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2024年5月刊富士見L文庫著者:みちふむさん大正時代の函館。旧華族の清子は顔の痣により冷遇されて育った。そんな彼女は、金のため顔も知らぬ実業家に嫁ぐように命じられる。清子が出向いた屋敷には、商才あふれる美貌の青年・朔弥がいた。しかし彼の目は不自由になりつつあり、これまでの縁談への苛立ちから彼女を拒絶。それでも清子は真摯に接し、朔弥も、その育ちゆえに真心で人を見る彼女に心惹かれ、互いにかけがえない存在に。だが、痣を知った岩倉本家は彼女を追い出そうとしてーー。彼と生きるため、清子はその人柄と聡明さで懸命に試練に向き合い……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 伊地知清子=名家の娘ながら、生まれつき顔に大きな痣があることから家族に虐 げられていた。 岩倉朔弥=資産家の長男で清子の見合い相手。目が不自由で気難しい性格。 近藤正孝=朔弥の秘書。 岩倉哲嗣=朔弥の弟で岩倉家の次期当主。旧華族の流れを汲む伊地知家の長女・清子は、顔にある大きな青痣のせいで家族、特に母から疎まれて使用人以下の扱いを受けていた。毎日こき使われてくたくたではあったが、そんな彼女にも楽しみな事が一つ。家族の誰もが面倒がっていた先祖の寺供養を押し付けられた清子を住職夫婦が気にかけ、有名女学校出だという奥さんが勉強を教えてくれるようになったのだ。小学校しか出ていない清子は、おかげで色々な事を学べたし、奥さんが紹介してくれる繕い物の内職で幾ばくかの現金を手にする事が出来た。息子たちのお下がりだけどと貰った本と読み終わった新聞を貰い帰宅すると、珍しく父から呼び出しが。恐る恐る出向くと叔母が来ており、母と優子も揃っていて、自分に縁談が来ていることを知らされた。お相手は貿易商を営む岩倉家の長男・朔弥。裏では成り上がりと陰口を叩かれつつも、社長は商才がありかなりのやり手らしい。当初、両親は優子を嫁に出す気だったようだが、直前で勿体ないと考え直し清子に変更すると叔母に話すと、後日岩倉家に行くよう命じた。色々ショックではあったが、もし嫁いで上手くいかなかったらうちの寺で暮らせばいいと奥さんから励まされ、何とか覚悟はできた。数日後、朔弥が暮らすと言う岩倉家の別邸へやって来た清子は、半日近く待たされた挙句、見合いをすっぽかされてしまった。しかし、根気よく待ち続けていると夜半に帰宅した朔弥はビックリ。結婚なんてしないと、屋敷の使用人の瀧川が止めるのも聞かず、雨の降る中彼女を追い出した。このまま帰ったら父に何と言われるか。母からの折檻も恐ろしい。とぼとぼ歩いていると瀧川が追い付いて、岩倉邸に戻ることに。あの後、自分の乳母を務めていた瀧川に叱られた朔弥は清子を連れ戻すよう命じていた。だが、雨に当たったせいか彼女は熱を出して寝込んでしまい、医師に診てもらうと栄養失調だと判った。名家の娘が栄養失調?不思議に思いながらも彼は暫く屋敷で養生させると、秘書の近藤に伊地知家を調査するよう頼んだ。何とか回復した清子に、朔弥はある提案を持ちかけた。生まれつき視力が弱く不自由な生活をしてはいるが、頭が良く専務として働く彼には縁談がひっきりなしに申し込まれているのだそうだ。そこで、実家に戻り難いのであれば許嫁のフリをして自分の身の回りの世話をして欲しいと。新聞を読むことができるのも助かると話す彼に、清子は自分ばかりが得してないかと気にはしていたが、提案に応じた。彼は全く見えないわけではないものの、輪郭や色が多少わかる程度でやはり常人とは違い介助が必要な場合も多い。着替え等は瀧川が手伝い、おさんどんや瀧川の補助、そして毎朝新聞を3紙ほど読み聞かせるのが清子の仕事となった。朔弥は自分に歯がゆく思うことがあるのかよく癇癪を起し、気難しい性格だ。だが、優しい面もあって瀧川から聞いたのだろう、荷物の少ない清子の為に色々用立て、聡明な彼女を褒めた。彼女が新聞で得た昨今の情勢から読み解いて出した案は、いくつも当たって随分儲けさせてくれた。人柄も洞察力が高いのも気に入った。この頃にはフリではなく、本当に自分の妻になってほしいと朔弥は思い始めていた。瀧川の話では彼女の顔にはかなり目立つ青痣があると言う。本人も気にしているようだが、朔弥には見えないし、それがなんだと思う。しかし、当の伊地知家が今になって清子を嫁に出すのを渋り始めたのだ。調査により、家族で彼女を蔑ろにしていたのは知っている。だが、いなくなって初めて清子の重要性に気付いたのだろう。最近詐欺に遭って事業も上手くいってないようだし、取り戻せないなら結納金を多く請求してきそうだ。多少は色を付けてもいいが、ずっと援助を期待されても困る。そこで後日、上手い話と脅しも付け加えて結婚の許可を迫ると、当主は渋々承諾。問題は朔弥の家族か。案の定、母は痣のある娘なんてと反対しているようだったが、実力主義の父は、これまでの清子の功績を話すと随分と気に入ったようだ。弟の哲嗣も手放しではないが一応祝福してくれている。清子もホッとしたようではあったものの、どうも父たちに会った日から様子がおかしい。父母は面と向かって彼女に何か言ったようには見えなかった。となると哲嗣の方か。案の定、哲嗣は清子の容姿について兄がかわいそうだと彼女を責めていて・・・。兄のことが大好きな哲嗣はこの結婚を反対していました。お人好しだが気立てが良く、頭も良い清子を朔弥は自分のことのように自慢に思っており、弟にも彼女の良さをどう判ってもらおうか模索。一方、伊地知家は所有していた貸物件が阿片の闇取引会場にされていたことにより、あらぬ疑いを掛けられたせいで見る見る没落。優子も学校を辞めざるを得なくなり屋敷を売却し、町を去ることに。これはもう完全に娘を虐げていた罰ですね。その頃、朔弥たちも所有する鉱山で暴動が起きて危機に陥っていた所、清子の活躍で鉱山を管理させていた社員達が横領していたせいだと判り事態は収束を向かえます。朔弥はこの件で一層清子に惚れ直し、哲嗣も蟠りは残しつつも彼女の優秀さを認めるのでした。その後、朔弥と清子は結納を交わし、正式に婚約者となって幕。清子さんの才媛っぷりだけでなく、その人となりなんかも良く描かれていて、これは人嫌いさえも惚れさせるわと納得。続編もあるそうなので次は朔弥の溺愛も見られるんでしょうかね。評価:★★★★★
2024.06.30
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2024年3月刊こはく文庫著者:小日向江麻さん幼いころから特徴的な声を揶揄われ続けてきたことで、24歳になった今でも男性が苦手な秋山恵里衣。社会人になって2年。さすがに職場の男性陣には慣れつつあるが、専務の楠孝紀は話が別。とにかく愛想のない彼は陰で「堅氷の御曹司」と呼ばれているのだ。それでも整ったルックスと御曹司という立場から、彼に恋する女性社員は少なくないらしいが、恵里衣にとってはただただ畏怖の対象だった。そんな孝紀から、恵里衣は信じられないお願いをされる。次々と舞い込む見合い話と、しつこく言い寄ってくる女性社員を遠ざけるため、「恋人のふりをしてほしい」というのだ。「人助けと思って協力してほしい」と孝紀に頭を下げられ、恐怖のあまり恵里衣はそのお願いを受け入れてしまう。こうして、目立たない存在だった恵里衣は突然、女性社員の羨望と嫉妬の対象となってしまう。偽の恋人役を引き受けたことを後悔する恵里衣だったが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 秋山恵里衣=建築会社に勤める会社員。アニメ声を揶揄われ男性が苦手になった 楠孝紀=恵里衣の勤め先の御曹司。 若葉夏純=恵里衣の上司。 新田佳那=恵里衣と同期入社の友人。 越野=恵里衣の同僚。建築会社の総務部で働く恵里衣は男性が大の苦手。上司に電話を回すだけでも無駄に緊張してしまう程で、友人の佳那からは荒療治してでも克服しないと婚期を逃すよと心配されている。小学生の頃、同級生の男子にアニメみたいな声だと馬鹿にされ揶揄われ続けたおかげで、すっかり男子が苦手となり声もコンプレックスに。学校も女子校に進んだので苦手意識を克服できないままここまで来てしまった。そんな彼女にも少々気になる人はいた。この会社の御曹司で専務の楠孝紀である。容姿端麗で優秀、加えて会社の跡取りということで女性社員達から絶大な人気を誇っているのだが、如何せん彼は堅物だった。ニコリともしないので付いた渾名は「堅氷の御曹司」部署が違うので早々出くわさないのだが、今日は休憩室で遭遇。佳那の話では、プライベートのお誘いには一切乗らずバッサリと断っているらしいのに、めげずにアタックする者が後を絶たないらしい。本人にその気が無ければモテるのも迷惑なんだなと思いつつ、係長の若葉に頼まれその日、恵里衣は資料製作の為に残業することになった。1時間ほどで終わるかなとあたりを付けて作業をしていると、背後から男性に声を掛けられてビックリ。振り向くとそこには楠が。彼は少し付き合って欲しいと告げると別室に彼女を連れて行くと徐に、私の恋人のフリをして欲しいんだと頼まれた。彼が言うには親と親戚連中からのお見合い攻撃に加え、会社では女性社員達からの猛アプローチ。正直言えば非常に煩わしいのだそうだ。そこで悩む彼にとある人物がアドバイスをくれた。偽装の恋人を作れと。だが、誰でもいいわけではない。真面目で自分に好意を持ってない人物が好ましい。そこで、アドバイスをくれた知人の勧めで恵里衣に声をかけたのだと言う。まぁ確かに多少は気になる人ではあったけれど、怖い人という印象でだ。飽くまでフリだけでいいというのと、かなり切実な様子だったのでつい引き受けてしまった。しかし、翌日にはOKしたことを激しく後悔。休憩時間には佳那から質問攻めに遭い、彼氏ができたならもっと早く報告してよ、と怒られた。それ以前にどうしてもう佳那が知っているのか。だが、彼女の話に恵里衣は驚愕。なんと、楠がいつもの女性社員達からのお誘いに恋人がいるのでと断り、恵里衣と交際していると言っているそうなのだ。佳那はその会話を耳にした友人から聞いたと言っていたが、そうか女避けのための恋人のフリなんだからその存在をアピールしなければ意味が無いわけで。よく考えずに引き受けたことに青くなっていると、楠狙いだった女性社員達数名がやって来て恵里衣を取り囲むとどうやって取り入ったんだと猛烈に責め立てられた。おまけにコンプレックスの声のことまで言われて落ち込みかけていると楠が現れて助け出してくれた。とはいえ、彼のせいでこんな目に合っているのだが。やはり自分には無理だと言ってみたが、これからはあんな嫌な思いはさせないと一番ターゲットにされそうな退勤時に彼が車で家まで送ってくれることに。実家住まいのため、イケメンが高級車で姉を送って来たと高校生の妹は大騒ぎし、母は漸く苦手を克服してくれたと大喜び。是非、都合が合ったらうちに連れて来いと煩くてしょうがない。飽くまでフリなので、送ってくれる時間でしか会話は無いのだが、ある時、好きな画家の話で意気投合。持っている画集を彼に貸すと大変気に入ったと、以来、話も弾むように。未だ男性が苦手のため、社員旅行は毎年不参加だったのを楠に頼まれて初参加を決めた。こういう時は羽目を外す者も多い。懸念していた通り、恵里衣がいてもアタックしてくる女性達の様子を見るにやはりその場にいると居ないのとでは違うようだった。改めて助かったと彼から感謝され、部屋に戻ると同僚の越野が訪ねて来て恵里衣に告白。酔っているのか専務なんてやめて俺と付き合おうと押し倒されパニくっていたら、間一髪様子を見に来てくれた楠に救われ事なきを得た。越野を追い返し、実は男性恐怖症なのだと恵里衣が告げると彼は驚いていたが、どうしてだかあなただけは怖くないのだとも話すと、なら自分を練習台にしてほしいと楠にキスをされた。やはり、こういう触れ合いをしても彼なら怖くない。もしかしてこれが恋心なんだろうか。社員旅行から帰って普段の日常が戻った頃、楠との関係も変化していた。だが、越野が先日の謝罪と共に、楠には気を付けろと忠告してきたので、内心驚いていると、楠は若葉とも交際しているんだと教えられ・・・。タイトルでは「偽婚約者」とありますが、作中では飽くまで偽の恋人です。上司から突拍子もない頼み事をされ、苦手意識がありながらも恋人のフリを引き受けた恵里衣は、妬まれ陰口を叩かれる羽目に。それでも、楠の申し出で車で送って貰うようになると凸されることも無くなり、嗜好が似ているのが判り話も弾みます。旅行でのトラブルで仲も深まり、楠を男として意識し始めた恵里衣が耳にした良からぬ噂。まさか若葉さんとの仲を隠すために恋人のフリを頼んだの?悩んだ末に、こんな関係はもうやめようと楠に打ち明けると、二股なんてとんでもない自分の本命は君だと言われて彼女は茫然。若葉さんと交際してるんじゃと尋ねれば、実は二人は元々同級生で腐れ縁らしく、若葉からはお見合い回避と女避けをしたいなら良い子を見つけて恋人にしろとアドバイスされていました。その際、若葉がイチオシしてきたのが恵里衣で、楠の方も大人しいながら真面目で丁寧な仕事をする彼女に好感を持っていた。若葉と親密に見えたのも恵里衣とのことを相談していただけだったという。しかし、彼女が男が苦手なこともあって、人の好さに付け込むことにはなるが恋人のフリとして申し込んだと言うのがあらまし。女性声優さんが過去バナでよく声のことで揶揄われた、みたいな話をよく聞きますが、そういう声は目立つし特に男の子からの揶揄は好意の裏返しみたいなもんですからね。それをまともに受け取りコンプレックスになったり男性が苦手になったりあるので、男子よ、もっと大人になれよと。真相が判り、お互い両想いだった自覚した二人は正式に交際することになって物語は〆横取りする気満々だった女性達のガッツぶりが凄かった。評価:★★★★☆
2024.06.29
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2024年6月刊蜜猫文庫著者:すずね凛さん没落した伯爵令嬢イェルダは王命により結婚する事となり、 戦争で顔に傷を負っているが美貌の公爵アウレリウスの妻となった。 捕虜になっていた事が原因で人間不信になり屋敷に閉じこもっていた彼だったが、 イェルダとの温かい交流で再び人を信じるようになっていく。 「いつの間にか、あなたを心から愛していた」 彼から溺愛され甘い蜜月が過ぎていく。 そんなある日、アウレリウスを逆恨みしていた男にイェルダが誘拐されてーーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 イエルダ=ヨハンセン伯爵家の長女。 王命により辺境で隠遁生活を送るアウレリウスに嫁いだ。アウレリウス=国王の甥でハンメルト公爵家当主。 先の戦争での怪我とストレスのため領地に引き籠っていた。没落貴族の娘・イエルダは、亡き父に代わり病弱な母とまだ幼い弟を支えて生きて来た。明るく前向きな彼女ではあったが、将来の不安はある。弟のヴィクトルは頭が良いのといずれこの家を継ぐ身、学校に行かせてやりたいけれど、入学費を始め安くはない授業料はどう考えても捻り出すことができない。申し訳ないと思いつつも、数十人ほどの子供達に教えている歌の授業料程度では家族が食べて行くだけで精一杯だった。そんなある日、屋敷に訪れた不動産業の男に、銀行からこの屋敷と土地の抵当権を買ったから借金を返せないならひと月以内に退去するよう告げられた。生前の父が詐欺紛いに負わされた借金のおかげで、裕福だったヨハンセン家はその返済に追われて一気に没落。精神的ショックからか父は早逝し、家財を売ることでかなりの額を返済したが、まだ残っているのは判っていた。痺れを切らした銀行が手を打ったのだろうが、あまりの急なことに途方に暮れた。ヴィクトルが自分が子供のいない商家に養子に行って援助してもらうよう交渉するとまで言い出したのを、慌てて止めて、お金は何とかするから母には秘密にするよう頼んだ。でもどう考えても金を用意する手立てがない。考えあぐねていると王宮から緊急の呼び出しが。没落して以来、縁遠い所であったが後日おっかなびっくりで訪れると、国王直々に話があるとのこと。王がイエルダに打診して来たのは、自らの甥に当たるハンメルト公爵との結婚。国王から直接縁談話をされて驚いていると、ハンメルト公爵・アウレリウスはかなりの訳ありの人物らしい。先の隣国との戦争に参加し、兵を率いて多大な戦果を挙げたが終戦間近に敵兵に捕縛され一時期捕虜となっていたという。だが、その際に負った怪我と精神的ストレスにより今は領地に引き籠っているのだそうだ。アウレリウスの話を聞いて彼女は胸を痛め、子供の頃、出陣式の日にカッコイイ騎士にお守りを渡したことを思い出していた。しかし、母と弟を残して嫁には行けない。素直に経済的に困窮しているのでと国王に告げると、結婚すれば公爵家が援助してくれると言い、この結婚は王命であると念押した。屋敷に帰り、母たちに結婚することになったと告げ、ヴィクトルには借金はお相手の方が肩代わりしてくれるそうだから心配はいらないと説明。アウレリウスからも借金の肩代わりと結婚を承諾する手紙が届き、数日後、イエルダは遠い辺境の地・ルゥエンへ。公爵家からの迎えの馬車に乗り込んで2日、漸く辿り着いたルゥエンの中心地は栄えており、厭世家と言いつつ領主の仕事はしっかり努めているのが伺える。しかし、屋敷は大きいけれどどこか寂れていてビックリ。人嫌いが過ぎて広大な屋敷に使用人は数人と聞いてはいたが出迎えに現れた執事のミカルを始め、あとは庭師と料理人の二人。当の本人は出迎えにすら出てこないとはある意味徹底しているではないか。だが、自他共に認めるポジティブシンキングの彼女は、会いたがっていないとミカルから聞いていても、アウレリウスが引き籠っている部屋に押しかけ、明るく挨拶。彼は呆気にとられつつも、王命なので仕方なくこの婚姻を受け入れたこと、イエルダとも仲良くするつもりはないと言い放った。頑ななアウレリウスの態度に多少傷つきつつも、この屋敷の女主人になることは認められたので、好きにやらせてもらうことにした。取り敢えず、一人で食べるのは寂しいので、食事だけは必ず一緒に採るという約束だけは何とか取り付けた。どういう経緯であっても家族となった人とは仲良くしたい。夕食の時にお喋りな彼女は一人で喋り続けていたが、相槌を打ってくてれるだけでも感謝せねば。これまた国王からハンメルト公爵家の血筋を絶やさぬよう、子を成すことを厳命されているので、次の日の夜には初夜を終えたものの、捕虜になった経験があるアウレリウスの身体には無数に傷があり、特に美しい顔に残った傷跡は大きく痛々しかった。彼はこの傷跡もコンプレックスらしく、自らを醜いと卑下していたが、イエルダは国を守った名誉の負傷、醜くなどないと本心から告げた。同衾したせいもあるのだろうが、翌日からアウレリウスの態度が少しだけ軟化。彼が産まれる前からこの家に使えていると言うミカルは主人の変化を喜び、イエルダに感謝した。初日に好きにしていいと言われたので、薄暗く本当に幽霊屋敷みたいな公爵邸を変えて行こうと人嫌いな彼を説得し、掃除等を頼むため人を雇ったイエルダ。彼女が来るまでは3人の使用人だけだったので掃除が行き届かなかったのだろう、見る見る綺麗になって、野菜も作りたいと庭の一角を貰ったイエルダはホームレスの子供たちに声をかけ雇うと荒んだ生活をせぬよう、食事を提供し給金も渡した。手癖の悪い子達の中には初日に盗みを働く者もいたけれど、リーダー格のビルに諭され、もう盗みはしないと誓い、以降は真面目に働いている。子供達の雇用については流石にアウレリウスは難色を示したものの、イエルダとミカルの説得により認識を変えたようで、彼女の意を汲んで無料の学校を建てると宣言。これも領地の発展に繋がるとのことだが、ミカルは戦争に行く前の主人に戻ったようだと喜んでいた。彼女の存在はアウレリウスに良い変化をもたらし、領地に住む貴族令嬢に馬鹿にされているイエルダのために舞踏会に参加するとまで言い出した。幽霊公爵が妻と舞踏会に出たことで、二人の美しさと仲睦まじさの噂は王都にまで広まった。今ではすっかり年の離れた妻を溺愛しているアウレリウスだったが、トラウマなのか未だに悪夢にうなされている時があるのが心配だ。そんな頃、イエルダはガストン子爵という男に声を掛けられ、激昂したアウレリウスは子爵と口論に。どうやら知人のようだが、ガストンは気になることを言っていた。彼が親友のフェリクス伯爵に裏切られたってどういうこと?ガストンは戦時中、彼の部隊にいて規律違反で除隊させられていたそうで、先日の口論でその恨みを思い出したのか、腹いせをしてやろうとイエルダを浚い・・・。規律違反した自分が悪いのに逆恨みでイエルダを拉致したとして、アウレリウスは激怒。返して欲しくば決闘だと記載されていたものの卑怯な奴なので正攻法では来ないだろうと備えていたら案の定。見事勝利して、ガストンを憲兵に引き渡します。貴族への脅迫や詐欺の常習犯だったらしく、無事御用となり、事件は幕を閉じますが、意を決してフェリクスなる人物のことを尋ねるイエルダ。君には知る権利があると語られたのは、信じていた盟友の裏切り。終戦間近、敵の罠にかかり捕縛されかかったアウレリウスを傍に居たフェリクスは援軍も呼ばずに彼を置いて一人逃げ出していたのです。多勢に無勢、アウレリウスは捕まり、終戦まで酷い拷問を受け、それがストレスとトラウマを植え付け長らく彼は苦しんでいた。真実を知り涙をこぼすイエルダに、一時は恨んでいたが、今ならフェリクスの気持ちが判ると言うアウレリウス。彼にも愛する者がいて自分は決して死ねないと思ったんだろうと。そのフェリクスも結局罪の意識に苛まれ、後に自殺していたという話は何とも切ない。そして、多分そうだろうなと思ってたんですが、当時8歳の彼女がお守りを渡した騎士はやっぱりアウレリウスでした。国王は、彼にイエルダを嫁がせて正解だったとホクホク。この人なりに甥のことを心配してて、どこからか彼女の噂を聞きつけ相手に推したのかなと。アウレリウスはすっかり引き籠りは止め、イエルダと共に領地の開拓に力を入れると王に誓い、物語は幕。あとがきにて、作者さんが筆が乗って色々書きたいことがあったのにページ数の都合で結構削除したとあって、ふとあの長いラブシーンを4回から2回に減らせばきっと入れられたよなと思ったりw評価:★★★★★やっぱり何だかんだとこの方のお話は面白いです。
2024.06.28
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7月上旬 レジーナ文庫 私が妊娠している時に浮気ですって!? 旦那様、ご覚悟宜しいですか? テキレストさん 天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される 雪村ゆきのさん アルファポリス文庫 生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~ 硝子町玻璃さん7月18日 オレンジ文庫 おひれさま~人魚の島の瑠璃の婚礼~ 高山ちあきさん8月5日 ソーニャ文庫 死に戻ってようやく冷徹公爵様の溺愛に気づきました(仮) 花菱ななみさん 宝島社文庫 雨の神は名づけの巫女を恋ひ求む~天雨家神婚奇譚~ 遠野まさみさん8月9日 講談社タイガ 傷モノの花嫁 2 友麻碧さん ビーズログ文庫 ひきこもり令嬢なのに、氷の辺境伯の花嫁(※期間限定)に選ばれてしまった もよりやさん8月17日 ヴァニラ文庫 ツンデレには慣れているので初恋の国王陛下と甘く蜜月を過ごします 蒼磨奏さん8月26日頃 スターツ出版文庫 愛を知らぬ令嬢と天狐様の政略結婚 二 クレハさんラノベが豊作の予感。取り敢えず、傷モノの花嫁の2巻が楽しみです。
