない住宅地の中に、ひっそりと佇んでいます。






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最終更新日  2012年12月22日 07時27分17秒
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Re:恋塚(12/16)  
長谷川一夫の映画を思い出しました。
昔の映画ですが、最近の時代劇映画祭で拝見しました。

昔の映画は情緒があり映像も綺麗で哀しい物語も素敵に見えました。

(2012年12月16日 21時18分01秒)

Re[1]:恋塚(12/16)  
ゆうあいママtosaさん
こんばんわ~

>長谷川一夫の映画を思い出しました。
>昔の映画ですが、最近の時代劇映画祭で拝見しました。

>昔の映画は情緒があり映像も綺麗で哀しい物語も素敵に見えました。

「地獄変」ですかね。この話は小説の題材にもなり、映画化もされているようですね。
一昔前は、こうした話も割と一般に知られていたのでしょうけど、今は全く触れられる機会がないですね。
これも、マスコミの影響や嗜好の変化ということなのでしょうか。ちょっと残念に思いますけどね。
(2012年12月16日 22時08分55秒)

Re:恋塚(12/16)  
picchuko  さん
gundayuuさん、こんにちは!
恋塚という呼び名からは想像もできないですね。
私はこの話を吉川英治さんの「新・平家物語」で初めて知りまいたが、その時は彼女の覚悟に驚きました。
この方法しかなかったのだろうかとも思いましたが、すごい女性だなとも。

偉大な僧であっても、こんな罪を犯してるのですね。
いや、こういう罪を償うという気持ちから、偉大な僧が生まれたわけですね。
複雑ですけど、大きな人ってそうなんだと思います。 (2012年12月17日 08時15分52秒)

Re:恋塚(12/16)  
ほほえみ塾  さん
gundayuuさmmへ

おはようございます♪
年の瀬も押し詰まり、気忙しい日々ですね。

さて、
改めて恋塚のお話しを読むとまた新たな悲しみを覚えますね。

覚悟の女性の行動には目を見張るモノがあります。
そして
過ちを犯した人の悔悟と生き直しの姿も人間の性のような気がします。
人間とは過ちを犯さないと気がつかない動物のようです。
そのために本と言うものがあり、
そうした古人の経験から己を律することが出来るようになるんだと思います。
とは言え、、
それが中々に出来ないのが凡人の悲しさです。

多くの失敗をして、やっと前に進んでいます。

齢65歳にもなるともう後ろではなく前にしか進めないんですけどね。
向寒の折、お体ご自愛くださいませ。
(2012年12月19日 09時53分18秒)

Re[1]:恋塚(12/16)  
picchukoさん
おはようございます。

>恋塚という呼び名からは想像もできないですね。
>私はこの話を吉川英治さんの「新・平家物語」で初めて知りまいたが、その時は彼女の覚悟に驚きました。
>この方法しかなかったのだろうかとも思いましたが、すごい女性だなとも。

ホント、思い切った行動ですね。すごい覚悟です。
それだけ、思い詰めてもいたんでしょうね。

吉川英治の「新・平家物語」読まれたんですか。
私も読んでみたいと前から思っているのですが、かなりの長編ですし、いまだ手が出せずにいます。

>偉大な僧であっても、こんな罪を犯してるのですね。
>いや、こういう罪を償うという気持ちから、偉大な僧が生まれたわけですね。
>複雑ですけど、大きな人ってそうなんだと思います

大きな過ちやショックから立ち直った人というのは、強いのだと思います。
自省を何度も繰り返すと、その先に見えてくるものがあるようにも思えます。
(2012年12月22日 08時31分39秒)

Re[1]:恋塚(12/16)  
ほほえみ塾さん
おはようございます。

>過ちを犯した人の悔悟と生き直しの姿も人間の性のような気がします。
>人間とは過ちを犯さないと気がつかない動物のようです。

そうですね。
人の性なんでしょうか。
私なども、過ちを犯さないと気がつかないんだなと感じることがありますが、
それでも、同じ過ちを繰り返してしまうことも。
自戒が足りないということでしょうね。

>そのために本と言うものがあり、
>そうした古人の経験から己を律することが出来るようになるんだと思います。
>とは言え、、
>それが中々に出来ないのが凡人の悲しさです。
>多くの失敗をして、やっと前に進んでいます。
>齢65歳にもなるともう後ろではなく前にしか進めないんですけどね。

そうですね。凡人の悲しさですね。
本を読み、古人の経験から学べることは、本当に多いと思うんですが、
なかなか、実践できていない。
でもそれも、たとえちょっとづつでも、日々の積み重ねが大切なんだと思います。
そうした点で、ほほえみ塾さんは凄いと思います。

>向寒の折、お体ご自愛くださいませ。

今年の冬は寒くなりそうですね。
ほほえみ塾さんも、お身体ご自愛ください。
(2012年12月22日 08時39分41秒)

Re:恋塚(12/16)  
どこかで聞いた名前がいろいろと繋がっていくのはおもしろいですね。
文覚そうでしたか。
袈裟御前の話はずっと前に聞いたのですが、(読んだのかな)ずっと忘れていました。
かなしい物語ですね。 (2012年12月25日 13時17分50秒)

Re:恋塚(12/16)  
KAZNY  さん
悲しい悲しい恋の物語ですね。
実は私は最近ドラマの地名で使われている、恋ヶ窪というところに昔住んでいたことがあります。
そこも悲しい恋物語があったようです。 (2012年12月27日 05時21分37秒)

Re[1]:恋塚(12/16)  
灰色ウサギ0646さん
おはようございます。

>どこかで聞いた名前がいろいろと繋がっていくのはおもしろいですね。
>文覚そうでしたか。
袈裟御前の話はずっと前に聞いたのですが、(読んだのかな)ずっと忘れていました。
>かなしい物語ですね。

文覚や袈裟御前、名前は知っていても、どんな人だったっけとピンとこないかも知れないですね。
そんなに有名な話というわけでありませんし。
悲しい物語、とても、現代では考えられないような話ですね。

(2012年12月29日 06時58分16秒)

Re[1]:恋塚(12/16)  
KAZNYさん
おはようございます。

>悲しい悲しい恋の物語ですね。
>実は私は最近ドラマの地名で使われている、恋ヶ窪というところに昔住んでいたことがあります。
>そこも悲しい恋物語があったようです。

恋ヶ窪という地名もロマンチックですね。
でも、そういうロマンチックな名称がついているのは、意外と悲恋のお話が秘められているのかも知れませんね。
(2012年12月29日 07時01分12秒)

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