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図面を持って新幹線に乗って大阪に打ち合わせなんて
かっこいいなあと思いつつ、どんな人と
打ち合わせするのだろうという不安もあった。
というのは、実は私はそのプロジェクトの担当ではなく、急遽ピンチヒッターとしての打ち合わせだったのです。
私はそのプロジェクトの仕事の流れすらわからずに、所長の指示もほとんど無く、所長に
『オオシマクン、大阪行って打ち合わせしてきてくれ!』
との指示のみで新幹線に乗ったわけなのです。
緊張の打ち合わせ。
平面図、立面図など、持っていったものの説明を
無難に進める私。
”よしよし、これならスムーズに打ち合わせは終わり
どこかで一杯飲めるなあ、奥村組時代の仲間に電話して
今日はどこかでゆっくりして今晩は泊まっていくか・・・”
と内心、他事を考え出したそのとき、
『ところで、伏せ図は持ってきてないの?』
『??? ふっ、ふせずですか』
頭の中がぐるぐる回りだした。
”ふせずって、伏せ図だよなあ、土台とか梁とかの
構造骨組みの図面だよなあ、存在は知っていても描いたこと一度も無いじゃないかあ、そもそも大工さんが
描く図面だよなあ、設計事務所ではあまり描かないよなあ”
実は日本の大学教育では木造の構造については授業自体無いことをご存知でしょうか?
そして設計事務所でも・・・
私みたいに設計マンが伏せ図を描いたことが無いこと自体は業界的には普通のことなのです。
『伏せ図が必要なのですか?』
『おかしいなあ、頼んであったのに・・
しょうがないなあ、ここで描いていってよ!オオシマサン』
おかしいと思うのはこちらのほうデイ!
と言いたくなる気持ちは分かってもらえるだろうか?
描いていってよと言われて、私はどうすべきだったのだろう?
伏せ図を描く能力なんてマルでない私。しかしわざわざ大阪まで設計事務所員として出張してきて
何も知らないーじゃあ、かっこ悪すぎる。
でも恥を忍んで
『すみません、伏せ図描いたことがないのです。』
正直にそういうしか選択肢はやっぱり無いですよね。
『えー、しょうがないなあ、今から一緒に仕上るか』
その後、担当者が私にレクチャーしながらようやく必要な伏せ図が1棟分出来上がった。
全部で10何棟の区画のたった一つが終わった。
『もう時間も遅いので、今日は持ち帰ってあとの図面を仕上てきてください』
レクチャーしながらなのでもう1棟でも
時間は随分かかってしまった。
担当者に残業させてしまった事と、また
図面の納期を伸ばさざるを得なくなってしまった事もあり
ダブルでばつの悪いこと。
しかし担当者さんはありがたくも居酒屋に誘っていただいて
今度は私のペースで時間は過ぎた。『あんたみたいな人が私の娘の旦那ならなア』
と冗談が出るくらいご機嫌な宴会でした。
そうして名古屋に戻ってきたわけなのだが、残りの図面作成を考えると目の前はまた真っ暗に!
1軒分を目の前で聞いただけでわかるほど木造が簡単な訳が無い。
事務所の誰に聞いてもあまり知らないだろうし、
また知っていても会社内のムード自体が所員同士が相談する
という場ではなかったことで
私はどうしたかというと・・・・
父親に教えてもらったのだ。
父親は14歳から大工で
そのときは工務店の社長だった。
プロが身近にいたわけだ。
そして初めて父親から建築のことを教わった日が来たわけです。
そして木構造のおもしろさが判った気になった日でもあったのです。
結局、残りの10何棟の伏せ図を完成させたときに感じたのは疲労感より、達成感だった。
『おもしろいじゃん!!』
設計事務所に入って、初めての満足感が感じられたのだ。
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