2024.06.27
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2024年6月刊ベリーズ文庫著者:にしのムラサキさん世界的企業で社長秘書を務める心春。社長の玲司は冷淡、冷血、鉄仮面…などと言われているが、部下思いで優しい一面も。心春は彼を心から敬愛していた。秘書として彼に見合う縁談相手探しに奮闘していたある日、「結婚したいのは君だ」と突然求婚される! プライベートでも彼を支えられる!(嬉)と思っていたのに、なぜか甘い新婚生活が始まって!? 「もう逃がさない」溺愛漬けの毎日に陥落寸前です(汗) ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 森下心春=社長秘書。崇拝していた玲司から求婚され結婚した。 本城玲司=世界的大企業のCEO。妻を溺愛している。 浦田紗彩=心春の先輩秘書で友人。 本城誠司=玲司の兄。 新原乃愛=心春の高校時代の同級生。世界的半導体メーカーの社長・本城玲司の秘書をしている心春は、玲司に心酔し崇拝していた。元々カッコイイ人だなとは思っていたが、その印象がガラリと変わったのは3年ほど前のこと。営業部にいた心春がトラブルに巻き込まれ、精神的に追い詰められていた時、助けてくれたのが当時副社長であった彼だった。一見クールに見えても社員の窮状を見逃さない。その時から玲司は心春にとってのヒーローであり尊敬するべき上司で、最高の推しとなったのだ。その後、優秀なサポート能力を買われて社長秘書に抜擢されてからも変わらない。そんなある日、玲司の母である会長に呼び出された心春は、息子の支えになってほしいと頼まれた。言われずとも一生尽くす所存ですと答えると会長は息子の不憫さを嘆いていた。何はともあれ、今夜は玲司から二人で慰労会をしようと高級レストランで食事に誘われている。終業後、やって来た店の雰囲気も料理も最高で、わざわざこんな私の為にと感動に打ち震えていると、玲司から突然のプロポーズにビックリ。生涯支えてくれるつもりなら俺と結婚してくれと再度言われて、つい自分などがお役に立てるなら、と承諾してしまった。翌日になると、秘書課では二人の婚約が話題になっていて、浦田からは社長の態度で好意に気付かないあんたも大概に鈍いとからかわれた。どうやら、傍から見ると何とも判り易い二人だったようで、かなりヤキモキされていたらしい。知らぬは本人ばかりなり。しかし、過去のトラウマから自己肯定感の低い心春はイマイチ実感が湧かなかった。出来の良い兄・誠司にずっとコンプレックスを抱いていた玲司は、心春との出会いによって自分に自信を持つことが出来た。未だに兄とは蟠りがあるけれど、自分のことを世界一カッコイイと言い、的確なサポートをしてくれる心春にいつしか想いを寄せていた。が、慕ってはくれているようだが、浦田が言うには玲司からのアプローチも推しからのファンサだと思っている節があると聞いて愕然。見かねた母がそれとなく心春に玲司との結婚を打診したようだが、勘違いしてお似合いの令嬢のPUをして来たので驚いたと言っていた。余計なことはしてくれるなと母に釘を刺し、遠回しに言っても通じないと彼女にプロポーズして想いを告げた。トントン拍子に話は進み、心春の夢だと言うスロベニアで式を挙げ、一軒家で暮らし始めた二人。推しとの生活はドキドキの連続だが、庶民の自分が彼の妻なんて務まるだろうかとプレッシャーもある。だが、玲司から改めて君が良いんだと言われ、漸くこれが心酔や尊敬でなく恋心であると自覚した心春は尊敬している気持ちは変わらないものの、愛する人を支えて行こうと決意。その頃、営業部では、途中入社の女性社員がとんでもない成績を叩き出したと話題になっていた。優秀な人もいるものだなとその社員の名前を見た心春に苦い記憶が蘇った。それはかつて彼女を心無い言葉で傷つけた友人の名で・・・。自称・サバサバ女の乃愛は、友人面をしながらも心春といい雰囲気だった男子を横取りしたり、嫌味を言っては彼女を落ち込ませる存在でした。おまけに玲司を狙ってるようで気が気でない。心春の自己肯定感が低いのも、偏にトラウマ級となった乃愛からの言葉のせいで、当時のことを聞いていた玲司も乃愛に悪印象を持ちます。しかもトップ成績についてもどうもキナ臭いと同じ営業部の藤木からも進言があり、浦田の協力も得て裏で調査を始めた所、開始早々不正の片りんが見つかってこれは黒だと本格的に聞き取りも始まります。一方、心春のおかげで長年蟠っていた兄弟が和解。お互い誤解があったとして、徐々に打ち解け始めた頃、乃愛の調査も完了。嫌味な所もあるけれど勘違いであって欲しいと願っていた心春はかなり悪質な元級友の手口を知って心を痛めるのでした。高校時代、インターハイ出場も決まっていた陸上選手の心春は、その直前に階段から転落して足を痛め引退を余儀なくされていました。マネージャー業が思いの外性に遭い、サポートの方向いてると自覚したのもその頃。乃愛は彼女を気遣い励ましてくれた。だから嫌いになれなかったという心春の想いを踏みにじったと玲司は激怒。浦田と藤木たちの調査結果により乃愛の処分が決まります。そして、あの日心春を階段から突き落としたのも乃愛だと判って、本当にクズ女だなと。あちこちの会社でやらかしてるので賠償金が凄いことになりそうだからいい気味。事件が落ち着いて2年くらい後、長男・瑛司が産まれ自分は箱推しなんだなとしみじみ思う心春と相変わらず妻LOVEな玲司の様子が描かれて本編は幕。書き下ろしの番外編は本編の後日談。事件直後から約10年後のお話で、本編ラスト間際でもっと走りたかったと溢す彼女の為に玲司が薦めたロードバイクに思いの外ハマった彼ら。家族で大会に出るほどにまでなっていて、という日常の一コマでした。中盤まではかなりコメディ調だったんですが、乃愛の登場で一気にシリアスに。揺るがない玲司の愛の力で心春が過去を乗り越えるという、王道展開が良いんですよねぇ。評価:★★★★★
2024.06.26
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1冊読み終わらなかったので月イチ恒例の購入タイトル紹介をば。ヴァニラ文庫4月刊。5月末には入手できてたんですけど、すっかり忘れてて先日漸く読了。感想記事もUP済みです。マーマレード文庫6月刊。伊月ジュイさんの最新作です。ベリーズ文庫6月刊2点。どちらかは近日中に感想記事が上がると思います。蜜夢文庫6月刊。上下巻ものなので、下巻が出てから一気に読むか考え中です。蜜猫文庫6月刊。こちらもなるべく早めに感想記事を上げようと思ってます。こちらもすずね凛さん。ロイヤルキス文庫more 6月刊昨日、蜜猫文庫と一緒に購入。こちらは電子書籍版の方で感想記事をUP済みです。色々設定とかツッコミどころは多々あれど不遇ヒロインものがお好きな方には刺さるお話かと。ノーチェ文庫6月刊。作家さん買いですが、あらすじを読むに好みのお話っぽいので楽しみ。
2024.06.25
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2024年5月刊スターツ出版文庫著者:望月くらげさん鬼の一族が統べる国。紅白雪は双子の妹として生まれたが、占い師に凶兆と告げられ虐げられていた。そんな時、唯一の味方だった姉が後宮で不自然な死を遂げたことを知る。悲しみに暮れる白雪だったが、怪しげな男に姉は鬼の皇帝・胡星辰に殺されたと聞き…。冷血で残忍と噂のある星辰に恐れを抱きながらも、姉の仇討ちのために入宮する。ところが、恐ろしいはずの星辰は金色の美しい目をした皇帝で!? 復讐どころか、なぜか溺愛されてしまいーー。「白雪、お前を愛している」後宮シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 白雪=両親から女として生きることを禁じられていた少女。 星辰=鬼華国の皇帝。 瑞雪=白雪の双子の姉。後宮で謎の死を遂げた。 桃優=妃賓の一人。 李月=妃賓の一人。紅家の次女・白雪は、占い師から「凶兆」と言われたことで娘として扱われず、虐げられて育った。あの日生まれた双子は両方女の子のはずなのに、大事にしているのは「吉兆」の瑞雪のみ。両親は白雪という名を<白>に改めると、女として生きることを禁じた。まるでそれが生かしておく条件だとばかりに。男装をして使用人のような扱いを受けている妹を不憫に思ってか、瑞雪は二人の目を盗んではおやつや食事を分けてくれていた。そんな姉は14歳になったある日、後宮入りが決まって家を出て行った。瑞雪がいなくなると両親からの当たりが一層きつくなったけれど、偏に願うのは姉の幸せだった。美しい彼女のこと、きっと皇帝にも気に入られているはず。しかし、その一年後、瑞雪が死んだと言う報せが皇宮からもたらされ、屋敷中は大騒ぎとなっていた。白雪は信じられず、父に真偽を問い質したほど。いつもなら彼女のそんな態度に烈火のごとく怒る両親も、動揺からか白雪を叱責せずに真実だと告げた。死因は不明らしいが、半身の死は殊の外白雪には堪えた。泣き暮らしていた彼女を他所に、暫くすると両親は手のひらを返し、白雪に後宮行きを命じたのだ。体が弱くまじないとして男装させていた双子の妹を行かせるからと、皇宮には話を通していると聞いて血の気が引いた。その日から彼女に対する扱いが変わり、ひっきりなしに出入りの商人がやって来て身の回りの物を揃えさせた。そんな最中、玉を扱う白蘭という女商人に叶えたい願いは無いかと耳打ちされ、思わず姉の死の真相と犯人を捕まえたいと訴えた。白蘭は微笑むと赤い玉を渡し、後宮入りする際にこの玉に願えば男の身体に変わることが出来ると告げ、妃賓ではなく宦官として潜り込めば調査もしやすいだろうとアドバイスをくれた。かくして、身体検査してもバレない男の姿に変わった白雪は宦官として潜り込むことに成功。それにしても白蘭はどうしてここまで協力してくれたのだろう。尋ねてみると、現皇帝の命によって故郷が焼き討ちになったらしく、彼女は親兄弟を失ったのだそうだ。瑞雪を殺したのが皇帝ならば、白雪が仇を討つことになる。白蘭は後宮に入れないので、白雪に恨みを晴らしてもらおうとしていたのだ。上手く乗せられてしまったと彼女は憤ったが、その玉には皇帝を殺さないと白雪が命を落とす呪詛を掛けたと白蘭に告げられ万事休す。しかも4ヵ月という期限付き。とはいえ、いざ後宮で働き始めるとやはり宦官の方が色々と動きやすいことに気付いた。皇帝とは思ったより早く遭遇したが、珍しい金色の瞳をしているものの噂のように冷徹で残虐な人物には到底見えない。その後、瑞雪の友人だったと言う妃賓・桃優と話す機会があり、生前の姉の様子を聞き出すことも出来た。玉のおかげで男性の姿ではあるものの、桃優は白雪を気に入り、瑞雪を知る者同士で友人関係にもなっていた。姉の死の真相については桃優も詳しくは知らないらしい。李月という妃は随分と瑞雪を嫌ってライバル視していたようだが、警戒されているのか中々近寄れない。そんなある日、白雪は皇帝・星辰の命により、傍近くに召し上げられた。どの妃にも見向きもしなかった皇帝は実は男色だったと実しやかに囁かれ始め、白雪への妬みか李月からの嫌がらせが始まった。皇帝との会話で、自分達が子供時代に皇宮で出会っていたことを知り、白雪は複雑な心境に。熱を出した姉の代わりに連れて行かれた白雪が出会った綺麗な男の子。兄が亡くなり突然皇太子になった星辰が不安で泣いている所に白雪に遭い、ずっと忘れられなかったと告げられお互いが忘れられない存在だったと知った。それにどう見ても村を焼き討ちさせたような人には見えないし、瑞雪を殺したのも彼ではないだろう。タイムリミットが迫る中、仲良くしてくれていた同期の宦官が李月に命じられれ、皇帝を殺めるよう白雪に呪詛を掛け・・・。犯人に対しては別段捻るつもりもないのか李月でした。同期の宦官は白雪の説得によって寝返り、李月をおびき出すことにも協力します。瑞雪を殺害したのも李月で動機は嫉妬心から。星辰は男に変身してても、白雪が女性であの時の子であるのにもすぐに気付いて、傍に置いていたと言う。まさかバレているとは思わなかった白雪は観念し、星辰の力で呪詛も解かれて彼の妃になるのも了承するのでした。ページ数も少なめなせいか、少々説明不足感はありました。せめてあの毒親にキツイお灸くらいは据えて欲しかったかなぁ。評価:★★★★☆
2024.06.24
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2023年10月刊マカロン文庫著者:Yabeさん航空会社のグランドスタッフとして働く和葉は、ある日、同じ会社のエリートパイロット・亮真から結婚してほしいと頼まれる。最年少機長となったばかりの彼は、仕事に専念したいのに、寄ってくる女性が後を絶たず困っているのだという。一方和葉も、苦労して育ててくれた母を早く安心させてあげたいと、彼との結婚を決意。単なるルームシェアくらいの気持ちで同居を開始したものの、夫となった亮真の激甘なギャップにたじたじで…!? 「これからは、遠慮なくいかせてもらう」突然始まった溺愛猛攻に、ウブな和葉は陥落寸前! 糖度120%の【極甘オフィスラブシリーズ】第二弾! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 石神和葉=グランドスタッフ。涼真から契約結婚を申し込まれた。 井添涼真=最年少機長。和葉の人となりを気に入り契約婚を持ち掛ける。中村由香里=和葉の友人で同僚。 葛城=副機長。涼真とは同期入社のライバル。グランドスタッフとして羽田空港で働く和葉は、亡き父の影響でピアノを弾くのが趣味。部屋にあるのは電子ピアノなので、練習を重ね仕上がった曲のみ、空港のグランドピアノで弾かせてもらっている。人気のない時間を選んでのことだが、今日は傍で聞いてくれている人がいた。見ると社内一のモテ男・井添涼真ではないか。今年、最年少の33歳で機長になった彼はその容姿とどこぞの会社社長の息子ということでとにかくモテる。しかし、涼真は並みいる美人CAからの誘いを全て断わる孤高の人でもあった。そんな彼が、上手いとは言えない和葉の演奏を最後まで聞いてくれたことに驚いたが、あろうことか涼真の方から話しかけられたので緊張しきり。弾いていた曲のタイトルを聞かれ、説明すると君のおススメの曲を知りたいからといつのまにやらSNSの友達登録までさせられ何が何やら。生真面目な和葉は社交辞令かもしれないと思いつつも、帰宅するとおススメの曲とタイトルを3つわざわざ説明文まで付けて送信。すると、数時間後にステイ先なのだろう北海道の写真と共にお礼の返信が来て、少しして早速ダウンロードして聞いてると報告が来た。その後もSNSでのやりとりが続いたある日、早番が終り帰宅しようとしていた和葉はトラブルに巻き込まれた。間一髪のところをは涼真に救われ、ショックで震える彼女をカフェに誘い収まるまで傍に居てくれた。余計な手間を取らせたと礼を言ってその日は別れたが、翌日出勤するとこのことが噂になっていて和葉は質問攻めに。本当にただのSNS友達なのでそういう仲ではないと説明すると、友人の由香里始め、同僚達は一応信じてくれた。が、怖いのはCA達で聞こえよがしにひそひそやられて何気に傷付いてしまう。数日後、涼真から男一人じゃ入り難いからと女性に人気のスイーツ店に誘われた和葉は、距離を置いた方が良いと判っているのに付き合ってしまった。タルトに舌鼓を打っていると、彼は頼みごとがあるんだと切り出した。幼い頃からパイロットに憧れ、必死に勉強をこなし念願の機長にもなれた。が、学生時代から女性のアプローチが凄まじく、毎度毎度断るのも一苦労だと言う。パイロットは医師と同じく日々勉強。浮ついた気持ちでないだけに正直煩わしいのだそうだ。そこで、数年程俺と契約結婚してもらえないだろうかと。要はせめて数年煩わしさから逃れたいので女避けに協力して欲しいということか。流石に結婚となると迷うが、涼真の気持ちも判る。しょっちゅうCAの誰かに付き纏われていただの、美人で評判のCAが告白して玉砕していた等、グランドスタッフの方にまで聞こえてくるほどなのだ。断るのにも労力使うし逆ギレされたりしたらメンタルにも影響しそうだ。それでも、と渋る和葉にもう一押しとばかりに涼真は入籍して一緒に暮らせば家賃も浮くし、実家への仕送りも増やせる。生活費全て俺が持つと畳みかけられ、彼女は決心した。そのうち母を引き取り、妹が結婚するまで独り身のつもりだったが、先に自分が結婚した方が母も安心だろう。それに仕送りが増やせるのはありがたい。せめて2年以上は継続したいと言われたので、期間含めて追々決めて行くことに。母にも結婚報告し、許可を貰うと早々に二人は入籍。スケジュールが合わず、涼真の両親との対面は少し先にはなるが歓迎されていると言っていた。引っ越しを済ませ同居生活が始まると、これでお前にの前では猫被らなくていいなと、彼は態度を一変。好青年の仮面を脱ぎ捨てた涼真は所謂俺様だった。しかし、多忙故に女性たちからの猛アプローチに困っていたのは本当のようで、それより煩いと怒鳴るのを我慢するのが大変だったそうだ。少々早まったかもしれないと思ったものの、俺様ではあるが何か無理強いしてくるなどの問題行動も無いので気にしないことにした。由香里には疑惑の目を持たれているが、あんたが幸せならそれでいい、と何かあったらすぐに相談して欲しいと念押しされた。同僚達からは概ね祝福されたものの、他の部署、主にCA達からの風当たりが強く、聞こえよがしな悪口はしょっちゅうある。由香里がいなかったら心が折れたかもしれない。涼真との関係に変化が生じたのは入籍から1ヶ月経ったある日のこと、彼の同期の葛城からちょっかいを掛けられた際、慌てて間に入った涼真と葛城が一触即発状態に。慌て止めたので事なきを得たが、帰宅後彼からキスをされ、俺以外の男を見るなと抱きしめられた。以降、俺様のまま和葉を溺愛する涼真の態度にたじたじ。虫除けだと結婚指輪を買い、二人で嵌めると諦める者が続出したのか悪口も減った様に思う。数日後、無事に涼真の両親にも挨拶を済ませた和葉はその歓迎ぶりに数年で別れるのに何か騙しているようで心を痛めた。それから数週間後のこと、休暇中に友人に会うと出掛けた涼真を見送り、出勤していた和葉はしょうこりもなく話しかけて来た葛城から、涼真が浮気していると教えられ・・・。勿論、涼真は浮気なんてしていません。彼が会いに行ったのは【極甘オフィスラブシリーズ】第1弾の主役CP達で、そのヒーローの拓海さんとは古い友人でした。たまたま拓海さんが席を外した際、前作のヒロイン・千鶴と話していたのを葛城に見られてたんですね。由香里からの連絡で、和葉が葛城に連れて行かれたと知った彼は慌ててやって来て、俺の妻に手を出すなと激怒。元々和葉に気があり、ライバルの涼真に取られた腹いせをしようとしていたのを気付かれ指摘されたことで、葛城も観念。浮気疑惑も晴れます。帰宅後、涼真が語ったのは実は1年ほど前から和葉に惚れていて話しかける切欠を待っていた事、裏で可愛いくて面白い子だとパイロット達から大人気の彼女を取られたくなくて契約婚を申し込んだのだと。思いがけない真実にパニくる和葉でしたが、改めて彼から好きだと告白され、いつの間にか自分も彼に心惹かれていたことを悟り、気持ちを打ち明けるのでした。由香里にだけは真実を打ち明け、でも今は両想いで幸せと報告。葛城との騒動で、涼真の性格がバレはしたものの社内で評判のラブラブ夫婦となった二人の様子が描かれて幕。この【極甘オフィスラブシリーズ】、3作目を先に読んでしまったんですが、多少登場人物がリンクしているだけでどれから先に読んでも問題ありません。因みに今作は2作目。前述の通り1作目の主人公たちは名前だけですが登場しており、ストレスで倒れた和葉が連れて行かれた病院の担当医が名前は出てなかったけれど恐らく3作目のヒーローの俊介さんかと。実はヒーロー同士が知り合いでしたってのに気付くのがシリーズものを読むちょっとした愉しみかなとも思います。1作目はまたそのうちにでも。評価:★★★★☆
2024.06.23
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2023年10月刊ベリーズファンタジースイート著者:里海慧さん「紫眼は破滅を招く」そう伝わる国で紫眼に生まれた伯爵令嬢のアリーシャ。幼い頃から虐げられ、婚約者からも搾取された挙句に婚約破棄され捨てられたアリーシャに、結納金目当ての父は新しい嫁ぎ先を見つけてくる。しかし、そこは冷酷無慈悲な氷帝と名高い辺境伯・レオハルトのもとで…!?「あくまでもこれは仮婚約だ」出会って早々、正式な婚約ではないと強調するレオハルトに、今度もまた捨てられるのかとため息をつくアリーシャ。しかしいざ婚約者生活が始まってみると、冷酷なはずのレオハルトからなぜか優しく溺愛される日々。さらに、魔力がないはずのアリーシャにある力があることが判明してー!?愛を知らない虐げられ冷嬢×クールな冷徹氷帝の異世界ラブストーリー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリーシャ=紫の目を持つことで両親から虐げられていた伯爵令嬢。レオンハルト=ベッセル辺境伯家当主。 エイベル=アリーシャの異母弟。 フランク=公爵家当主でアリーシャの元婚約者。 マチルダ=子爵令嬢。フランクの異母兄妹で恋人。このミラネス王国で紫眼は「破滅を招く」として忌み嫌われていた。祖母譲りの紫眼を持つロペス伯爵令嬢・アリーシャは、両親に疎まれ幼少期から祖父母の元でに預けられた。そこで幸せに暮らしていた彼女の生活は、祖父母が流行り病で亡くなった12歳の時に終わりを告げた。渋々アリーシャを王都に連れ帰った両親が告げたのは衝撃の事実。実の母だと思っていた夫人は後妻でアリーシャを心底嫌っていたこと、そして紫眼が忌むべき存在であることを。祖父母は何も言わなかったし、可愛がってもらっていたので全く知らなかった。父は戻って来た厄介者を家族とは認めず、使用人として扱い出したのだ。そんな生活が続いて7年後、アリーシャは父からソリアーノ公爵家の当主・フランクとの結婚を命じられた。ロペス家は代々商会を営んでおり羽振りが良く、援助を見込んでソリアーノ側から婚約を打診されたらしい。この家に帰って来てからというもの父からの理不尽な暴力によって従順にならざるを得なかった彼女は命令に大人しく従い、ソリアーノ公爵邸へ。しかし、フランクはマチルダという子爵令嬢と恋仲で、アリーシャは結婚しても名ばかりの妻という扱いになるようだ。援助してもらうために押し付けられた婚約者。紫眼なのも相俟って彼女は嫌われ、フランクからはどうせ暇だろうと本来当主がすべき仕事の大半を押し付けられるように。前公爵夫人からの嫁いびりにも耐え、なかなか結婚しようとしないフランクにロペス伯も催促をしていたものの、3年も婚約者という名の使用人の立場に甘んじる他なかった。下手に機嫌を損ねて破談になったら父にどんな折檻をされるか。しかし、恐れていたことが現実となり、彼女はあらぬ疑いを掛けられ婚約破棄されてしまった。どうしてもマチルダと結婚したいフランクは使い込んだ援助金を返済せずに済むよう、飽くまで悪いのはアリーシャのせいと彼女を悪者にしたのだった。案の定、父は大激怒。どれだけ殴られるかと身構えていると、お前に別の縁談が来ていると北方ノーザン領の領主・ベッセル辺境伯レオンハルトの元へ行けと命じた。そして、破談になっても戻って来るのは許さないと言い含められ、少ない荷物を持って、遠路はるばるノーザンまでやって来た。レオンハルトはこの度急遽決まった縁談に戦々恐々としていた。このノーザン領は、おおらかな土地柄ではあるものの、一歩踏み込めば魔物も現れる危険な地でもある。自ら騎士団を率い、定期的に討伐にも赴く彼はいつしか「氷帝」と呼ばれ、美形ながら無表情なことも相俟って全くモテなかった。家を継ぎ、それを機に縁談も幾つか来たがやってくる令嬢は、皆、彼を目の前にするとビビって視線すら合わせようとしない。お断りされ続けていた所、見かねた国王が結納金を援助してくれると言うのでそれと同時に手を挙げたのがロペス伯爵家であった。だが、アリーシャについてあまり良い噂を聞かない。今回もまたお断りされるのか、と思っていたのだが、従者のカミルが連れ帰って来たのは何とも粗末な服装の女性でビックリ。噂の紫眼もこうして見ると美しかった。丁寧にあいさつをする彼女に嫌な雰囲気はなく、一目で好感を持った。にしても、仮にも貴族令嬢があの身形でやって来るとは。カミルもあまりにも荷物が少なくて驚いたと言っていたし、羽振りが良いと言う割に身一つで娘を寄越したロペス家に不信感が募ったレオンハルトは、急ぎ伯爵家とアリーシャの調査を命じた。一方、アリーシャは紫眼に対し全く偏見を持っていないこの地の人達の態度に驚き、信じられない気持ちでいた。王都ではどこへ行っても嫌な顔をされたのに。おかげで前髪を伸ばしっぱなしになっている彼女にカミルは、元々ここは身体的な特徴に対して変な差別感を持つ者は少ないのだと言っていた。本当ならもし破談になってもノーザンの民として暮らしていけるかもしれない。一先ず、カミルに仕事をさせて欲しいと頼むと不思議そうな顔をされ、お金が欲しいんですと答えると絶句されてしまった。早速報告が行ったらしく、出来れば稼いで自分の金で買いたかった冬服と日用品だけでなく、ドレスや靴等、沢山の衣類をプレゼントされた。レオンハルトから婚約者に服も買ってやれない甲斐性なしと使用人たちに思われたら困るので受け取ってほしいと言われ、恐縮しつつ受け取った。アリーシャには専属メイドが付き、身綺麗に整えられると彼女は一気に垢抜けた。それでも前髪だけは切りたくないらしく死守していた。彼女がこの地に来てから一ヶ月ほど経った頃、調査報告が揃い、ロペス家の窮状とアリーシャへの扱いを知り、レオンハルトは怒り狂っていた。今ではすっかり彼女に心惹かれ、町に行きたいと言えば護衛騎士のフリをしてまで付き添い、カミルに呆れられているほど。当代のロペス伯爵は先代に比べると商才が無く、業績も右肩下がり。公爵家と縁を持ちたいとアリーシャを婚約させたがフランクに嵌められて莫大な援助金を掠め取られてしまっている。今度は辺境伯家からの結納金を当てにしているようだ。それにアリーシャへの虐待の件も読んでいると胸が痛くなる。いずれ、痛い目に遭わせてやると心に決め、肝心なのはアリーシャの本音だ。すぐにでも婚約はしたいが彼女は自分をどう思っているのか。最近は冬ごもりの間に出来る工芸品を売り出しては?と案も出してきて毎日楽しそうな姿を見て一喜一憂している。当の本人はレオンハルトを嫌ってなどいないのだが、恋愛下手な二人は一歩を踏み出せずにいた。その日、いつものように外出したアリーシャは、精霊神エリクシルの神使だという、狼の姿をした聖獣と出会った。その少し前にシマエナガが迷い込みそのまま世話をしていたアリーシャはその小鳥も聖獣としてビックリ。彼らが言うには彼女こそ魔法大国ザカライア王国の王族の末裔だといい、その紫眼こそその証なのだと告げた。精霊神の愛し子で全属性の魔法も使えるんだぞと教えられ、試してみると本当に使える。聖獣を従えることになったのでレオンハルトには隠しておけず、ザカライアのこと含め全て打ち明けるていた頃、王都では姉を慕っていたエイベルがアリーシャを虐げ追いやった者たちを罠に嵌めるべく暗躍。マチルダを唆して保護魔法付きのアミュレットを売りつけると、これがザカライア王族の遺品だと偽って、相応しいあなたこそがかの国の王族の末裔なのでは?と持ちあげた。予想通り、マチルダはフランクを巻き込んで自滅の道を辿り始めた。残るは馬鹿な両親。上手いこと言いくるめて当主の座を退かせ商会の権利も貰い受けた。母の不貞により、自分が伯爵の子でないと知ったエイベルは兼ねてより想いを寄せていたアリーシャを自らの妻に迎えようと企んでいて・・・。亡国の王族の末裔だと判り、魔法も会得したアリーシャは、討伐で大怪我を負ったレオンハルトも救い、自信を持つように。ノーザンの民も優しい人ばかりで、レオンハルトから正式に婚約を申し込まれて承諾したアリーシャは、今回の討伐で褒賞を貰えることになった彼と王都へ。婚約者になった途端に溺愛してくるレオンハルトに戸惑いながらも、フランクとマチルダに再会し罵られても毅然とやり取りするアリーシャ。自信が付くと結構クールなんだな、この子。弟からの求婚もバッサリ断ってたし。(後に落ち込んではいましたが)マチルダはまんまとエイベルの甘言に引っかかり、ザカライアの末裔だと吹聴していたのが徒となり、本物のアリーシャが国王にもその身分を認められたことで詐称の罪に問われるのでした。フランク共々結構な罰を受けたのでスッキリ。両親も、エイベルが流した長年に及ぶ長女への虐待と巨額の脱税がバレてこちらも想像以上の刑罰を受ける羽目に。特に父親は本当にひどかったもんね。後に国王により紫眼への迫害を禁止すると宣言され、アリーシャはロペス伯爵の籍から抜けてザカライアの王族としてレオンハルトに嫁ぐことになって〆男心が判っていないアリーシャについて話すエイベルとレオンハルトの会話に思わずクスリw評価:★★★★☆
2024.06.22
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2024年6月刊LUNA文庫著者:清水苺さん絹川運輸株式会社の社長令嬢として生まれたはずの凛。だが、母を亡くし父が不倫関係にあった女性を後妻に迎え入れてからというもの、継母や腹違いの弟からは小間使いとしてこき使われるように。家から出ることも禁じられ、ろくな食事もとらせてもらえない。いつしか抵抗することを諦めた凛は、家族に隷従する日々を送っていた。そんなある日、凛は父と継母におぞましい計画の実行役を言い渡される。大手ファッション通販会社ノクターンとの業務提携を得るために、遊び人の副社長に体で取り入れというのだ。つまり美人局だ。パーティ当日。副社長の高野は一瞥して、凛を教養のないみすぼらしい女とこき下ろす。返す言葉もなく悲しみに暮れていると、声をかけてきたのはなんとノクターンの社長、月山誠二。誠二……? もしかして、この人は……。「大人になったら、結婚しよう」そんなありふれた幼いころの約束を信じるほど、凛は子どもではなかったが、思い出の彼と同じ名前に心が揺れる。そしてその誠二は、凛にこう言うのだった。「絹川を裏切ろう」 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 絹川凛=継母に疎まれ、使用人以下の扱いを受けていた社長令嬢。 月山誠二=ファッション通販会社社長。 15年前の約束を果たしに凛の前に現れた。 高野清隆=誠二の共同経営者。 絹川美優=凛の継母。大手運送会社社長の長女として産まれながら、家族に虐げられている凛。特に13年前に後妻としてやって来た美優は母の存命中も父が愛人として囲っていたと聞く。美優は先妻に対して思う所があるのかとことんまで凛を嫌い、挙句の果てには家政婦扱いし日中には会社の雑用にまで駆り出す始末。顔も見たくないなら追い出せばいいのにそれをせず、死ぬまでタダ働きをさせると常々口にしていた。異母弟の仁也はお坊ちゃま扱いし、先妻の子は虐げる。昔のドラマによくある構成ではあるが、長年こんな扱いを受けていると心も疲弊してくるもので。どんどん陰鬱な表情になっていく彼女を美優と仁也は嘲笑う。そんな凛を慰めてくれたのは15年前に交わした約束。近所に住んでいた4歳上の誠二から「凄い社長になってきっと迎えに来るから僕と結婚しよう」という、今思えば子供同士の他愛ない口約束だが、最近やけに思い出すのは何故だろう。ある日、応接室に呼び出された凛は、父と美優から今夜のパーティーに参加して大手ファッション通販会社・ノクターンの副社長・高野清隆に取り入り、うちと業務提携してもらえるよう取り付けて来いと命じられた。早い話が身体で篭絡してこいと言いたいようだが、何故私が。美優は忌々し気に腐っても社長の娘だからよ、と言い捨て、失敗したらどうなるか、と嫌がる凛に言い含め、多少の出費はは仕方ないばりに美容院とネイルの予約をし、ドレス等パーティー用の一式を用意。自分に色仕掛けなど無理過ぎると絶望感を味わう凛に、美優と仁也は意地悪く笑っていたが、如何にもモテそうな人に気に入られる方法が思い浮かばない。勇気を出して会場で高野にアタックしたものの、けんもほろろに追い返されてしまって茫然。一人佇む彼女に声をかけて来たのは眼鏡をかけた優しそうな青年。彼は月山誠二と名乗り、高野の共同経営者で社長だという。そして、高野は女癖は悪いので上手く関係を持てたとしても100万程度の金でなかったことにされると聞き、成功しても業務提携は無理だと悟り愕然とした。それにしても、この人、誠二って。もしやあの時の?だが、記憶の彼とは名字が違う。ただの偶然かと思いきや、きっと絹川達は高野でなくとも僕を落とせれば問題ないと思っているはず。それを利用して逃げようと月山から提案され驚いた。しかし、何故かこの人ならという安心感があって頷いた凛に、月山は盗聴器の類を仕掛けられてないか彼女の持ち物を調べた。案の定ドレスに付いている。それを棄てると外に出た彼は渡されていたスマホとバックも道中で処分し、何も食べていない凛に食事をさせ尾行を振り切るためにあちこち連れまわした。最後に辿り着いたのは月山のマンションで、そこで漸く彼が誠二くんだと種明かしされた。名字が違うのも誠二の両親が離婚したからだそうで、実はあの後にも彼は凛を救い出そうと何度も屋敷に会いに来てくれていたらしい。だが門前払いされ続け無理矢理忍び込んだら通報までされたと話す誠二は、ならば凛の父親より大手の会社社長になろうと決意。そして、高野と共に今の会社を起ち上げたのだそうだ。遅くなって本当にごめんと謝罪され、涙が止まらず感謝する凛は改めてプロポーズされ、彼を受け入れたのだった。翌朝、絹川家を探っていた高野と合流。美優から娘想いの母を装ったメールが誠二の元に来ていたが、本性はすっかりバレているので、業務提携などとんでもないと憤っていた。高野への色仕掛けも実は二人の作戦らしく、絹川が食いつくようなネタを敢えて流し、凛を送り込んで来るよう仕掛けたのだと言う。いやな思いをさせたと謝られたがこうしてあの屋敷から出られただけでありがたい。向こうは凛を返せと言ってくるだろうし、無理矢理取り返しに来る可能性がある。一人の時は絶対に誠二のマンションから出ないと約束させられ、一先ず体調が心配だと病院で検査を受けた。当座に必要な着替えと日用品を買い込み、誠二の甲斐甲斐しい世話を受けていた凛は3か月もするとすっかり元気になり体重も少し増えよく笑うようになった。これまで絹川側が何のアクションを起こさないのは気になるものの、高野の姉が遊びに来た際、外で働く喜びについて話してからというもの、働きたくてしかたない。誠二に話すとうちの会社なら目も届くからと許され、事務員として働くことになった。だが、親切な先輩社員に昼食に誘われ、社外に出た凛は絹川の手の者に攫われてしまい・・・。凛が目を覚ますと絹川家の敷地内にある蔵の中。そこには美優と仁也がいて、もうあなたたちの言いなりにならないという彼女に殴る蹴るの暴行を加え、凛を餌に、絹川有利の業務提携を結ばせようと目論んでいました。が、強くなると決意した凛は自力で蔵を脱出。屋敷に乗り込んで来た誠二と高野に対しのらりくらりと話をはぐらかせていた絹川は、彼らに絹川運輸がブラック企業だという証拠を見せられ内心で焦りまくり。企業のイメージダウンはこのご時世非常に拙い。それでも頑なに凛を返そうとしないので、誠二たちは家探しを決行。蔵があったはずと不法侵入した記憶を頼りに向かうと、そこには仁也にドロップキックをかます凛の姿が。これは姉弟喧嘩ですからとお返しとばかりに弟に先ほど殴られた分をお返ししている彼女の姿に呆気にとられつつも、拉致監禁に暴行とはどういうことかと美優に詰め寄れば、勝手に妻子がしたことだと絹川は知らんぷり。夫の態度に美優がキレ、揉めている中、凛は父に絶縁宣言をすると誠二たちと屋敷を出て行くのでした。最後の展開はこれってコメディ?と思う程、色々ぶっ飛んたてヒロインの変わりようが何ともw こんなクズ供に従ってたと思うと吹っ切れたんだろうなぁ。そして凛が父にも虐げられてたのは母が浮気の果てに彼女を産んでいたからという衝撃の事実が。とはいえ、美優と仁也からも見捨てられてたくらいだし、あの性格じゃ前妻さんも嫌気さしてたんじゃとは思います。マジで人としてどうなのって奴だったわ、凛の父親は。親と縁を切り、熟考の末、喫茶店で働くことに決めた凛。誠二の妻になり念願のダンスをする二人の様子が描かれて物語は〆作者プロフィールを読むに主にラノベを書いてらっしゃる方なのかな?正直、このページ数で3回も長いラブシーン入れる必要あるのかと思ったのと、ちょくちょく変わった物言いがあったのが少し気になりました。お話自体は概ね〇評価:★★★★☆
2024.06.21
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2024年4月刊ヴァニラ文庫著者:玉紀直さん「それなら同棲でもしてみますか?」不眠症に悩む麗は運命の人を見つけてしまった。那智とくっついていれば眠れるのだ。そう告げると検事でモテすぎな彼が一緒に暮らしてくれることに!?那智は麗を眠らせるために一緒にベッドに入るけど、甘く抱きこまれて身体を寄せ合えばトロトロにされてしまって。だけど、そのことが過干渉な両親にバレて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 春野麗=グレー企業に勤める会社員。毒親からの束縛と合わさりストレスで不 眠症を患っていた。 久我那智=東京地検の検事。麗から運命の人と言われ同棲を提案する。一般事務として働く麗は、ある悩みを抱えていた。自分の両親が異常だと気付いたのは子供の頃。娘を束縛し自分の思い通りの行動をしないとヒステリーを起こして泣きわめく母と、母さんを泣かせるなと父は麗に暴力を振るう。世間一般ではこういう親は「毒親」と言うのだそうだが、少しでも自由になりたくて大学卒業と同時に家を出ると決めたものの、結局最後までゴネられて父の知り合いの会社に就職する事、親の決めたマンションに暮らすことを条件に渋々だが許された。今は定期的に母がお世話と称して部屋を訪れている。会社では父の頼みなのか上司が監視しているらしく、同僚達との何気ない会話でも迂闊な事は口に出来ない。いっそ結婚すれば親からの束縛も薄くなるかと、マッチングアプリに登録すれば、知り合った男性から詐欺に遭い借金を背負わされた時には泣きたくなった。おかげで毎日訳の分からない不安に苛まれてよく眠れない。2時間くらい寝られれば良い方で、毎月の返済のために少しでも稼ごうと残業し週の大半を終電で帰るのも良くないのかもしれない。そんなある日、いつものように終電に乗り込んだ麗はスーツ姿の男性の隣に座った途端に何とも言えない安心感がこみ上げて爆睡。はっとして目を覚ますと駅のホームのベンチで先程の男性にもたれかかっていた。あんなに眠れなかったのに、この人は運命の人に違いない。しかも、わざわざ爆睡する自分を電車からベンチに運んでくれた挙句、付き添っててくれたなんて。勘当した麗は、思わず「私と結婚してくださいっ」とプロポーズしていた。男性は呆気に取られていたが、まともに取り合わず、麗をタクシー乗り場に連れて行き、運転手に札を渡すと彼女の家までと頼むとドアを閉めた。随分とカッコイイ人だった、年齢は30代後半と言った所か。また会えたらいいな。運命の人との出会いに久方ぶりに機嫌が良かった麗ではあったが、数日後、友人からの電話によって、自分が共通の友人の結婚式を知らずに欠席していたことを知った。招待状自体は3ヶ月ほど前に発送していたそうで、見た覚えのない彼女はすぐに母の仕業だと気が付いた。母は麗の友人を毛嫌いしていたから。事情を話すと麗の両親の異常さを知っている友人は納得してくれたものの、一気に気落ちしてしまいまた眠れなくなっていた。翌日も、何とか仕事をこなし終電に乗り込んだ麗は、あの男性から声を掛けられた。再会に心が弾んだけれど、心労が重なって彼女は男性の目の前で倒れてしまった。目を覚ますと彼が付き添ってくれていて、謝り倒す麗はそのうち涙が止まらなくなっていた。訳ありと思ったのか、彼は場所を移動しようと提案。真夜中だったのでラブホテルしかなかったと謝られたが、少し眠った方がいいとも言われた。彼は久我那智と名乗り、東京地検で検事をしていると言う。久我は仕事柄人間観察が得意らしく、実は先日の彼女の様子を見て大きな不安を抱えている事には気付いてはいた。本人から現状を詳しく聞くとかなり深刻だ、毒親からの束縛にスキルアップできない会社も退職出来ず、マッチングアプリで知り合った男性からの詐欺被害。これは確かに眠れなくなるだろう。だがなぜか自分とくっついていれば眠れるといい、運命の人だと言っていた。少し考えこんだ久我は、ならばお付き合いしましょうと、恋人を不眠症にはしておけないと同棲を提案して来た。願っても無い申し出に麗は飛びつき、翌日には着替えと身の回りの物を持って久我のマンションに転がり込んでいた。両親には当然内緒。定期的に自宅に戻り痛んだ食材を処分したりで少し生活感を出しておいたので暫くはごまかせるはずだ。同棲してからというもの、毎晩久我とくっついているおかげか驚くほど眠れる。顔色も良くなり、自然と笑みも零れていたのか、同僚達からも何か良い事でもあった?と、聞かれる程。久我の話によれば、この会社も所謂グレー企業というものなのだそうだ。一見アットホームでも仕事は簡単で単調、スキルアップも望めないのでここに染まると転職も難しく、結果辞められなくなる。寧ろ、これが父の狙いなのだと判って身震いした。いつまでも麗を束縛するために、社員を飼い殺しのような扱いをする会社に預ける。久我との同棲生活も10日目、彼に連れられやって来たのは弁護士事務所。久我の弟だと言う仁美が詐欺の件で相談に乗ってくれるそうで、ああいう輩は同じ手口で何件も引き起こしてるからすぐ見つかること、慰謝料込みで搾り取ってやると約束してくれた。弟に任せておけばすぐに片が付くと聞き、肩の荷が一つ降りて少々浮かれていた彼女は最近気にかけてくれている先輩社員から恋人でもできたの?と聞かれてつい、肯定とも取れる反応をしてしまった。その日、母から怪我をしたので一度家に帰ってきて欲しいと言われ、早退した麗が実家に戻ると久我とのことがバレたのか怒り心頭の両親がいて・・・。色々常識が通じない毒親って怖い。この数日前、恋人にベタ惚れで惚気ていると久我の事務官から苦情を言われていた麗は、母からの呼び出しについても報告すべきか迷っていました。それが徒となり実家に閉じ込められ父から躾と称してモップで殴られかけた彼女を助けたのは久我でした。彼は両親にこれは立派な犯罪だと説明し、書類送検されたら困るのはあなた方だと諭して、麗を実家から連れ出すことに成功。社員の中に久我の協力者がおり、その人の連絡のおかげと知ります。この騒動後、久我から両親との絶縁という名の分籍を薦められ、彼のもう一人の弟・智流がその件を担当してくれることに。父の知り合いなのとグレー企業にいつまでもいるのは良くないと退職の意向を伝えた麗でしたが、懲りずに両親が来襲。再び危機に陥るも協力者からの連絡で駆け付けた久我の登場で事なきを得るのでした。彼から大きな釘を刺された両親は流石に拙いと思ったのか大人しくなり、進めていた分籍手続きも滞りなく完了します。両親の籍から抜けた麗に初めての家族にして欲しいと久我からプロポーズされて物語は幕。毒親本当に恐ろしす、でしたが相手が悪かった。麗にとって久我との出会いは本当に運命だったんだなぁとしみじみ。尚、今作は「コワモテ弁護士に過保護にお世話されています」のスピンオフで、そちらのヒーロー・智流さんとヒロイン・杏梨ちゃんもちょっとだけ登場してます。評価:★★★★★
2024.06.20
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2023年11月刊ロイヤルキス著者:あさぎ千代春さん家族に虐げられ屋根裏部屋に住む伯爵令嬢・セレスティアのところへ、十年前に自分を一方的に捨てた元夫・アルフレッドが迎えに来た。当時第六皇子だった彼はなんと、次期皇帝に成り上がっていて!? 尊大な態度に初めは反発心を抱くセレスティアだったが…。「この十年、お前を傷つけたことを忘れたことはない」アルフレッドから悔いるように真相を告げられ、とめどない感情が湧き上がり…。「俺の心を癒せるのは、生涯でお前しかいないんだ」傲慢で孤独な次期皇帝が清らかな姫にかしずく。かけがえのない愛の物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 セレスティア=伯爵家の長女。離縁され出戻ったことで継母と義妹から使用人以 下の扱いを受けていた。 アルフレッド=帝国の皇太子でセレスティアの元夫。 カヤ=アルフレッドの実母と同郷の女騎士。 ヴィオラ=アルフレッドの第一測妃候補の侯爵令嬢。アーマイン王国のメロディ伯爵家の長女・セレスティアは、国家間の取り決めにより、僅か5歳でケイオニア帝国の第6皇子・アルフレッドに嫁いだ。当時、アルフレッドは21歳。セレスティアの年齢も鑑みて、夫婦というよりは年の離れた兄妹のような関係であったが、彼の領地で楽しく暮らしていた。しかし、そんな暮らしが終りを告げたのは嫁いできてから7年後、彼女が12歳になった日のこと。あれほど優しかったアルフレッドから「お前が邪魔になった」と突然離縁を告げられ、セレスティアは故郷へ送り返されてしまったのだった。意気消沈して伯爵家に戻れば、父は病で鬼籍に入っており、家は継母が乗っ取っていた。元々継母とその連れ子である義妹は本妻の子であるセレスティアを嫌い、邪魔者扱いしていた。継子が嫁いでくれて万々歳と思いきや出戻って来たので継母は激怒。古参の使用人たちが止めるのも聞かず、セレスティアをメイドとしてこき使い出したのだ。そんな生活がもう10年。22歳になった彼女は疲れ果てていた。今夜、継母たちはケイオニア帝国の使節団来訪の歓迎パーティーに出席している。何故かあの日以来、外出を禁じられているセレスティアは、もう長い事ご無沙汰な場だ。だが、屋敷に女性騎士が訪れて、セレスティア宛の今夜の歓迎パーティーの招待状を手渡した。帰国して以降はこの手の招待状は来たことが無い。しかし、使用人たちは大喜びで用意を整えると彼女を馬車で送り出したのだった。会場に着くとあの女騎士が待っており、ある一室に通された。すると奥に座っていたのはかつての夫・アルフレッドの姿が。彼は立ち上がると徐にセレスティアを抱きしめ、お前を迎えに来た、お前は皇太子妃になるんだ。と告げた。あの日冷たく切り捨てた癖に今更どういうことだ、再婚なんかしないと突っぱねたが、もうこの国の王とも話が付いていると聞き血の気が引いた。思わずその場から逃げ出し屋敷に逃げ帰ったセレスティアはふて寝を決め込み、目覚めると屋敷は大騒ぎ。継母と義妹が昨夜のパーティーにセレスティアを行かせたと、力を貸した使用人たちを𠮟りつけていた。飽く迄自分のせいだからと許しを請うセレスティアを継母が打ち据えようとした時、それを止めたのはあの女騎士で、その背後にはアルフレッドが。彼は継母をにらみ、セレスティアに渡していた慰謝料代わりの金品の使い込みを言及。しかも継母は跡取りであるセレスティアが死亡したと虚偽の申請をして伯爵家を恣にしていたことも暴露され彼女は茫然。道理で招待状の類が来なかったわけだと納得もしたけれど、継母たちがが今までセレスティアにして来た仕打ちに対し彼が激怒。帝国流の刑罰を実行しようとしたので慌てて止めた。アルフレッドは昨夜はわざと好きにさせていたようで、これから帰国すると告げると無理矢理連れ出した。どうやら意識を失っていたらしい。ふと気づくと船の中だった。傍にはアルフレッドがおり、この強引な拉致に対しての文句を言うとずっと気になっていたあの突然の離婚の理由を尋ねた。当時の彼は母親が蛮族の姫ということで皇子でありながら皇宮に居場所もなく、後継者争いとも無縁であったと言う。そんな彼に政略結婚の話が出て、候補の中から一番無難な娘・セレスティアを選んだ。嫁いで来た彼女はまだ幼いせいか無邪気でそれ故に恐れ知らず。豪胆な性格が亡き母に似ていた。それでアルフレッドなりに慈しんでいたのだが、セレスティアを貰い受けたいと幼女趣味の公爵から打診された。彼にはまだ公爵に対抗する力が無く、あんな奴に渡すくらいならと離縁に踏み切ったらしい。真相を知って一言言ってくれればと絆されかけたが、その後続いた「でも、いずれお前は俺の弱点になる。だから邪魔だったんだ」の言葉に絶句。じゃあ何で今更と、と噛みつけば皇太子なり、近いうちに皇帝になるからだと言う。今ならお前を守れると語る彼に腹立ちを覚えながらも、未練があったのは自分も同じだと自覚もしていた。疑問に思っていた第六皇子が皇太子まで登り詰めた経緯も5人それぞれ病気やら自業自得のやらかしで廃嫡になったりという経緯だそうで、お家騒動があったとかでないのはホッとした。が、アルフレッドの屋敷に着くなり3人の令嬢が出迎えて来てびっくり。どちら様?と彼に尋ねると皆側妃候補なのだそうだ。この国の皇帝は正妃と側妃を3人まで持てるとのことで、問題無ければこの令嬢達は全員側妃になる。お前だけとか言いながら妾が3人とかふざけんなっ。激怒したセレスティアはやがて悲しくなり部屋に引き籠った挙句食事をとれなくなってしまった。心配したアルフレッドは医師の勧めで、かつて二人が過ごした領地・ミゲルに静養に行かせ、護衛として女騎士・カヤを付けた。懐かしい土地での暮らしで段々セレスティアは復調して行き、カヤともよく話をするように。領民たちとも親しくなって馬で出かけるようにもなった。カヤからアルフレッドの事情を聴き、自分の子供っぽい嫉妬で彼を困らせたことを反省したセレスティアは皇太子就任の祝いをすると言うミゲルの民総出の祝賀祭りにアルフレッドにも来て欲しいと手紙を書いた。当日、護衛を振り切って一刻も早くお前に会いたかったと告げる彼に素直な自分の気持ちを話したセレスティア。側妃の件は私が我慢すればいいこと、アルフレッドの気持ちを疑わないと決めた。しかし、まだ踏ん切りがつかず、好きなだけここにいていいと言う言葉に甘え体力回復に努めていた頃、セレスティアの妊娠が判明。忙しい合間を縫ってアルフレッドがミゲルに通い、その間仲睦まじく過ごしていたので周囲は時間の問題だと思っていたらしい。カヤを始め、使用人たちの祝福の中、王都の方が何かあった時にも対処できるからと彼の屋敷に帰ることになった。王都に帰還するとアルフレッドの過保護が爆発。カヤたちに呆れられながらめでたいことだからと屋敷中も湧いていた。だが、そんな二人を苦々しく見ている人物が。第一測妃候補のヴィオラは正妃になるセレスティアを身分から下に見ており、自分こそが正妃になるべきと目障りに思っていた。初対面から彼女に嫌味を言ってお互い印象は最悪。やがて、この嫉妬心が後の騒動のきっかけになり・・・。セレスティアの妊娠が判明し安定期に入った頃、皇帝にも報告すると式は戴冠式と同時にするとして先に入籍をするよう命じられます。アルフレッドも懐妊によって彼女の立場も守れると父の命に従い早々に籍を入れ、セレスティアは正式に皇太子妃に。面白くないのはヴィオラで、挨拶以来病に伏す皇帝の見舞いに足繁く通い、可愛がられているという彼女の評判を聞きつけ、皇宮でばったり会ったセレスティアを罵ります。まぁ一介の侯爵令嬢が皇太子妃にそんな態度をとるなど許されるはずもなく、あまつさえ言い返した彼女を扇で殴ろうとしたことで大問題に発展。アルフレッドは身重な妻に暴力を振るおうとしたと極刑を課すよう考えますが、穏便にという妻の進言に思いとどまり測妃候補の資格を剥奪に留めます。ヴィオラは必死に弁明するも、多数の目撃証言により撤回することが出来ず侯爵邸での謹慎が決定。心を病んだヴィオラは同情した父親を巻き込んで、皇帝がセレスティアに贈ったお披露目用のドレスを盗むという暴挙に。お披露目時間が押したことで騒ぎになりかけた所、アルフレッドとセレスティアが城ではなく、街中に姿を現し国民たちを鎮めるのでした。美男美女の皇太子夫妻は圧倒的な人気を誇り、皇帝になった後もよき王として慕われたようなことが書かれ本編は幕。後日談として番外編が2本。皇子ジョゼフが妹を欲しがる話と、その希望通り、皇女ブルーベルが産まれ4人家族になった皇帝一家のお話でした。最初、アルフレッドの傲慢な性格が好きになれなかったんですけど、大人になったセレスティアを溺愛し彼女の一挙手一投足が気になってしょうがない様子を見るとかわいく思えてきました。でもまぁ、測妃3人は多いよね。最後は測妃制度は撤廃されることが決まるので問題解決して本当に良かった。評価:★★★★★投稿方法を少々変えたら漸く記事をUP出来ました。暫くはこれで行くしかないようで。
2024.06.19
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タイトル通り、現在楽天ブログで起きている不具合だそうです。この件については公式の方からもアナウンスが来ておりまして、現在対策中とのこと。いやぁ、昨日の投稿もあれ?編集できない上に、ちゃんと投稿出来てる?な感じでいつもの倍近くの時間がかかってたんでおかしいなと思っておりました。ので、今朝UPされた記事に誤字が多いのはそのせいです(^_^;)変換ミスに気付いて直そうにも編集できないので直しようもない状態でして。先程投稿しようと試したら画像リンクすら貼れなかったのもあり、多分、明日の朝9時の更新は出来ないと思います。もし、9時に上がってたら復旧間に合ったんだな、と思ってくだされば。こういう短い文章は問題なく投稿できるので、まさかまた長文は止めてばりの仕様になったとか?だったらヤバイ(苦笑)追記公式からのアナウンスで復旧したそうです。良かった。これでいつもの方法で投稿できる。しかし、これで1日押してしまったので、休日が続かないと朝9時の予約投稿が出来なさそうです。毎日投稿は変わりませんが、時間はまちまちになると思います。
2024.06.18
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2024年3月刊蜜夢文庫著者:当麻咲来さん「愛妻に欲情しない男はいないだろう?」父の秘書を務めていた椿は、父の親友の通夜でその息子・玲司と印象的な出逢いをする。やがて亡父の跡を継いだ玲司と椿の結婚が決まると、彼の社長就任が気に入らない親族や妻の座を狙う女性たちが不穏な動きを見せる。そして結婚一周年の日。玲司は転落事故で記憶を失い、その日を境に淡白だった彼は一転して椿を激しく求めるようになる。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 天ヶ瀬椿=資産家の娘。父が援助した縁で玲司と結婚した。天ヶ瀬玲司=リゾート開発会社社長で椿の夫。 野々宮聡=玲司の第一秘書。皆瀬小百合=玲司の大学時代の後輩。西園寺理人=玲司の異母弟。父の親友の葬儀で運命的な出会いをした椿と玲司。若くして社長業を引き継いだ彼は椿の父からの援助に感謝し、彼女との結婚を望んだ。自分も彼に一目惚れしていたこともあって、この縁談を受け入れた椿だったが、望まれて嫁いだ割にはかれはいつも素っ気ない。そもそも、婚約期間中も愛想は良くなかったけれど、こういう態度を取られ続けると自分だけが舞い上がっていたことを思い知らされる。思わず離婚した方がいいのかもしれないと呟く椿を心配して、住み込みの家政婦の葵から、結婚記念日に二人で豪華ディナーでもいかがでしょう、と薦められた。玲司に話すと絶対に行くと言われたので、記念日を忘れていたわけではないのだとホッとした。当日、早めに店に着いて夫を待っていると第一秘書の野々宮から、玲司が階段から転落して意識不明だと連絡が。急ぎ駆け付けると彼はもう意識を取り戻しており、怪我も大したことが無い様だった。しかし、頭を強打したらしく記憶障害を起こしており、何故か椿に関する事だけ曖昧なのだという。元々、椿を敵視していた第二秘書の結城桃香はその報告を聞いてほくそ笑んでいた。だが、そんな秘書を他所に玲司は椿を見るなり綺麗だと宣い、早く家に帰って一緒に風呂に入りたいと言い出したので一堂目が点。普段のクールな彼らしからぬ言動に驚いていた。幸い、検査結果にも異状は無く帰宅を許されたが、玲司は一緒に風呂に入ると言って聞かず、子作りにも積極的で椿もどう対応して良いやら。でも、以前の素っ気ない態度に比べればこっちの方がずっと良い。翌朝、仲睦まじい二人の様子に葵は驚いていた。それから暫く経ったある日のこと、葵は玲司の母・文乃と会った。文乃はまだ小学校に上がる前の玲司を棄て他の男の元に走ったと聞いているため印象は最悪。仲良くするつもりはない。文乃は玲司に何か便宜を図ってもらいたい様で媚びを売っていたがけんもほろろに断られ憤っていた。彼の話では離婚の慰謝料で会社の株を10%貰っているので邪険にも出来ないそうだ。それより文乃が口にしていた小百合なる人物が気になる。その数日後、玲司に頼まれ会社まで礼服を持って行った椿は、結城と彼女の同僚による椿の悪口を耳にした。あんな女より、小百合さんと結婚してればあきらめもついたのに、と。所詮実家が太いだけで政略結婚に至った等、流石に腹に据えかねてその場に姿を見せ諫めたが反省している様子も無い。勇気の上司にあたる野々宮に一応報告したが処罰を望んでいるわけではないとだけ言っておいた。そして、夫婦同伴でとあるパーティーに出掛けた二人。椿はそこで漸く小百合と遭遇。なるほど、結城がこの人なら諦めがつくと言っていたのも判るほどの美人。銀行の副頭取の一人娘とのことだけど、少し会話しただけではあるもののなにか嫌な感じがする。それに透けて見える嫉妬心。椿が手洗いに言ってる間にちゃっかり玲司に話しかけていたのには腹が立ったが、険悪な彼の態度も気になった。喉が渇いたと言う彼に野々宮から渡された水を渡すと、一口飲んだ玲司が藻掻き苦しみ、救急搬送されてしまった。医師の診断結果はアナフィラキシーショックによるものとのこと。ナッツアレルギーがあるのは知っていたし、食事も葵が万全なものを用意しているので結婚してから発作を起こしたことは無い。今夜も挨拶周りに忙しく、口にしたのはあの水だけ。あの水が検査され、中にナッツ成分が混入しているのが判明し、真っ先に椿が疑われ・・・。勿論、椿は犯人じゃありません。しかし、今日の所は実家の方に帰ってくれと言われ、懐かしい高階家へ。両親は娘の無実を信じ、慰めてくれたものの気分は晴れず。入院中の世話は葵がすると言うので、少し時間を作ってもらい、天ヶ瀬家のことのに詳しい彼女に色々聞いてみると小百合のことに関しては口が堅かった。玲司に聞いた方が良いと。野々宮からの呼び出しで葵は病院に帰ってしまい、仕方なく実家に戻ろうとしたら小百合とバッタリ。どうも玲司の見舞いに来たようだが、話があると誘われたホテルのカフェで、薬を盛られた椿は目覚めるとホテルの一室に下着姿で転がされていて驚愕。傍には文乃が再婚先で産んだ玲司の異母弟・西園寺理人が。出来の良い兄にコンプレックスがある理人に乱暴されかけた椿は、間一髪駆け付けた警察と玲司の乱入によって無事助け出されます。その後、一連の事件が叔父の昭人と文乃が野々宮に唆されて起こした事件だと判明。小百合の方は以前から玲司に付き纏うストーカーで、この一件で彼女の父が副頭取を務める銀行がメインバンクを降りていました。でもまだ彼を諦めてておらずこれまた野々宮の甘言に乗り、椿の誘拐監禁に手を貸したと言う筋書き。野々宮さん、どうしてこんなことを?と思ったら、どうも玲司に心酔し過ぎて敵対する昭人と文乃とその息子・理人、ストーカーの小百合を一網打尽に片づけるつもりだったと自供。椿を巻き込んだのは、彼がベタ惚れで仕事に支障をきたすと思っていたからという何とも自分勝手な考え。この騒動後、それぞれが相応の罪を問われ静かになった頃、玲司は自ら記憶障害が既に治っていること、椿に一目惚れして結婚したけれど、一回りも上のおじさんに無理矢理嫁がせてしまったのではとずっと罪悪感を抱いていたと白状します。両想いだったと判明し、これからは周りが羨むくらいの夫婦になろうと決めた二人。おまけの番外編は待望の妊娠が判明するも、出張で立ち合いが間に合わなかった玲司目線のお話でした。何かと椿を貶めていた第二秘書の桃香が解雇された際、もう二度と顔を見せんな、ばりに内心で毒を吐いてる椿ちゃんの腹黒い面が見れて面白かったです。聖人君子みたいな性格のヒロインって多いですから、意外なタイプというかw評価:★★★★☆
2024.06.18
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2021年7月刊ベリーズ文庫著者:美希みなみさん大企業の常務・祥吾に片想いをしていた秘書の紗耶香。一夜の過ちをきっかけに体だけの関係に。ところが彼から一方的に関係を解消され、そんな矢先に妊娠が発覚!?捨てられたと思いこんだ紗耶香は赤ちゃんをひとり産み育てることを決意する。しかし社長となった祥吾と再会すると、独占欲露わに結婚を迫られ…!?空白の期間を埋めるような激愛に、紗耶香の心と体は再び熱を帯び始め…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 立花紗耶香=大手食品会社の専務付き秘書として働くシングルマザー。 東和祥吾=会社社長。紗耶香の元カレ。 立花瑠偉=紗耶香と祥吾の息子。 大村蓮人=紗耶香の上司。食品メーカーの秘書課で働いていた紗耶香は、担当する常務・東和祥吾と恋人関係にあった。でも彼は大企業の御曹司で、いずれ社長に就任する人。将来どうするつもりなのか怖くて聞けないでいたある日のこと、紗耶香は自分が妊娠していることに気付いた。彼にもこのことを伝えないと。しかし、丁度その頃、社内ではライバル社への情報漏洩の調査のため、ごたついており祥吾はその対応に追われなかなか話す時間が取れないでいた。そんな頃、入社以来親身になってくれていた先輩秘書・結城から、祥吾が近いうちにどこぞの令嬢と結婚するという話を聞かされ頭の中は真っ白に。その上、いきなり秘書課から資料室に飛ばされ、意味が判らない。どういうことなのか祥吾に聞こうにも一切連絡が取れず、これが彼の答えなのだと知った。人事部からはさりげなく退職を薦められ、訳が分からないまま紗耶香はひっそりと退職。実家に戻った彼女は両親に全てを打ち明け、後に生まれた息子と共に暮らしていた。あれから約5年。息子の瑠偉はもうすぐ4歳。両親がお迎えに行ってくれるので紗耶香は3年ほど前から、以前の勤め先と同じ業種・SHOUWA食品に中途採用され、今は専務の大村付きの秘書として働いていた。が、その日、イベントプロジェクトを提携するとして、東和食品から社長が訪れていた。東和と聞いて嫌な予感がしていたら予感は的中。祥吾が社長として現れた。もう無関係だと知らない人物のように接していたけれど、別れ際いきなり手を握られてビックリ。さすがに大村がセクハラですよ、と諫めていたが、祥吾の態度はどうにも解せない。その後、大村に祥吾とのことを聞かれ、素直に事情を話すと、プロジェクトの時だけ外れてもいいと言ってくれた。でも、ただでさえ勤務時間なども便宜を図ってもらっているのもあって大丈夫だとだけ告げた。数日後、瑠偉と共に公園を訪れるとそこには祥吾が。彼は瑠偉に自分が父親だと告げ、あっという間に息子と仲良くなると、紗耶香の両親への挨拶と謝罪を望んだ。祥吾が瑠偉を抱いて離さず、このまま連れ去るのではという不安もあって渋々許可すると、持ち前の人当たりの良さであっさり両親を懐柔。今まで離れていたのは誤解があったせいだと真摯に詫びた。これからは自分が二人の面倒を見ると結婚の許可を得ようとしているのを見て、慌てて止めたが、瑠偉の親権を盾にされると頷かざるを得ない。単純な両親はすっかり彼を信頼し、結婚にも賛同。何より瑠偉が祥吾に懐いていたこともあって、この1週間後には入籍していたのだった。実家近くの一軒家で家族3人で暮らすことになったが、祥吾との仲はギクシャクしたまま。ただ、彼は息子のことは可愛い様で在宅中はよく相手をしてくれている。そんなある夜、瑠衣を寝かしつけた後、祥吾が発したのは、今は大村の愛人なのか?という何とも失礼な言葉。カチンと来て否定すると、5年前はライバル会社の社長の愛人だったんだろと返され思わず彼を平手打ちしていた。翌日、帰宅した彼から謝罪と5年前の真実が語られた。どうやら、あの情報漏洩事件の犯人として紗耶香が疑われていたらしい。祥吾は必死に彼女を庇ったが、自分の女だからでしょう、と言われればぐうの音も出ない。疑いが晴れるまで連絡を取るのを禁じられ、犯人探しに奔走していたそうだが、その間にいつの間にか彼女は資料部に飛ばされた挙句、退職していた。しかも紗耶香が使っていたPCには情報をリークしたと思われるメールの発信履歴も見つかったと言う。そこまで来ると信じていただけに裏切られた気持ちの方が大きかったと話す祥吾に、彼に疑われていたと言う事実に腹が立った。そもそも、祥吾と付き合いながらライバル社社長の愛人だなんてどれだけ身持ちの悪い女だと思われていたのか。色々言いたいこともあるけれど、祥吾も今思えば不審な点が多すぎるとして再調査を依頼しているとのこと。これまでの態度を含め本当にすまなかったと頭を下げる彼の姿を見て、状況的に仕方なかったとして一応は許すと告げた。それに、自分をはめた真犯人の方が許せない。再調査で何か判ればいいが。何とか許された祥吾はこれまでのことを猛省。再調査の途中経過を聞き、怪しき人物が数名洗い出された。一人を除いて後は祥吾に反感を持っていた者ばかり。知らず、加担させられたらしくあの騒動後すぐ退社した社員にコンタクトを取ると、やはり祥吾の反対勢力の企てだと判った。その証言をもとに尋問するとあっさり白状したので、紗耶香の疑いは晴れ、彼女にも告げるとホッとしたようだった。以来、頑なだった紗耶香の態度も軟化。漸く、家族らしくなってきた頃、騒動に加担していたもう一人の人物の名が明らかになり・・・。シークレットベビーものですが、別れた経緯がかなりの胸糞案件でした。これは一時期離れ離れになっていた理由にも納得。だけど、ヒロインが気の毒過ぎる。ヒーローの中盤までの態度もいただけないし、お前が彼女を信じないでどうするよと、腹が立ちました。もう一人の人物は、本文を読んでるとすぐ察しがつくと思います。ですよねぇって感じ。そもそも、そんな噂も無いのに令嬢との結婚が決まったみたい、的な話吹き込んだり、再会後に妙に罪悪感感じてる風だったり。よくもまぁ引っ掻き回してくれたもので。紗耶香にビンタされても仕方ない。むしろこれで許されたことに驚きましたが(^_^;)多分、彼女にとって優しい先輩だったからかな。全て真実が明らかにされ、紗耶香と瑠偉は祥吾の両親と対面。色々言われるかと思いきや、随分と好意的。両家の両親の薦めもあって近親者のみを招待した結婚式をすることになり、その様子を描いた一コマで本編は幕。おまけの番外編は、ラストシーンから約2年後のお話。後に生まれた長女・天音を含め4人家族になった東和家が大村邸に招かれたお話。書き下ろしの方は、本編後すぐの家族の話と祥吾目線の5年前、紗耶香と交際していた時のエピソードの2本でした。このお話自体、マロン文庫で出ているシリーズのスピンオフだそうで、大村専務夫妻の恋物語の方はいずれ近いうちに読んでみようかと。評価:★★★★☆
2024.06.17
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2023年6月刊マカロン文庫著者:夏目若菜さん社長令嬢の冬璃は恋人に捨てられ傷心中。さらに父の会社が倒産寸前だと発覚し戸惑っていたら、幼馴染の一流ホテルCEO・束縒が手を差し伸べてくれる。「俺が救世主になってやる」と言う彼と、融資と引き換えの政略結婚が決まってしまい…!? 夫婦になって同居し始めた束縒の態度はなぜか冷たくて、冬璃は心が痛む。結婚なんて迷惑だったのだろうと思っていたのに…。「俺に甘えろよ、全部受け止めるから」ーー独占欲を剥き出しの愛に抱かれた冬璃は、胸の高鳴りが止まらなくて…。【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】第五弾! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 桃田冬璃=美容関連会社社長の一人娘。 会社を救うために束縒と政略結婚をした。 葛城束縒=リゾート開発企業の御曹司で冬璃の幼馴染。野島憲一郎=タレント活動もしている実業家。冬璃の元カレ。 諸角響子=束縒の秘書。コスメや美容器具、エステ等美容関連の会社を経営する父の元、自らもコスメ部門で働く冬璃は、恋人である実業家・野島憲一郎に二股をかけられた挙句、電話一本でフラれてしまった。彼の本命は美人で評判のニュースキャスター、端から自分はただの遊び相手だったのだと知り、地の果てまで落ち込んだ。しかも、せっかく幼馴染の束縒が無理をしてリザーブしてくれた人気レストランの個室が無駄になり申し訳ないやら。話を聞きつけ、商談中の束縒がわざわざ早く切り上げて来てくれた時には強がって見せたが、長い付き合いの彼にはきっと色々お見通しであろう。悪いことは続くもので、父が信頼していた財務部の工藤による横領が発覚。かなりの額だったため不渡りになりそうだと上層部は混乱していた。融資を募ろうにも監査期間中に期日が来てしまう。父は工藤の足取りを追い、神戸にまで向かったそうだが結局逃げられてしまい最後の伝手を頼りとある場所に向かっていると言う。寝耳に水の倒産危機の中、束縒が冬璃を迎えに来て、彼の父がいる本社に連れて行かれた。道中、うちが融資するから心配ないと告げた彼に、但し条件付きなので話を合わせて欲しいと言われ、訳が分からないまま素直に頷いた。会長室に通されるとそこには父もいて、倒産を免れたおかげか顔色も良くなっていた。葛城会長は冬璃に向かうと徐に、息子と結婚するそうだね?と尋ねて来た。事前に彼が言っていたのはこのことか、とおかげで淀みなく「はい」と答えると会長は満足そうに頷いていた。幼馴染を助けるための息子の浅知恵かと疑っていたんだと言われた時は血の気が引いたが、何とか納得してもらえたようで、義娘の実家の危機なら手を貸すのは吝かないと損失額全額の融資を約束してくれた。後で、束縒に聞いた話では相当渋っていたらしい。親戚でもないのにそんな金額は貸せないと。そこで、彼が冬璃と結婚したいので助けて欲しいと告げた所、真偽を確かめるために彼女を呼び出したのだという。葛城会長からはあの場で翌年の春には盛大に式を挙げること、入籍自体は早々に済ませるよう命じられた。束縒からはいきなりこんなことになってすまないと謝罪されたが、倒産すれば多くの社員が路頭に迷うと思うとこれでよかったのだと思うし、感謝もしていた。政略結婚ではあるけれど、相手が束縒ならばきっとうまくやっていける。だが、そう思っていたのは冬璃だけだったのか、入籍を済ませ彼のマンションで同居を始めたと言うのに束縒はどこか余所余所しいのだ。夕食も遅くなることが多いから作る必要もないと言われ、経緯はどうあれ、せめて良い妻になろうと決意していた分、ガッカリ。しかも、束縒の秘書・諸角からはっきりと、彼の妻に相応しくない、悲劇のヒロインぶっているなどと罵られ落ち込んだりもした。彼女はきっと束縒に想いを寄せていたのだろう。なのに、ただの幼馴染だと言っていた冬璃を助けるために政略結婚してしまったのだ。恨まれていも仕方ない。そんな最中、束縒が多忙を極めた弊害か体調を崩し、寝込んでしまうと言う出来事が。看病する冬璃は、熱のせいで本音が出たのか彼から愛していると告げられた。その数日後、損失の補填の為に売りに出していた実家を束縒が買い戻してくれたのを知り、諸角に何と言われようと束縒と幸せになる、と冬璃は決意したのだった。入籍してから5か月ほど経った頃、あの告白から吹っ切れたのか、束縒の態度も軟化して仲良く暮らしていた二人。沖縄に新設されたホテルの下見にも夫婦で出かけて新婚旅行気分も満喫。しかし、東京に戻った冬璃のスマホに野島からのメッセージが。会いたいという文面に何をいまさらと拒否する旨を綴った返信後は連絡先をブロックしていた。だが、その後非通知の迷惑電話が続き・・・。二股掛けてた最低男が、本命にフラれ、冬璃とよりを戻そうとしつこく連絡して来て、無視し続けていた彼女でしたが、向こうも諦めず根性食らべの様相に。不審がる束縒に理由を話すと、仕事の送迎をするとまで言い出す始末。多忙な夫の手を煩わせたくなくて断わった日のこと、実家からの帰り道に待ち伏せしていたらしい野島と再会。復縁を迫る彼に私もう人妻なので、と諦めさせようとさせるも野島は信じない。しかも、スピード婚だったこともあってお前も二股してたんだろうと責められ、身の危険を感じた冬璃は駆け付けた束縒に助けられます。まだ式を挙げる前だったのと旧姓で仕事を続けてたとは言え、野島の思い込みもなぁ。ってか、自分を棚に上げて二股を疑う神経も信じられない。束縒が懇切丁寧に状況を説明するとすごすご退散した野島。ホント、最初にフラれた時、彼が言うように訴えるなりマスコミにリークしてやればよかったのに。まぁそれはそれで逆恨みされそうか。元カレのストーカー行為もこれで無くなった数か月後、予定通り式を挙げる二人の姿が描かれて本編は幕。おまけの番外編は本編の後日談。イギリスでの新婚旅行(本番)編と、帰国後冬璃の妊娠が判明して大喜びの一幕でした。評価:★★★★☆あの元カレは絶対に復縁したいと言い出すと思ってたw
2024.06.16
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2021年7月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん箱入り娘の朱音に突然舞い込んだお見合い話。父の会社のためと決意するが、結婚前に一度だけでも好きなことをやりたいと、一人夜の街へ。そこで危ないところを助けてくれた秋哉に強烈に惹かれ、一夜をともにしてしまう。連絡先もかわさず別れた二人は、見合いの席でまさかの再会。彼は見合い相手の弟だった。秋哉は、自分を選べと熱く迫ってきて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三上朱音=箱入り育ちの社長令嬢。 一生に一度の羽目を外した夜に秋哉と知り合う。 藤崎秋哉=総合商社社長の次男。 藤崎孝弘=秋哉の異母兄で朱音の婚約者。設備会社の二代目社長の一人娘・朱音は、過保護で過干渉な両親に逆らうことなく従順に生きていた。そんな彼女の唯一の我儘は就職する事。当然ながら反対されたが、根気よく説得を続けると目の届く父の会社ならと渋々ながら許しを得た。特別扱いされたのでは意味が無いと社長の娘であることを隠し、三上メンテナンスの受付業務に着いてから3年が経つ。そんなある日、社長室に呼び出された彼女は、父から親会社である藤崎コーポレーションの跡取り息子との結婚を命じられた。先方の家族とは近々顔合わせを予定していると話す父を遮り、本人の意思も聞かず事後承諾で勝手に結婚相手を決められていたことに朱音は異を唱えた。が、箱入りで育てた娘に恋人がいないことなど判っているし、お相手は大企業の御曹司。こういう時の為に金を掛けて育てて来たのだからと言って憚らない。娘の幸せよりも藤崎家との姻戚関係を築く方が父には重要なのだ。帰宅後、母ともこの縁談について話したが概ね父と同意見で話にならない。兄の克基も然り。確かに両親は常々、お前は然るべき家に嫁がせると言っていた。それでも、お相手については少しは本人の希望を聞いてくれる思っていただけにショックは大きい。これって私の考えが異質なの?どちらにせよ、父の態度からしてこの結婚はもう決定事項らしい。どうにもできないのなら、今までできなかったことをしてみるのも良いかもしれない。朱音は、この1回だけと決めてその日、夜遊びに繰り出したのだった。先ずはお洒落なバー。店内で知り合った青年から口当たりの良いカクテルを薦められ、4杯も飲んだら相当酔いが回り、これはヤバイと思っていたら、別の青年に5杯目を止められた。彼は待ち合わせをしていた風を装うとカウンター席からテーブル席に移動し、朱音に水を飲ませると危ない所だったと告げた。どうやらあの青年が隙をついてグラスに薬を仕込んでいたらしい。デートドラッグというもので飲み干していたらホテルに連れ込まれやり棄てされていたと聞き、一気に酔いが醒めた。近年増えている性犯罪の常とう手段というのは流石に彼女も耳にしたことがある。まさか自分がターゲットにされていたとは。やはり一人で遊びに来たのは早計だったか。青年は秋哉とだけ名乗り、夜遊びがしたかったという朱音を笑わず、その後も数店舗付き合ってくれた。そんな彼と離れ難く、つい引き留めてしまった朱音は、秋哉に誘われるままホテルへ。夜遊びとは言ってもここまで経験するつもりではなかったけれど後悔は無い。目を覚ますと彼の姿は既に無く、おかげで一夜の夢として胸に秘めておくことができる。そう思っていた。それから1ヶ月ほど経った頃、両家の顔合わせが行われた。既に結婚することが決まっているせいか、どちらも家族総出での対面となったのだが、朱音の視線はお相手の孝弘ではなく、斜め後ろにいる眼鏡をかけた青年に釘付け。どうして彼がこんなところに。他人の空似かと思いきや、名乗った名前も藤崎秋哉だし紛れもない本人だ。まさか彼が結婚相手の弟だったなんて。向こうも朱音に気付いたようで何だか居た堪れない。孝弘は優し気な雰囲気で誠実そうな青年という印象、兄弟の割にあまり似てないんだなとぼんやり考えながら顔合わせは終わり。互いの人となりを知るためにも暫くは交際期間を設けてはどうかと藤崎社長からの提案によって決まり、帰りの車の中でくれぐれも孝弘の機嫌を損ねないよう両親から言い含められ頷いた。一方、秋哉は再会した朱音の態度に内心で憤っていた。あの夜、どうしても帰らねばならず、連絡先を書いた名刺を置いて来たのに一切連絡はなく、彼女にとって遊びの一環なのだと思い知らされた。なのに、何の因果か朱音は兄の結婚相手として現れた。愛人の子である自分に分け隔てなく接してくれた藤崎家の面々には恩義がある。孝弘の妻になる人が夜遊びの末、男と簡単に寝るような女だなんて以ての外だ。丁度、三上メンテナンスには財務管理の仕事で暫く出向する。ついでに彼女の人となりを調べてみるか。自分も当事者でありながら、朱音にだけ不実を問うような真似をしようとしていることに秋哉自身全く気付いていなかった。数日後、三上メンテナンスの財務部で勤務を始めた秋哉は、早々に朱音にきつく当たり彼女を責め立てた。兄との婚約を辞退しろと詰め寄る彼に、今藤崎コーポレーションとの縁を切る訳にはいかないと聞き入れない。孝弘には誠実に接するつもりだと話す姿に一層イラついたが、彼女は社長の娘だと公表しておらず、受付業務を軽視している総務部の女性社員達の嫌がらせのような掃除仕事まで嫌がらずにこなしている姿を見て驚いていた。融通が利かない所もあるが生真面目で頑張り屋、ほんの数日ではあるものの、朱音は出会った時の印象そのままの人だった。自分は思い違いをしていたのかもしれない。よくよく思えば自分に彼女を攻める資格なんてない。そして朱音に心惹かれていることも。なら、せめて連絡をくれなかった理由だけ聞いてみよう。そう決意した秋哉は、仕事終わりに朱音をカフェに呼び出すと今までの非礼を真摯に詫びた。そして、彼女の話で連絡先を書いた名刺を目にしていない事を知った。枕元に置いていたので寝返りでも打った際、床にでも落ちたのだろう。そりゃ、連絡しようもないわけだ。色々腑に落ちて、改めて勝手に誤解して酷いことを言ったと詫びた秋哉は、初めて会った時から君が好きだったこと、兄ではなく自分と結婚してくれないかと告げた。かくいう朱音も、孝弘ではなく秋哉はが相手ならどんなにいいだろうと考えていた。しかし、自分は孝弘の婚約者。相手が兄から弟になるだけで藤崎家に娘が嫁ぐことに変わりはないとして両親は煩く言わないかもしれない。しかし、藤崎家の方は複雑だろう。秋哉の申し出に二つ返事で頷きたいが、この話はせめて孝弘との婚約が解消してからにしたいと保留にして欲しいと頼んだ。秋哉は一先ず兄に頼んでみるというので、その日は別れたが、色々タガが外れたのか、その日から彼による猛アプローチが始まった。いや、これ拙いからとなんとか彼を往なしていたある日、父から秋哉に鞍替えするつもりなのかと問い詰められた朱音は無理矢理退職させられた挙句、結納の日まで屋敷に閉じ込められてしまった。昨夜、秋哉からまさかの事態に難航しそうだと連絡を貰っていたので嫌な予感がしていたのだ。彼の話では孝弘は出来の良い異母弟を心底嫌っており、嫌がらせとして朱音との婚約破棄は絶対にしないと言っているらしい。父が激怒していたのは孝弘からの密告のせいであろう。打つ手なしかと思われたが、秋哉は諦めておらず、兼ねてより調査していた資料を基にある手段に打って出ようとしていた・・・。略奪婚ものです。結婚相手との顔合わせ前に出会い、関係を持ってしまった二人。忘れられない人は夫となる人の異母弟。紆余曲折の末、想いを通わせるようになったものの、抑えが効かず朱音に会いたがる秋哉の態度が後半からいきなり甘くなるのでそのギャップがw婚約者の孝弘はとんでもない食わせもので、朱音のことも弟への嫌がらせに使えると婚約破棄の要請に応じず三上家に秋哉とのことをチクったり裏で暗躍。最初は本当にいい人風だったので、この変貌には驚きました。しかし、秋哉は本当にデキる人なので、兄の裏の顔というか、朱音の父と兄を巻き込んで多額の横領をしていた証拠を掴み、彼らを脅します。朱音との結婚を認めてくれるなら、藤崎社長に黙っててやると言われ、二つ返事で承諾した彼らは一生弱みを握られる羽目になっていい気味。でも、そのまま不問にするつもりはないと数年後には兄を引き摺り下ろし、自分が後継者になると不敵に笑う秋哉との結婚が決まった朱音のやり取りが描かれてEND誤解していたとはいえ、中盤までのヒーローの態度が少々鼻につきましたが、ヒロインに惚れていると自覚してからはハイスペックぶりを発揮し頼れる男に。そんな男に惚れられるヒロインの性格が好感持てました。評価:★★★★★
2024.06.15
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2023年8月刊ベリーズ文庫著者:三沢ケイさん許嫁に婚約破棄された伯爵令嬢・ベアトリスは、家の爵位を守るため婚活中! そこで出会ったのはまさかの王太子・アルフレッドで…!? 初対面のはずが、なぜかベアトリスのことを「俺のもの」宣言する彼。しかも国の秘密を知ってしまい、王太子の?補佐官兼お飾り側妃”に任命されてしまう! 職務を全うすべく奮闘していたら、俺様で苦手だった彼の甘すぎる溺愛に翻弄されていき…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ベアトリス=公衆の面前で婚約破棄された伯爵令嬢。アルフレッド=数年間の留学の後に帰国した王太子。 ジャン=王室直轄の秘密組織「金鷹団」団長。 ローラ=ベアトリスの友人。 ブルーノ=ベアトリスの元婚約者の侯爵家嫡男。 ランス=「金鷹団」団員。ベアトリスと親しくなる。大の読書好き、特にロマンスファンタジー小説が大好きだという伯爵令嬢・ベアトリス。挙句、独学で色々な国の言語を学び、各国で販売されている小説にも手を出した。好きが高じて趣味と実益を兼ね翻訳家としの仕事も別名義で引き受けているほど。これほど好きな読書に打ち込めるのは、幼少時に婚約者が決まったからに他ならない。おかげで婚活の為の社交にあくせく参加する必要も無いのだから、亡き両親には感謝している。とはいえ、婚約者であるブルーノは今更気を遣う相手ではないとでも思われているのか、最近、ぞんざいに扱われているような。今夜の王室主催の舞踏会も迎えに来るのがマナーだと言うのに別々に行きたいと連絡が来た。侍女達が腹を立てている中、本に夢中で準備が遅れてたから丁度良いと思うことにした。だが、会場に着き、すぐにブルーノを見つけて傍に行くと何だか様子がおかしい。いきなり睨みつけられたかと思えば彼から君のような性悪女とは婚約解消だと大声で告げられてびっくり。見るとブルーノの横にはほくそ笑むローラの姿が。彼女は女学校時代からの友人の一人で、つい先日もきっと似合うからと髪飾りを貰ったばかり。ドレスに合わせて今夜も付けて来たのだが、どうやらブルーノにベアトリスに大事な形見の髪飾りを取り上げられたと泣きついたらしい。そもそも、以前から彼に粉を掛け恋人関係だったというのも仄めかされ、二股掛けた挙句にこんな場所で婚約破棄して大丈夫なのか、と逆に心配になった。だが、覚えのない悪事を擦り付けられたベアトリスの方も周囲の令嬢達が信じてひそひそやっているのを目にし、ここは大人しく退散すべきと判断。会場に来てまだ1時間も経っていないのに彼女は逃げるようにその場を後にした。その際、廊下で一人の青年とぶつかり、その人の落とし物であろう手紙を拾った。見渡すともう人影もなく、落とし主のヒントでもないかと封筒を見ると何とも珍しい古代語で書かれている。そこには差出人の名前と宛名が。ジャン・アマールなる人物がさっきの彼のことだろうか。帰宅したら貴族名鑑で調べてみよう。しかし、その人物の名前は何処にもなく、婚約破棄を聞きつけて慌ててやって来た親友のマーガレットに心当たりを尋ねた。もしかして自分の婚約者なら顔が広いのでわかるかも、と聞き、その伝手を頼りやって来たのは王宮にある騎士団奥にある一室。不審がられたものの、何とか通してもらいそこにいたのは先日の青年。訝しむ彼に例の封筒を渡すとまさか宛名が読めたのか?と驚かれた。あまり使われていないが古代語ですよね、とこともなげに堪えると、封筒の中身も音読させられた。淀みなく読む彼女にジャンから名前を聞かれて名乗ると用は済んだとその場を後にした。数日後、マーガレットの好意により公爵家主催の舞踏会にやって来たベアトリスは、そこでブルーノ達と遭遇。女性は爵位を継げないので一人娘のベアトリスは婿を取るほかないのだが、不名誉な噂のせいで敬遠されていて、今は正に崖っぷち。いい気味だと馬鹿にする彼らに一体誰のせいでと腹が立ち、言い返そうとしたら、ブルーノ達を遮るようにある人物が現れた。その人が悪口雑言を繰り返していた彼らを諫めると興味本位で見ていた者たちも一斉に静まった。アルフレッド殿下、と叫んだブルーノは不興を買ったと思ったのか平伏せんばかりの態度。元婚約者の慌てように漸く、この人が先日帰国した王太子だと気付いた。なのに、その王太子がいきなりベアトリスを愛しい人と呼び、抱き寄せて来たので急な展開に頭は真っ白。硬直する彼女を王宮に連れ帰り、自室に招いたアルフレッドは徐に、君は何か国語が読めるのだ?と尋ねて来た。何のことやらと首を捻りつつその数を素直に答えると素晴らしい、と彼は大喜び。そして、君を俺の副官に任命すると言い出した。正確には王室直轄機関「金鷹団」での情報漏洩防止のために様々な言語を使う秘密文書の作成及び翻訳等が大な仕事のようだが、正直ベアトリスには何のメリットも無いではないか。すると、突然の婚約破棄で婚活に難儀しているのだろう?俺の側妃になればいい。あのバカな元婚約者たちの鼻を明かせるぞ、と囁かれて覚悟を決めた。その数日後、正式にベアトリスが王太子の側妃になることが決まり、表向き妃教育を受けながら裏で空き時間に金鷹団での仕事をしている。二足のわらじは思ったよりキツイが、元々勉強や調べものが好きなので思ったより性に合う。ジャンと言い合いをしながら楽しく毎日を過ごしていた。それにしても、側妃という名の補佐官に任命しつつも当のアルフレッドとは滅多に会わない。寧ろジャンと過ごす方が何倍も多くて、これでは彼の補佐ではないか。そう愚痴ると先輩たちは苦笑いをしていたが、その理由が判明したのは数日後。何者かに唆された挙句魔道具により容易にアルフレッドの離宮に忍び込んだローラの罠に嵌められたベアトリスはジャンに助けられた。だが、その彼が耳に付けていたピアスに触れると何と王太子の姿に。そういえば金鷹団は秘密組織、最高責任者は王太子であるアルフレッドだ。自らも行動するために魔道具で姿を変えていたのだろう。今まで溢していた愚痴が筒抜けだったのも合点がいった。彼は今回の事件が以前何度も起きたある事件と関連があるのではと、ベアトリスに護身用の魔道具・宝凛の指輪を渡し、必ず身に着けているようにと命じた。後から国宝級と聞いて冷や汗が出たものの、王妃シセルもなにやら意味深な事を呟いていたので気になってしまう。それから暫く経ったある日、本の発売日だからと認識疎外のフードを被って街に出掛けたベアトリスは不審者に襲われ・・・。作者さん曰く「たくまし令嬢」と秘密組織を指揮する王太子との恋物語です。タイトルに俺様とありますが、いうほど俺様ではなかったような。王太子に溺愛される寵姫だと評判になった頃から、何者かに命を狙われるようになったベアトリス。が、指輪の力と後に渡されたもう一つの魔道具、ジャンたちの護衛のおかげで事なきを得ていました。調査の結果、魔道具を上回る魔力で効果を打ち消されているのが判り、それが金鷹団のメンバーの者だと判明。その頃、ベアトリスは親しくしていた先輩・ランスによって郊外に連れ出されていました。そして彼が語る悲しい過去。ランスの亡くなった妹がアルフレッドの婚約者だったこと、なのに数年も経つと周りが新しい婚約者を据えたことで怒りに燃え、彼は騎士という立場を利用して選ばれた令嬢二人を事故を装って殺害していました。アルフレッドがランスの妹以降三人も婚約者を亡くしたことに傷付いていたのをその少し前に知った彼女はランスの勝手な言い分に激怒。必死に抵抗していた所を駆け付けたアルフレッドによって助け出され、その隙をつきランスは自らの命を絶つのでした。事件が解決し、アルフレッドはベアトリスを正妃にすべく諸々の手続きをしていた所、噂の公爵令嬢と結婚するものと彼女は勘違い。暇を告げるベアトリスに本心を打ち明ける彼との会話で本編は幕。書き下ろしの番外編は本編の後日談。本当に好きなら甘い言葉を囁いて欲しいとマーガレットと会話するベアトリスに実行に移して意趣返しするアルフレッドのお話でした。ブルーノとローラもちゃんと報いを受けたし、本を読むためだけにやけに行動的なヒロインは好感が持てます。アルフレッドが惚れたのもちょっとやそっとじゃ死にそうにない令嬢らしからぬところがよかったんですかねぇ。評価:★★★★☆
2024.06.14
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2019年2月刊チュールキス著者:あさぎ千代春さん「今すぐ、来いよ」日花里は十八の頃から、傲慢のようで甘えを含んだ口調で海翔からそう呼び出されると、どうしても断れない。女性に人気の容姿に敏腕IT社長の肩書。日々メディアを賑わせる海翔と、つかず離れずのまま八年が経っていた。あるとき親友に連れられて合コンに参加していると、その場に海翔が現れて!? 「そういうところは俺にだけ見せればいい」独占欲むき出しで激しく奥を突かれ、未知の快楽に飲まれる日花里。それでも海翔の本当の気持ちがわからないままで…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 町田日花里=IT会社に勤める会社員。社長の海翔に長年片思いをしている。 藤堂海翔=日花里の勤め先の社長。存在自体が派手なモテ男。 北見=銀行員。合コンで日花里と知り合う。 霧生辰巳=海翔の友人で共同経営者。 川端佐紀=日花里の後輩社員。大学の先輩であり、片思いの相手である海翔が社長を務めるIT会社で働く日花里は、8年にも及ぶこの曖昧な関係に悩んでいた。ドイツ人のクオーターだという彼は派手な外見とそれに付随した俺様な性格でとにかくモテた。30歳になった今も引く手あまたであったが、大学時代は七股かけていたと言う強者。本人談によれば向こうから勝手に寄ってきて彼女面してるだけとのことだが、ちゃっかりいい思いをしてるのだからそんな言い訳は通らない。日花里がどうしても落とせない授業の最中に起こった自称・彼女たち7人による取っ組み合いの喧嘩は今も大学の伝説になっているほどなので、見れなかったのは残念。さすがに、本人も反省したのかそれ以降は大人しくしていたけれど、騒動から数日経ったある日、アイスを携えて彼女のアパートを訪れた。少々身構えてしまったが、海翔は一切彼女に手を出さずにそのまま強引に部屋に泊まり翌早朝に帰って行った。この奇行の意味が分からないまま、社会人になった今も海翔の訪問とお泊りは続いている。変わったと言えば、狭いシングルベッドで日花里を抱き枕にして眠り、迷惑料だと言って毎回1万円札を置いて行くようになったことだろうか。今日も、接待で訪れていたキャバクラに日花里を呼び出し迎えに来させると、夕食を突き合わた後は彼女の部屋へ直行。シャワーを借りてそのまま泊まると日花里が目を覚ます前にいなくなる。そして当然のように置かれれている1万円札を見てため息が出た。普通にビジネスホテルに泊まった方が安いのではないかと思いつつ、何となく気が引けて万札は使わず封筒に入れ箪笥にしまっている。それにしても、いつの頃からか海翔が口にするようになった「お前は俺のものだろ?」は一体どういう意味なんだろう。友人の真澄からは、はっきり相手に真偽を尋ねるべきと言われている。自分でもそうした方が良いとは思っているものの、ズルズル来てしまった。気付けばもう27歳、そろそろ踏ん切りをつける時期なのかもしれない。そう決意した彼女に自身の仕事の企画で練習台になってほしいと真澄が持ち掛けたのは「自分磨き」。パーソナルカラーや骨格の診断から始まり、美容相談に服のコーディネイトをタダでやってもらえるという。早速色々診てもらい普段しない服装とメイク、髪型で出勤するとファッションに詳しい後輩の佐紀から絶賛された。心なしか男性社員の視線も感じるような。驚いたのは海翔が日花里だと気付かなかったこと。佐紀からもこれからずっとこれで行きましょうと薦められたが事情を説明すると残念がられた。真澄には礼がてら今夜合コンに付き合うことを約束している。佐紀に話すと本気ですか!?と驚かれ、隣の席にいた副社長の霧生も渋い顔をしている。佐紀からはしつこく店名を聞かれ、渋谷のベトナム料理店とだけ答えた。真澄の彼氏の同僚だと言う男性陣は銀行員だそうで北見と名乗った青年は随分と感じが良い。二次会に行くことになりふとスマホを見ると夥しい数の着信履歴にギョッとした。見ると佐紀からのものもあったがあとは全部海翔から。またいつもの我儘だろうと相手にしない事を決め、下の階にあるダーツバーに行くと海翔が迎えに来てビックリ。一体どうやって場所を突き止めたのか。どうやら渋谷中のベトナム料理店に電話したらしい。そこまでする?とドン引きしていると、彼は有無を言わさず日花里の腕を掴むと、近くにあったホテルへ。そこのジュニアスイートを取った海翔に押し倒された日花里は長年の想いも相俟ってついに一線を越えてしまった。だが翌朝目を覚ますと、押し寄せてくるのは現実。彼にとっては遊びの一つに過ぎないのだから変に期待するのはやめよう。何でもない様に接し、普段通りに過ごしていると何か言いたげな海翔。そんな最中、連絡先を交換していた北見と度々SNSでやり取りを始め、時にはランチを一緒にしていた。その夜、突如アパートを訪れた海翔は再び日花里と関係を持つと俺の部屋に住めと告げた。いつもの我儘で仕事の手伝いでもしろってことかとOKすると彼は満足そう。しかし、日花里が泊まり込みに来ると毎晩のように関係を迫って来る。告白されたわけでもないのに、こういうことするのって何だか複雑だ。まるでセフレではないか。しかも、たまたま熱を出した日、電話中の彼が相手に愛してると言ってるのを聞いてしまい、益々その疑念が増した。それから暫く経って、商談で霧生と共に京都へ出張することになった海翔。佐紀からその間溜にまった有休を消化してはどうかと薦められ、里帰りすると決めた。最近は結婚結婚と親が煩いので、近所の祖母宅に泊まることにした日花里は、人気モデルと海翔の交際報道を目にし・・・。お互い両想いなのに色々拗らせてしまった日花里と海翔。巨乳のせいで嫌な目に遭い男嫌いの彼女を傷つけまいと模索していた海翔は、モテすぎの弊害か告白したことが無い。切羽詰まっていきなり関係を迫ってしまったものだから、日花里にあらぬ誤解をさせてしまいます。セフレどころか8年間ずっと本命だったといえばいいだけなのに、いざという時はヘタレな海翔に対し、霧生や佐紀を始め、社員達はじれじれ。そう、知らぬは本人達だけで、お互い好き合ってることなんて一目瞭然。早く付き合っちゃえよっ!と思っていました。報道の件は、その場に霧生もいたので密会などではなく、モデルは霧生のことが好きだったと言うオチ。日花里の祖母宅を訪ねて来た彼に対し、本当はずっと好きだったと号泣する彼女の姿に驚きつつ、海翔もまた自らの想いを告げるのでした。周囲をやきもきさせた二人はこうして無事にくっつき、海翔からプロポーズされて本編は幕。おまけのSSは日花里にフラれながらも、作者さん曰く、海翔よりいい男なんじゃという北見目線のお話。モテすぎ男、ただ好きだと言うことが出来ず。少々天然ながら開き直るとヒロインの方が思い切りは良かったような。評価:★★★★☆
2024.06.13
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6月分の追加ありです。6月12日 ルネッタブックス 完璧社長は鉄の乙女と蜜月をご所望です 玉紀直さん6月下旬 レジーナブックス その溺愛、間違ってます! buchiさん ノーチェ文庫 贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる マチバリさん8月8日 マーマレード文庫 前世は仇敵の鬼姫でしたが、 転生したら最強陰陽師に赤ちゃんごと溺愛されてます(仮) 若菜モモさん 孤高の俺様パイロットは、傷ついた花嫁を真実の愛で満たす(仮) 結城じなたさん8月10日頃 ベリーズ文庫 空飛ぶ消防士の雇われ妻になりまして ~3か月限定!?の蜜月婚~ 一ノ瀬千景さん タイトル未定 花木きなさん 出戻り王女の政略結婚 三沢ケイさん8月期のラインナップが出始めました。あとはラノベ系がどの程度入って来るか。
2024.06.12
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2024年5月刊IRIS文庫著者:翔花里奈さん目立つ左頬の痣のせいで、顔を隠して生きている王女ファウナ。彼女は海神に身も心も捧げる聖王女とは名ばかりの、いてもいなくてもいい存在になっていた。そんなある日、ファウナは母から死んでくれと言われ、彼女の望み通り、海に身を投げた。もう、生きている意味なんてないと思ったから…。ところが、なぜか海神に助けられ、海底で彼と暮らすことに!しかも、ことあるごとに彼から口づけられて!?すべてを諦めていた死に損ない王女と海神の純愛ラブファンタジー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ファウナ=リューレ王国第三王女。 頬に大きな痣がありベールで顔を隠していた。トリトミロス=王国の海域を治める海神。 ノクト=ミロスと顔見知りの考古学者の青年。アルフレード=第一王子でファウナの兄。リューレ王国第三王女・ファウナは、生まれつき左頬にある龍に似た形の痣のせいで常にベールで顔を隠して生きて来た。没落貴族出身の第三王妃である母は、他の妃たちから蔑まれていたと言う。だが、世継ぎの王子・アルフレードを産んだことで扱いも変わり、次に身ごもった子のことも産まれるのを楽しみにしていた。しかし、産まれてきたた王女の顔には大きな痣が。ショックを受けた母は、娘を虐げたりはしなかったものの、物心つく頃には常に顔を隠すよう命じ、第三王妃の離宮から出ることを禁じた。そんな彼女に優しく接してくれたのは7歳上の兄・アルフレードのみ。妹を不憫に思ってか、ある日兄は「聖王女」なる立ち位置を作り、彼女を離宮から出してくれた。海神に身も心も捧げる、聖なる乙女。ベールで顔を隠し祈りを捧げる。司祭たちと共に叙任式などにも駆り出されたが、兄が苦心して作ってくれた・聖王女としての役目を必死に果たしていた。そして、ファウナが16歳になったある日、国王の体調が思わしくなく、アルフレードに王位を譲ると宣言。正式に発表される今年の海神祭はさぞ盛り上がるであろう。当然、ファウナも舞と祈りを捧げるのだが、母はそこでアルフレードの将来と成功を祈り、彼女に生贄として海神にその身を捧げろと命じたのだ。自分を産んでから徐々にだが心を病んでしまった母の言葉に内心傷付きながら、素直に応じた彼女は舞を終えると自ら海に身を投げたのだった。足に重りを付けたので浮かび上がることも無い、このまま自分は死ぬんだと思ったが、何故か目覚めて見回すと海の中のはずが何故か屋内に居た。そして自分を見下ろす奇妙な生き物たち。一見子供のようだが上半身は人間で下半身は魚。言葉もどこかたどたどしいものの悪意は感じない。いつの間にか聖王女の祭事服からドレスに着替えさせられており、それを作ってくれたのがこの子達らしい。するとファウナが目覚めたことに気付いたのか、そこに現れたのは銀髪の美しい青年。一目で海神だと判りひれ伏した。どうやら身投げした彼女を救ったのも海神のようで、足に重りを付けていたことを不審がられた。死にたかったのか?と聞かれ、言葉に詰まったが死を望んでいたわけではないこと、地上にはもう戻りたくないと答えた。すると海神はそれ以上は尋ねず、ここに住むことを許すと告げると部屋から出て行った。子供達は海神とは本質が違う精霊らしい。無邪気ではあるけれどどこか気まぐれ、あまり人付き合いの経験が無いファウナは彼らとの会話での言葉選びに気を付けながら、色々情報を得ていた。海神はトリトミロスと言い、少々変わった出自なのだそう。人間である自分がいくら空気のある場とはいえ、海底で何の害もなく過ごせているのは彼が力を与えてくれているおかげ。ただその方法がキスなので、いつしかトリトミロスを意識し、心惹かれていたファウナは彼の役に立ちたいと思っていた。一先ず、海の中でも上手く移動できるよう練習し、トリトミロスが精霊たちと行っている穢れの浄化作業のための前段階なら手伝えることが判り、彼の許しを得て作業に参加することに。その頃、海底を自由に行き来する青年・ノクトとも知り合った。ノクトは地上で考古学者をしており、海神にまつわる特別な品を発掘したことで海の中を自由自在に行動できるようになったそうだ。その経緯でトリトミロスと出会い、迷惑がられながらも、何かと理由を付けてはここを訪れているのだとか。人懐っこく話しやすい彼は何かと事情通で、すっかり仲良くなったファウナは、ノクトが来るときには決まってリューレ国のことを聞きたがった。帰りたくはないけれど、兄のことは気になる。魔法の鏡によって色々地上のことを見ているらしいトリトミロスによれば、祈願のために生贄になった妹に対し罪悪感を抱いているようで、できれば自分は無事で元気にやっていると伝えたい。トリトミロスとはノクトが差し入れてくれた本を読み聞かせしているうちに随分と打ち解けた。彼は元々、海神と人間とのハーフであり、歴代の海神に比べると力も劣ると自嘲しており、それをコンプレックスに感じているようだった。だが、人間の血が混じっているならとノクトの考案で食事や睡眠をとることを推奨されると徐々にだが力が増している。だが一番効果があったのはファウナのキス。実は頬に浮かぶあの痣自体、海神のものという証で、彼女こそ神に力を与える巫女なのではないかというのはノクトの考察だ。では、トリトミロスの母のように自分も彼の花嫁なのだろうか。ファウナを傍に置く彼の姿を見て、トリトミロスを一時期預かり育てたと言う音の神・メレニアは二人のそんな関係に難色を示していた。何故なら先代の海神の花嫁、つまりトリトミロスの母は彼を産んだことで命を落としていたから。そんなある日、作業中のミスにより穢れを浴びてしまったファウナは昏倒。夢の中でアルフレードの危機を知り・・・。メレニアに何と言われようと彼の傍に居ようと決めていたものの、ふとした折に唯一気掛かりだった兄が異母兄の罠にはまり投獄されてしまったことを知ります。助けに行きたいけど、自分にはどうしようもない。悩む彼女の憂いを晴らすべくトリトミロスがアルフレードの救出に向かいますが、衛兵たちの銃で怪我を負ったことで捕らえられピンチに。生粋の神なら銃弾など効果無いんですけど、半分人間という体がネックとなってしまったトリトミロス。彼の危機を察知したファウナは、兄共々彼をどう助けるか考えていると、力を貸してくれたのはノクトと精霊たち。ノクトさん、何か只者ではないと思ってましたが、その正体、というか彼の身体を間借りしている存在にビックリ。でも、色々事情通だったのも納得できたし、そういうことか~と。地上に赴いたファウナは海神の花嫁として人々に姿を見せ、トリトミロスを奪還。その際、海神が次の王にはアルフレードが相応しいと宣言したこと、第二王子の虚言も明らかになったことで兄の嫌疑も晴れるのでした。海底に戻ったトリトミロスは改めてノクスと対峙。そして母親の死の原因は神を産んだからではなく元々体が弱く出産に耐えられなかったからだという真実を知ります。それでも愛する人との子を望んでいたのだと話す、ノクトの中にいる先代の言葉を受け、決意を固めたトリトミロス。何かとからかってくるノクトを追い出し、後日結婚式を挙げる二人の姿が描かれて幕。きっといつまでも仲睦まじく暮らすんだろうなって感じのラストは良いですね。評価:★★★★☆
2024.06.11
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2023年11月刊マカロン文庫著者:晴日青さん結婚間近で実家の借金が発覚した純美は、婚約者だった外交官の北斗に一方的に別れを告げる。それから5年後、二度と会うはずのなかった彼と再会…! 北斗は理由も告げずに去った純美への”復讐”と称して結婚を迫ってきて…!? 「俺の心は、あの頃からずっと君だけのものだ」ーーこの結婚は彼への贖罪のはずなのに、北斗の甘く強い独占欲は純美を翻弄する。熱情露わに迫られ、痺れるほどの執愛を刻まれると、次第に心絆されていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 稲里純美=ホテルのコンシェルジュ。 5年前、一方的に別れを告げた北斗から契約婚を申し込まれる。 末廣北斗=外交官で純美の元婚約者。 物見百合=純美が通う外国語教室のイタリア語講師。 ロッコ=百合の夫のパティシエ。友人に逃げられ、連帯保証人である父が多額の借金を背負ったことにより、人生が変わってしまった純美。住んでいた家を売却しても到底足りず、彼女ももっと実入りの良い仕事に転職せざるを得なくなった。しかも、純美には結婚間近の婚約者・北斗がいる。実家が太く、外交官をしている彼は事情を話せば力になってくれるかもしれない。それでも生真面目で融通の利かない性格の彼女は北斗に迷惑をかけるのは嫌だった。考え抜いた末、彼との婚約解消を決めた純美は性悪女を装って北斗に別れを告げた。あれから5年。何度か転職を繰り返し、今はホテルのコンシェルジュとして腰を落ち着けている。給料のほとんどを家にいれているので、あれから碌に服も変えていないが、制服があるので助かっていた。気の遠くなるような借金もあと数年もあれば終わる。少しは心の余裕が出て来たのか、最近よく思い出すのは酷い別れ方をしてしまった北斗のこと。大学の卒業旅行で金を貯め憧れのイタリア一人旅に行った際に道に迷い、大使館勤務をしていると言う彼に助けられた。話も合って北斗からのアプローチで交際が始まり、その1年後に正式に婚約。何もなければあのまま結婚して今頃子供もいたのではと思うと泣けてくる。当時はお互いの為にも別れるべきだと勝手に思い込んでいたが、本当にあれでよかったのだろうか。そんなある日、ホテルのレセプションにて、偶然にも純美は北斗と再会。別れて5年も経つというのに、彼は純美を抱きしめて離さず、戸惑う彼女に今でも君に心を奪われたままだし、恨んでもいると告げた。他に男が出来たと言う割に結婚していないことにツッコミを入れられ、ごまかすためにも一先ず謝罪した。その場は何とか逃げ出したが、帰宅すると家に北斗が来ており両親と談笑している姿にビックリ。慌てて自分の部屋に引っ張り込むと、母たちからあれこれ聞き出したらしく、大方の事情がバレていた。そもそも実家を売りこの借家に越してから住所は教えていないのに先回りして来ていたと言うことは偶然に思っていたあの再会も織り込み済みで事前に調査していたのだろう。もう取り繕っても仕方ないのだが、精一杯悪びれた対応をする純美を鼻で笑うと、彼から俺と契約婚をして欲しいと告げられた。あの別れ以来、ショックで未だに誰とも交際できていない、だから責任を取って俺の妻になれ。どういう理屈かと思えば、これもある意味復讐だと北斗は悪びれない。外交官という仕事は立場上、パーティー等の出席が多い。その際、妻の同伴が常識なのだそうだ。負い目もある純美はイマイチ納得いかないながらも、復讐という言葉に納得し、それで気が済むならと彼との結婚を決めた。借金の件も妻の実家の窮状なので手を貸すと話す北斗に、元々この人はこういう性格だったと今更ながらに思う。相談もせずに勝手な思い込みで彼を傷付けてしまった自分が浅はかだったのだ。理由はどうあれ、どんな思惑があろうと北斗に尽くそう。そう決意した数日後、二人は入籍。あの別れ以来、海外赴任していた彼は数年は日本にいられるからと帰国してすぐに購入したというマンションで同居となった。異常に荷物の少ない純美に彼は驚いていたが、そのうちパーティーの招待も来るからと、大量の服やドレスに靴、バッグなどをプレゼントされて、彼の気遣いに素直に礼を言った。復讐とか嫌がらせとか言いながら優しく接する北斗の為に、何かできることは無いかと純美が考えたついたのはイタリア語をネイティブに話せるようになりたい。英語はコンシェルジュの仕事に必須だったので話せるが、イタリア語は未知の領域。イタリア語講師の百合とは年齢も近いせいで親しくなり、お墨付きをもらうと同時にホームパーティーの招待を受けた。百合の夫がパティシエで料理含めて絶品だという。北斗には内緒で通っている教室なので、その日は友人に会うとだけ話し、百合の家を訪れた純美。イタリア人の夫・ロッコと仲睦まじい百合の姿を見て是非夫婦円満の秘訣を聞きたいと鬼気迫る純美の様子に、二人が語ったのはお互い素直になること、言いたいことは隠さず言い合うことと聞き、色々と腑に落ちた。彼がどう思おうと自分の気持ちを素直に伝えよう。そう決意したのだが、車で送ってくれたロッコの姿を遠目で見て、北斗が純美の浮気を疑い・・・。二人の出会いの地であり、イタリアへの赴任が多い北斗の妻になるからにはとイタリア語を習い始めた純美はそれを彼に隠していました。おかげで外出の多い彼女に不信感を持ってしまった彼は浮気を疑います。でも、素直になると決めた彼女からの告白とイタリア語を習っていたことその理由を聞いて、疑いは晴れ、蟠りも解けるのでした。以降は百合たちのような仲睦まじい夫婦になった二人だったけど、後日出席したパーティーで、北斗に親し気な女性たちの態度にヤキモキしたり、そのせいで平常心を持てなくなった彼女は会場で失敗してしまいます。落ち込む彼女を慣れないうちは誰でも緊張するものだと慰め、女好きの多い男性陣に君を見せたくなくて嫉妬メラメラだったと話す北斗。最初の失敗を教訓にし、その後は変に気を回すことの無くなった純美。北斗とも本音を話すようになってから暫くして彼女の妊娠が判明。彼は泣いて喜び、両家の両親にいつ伝えようかと話し合う中、百合たち夫婦も同じくおめでたと判り、お祝いムードの中、本編は幕。おまけの番外編は、本編から2年くらい後、長男・奏斗を挟んでのほのぼのエピソードでした。あらすじに復讐とか贖罪とかあったのでドロドロ系とか思いきや、蟠りが解けるのが早かったせいかほとんど夫婦のイチャイチャ話でした。かなりの額の借金だったみたいなので、別にその程度気にしないとかいう人は実際稀だと思うし、純美が別れを選んだ気持ちもまぁ判るんですよ。諦めない彼の気持ちと、結婚間近で婚約解消した純美に思う所あったろうけど、この結婚に対して何も言わずに受け入れてくれた義両親は器が大きいと思う。評価:★★★★☆
2024.06.10
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2024年2月刊LUNA文庫著者:マドウマドカさん両親亡きあと没落し、今では一人で花屋を営む元伯爵令嬢のアルマローゼ。ある日、隣国からの音楽留学生クロードと出会った瞬間に恋に落ちた。二人はクロードの国の家族からの返信すら待てずに、教会で式を挙げて神の前で愛を誓い合い、身も心もかたく結ばれる。ほどなく、クロードはトラブルを片づけるためにと、アルマローゼのもとに戻ることを約束して、ひとり祖国に帰っていった。だが、妊娠したアルマローゼがそれを知らせようにも、クロードからの返事はない。やがて愛らしい男の子を授かっても、音信不通は続き、待てど暮らせどクロードが帰ってくることは、ついぞなかった。それから四年。三歳になった息子のロザリオと二人で暮らすアルマローゼは、クロードによく似た旅行者に出会う。 トビアスと名乗ったその青年は、偶然にもクロードの兄であった。そしてトビアスの口から、衝撃的な事実が語られ……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アルマローゼ=元伯爵令嬢。 里帰りしたまま帰らない夫を息子と二人で待ち続けている。 クロード=ヴァイオリン専攻の留学生でアルマローゼの夫 トビアス=ノルネリア国の王子。クロードの義兄。 ロザリオ=クロードとアルマローゼの息子。 モナ=アルマローゼの元級友。 ヴィクトー=問題行動が多い商家の次男。事故で両親を早くに亡くしたアルマローゼは、とある理由により伯爵位を国王に返還し、平民として生きることを選んだ。そのせいで親代わりの祖母には晩年苦労を掛けることになってしまったけれど、王の温情で屋敷にそのまま暮らすことを許され、税金の免除をして貰えたおかげでなんとかやっていけている。祖母亡き今は庭に咲く大量の薔薇を切り売りして生活費を稼ぐ日々。高位貴族ながら平民となった彼女は、元級友である令嬢たちにしてみれば何かと気になる存在なのだろう。屋敷近くの露店で薔薇を売るアルマローゼの元を訪れては一々マウントを取って来る。その中でも特にモナはアルマローゼに一方ならぬ執着を見せ、時折見せる異常な言動に恐怖を感じることがままあった。そんなモナから、最近ノルネリア国から留学生がやって来たと耳にし、それもかなりのハンサムらしく級友たちも燥いでいた。その噂の留学生と出会ったのは翌日のこと。彼はクロードと名乗り、ヴァイオリン専攻の音大生だと言う。祖母の友人・ソフィアと知り合った縁で、足がおぼつかなくなった自分の代わりにアルマローゼの様子を見て来てほしいと頼まれたのだそうだ。彼は興味も無いのに店を訪れ、商売の邪魔をしていたモナたちの言動を窘め、逆に祖母自慢の薔薇たちを褒め、少々高めの鉢植えを購入してくれた。以降も何かと理由を付けては彼女の元を訪れ、時には差し入れをくれたり見事な演奏で客引きをして売り上げに貢献してくれたりもした。そんな二人がお互い惹かれ合うようになった頃、モナの暴露により、アルマローゼが平民になった理由をクロードに知られてしまった。ポートリエ伯爵夫妻が事故死したのは彼女が13歳の時のこと。祖母と二人残されたアルマローゼに商家の次男・ヴィクトーがしつこく求婚して来て断ると逆ギレした挙句、難癖を付けられて裁判沙汰に発展。貴族位が欲しいだけなのが丸判りだったため、苦渋の決断で爵位を返上した。この騒動はアルマローゼとポートリエ家の醜聞として広まり、国王が温情を掛けてくれたのもそういう経緯からであった。話を聞いていたクロードはそれはヴィクトーが恥知らずなだけで彼女は被害者だろうと慰め、今度からは自分が君を守ると求婚。クロードは少々厄介な実家だとかで、後に色々言われるかもしれないがと、結婚すると報告の手紙を送り、数日後、懇意にしている教会で二人はささやかながら式を挙げた。しかし、モナは密かに憧れて執着していたアルマローゼが素性の知れない男と結婚したのが許せなかった。モナの部屋には彼女に纏わるものが数多くコレクションされている。アルマローゼが泣く泣く売ったドレスも買取店に出向いて購入した。憎いクロードのことで何か知る術はないかと彼の下宿先まで出向き、宛先の人物は自分の屋敷に居を変えたと嘘を吐き郵便屋からクロード宛の郵便物を手に入れた。ノルネリア語なので読めないけど、今後の彼宛の郵便は全て自分の屋敷に転送するよう金を握らせるとモナはほくそ笑んだ。不正で入手したこの手紙にクロードの人生を左右することが書かれていることも知らずに。モナのやらかしに気付かず、ポートリエ邸で仲睦まじく暮らしていた二人。薔薇の販売だけでは頭打ちになると、クロードが提案したローズヒップを使ったお茶の販売が予想以上に当たり、教会のシスターたちにも協力を仰ぐと生産量も増えて、利益も上げて来ている。しかし、さすがに連絡が付かない事に不審がられ、内容証明がクロードの通う音楽学校宛に届いた。担任から渡された封書を読んである決意を固めた彼は、暫くの間帰国し、正式な手続きをしたらまたここに戻って来ると言い残し、当座の生活費として大事なバイオリンを売って作った金をアルマローゼに渡すとノルネリアへと旅立った。その直後、体調を崩した彼女は自分が妊娠していることを知った。一人で過ごすのは不安もあるが、ソフィアやシスターたちの励ましで何とか乗り切り、数か月後、彼女は長男・ロザリオを産んだ。あれから3年、彼は未だに帰ってこない。疲労回復に効果があるとしてローズヒップティーは好調に売り上げを重ね、クローディアスという名の店を商店街に出すことが出来た。ロザリオは3歳になり、息子と共に店に出ているとヴィクトーが現れ、自分の愛人になれと迫って来た。当然、突っぱねたが酔っているのかしつこく絡まれていたら、見かねた主人に命じられて来たと言う従僕に助けられた。自警団長のパロウも現れ、きつく釘をさしておくからと連れられて行くヴィクトーに恐怖を覚えていると改めて助けに入ってくれた従僕に礼を言った。すると、近くに止まっている馬車の中に主人らしき人物がちらりと見えて、その姿に釘付けとなった。クロード? 従僕に主人の名を尋ねると彼はトビアスという名らしい。後日、偶然にも街中でトビアスに遭遇したが、そっくりだけど雰囲気や仕草が違うので別人なのだろう。だが、夫を待ち続け、その名がクロードと聞き、彼は顔色を変えると衝撃の事実をアルマローゼに語り・・・。クロードは自分の義弟であり、トビアスを庇い3年ほど前に亡くなったと聞き、アルマローゼは愕然。しかも、トビアスはノルネリアの王子というからびっくり。クロードはトビアスの父の弟の子で、両親が事故死して以来彼の家の養子となっていました。複雑な家系と言っていたのはそういうわけかと彼女も内心で納得。そしてノルネリアは現在、王位継承で揉めているそうでクロードの死もその騒動に巻き込まれたから。義弟が自分のせいで死に、胸を痛めたトビアスは国を離れ療養がてら、アルマローゼと甥にも会いにこの国にやって来たのでした。モナに後押しされ平民になっても美人のアルマローゼをものにしようと躍起になるヴィクトーに恐怖を感じていた頃、トビアスからクロードの血を引くロザリオには王位継承権があるとノルネリアに来ることを薦められます。しかし、クロードの死を思うと息子を巻き込みたくない。そんな最中、業を煮やし強硬手段に出たヴィクトーはトビアスとパロウによっても教唆したモナ共々御用となり、ここで初めて家宅捜査されたモナの部屋にあったクロードの宛の手紙が見つかることに。これがちゃんと本人に届いていれば諸々状況も変わっていたはず。そしてアルマローゼを助けるために怪我をしたトビアスはその衝撃で実は義兄の死により記憶障害を起こしていたクロードであることを思い出し、本来の自分を取り戻すのでした。まぁ、これはチャプター名で記憶云々書かれていたこともあってそうだろうなとは思ってました。さすがにヒーローが妻子を残して死ぬ展開はねぇ。クロードは全てを思い出し、義父が王位に就いている間は妻子と共にこの国に留まることを決め、14年後、再会後に生まれた娘含め、ノルネリアに王位を継ぐべく帰国したところで幕。タイトル通りにシークレットベビーものではあるんですが、今回はちゃんと結婚してたのに、ヒーローの記憶障害やらヒロインに執着する元級友の横やりのせいで不運が重なったという展開でした。このレーベルにしては若干ですがページ数も多くモヤモヤ度も高めだった気がします。とにかく、あの元級友の異常さが薄気味悪くて色々とドン引き(^_^;)評価:★★★★☆
2024.06.09
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2023年7月刊LUNA文庫著者:ちろりんさんBLゲーム『耽溺の檻』の世界に転生したことを知ったシャーロット。天使のように可憐な義弟のノアは『耽溺の檻』の主人公だった。美しいノアのハーレム形成を夢見ていたシャーロットは、ヤンデレたちから彼を守るためノアに剣を習わせることに。そのおかげでノアはしなやかな筋肉がつき、毅然としたミステリアスな雰囲気をまとう男性へと成長した。…だが、ノアの様子がおかしい。「これで心置きなく僕に抱かれることができるね」ーー別荘に連れて来られ、ノアにそう囁かれたシャーロット。ヤンデレ製造機のはずのノアは、気づけばシャーロットに対してヤンデレになっていたのだった……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 シャーロット=前世の記憶を持つ侯爵令嬢。 ノア=BLゲーム「耽溺の檻」の主人公。シャーロットが前世の記憶を思い出したのは11歳になったある日のこと。母親の再婚相手、メルクリス侯爵の連れ子・ノアを紹介された時、彼の姿と名前でここが前世の自分がプレイしていたBLゲーム「耽溺の檻」の世界だと気付き、ショックを受けた。いずれノアは無自覚ながら魔性の男として大勢の者をヤンデレ化させ愛される。しかし、彼が愛してやまない姉・シャーロットの生死により、受けルートか攻めルートに分岐。バッドエンドにさえ入らなければ受けルートはまぁまぁ幸せな結末を迎えられる。だが、せっかくなら自分の目で見たいのは攻略キャラ全員を落とすスーパー攻め様モードのノア。王子すら手懐けてこの国を裏から牛耳り攻略キャラ全てを従えるハーレムエンド。その彼の姿を是非間近で見たい。シャーロットが生き残れば受け、不幸にも亡くなってしまえば攻めルート。スーパー攻め様モードを見たければ、彼女は何としても生き残りつつもノアを攻めキャラに育てなければならない。1歳下の彼の子供時代は天使のように可愛らしくて大人しい性格だった。当然ながら受けルートはこのまま成長した彼が攻略キャラ達の毒牙に罹りつつも逆にノアの魅力で篭絡していくというお話が展開する。ぶっちゃけ、これも悪くない。攻めルートに進めたいのはまぁ好みの問題だ。そんな邪な姉の本音に気付かず、ノアは彼女を慕い、シャーロットに言われるがまま勉強に励んで己を鍛えた。7年後、必死な根回しのおかげでノアを攻めキャラに育て上げ、自分が殺される運命の日も何とか乗り切ったシャーロット。婚約者のゲイリーも攻略対象の一人なので、ハーレムエンドを見るために近いうちに婚約解消を持ち掛けよう。でないと、来年にはゲイリーと結婚しないといけなくなる。そう思っていた矢先、ノアに誘われて侯爵家所有の別荘までやって来た彼女は、到着早々睡魔に襲われ昏倒。目覚めると黄色い花を散らしたベットの上。見るとお香のようなものまで焚かれていて、花の香と相俟って嗅いでいると何だか体が熱くなってきた。ベットの側に立っていたノアはそんな彼女を見下ろし、漸く姉さんを自分の物に出来ると恍惚とした表情を浮かべている。その顔はずっと望んでいたスーパー攻め様モードの時の。彼の説明によれば、このお香と花には催淫効果があるらしい。いや、あなたがこういう手段に出るのは攻略対象でしょ、それ以前にBLゲームの主人公が女に走るのはおかしいからっ。この状態のノアに私たちは姉弟じゃないのと、尤もらしいことを言って説得しようと試みたが、そもそも血は繋がってないので法律上なんら問題は無く、世間体が悪いだけで結婚もできる。元々、義姉のことが大好きな設定なのに、その彼女が生存したまま攻めルートに入ってしまった。おかげで男に走る理由が無い。拠って義姉を何としても落として添い遂げようとしているのだろう。予想外のことにシャーロットは焦り、説得を続けたがノアは聞く耳持たず、彼女を篭絡しようと流石のテクニックで仕掛けて来る。初日は何とかキス止まりで済んだが、数日もしないうちに一線を越えそうでヤバイ。頼みの綱だった両親は姉弟水入らずで休暇を過ごしたいと上手くノアが言いくるめたと言っていたので帰宅予定日を越えない限りここには来ないだろう。自力での脱出はお香と花のせいで体がだるいし、足首には枷が嵌められているので外に出るのは不可能。この詰んでる状況では、諦めて彼を受け入れるしかないのか。実際、嫌いどころかノアは現状一番好きな人だ。だが、大事な弟という枠をはみ出してはいけないと理性がストップがかかる。それにしても彼は何であんなに上手いんだろう。まさか、モテるのを良いことにあちこち手を出して遊んでるとか?そう思い込んだ彼女は何故か胸が痛んで・・・。ゲームの世界に転生、というよくあるパターンではありますが、それがBLゲームだったので、ヒロインは自分が恋愛対象になるはずがないと高を括っていました。ハーレムエンドが見たいからと、自らの手で矯正を施したせいで姉大好きな弟は、彼女が結婚してしまう前にと行動に移ります。何だかんだとシャーロットもノアを憎からず思っていたので、歯止めをかけていた理性も崩壊寸前。しかし、勝手な妄想でノアが他にも手を出しているのではと思い込み、嫉妬心に気付いた彼女は漸く、自分も異性として彼を愛していることに気付いて、ノアを受け入れます。実際、ノア自身は彼女一筋で遊んでなどおらず単に主人公補正のテクニックだったと後に判明。恋人同士になった二人でしたが、シャーロットには婚約者がいる。まぁ、いずれ婚約解消するつもりだったけどノアと結婚するからという理由は相手の家が抗議してきそうだな。当たり障りのない言い訳を考えていると、なんとゲイリーの方から破談にして欲しいと申し出が。なんでも、彼は浮気した挙句相手を妊娠させてしまったらしい。責任を取ってそちらと結婚することになったと話すゲイリーに驚いていると、ほくそ笑むノアの様子が気になった。あの花とお香は随分効いたようだってまさか?ノアのしでかしに気付いたシャーロットはその用意周到ぶりにドン引き。娘の破談に頭を抱える両親にしれっと自分が彼女と結婚するから問題ないと報告するノアに父は体裁が悪すぎると猛反対したものの、息子の人脈の広さのおかげで事業も上手く行っている手前、機嫌を損ねる訳にはいかず、渋々二人の結婚を認めるのでした。シャーロットはハーレムにはしなくとも陰でこの国を操る裏ボスになっていた彼に改めて惚れ直したところで幕。ヤンデレ化すると言う他の攻略対象が登場しないのであんまりヤンデレ感は無かった気もしますが、割とタイトル通りのお話だったと思います。評価:★★★★☆
2024.06.08
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2023年11月刊ロイヤルキス著者:蒼磨奏さん医者一族の令嬢イルゼは、医療の勉強のため留学していたが、帰国した際、一人の患者を託される。大公ダリウスは腕の怪我は治ったが、後遺症で腕がうまく動かせず、医者たちを拒絶し離宮で過ごしていた。「療養師」としてイルゼは離宮に泊まり込み、ダリウスを診ることに。医師として尊敬する父から託された仕事を全うするため懸命に向き合うイルゼ。どの医者も諦めた後遺症を、イルゼだけは諦めず向き合う姿勢にダリウスは次第に心を許していってーー。「こんな女性ははじめてだ」押し倒され淫らな甘い交わりにイルゼは戸惑うばかりで!? 眉目秀麗な大公様と健気な乙女の溺愛!! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 イルゼ=療養師。国王から大公・ダリウスの治療を依頼された。 ダリウス=国王の異母兄で大公。オーガスト=レクイア王国国王。ダリウスの異母弟。 ロゼッタ=ダリウスの元婚約者の侯爵令嬢。医療一族・アンゲルス伯爵家の長女イルゼは、医療技術の進んでいるライ皇国に留学。師匠について療養師として学んでいた。しかし、王位継承争いで皇国に内乱の兆しが。留学生は皆安全のために帰国することが決まり、イルゼも世話係の侍女・ナタリーと共に3年ぶりにこのレクイア王国に戻って来た。久しぶりの我が家で家族との再会を喜ぶ彼女に、父からある患者を受け持って欲しいと頼まれた。一先ず詳しい話を聞いてからだと言うと、翌日連れて行かれたのは王宮。若き国王・オーガストから直々に大公・ダリウスが数か月前に公務中に大怪我を負い、その後遺症により両腕に障害が残ってしまったこと、それをきっかけに離宮に引き籠っていると説明を受けた。ダリウスは第一子ではあるが身分の低い側妃が産んだ子で王位継承権の無い、オーガストの異母兄。兄の現状に彼は胸を痛めていた。そこで、後遺症のある患者に寄り添い、リハビリの手助けをする療養師ならと、伯爵の後押しもあってイルゼに白羽の矢が立ったと言うわけだった。国王自らの頼みに断れるわけもなく、父と共に離宮を訪れたイルゼは、いざという時は国王の名を出していいと言われたのを思い出し、会うのを拒絶するダリウスと無理矢理対面。カーテンを閉め切った部屋で悄然としている美しい青年。腕は全く動かないわけではないようだが、文字を書くのも一苦労でボタンも留めるなど細かい作業が出来ない。直に触ってどういう状態か確認したいのだけど本人が死ぬほど嫌がるので諦めた。彼にはこれから通いで治療に当たるのでお見知りおきをと挨拶し、今日の所は早々に引き上げ、翌日朝から本格的に取り組むことにした。が、腕に障害が残り、卑屈になってしまったダリウスは頑固で、中々に手強い。とは言え、今までの患者も最初から心を開いてくれたわけではないので、焦らず気長に接すればいい。通うより、もういっそ居候させてもらおうとナタリーと二人、オーガストに許可を得て離宮に泊まり込み、リハビリに入れるまでは手も空いてるので使用人たちの手伝いをしていた。そんな彼女の姿にダリウスは目を丸くしており、毎朝自分を起こしに来るイルゼを眩しく感じるようになっていた。1週間後、イルゼの提案でリハビリを受けてくれるなら何でも願い事を行くと言われ、つい意地悪を言ってしまったダリウスは本当に彼女が実行しそうになって慌てて止めた。イルゼが真剣だと思い知って、ダリウスも腹を決め彼女の言うメニューに取り組むことを約束。改めて彼の腕を触り状態を見ると指はわずかにでも動くので神経の断裂はないようだ。これならばマッサージと柔らかいボールを数分握る運動を繰り返すだけでも大分改善するはず。イルゼのリハビリとマッサージを受け、3週間も経つとかなり効果が出ていた。報告を受けたオーガストは大層喜び、兄の復帰もそう遠くないと確信したようで、社交の馴らしのために近々開催される夜会に招待すると言っていた。それなら、その前に少し外出もしてみるべきだと買い物に誘ってみると、ダリウスの緊張も少しずつだが解けて来た。しかし、その帰り道。馬車に轢かれかけた少年を助けようとイルゼが飛び出し衝突。ダリウスは脳震盪を起こした彼女を伯爵家が運営する病院に運び込んだ。ダリウスは自分の身を顧みないイルゼの姿に衝撃を受け、いつしか自分が彼女に心惹かれていたことに気付いた。イルゼの方も意識してくれているようで少なくとも嫌われてはいないと思う。彼にはロゼッタという婚約者がいたが、怪我と障害が残ったことであなたとの婚約にメリットを感じないと面と向かって言われた後、婚約破棄されていた。元婚約者のあの態度を思うと余計にイルゼの献身ぶりが心に沁みる。そして夜会の日。リハビリの甲斐あって傍目ではすっかり回復したように見えるダリウスと彼が連れているイルゼの姿は会場の注目の的だった。一旦イルゼと別れて別室でオーガストと再会し、そこでイルゼとの結婚したい旨を告げたダリウスは、弟からも喜ばれた。話を終え待っていたイルゼと会場に向かった彼はかつての婚約者・ロゼッタと遭遇。一緒にいた父親のギルゴリー侯爵共々、ダリウスとの復縁を望んでいる様だったがそんな気はさらさらない。イルゼが少年を助けたあの事故も、後に侯爵家の馬車によるものだったと判明し余計に嫌気が増している。言及すれば乗っていたのはロゼッタだったようで、相当急がせていたらしい。人を轢いてもいいだろうという言い分に眉をひそめた。侯爵が慌てて娘を連れて会場から出て行く姿を見ていたオーガストの話によれば、ダリウスとの婚約破棄についても貴族達からかなりバッシングを受けた上、相手をえり好みし過ぎて次の縁談も決まらないと言う。あの性格ではな、と失笑し、気分を変えてイルゼとシャンパンを飲んでいたダリウスは彼女の様子がおかしいことに気付いた。なんと、彼女は壊滅的に酒が弱く、すっかり泥酔しており、ダリウスとロゼッタの関係を邪推していた事、嫉妬して悔しい思いをしたと彼に食って掛かった。自覚のない彼女に無意識に誘われ、一線越えかけたが鉄の意思でなんとか思いとどまったが、イルゼも自分と同じ気持ちだと判ったのは嬉しい。翌日、彼女に気持ちを打ち明け、プロポーズしたが正気に戻ったイルゼは少し考えさせてほしいと返事を保留。リハビリもほぼ完了したので屋敷に戻り、身分違い含め複雑な胸の内を妹に相談していたイルゼの元に、怒り心頭のロゼッタが訪ねて来て・・・。自分から棄てといて、復帰が決まったら復縁を希望するスカタンな令嬢は、ダリウスのこともステータスの一部としか思っていませんでした。彼女の言い分を聞き、迷っていたのが馬鹿らしくなってたイルゼはロゼッタを言い負し追い返します。しかし、そんな最中、彼女の第二の故郷である港町ノルンに内乱により避難して来たライ皇国の避難民たちが押し寄せ、医療従事者を募っていると聞き及びイルゼはある決意をするのでした。彼女はダリウスを訪ね、ノルンにいる叔父一家の病院に行くことと自分の想いを告げます。暫く帰れないけど、待っていて欲しいと。そして、イルゼは自分の両ひざに残る酷い傷跡を見せ、昔話をします。11歳の頃、馬車に轢かれ切断寸前だった両足に重い障害が残り、自暴自棄になっていたが、ある出会いにより立ち直り辛いリハビリに3年耐えて歩けるようになったと。実は、彼女は10年ほど前に弟の影武者をしていたダリウスと出会っていました。歩けない事に絶望し、やさぐれていたイルゼに優しく接してくれた王子様。一旦の別れから4カ月後、内乱も落ち着き避難民の数も減って来た頃、ノルンで二人は再会。彼はイルゼに会う為に色々裏で動いてくれていました。両腕を負傷した理由も、影武者の話からそうじゃないかと思ってたら案の定。この辺りも結婚するからには変えて行くことになり、後にイルゼはダリウスと正式に婚約。数か月後、二人の結婚式当日の様子が描かれて幕。ダリウスの事情についてはあまり書いてもアレなので割愛してます。自らも大怪我の末、重い後遺症に苦しんでいたからこそ、彼の気持ちが痛い程判るイルゼ。ましてやそのダリウスが自分が立ち直るきっかけだったなら、なおさら。10年前の彼は本当に王子様だったけど、その言葉はどこか寂しさも秘めていた。それからのイルゼの心境の変化、療養師を目指し良い師匠に巡り合えたこと。患者に必要以上に踏み込むなと言われつつも、運命の出会い(再会)なら恋に落ちても仕方ない。それはそうと、作中、イルゼに欲情して悶々とするダリウスの様子に読んでて笑いがw評価:★★★★★
2024.06.07
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2024年1月刊蜜猫F文庫著者:熊野まゆさん過激すぎてリタイアした18禁乙女ゲームの世界に転生したことに気づいた伯爵令嬢マリア。だが彼女はゲームの世界には居なかったただのモブだった。前世の経験を生かし魔法を使ったプリザーブドフラワーの開発にいそしむ彼女は最推しだった花好き公爵、トラヴィスに業務提携と婚約を申し込まれる。「きみが欲しくてたまらない」大好きだった人に望まれ嬉しいけれど、えっちなゲームの内容を思うと受けていいのかためらわれて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 マリア=前世の記憶を持つ伯爵令嬢。トラヴィス=ゲーム「ドキロマ」の攻略対象の一人。 マヌエル=ディラ国の王太子。チェルシー=王太子妃でゲームのヒロイン。 ジェナ=トラヴィスルートの悪役令嬢。ブリザードフラワーの研究開発に明け暮れている伯爵令嬢・マリアは前世の記憶を持っていた。ここが生前の彼女がプレイしていた18禁乙女ゲーム「ドキドキ☆ファンタジーロマンス」(通称「ドキロマ」)の世界だと気付いたのはマリアが15歳の時のこと。18禁と付くだけあって過激なイベントてんこ盛り、さすがに耐えかねてリタイアしたものの、国名に王太子とその妃となった人物の名前が、ゲームと同じなので疑うべくもなかった。でも、マリアなんてキャラは登場していなかったような。エンディング後の世界とはいえど、きっと自分はモブ中のモブに違いない。前世と同じく、今の人生でもブリザードフラワーを作りたい。当然薬品や機器などは無いのだが、この世界には魔法があった。マリアも水属性の魔法が使えるためそれを応用し、おかげで予想よりも早く商品化できそうだ。せっかくなのでマリアンフラワーと名付けてみた。そんなある日、噂を聞きつけてカーライル公爵が是非協賛したいと伯爵家を訪れた。トラヴィス・カーライル、彼こそ前世での最推しキャラ。いざ対面するとあまりの格好良さにクラクラする。彼は随分とマリアンフラワーを買ってくれていて、公爵領の生花業も協力できるはずと話し、マリアと婚約したいとまで言い出した。王太子・マヌエルの友人で五大元素の魔法を使えると言うエリートからの申し入れに両親は大喜び。もう嫁に出す体で燥いでいた。事業提携するには実際に公爵領の花畑を見てもらいたいと少々強引に連れ出されたけれど、何か妙に好感度高くない?のっけから婚約話が出たので、それとなく本気ですかと尋ねれば、当然だとばかりに肯定されて困惑。リタイアしたので、彼のルートもクリアできていない。でも監禁とか結構物騒なエンディングだと聞き及んでいた。だが、SNSでの情報によればトラヴィスには溺愛エンドもあるらしい。当時も興味はあったものの結局そのままだったんだよなぁ。だから、先行き不明過ぎて不安しかない。公爵領では、トラヴィスの優秀さにひたすら感激し、一方マリア自身も自覚が無いながら非凡な才能を見せ彼に惚れ直されていた。後日、トラヴィスから正式に婚約を申し込まれ、ひと月後には婚約披露パーティーも開催されることに。マリアはその会場でトラヴィスルートの悪役令嬢・ジェナと遭遇。彼に憧れる令嬢は多く、妬まれるとは覚悟していたが、侯爵令嬢のジェナは身分もあってかマリアを見下しているようだ。相応しくないとかアレコレ言われたけれど、挨拶回りをしていたトラヴィスが隣に帰って来ると慌てて逃げて行った辺り、彼に嫌われたくないんだろう。暫く経って、二人は結婚。婚約時から理由を付けて公爵邸で同居させられてたので今更だが、やはり感慨深い。色々謎だけど、こうして結婚に行き着いたのはエンディング後の世界だからだろうか。結婚して一層マリアを溺愛し、どこへでも彼女を伴い出掛けていたトラヴィスだったが、そろそろ忙しくなると言う。そんな彼には、先日自分の前世のことと、ここが架空世界であることを明かしていた。一風変わった所も好ましく思われてはいたものの、やはり不思議に思う面もあったようで、問い詰められた結果だった。前世のことを明かしてもトラヴィスの態度は全く変わらず、愛してくれているのは本当にありがたい。彼はジェナが悪役だったと聞くや眉をひそめていて、どうしてか尋ねると、彼女の父・アトリー侯爵には謀反の嫌疑がかかっているのだとか。その対策の為に忙しくなると言う彼は、ジェナにマリアが妬まれているのも気にかかっているようで、危機に陥った際にトラヴィスがその場に転移できる魔力を込めた石をネックレスにして彼女に渡した。その日、トラヴィスに付き添い、王宮にやって来たマリアは王太子妃となったヒロイン・チェルシーと初対面。気さくな彼女とすぐに仲良くなり、マリアンフラワーを使った小物を今度プレゼントすると約束。話し合いを終えたマヌエルとトラヴィスとも合流し、迷路ゲームで遊んでいたマリアは、マリアンフラワーに不具合があったとアトリー侯爵家に呼び出され・・・。当然、これはジェナによる罠なんですが、潔白を示すためにチェルシーも付いてくることになり、断れない状況。屋敷に着くと何だかんだ理由を付けてチェルシーと引き離されたマリアは、ジェナの幼馴染の伯爵令息・ベンに襲われます。この国には、どんな理由があろうとも既婚者が配偶者以外と関係を持ったら即離婚という、性犯罪被害者に優しくない法律がありました。ジェナはそれを狙ってマリアを襲わせるも、例のペンダントのおかげでトラヴィスとマヌエルが駆け付け事なきを得ます。しかし、弱みを握られているのかベンは今回の件は飽く迄自分の独断だとしらを切り続けたせいで、侯爵親子を罪には問えず。ならば謀反の罪でしょっぴいてやるとトラヴィスが怒りに燃えていた頃、チェルシーのお茶会に出席していたマリアをジェナが氷魔法で周りを凍らせ誘拐するという暴挙に。魔法を無効化するという塔に立て籠もり、マリアを人質にする侯爵達でしたがまぁヒーローを怒らせる方がバカだよね、とあっさり御用。無事、救い出されたマリアは諸々の出来事を思い出し、これが噂の溺愛ルートだったんだなと気付いて幕。地味で何処にでもいるような自分はてっきりモブだと思いきや、実は幻のエンディングのヒロインでしたって言うオチ。最近割と出て来るパターンながら面白かったです。ヒロインが自覚なくとも前世含めハイスペックな所も良いし、全ルートクリアの猛者というわけでもない。過激すぎる内容に居た堪れなくなってリタイアしてるせいで、暗中模索の中、最推しのヒーローに溺愛されて幸せになるお話。評価:★★★★☆
2024.06.06
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2023年10月刊マカロン文庫著者:砂川雨路さんウブな会社員の都子は、御曹司でもある副社長・要の秘書として働き始めて3年。要にほのかな恋心を抱いていたが、彼には政略結婚の予定があるため、身分違いの叶わぬ恋だと諦めていた。ところがある日の仕事終わり、ひょんなことから要と一夜を共にしたら、後日妊娠が発覚! 彼に迷惑をかけたくないと思い、本当の理由は告げず退職することに。ひとりで産み育てていたのに、1年後、突然要が現れて…!? 「人生のすべてをかけて必ず幸せにする」ーー空白の時間を取り戻すかのように、たっぷりの溺愛で包み込まれ…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 高垣都子=入社5年目の副社長秘書。要に片思いをしている。 岩切要=大手製紙会社の御曹司で副社長。猪川麻里佳=要の婚約者。大手製紙会社の秘書課で働く都子は、上司でこの会社の御曹司である要に想いを寄せていた。しかし、彼には婚約者がいて結婚も間近と聞いている。要に自分の気持ちを知られてはならない。話しやすいのか、自分に気安く接する彼の態度に内心でドキドキしながらも黙々と仕事をこなす日々。しかし、大口の仕事が上手く行き、気持ちも緩んだのか要にお祝いにとレストランでご馳走になった後、酒も入り、彼に誘われる形で都子は一夜を共にしてしまった。たった一晩、お互い大人なのだしこのことを盾にして交際を迫るつもりはなく、何か言いたげの要には充分弁えていますから安心して欲しいと告げ、以降も気にしていない風を装っていた。それから一ヶ月ほどたったある日、体調不良に陥った都子はもしやと検査薬で検査して見るとしっかり陽性反応が。念のため病院で診察もしてもらったが間違いなく妊娠していて、産むことを決めた。でも彼の側に居続けていたらバレてしまう。思い切って退職願を出すと要に驚かれ、あの日のことが原因かと詰め寄られた。さすがに真実は告げられない。何故なら彼の婚約者である麻里佳も妊娠したとかで式を早めようと要の父である社長が喜んでいたから。引き留める要に、意思は変わらないと告げ、引継ぎを済ませ1ヶ月後に都子は会社を退職したのだった。それから季節は巡り、都子は3ヶ月になる息子の大地と二人、アパートで暮らしていた。母子家庭で育ち、その母も早逝した彼女は祖父母に育てられ、今回のことも最終的には彼らを頼ることになってしまった。酷い男に引っかかって苦労した娘と同じく、孫までこんな目にと祖父は激怒していたけれど祖母共々最終的には力を貸してくれて暫くは実家で世話になり、先月引っ越したばかり。貯金と母の遺産で暫くは暮らしていけるが息子が保育園に入れるようになったら働かないと。そう思っていた矢先、祖母から電話が。なんとアポなしで要が実家を訪れたと言うのだ。祖父母は彼を見てピンと来たらしい。もうここには住んでいないと追い返したそうだが、まだ引き上げて来ていないベビーベッドを見られたと聞き血の気が引いた。祖母ももしかしてバレたかもしれないと言っていて、一回帰ることにした。だが、帰宅した途端、再び要が実家を訪れ、赤ん坊を抱いている姿を見られてしまった。祖父は性懲りもなくと今にも殴りつけそうで慌てて止めて、バレてしまったのなら仕方ないと要の子だと素直に打ち明けることにした。祖父母も交え、要が口にしたのは謝罪とあれからのこと。何と都子が去ってすぐに彼は麻里佳と婚約破棄したと言う。え、妊娠してたって聞いたけど?と尋ねると、どうやら麻里佳には他に好きな人がいたらしい。二人の婚約は家同志で決めたことで婚約したのは子供の頃。おかげで、婚約者というより友人関係に近かった。大人になっても今イチ結婚相手という認識にならず、麻里佳はある男に恋をした。打ち明けられた要は、彼女に頼まれアリバイ工作などの協力していたので猪川家にはバレなかったのだが、彼も都子という想い人が出来た。それで、頃合いを見て婚約解消しようと話を詰めていたと所、麻里佳が妊娠。要の子だと思い込み両家の両親が盛り上がっており、それを都子に知られてしまった。順番をすっ飛ばして、事情も話さず関係を持ってしまった自分が悪いと詫びる彼に、祖父はまだ怒り心頭だったが、祖母の執り成しによって猶予期間を設けることに。言いたいことはあるものの、誤解があったようだからとの祖母の言葉を受け、要から1ヶ月間、一緒に暮らして父として夫として相応しいか見極めて欲しいと頼まれた。悩んだ結果、大地も父親がいた方がいいだろうと、期間を決めて要のマンションで暮らすことを決めた。彼は予想以上に子煩悩で大地を可愛がり、甲斐甲斐しく世話を焼いている。その様子を見て彼女は2週間も経つと要との結婚を考え始めていた。彼の両親が二人の結婚を歓迎していると言っているのも大きい。要も早く孫に会わせてくれとせっつかれていたようだが、現在厄介ごとが起きていて先延ばしになっているのそうだ。何でも猪川家側が娘を妊娠させたくせに婚約破棄されたと岩切家に文句を付けているらしい。妊娠中にDNA鑑定もして要の子ではないと証明もしているのにだ。当の麻里佳とは先日改めて会って話をし、彼女のせいではないのに謝罪された。お相手は父親の部下だそうで立場を思うと名を明かせないとも言っていた。それから数日経ったある日、祖父から都子宛に猪川家から慰謝料請求の内容証明が届いたと連絡が来て・・・。いやいや、いくら婚約解消が悔しかったからって都子を愛人扱いして婚約破棄に至った責任取れとか頭おかし過ぎるよ猪川夫妻。ちゃんと順序を守ってればと祖父は再び要に激怒するも、猪川家側の言い分など色々判ると向こうの異常さに気付き、何が何でも孫と曾孫を守れと怒りを収めます。このお爺ちゃん、沸点低いけど飽く迄家族のためを思ってのことなのと、まぁ尤もな事を言ってるんですよね。常識人というか。その後、猪川家が都子の元を訪れて愛人風情がと彼女を責め立てるも、あんたらのその考えがおかしいんだし、娘の幸せを考えろ(本文はもっとソフトな言い方です)と諭していた所を、麻里佳とそのお相手・蔵多を伴い要が帰って来て、後日改めて話し合いで解決しようと説得。その話し合いの場にて麻里佳が絶縁を突きつけたことで漸く夫妻は折れ、蔵多との結婚を認めるに至ります。岩切家と都子宛の慰謝料請求も撤回されるも、両家はこの件で険悪となり業務提携も無しに。後始末に要が奔走する中、彼を支える都子。なんとか危機を乗り切った要からのプロポーズを受け、数か月後、周囲に祝福されながら式を挙げる二人と大地の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編は、結婚式後、息子を預かってもらいデートする夫婦のエピソードでした。毒親って程ではないのかもしれませんが、とにかく麻里佳の両親が怖くて、どうすればそんな考え方に?と首を捻ることしばしば。都子と要、メイン二人の別れから再会が早く、子は鎹って感じでまとまるのが早かった分、猪川家サイドの横やりが長くて煩わしかった印象です。モヤモヤは無くてもこういう独特な考えの人達を説得するのは本当に至難の業ですね。評価:★★★★☆
2024.06.05
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2024年5月刊ベリーズ文庫著者:未華空央さん地味女子の澪花は、偶然訪れた高級ホテルでトラブルに遭遇。なんと社長である蓮斗に助けられる。失恋が原因で男性が苦手な澪花。逃げるように去るが、後日彼が澪花の元に会いに来て!? 「契約妻になってほしい」突然の提案に、澪花は驚くばかり。病気の母の治療費のための契約関係のはずが、蓮斗は甘やかし100%で囲い込んで!? 「離さない、覚悟して」溺愛漬けの毎日に澪花は陥落寸前で…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 千葉澪花=ごく普通の会社員。 あるトラブルで知り合った蓮斗から契約婚を持ち掛けられた。 橘蓮斗=ホテル企業の御曹司で社長。澪花を見初める。姉の萌花と二人、不倫の末に蒸発した父が残した借金の返済を続けている澪花。父のことで軽い男性不信の気があった澪花は20代後半になるまで男女交際経験もなく、心配した姉の薦めもあって一人の男性と付き合い始めた。明るく優しい人だと思っていたものの、それも付き合い初めの頃だけ。一ヶ月も経つと約束は悉くドタキャンされた挙句、二股を掛けられていたことが発覚。逆ギレした彼氏に、ヤラせてくれないお前が悪いし、俺の金目当てだったんだろうと罵られ破局した。たとえ結婚しても彼に返済を手伝ってもらうつもりなど無かっただけにショックだったが、何でも話して欲しいと促されてつい色々話してしまった自分の失態だとも思う。萌花はそんなのは男の方が悪い、またいいご縁があると言ってくれているけれど、もうこりごり。姉の伝手で高級ホテルTACHIBANAで開かれるパーティーに誘われたが、派手な場所は苦手なので断った。パーティー当日、帰宅すると姉から電話で忘れ物をしたので会場まで届けに来て欲しいと頼まれた澪花は、給仕の不注意で飲み物を被りずぶ濡れに。誤り倒す給仕に大した服じゃないですからとその場を離れようとした所を、一人の青年に呼び止められた。彼は橘蓮斗と名乗り、渡された名刺を見るとこのホテルの社長とあってビックリ。従業員のミスなのだから弁償させてほしいと通された部屋でいかにも高そうなドレスを貰い、どうしてよいか判らず着替えの間席を外していた橘宛ににメモ書き持っていたありったけの札を置いてその場を逃げ出したのだった。姉には、帰宅後事情を話して謝り、翌日出社すると社員証が無いことに気付いた。すると昼休憩に橘がわざわざ社員証を届けに来てくれていた。彼から話があると就業後に会うことを約束したが、母が入院している病院からの連絡でそちらに行かねばならなくなった澪花を橘が送ってくれた。生まれつき心疾患のある母はここ数年入退院を繰り返していた。手術をすれば完治するようなのだけど、金銭的余裕が無い。この病院もそこまでの設備は無く、今回も容体が芳しくないから転院して手術した方が良いと主治医から告げられ決断を迫られていた。姉とも相談しなければ、と思っていた矢先、病院からの連絡で母がこの街にある総合病院への転院が決まったと聞かされた。しかも、手術も受けられるという。どういうことか判らなかったが、これで母も助かる。数日後、転院した母に付き添い、執刀してくれる担当医にも挨拶した澪花は、ここに来れたのも橘が手を回してくれたからだと知った。執刀医が橘とは高校の同級生だそうで、頼んでくれたらしい。しかも、入院費含め全て橘持ちというので、慌てて貰った名刺にあった番号に電話をすると、あの日の代わりに会うことになった。そこまでしてもらう義理は無いのに、と話す澪花に、では見返りとして俺と契約結婚して欲しいと告げる橘。君が気に入ったんだと言われ、飲んでくれたら生活全て自分が面倒を見ると言う。さすがに驚いて少し考えさせてほしいと猶予を貰ったが、なぜだか嫌な気分はしなかった。しかし、その数日後、元カレに偶然再会し悪し様に言われた澪花をさりげなく庇い自慢の妻だと言ってくれた橘の姿にこの人なら信じられると覚悟を決めた。生活の面倒はともかく、母の入院費や手術代の借りは返さなければならない。彼に何のメリットがあるのか不明だが、それでもできることがあるかもしれない。結婚の承諾をすると彼は喜び、母と姉にも挨拶してくれた。その後、すぐに入籍をした二人は橘の用意したマンションで同居を始めた。蓮斗の両親との顔合わせと挨拶は、彼の都合が合わず大分遅くなってしまったが、漸く会えることに。しかし、義父はともかく義母はかなり不服そう。嫌な予感がしていたら、マンションに見知らぬ女性が訪ねて来て、自分こそが蓮斗の妻になるはずだった。身の程知らずのあなたは彼と離婚しなさいと脅され・・・。この女性はどこぞの令嬢なんですけど、義母が息子の結婚相手に薦めようと思っていた人物で、蓮斗がどこの馬の骨とも知らぬ女に誑かされたばりに、ご令嬢を焚き付けていました。身辺調査もされていて父の件や借金のことを責められ、彼の為にならないと澪花は身を引く決意をします。が、様子のおかしい彼女に気付いた蓮斗に問い詰められ、令嬢に離婚しろと言われたと告白。激怒した彼は実家に乗り込み義母と大喧嘩になると、絶縁も辞さないと話す息子の言葉にショックを受けた義母は昏倒。実は澪花の母と同じく心疾患があると判り入院した義母の見舞いに足繁く訪れていたら、義母も根負けし漸く結婚が認められるのでした。契約結婚とはいえ、蓮斗はあのパーティー以前から澪花のことを一方的に見知っており、その人柄の良さに惚れていました。でも、父親と元カレの件で男性不信だと聞いて、普通にアタックしたのでは相手にされないと金銭的援助を盾に契約婚に持ち込んだという。ご令嬢の登場で契約婚なんだからと別れを切り出す彼女に慌てて本音を話す蓮斗の様子に読んでてクスリときました。漣斗と義母も和解し、半年後、式直前で澪花の妊娠が判明して本編は〆書き下ろしの番外編はそれから約1年後、長男も産まれ孫フィーバーの義実家でのエピソードでした。真面目で心根の優しいヒロインが御曹司に見初められて玉の輿。内容自体は非常にシンプルかつ王道展開だったので、その分安心感もありました。架空の街・ベリが丘が舞台なんですけど、名前のダサさに澪花が言う度に妙な笑いがw評価:★★★★☆
2024.06.04
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2024年5月刊アルファポリス著者:如月雪名さん異世界転移し、リーシャという公爵令嬢として生きていくことになった椎名沙良。リーシャは継母に蔑まれており、生活環境は最悪。そして、沙良に与えられた能力は異空間にあるアパートを自由に使えるというちょっぴり変わったものだった。異世界でどうやって生きていくか途方に暮れていた沙良だったが、異空間のアパートはガス・電気・水道使い放題で、食料もおかわりOK! しかも、家を出たら……すぐさま町やダンジョンに直結!? こんな超・快適なアパートがあるのなら、もう窮屈な公爵家にいる必要はない……? そう思った沙良は実家を出ていくことを決意してーー自由気ままな異世界二拠点ライフ、スタート! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 椎名沙良=アラフィフの日本人女性。 突然死した後、異世界の公爵令嬢・リーシャに転生した。 椎名賢也=沙良の2歳年上の兄。 外科医をしていたが沙良によって異世界に召喚される。 旭尚人=沙良と賢也の幼馴染。ある日のこと、外出先で倒れて亡くなった椎名沙良は、異世界転移していた。どういうことかと慌てる彼女の側には、この状況について綴られた差出人不明の手紙が。沙良宛だったので読んでみると、何者かの手違いによって自分が死んだこと、詫びと称して異世界転移させられた挙句、別人の身体で第二の人生を過ごして欲しいと言う、ふざけたもの。48歳の自分が今更12歳の少女として暮らせってか?公爵令嬢とのことだが、今自分の魂が入っているリーシャという娘。どうやら、継母に虐待されているらしい。食事も碌に与えられていないのか痩せ細り、普段から暴力を受けているのかあちこちあざだらけの身体を見下ろしため息が出た。実父である公爵は娘を溺愛しているようだが、多忙で屋敷を留守がち。旦那の目が届かない所で継子を虐待とは、連れ子可愛さもあっての行動か。となるとこのリーシャ、相当詰んでない?差出人からの説明続いており、読み進めると沙良に色々な恩恵を与えてくれているのが判った。先ず、時空魔法というカテゴリで、どういうからくりなのかいつでも出入り可能なアパート一棟(12室)が与えられ、電気ガス水道は無料で使い放題。このアパート自体、沙良が住んでいたものと同じ作りで家具家電も全て揃っていた。他の住人は当然住んでいないが彼らの所有物はそのまま使えるようになっていて、食材などは登録すれば365個まではコピーして増やしアイテムBOXに保管できる。風呂やトイレも使用できるし、早くもこの世界のトイレ事情が受け入れられそうもなかったから、ありがたいシステムではあった。気になるのは希望の人物をこの世界に召喚できるという能力。これについては誰を呼ぶかじっくり吟味することにした。それから数日経って、いよいよ父が帰宅。継母からは余計なことは言わぬようけん制されていだが、中身は酸いも甘いも味わったアラフィフの女性。自分より随分年下の継母など怖くも無い。父が帰ったら継母にされたことをチクってやった。当然ながら亡き妻の忘れ形見であるリーシャへの仕打ちを知って、公爵は激怒。後妻とその連れ子、実家から連れて来たと言う使用人共々屋敷から追い出した。おかげで多少は溜飲が下がったけれど、それでも継母からの虐待の末に亡くなったのであろう本当のリーシャの気持ちを思うとやりきれなくて、長らく気付かなかった公爵にも怒りが沸いた。優しい人だとは思うが、一緒には暮らせない。リーシャと継母、その連れ子、追い出された使用人たちの部屋から金目の物を持ち出し、ホームの魔法で彼女は屋敷から姿を消した。一週間後、アパートでゆっくり過ごしていた沙良は、公爵領にあるミリオネという街を拠点に働くことにした。ギルドに登録すると汚物処理や荷運び、薬草採集など価格は安いが簡単な仕事が受けられる。体が小さく体力の無い彼女は先ず店から店の荷運びを引き受け、大金が稼げる討伐依頼を受けられるEランクを目指し少しずつ仕事をこなしていた。見るからにお嬢様な彼女はある意味目立っており、注目の的であった。町自体は気の好い者が多く治安も悪くないのでそこまで警戒はせずに済んでいるが、それ以前に孤児が多いことに驚いた。親が冒険者で、討伐に行ったきり帰ってこなかったという子供がああして路上生活をしているらしい。お人好しなわけではないけれど、見ていると辛い。自分はアパートに帰れば風呂にも入れるし、腹いっぱい食べられる。討伐依頼を受けられるようになるまでに装備と武器を買おうと金を貯めていたが、サラは貰った依頼料でパンや串焼きを買い、子供たちに配り始めた。大して稼げないだろうにあんな少女が孤児に施しをしている姿に驚き、彼女に賛同する冒険者たちも増えて来た。それからまた暫く経って、サラは漸くEランクに昇格。武器と防具も揃えてはみたものの今イチ心許ない。ここはやはり召喚を試すべき?思い浮かぶのは家族なのだが、70代の両親は除外として呼べるのは一人だけなので無難に頼れる長男・賢也にした。外科医としてバリバリ働いている兄には申し訳ないが、これからの人生に付き合ってもらうべく賢也を召喚。そして、目の前には14歳くらいの少年が一人。驚いている彼に状況を説明し、謝り倒していると例の手紙が兄の元にも。自分と違い、現代では行方不明扱いになっているであろう兄はショックを受けていたが事情が分かるとサラに付き合うことを承知してくれた。兄は主に魔法が得意で攻撃も治療も万能。日にいくつも仕事をこなして1ヶ月ほどで賢也のランクが上がり、討伐依頼を受けるようになると稼げる金も大幅に増えた。その分、防具や魔石採取用の解体ナイフなど必要経費も嵩んだが、サラには一つの目標があった。孤児たちに家を。賢也にも相談し貯めた金で中古の家屋を数棟購入。子供たちを住まわせ定期的に差し入れもしている。子供たちには清潔を心がけさせ、働ける年齢の子にはギルドの登録費用も立て替えてやった。街の人たちの協力もあって子供たちの心配も無くなったし、この街に来てもう4年。兄と相談した結果、ダンジョンがあると言うリースナーの街に拠点を移すことに。ミリオネに比べると冒険者含め質の悪い者が多く、違法の奴隷商も横行しいて治安も良いとは言えない所ではあるが、ダンジョンはやっぱり稼ぎが違う。そして、この街の孤児たちが暮らす劣悪な環境が気になり、つい色々と支援してしまっている。治安が悪いのであまり派手にやるとこちらが狙われる。最初は差し入れと炊き出し程度に収め、徐々に他の冒険者と親しくなった頃、タダで賢也が治療してやった恩義からか、支援活動にも賛同してもらえるようになった。並行してダンジョン踏破は進み、最下層ではドラゴンではなく、かつての幼馴染・旭と再会し・・・。何者かの手違いにより予定外に突然死した上、虐待された挙句死亡したらしい公爵令嬢・リーシャの身体に魂が転移した沙良。以降、リーシャとして生きていくことになったものの、お詫びとしてもらった時空魔法という便利な力で家にも食うにも困らない生活を手に入れた。継母は追い出したけど公爵にも蟠りがあって屋敷を飛び出した彼女はアパートで暮らしながらも、異世界の町でギルド登録して金を稼ぎ、孤児たちの支援活動にも乗り出します。その頃には頼りになる兄・賢也も召喚し、拠点を違う街に移してからは名の知れた冒険者になるまでに。支援に関しては生活に余裕があるからこそできたことだと思うんですけど、やらない善意よりやる偽善、行動することに意味がある。現に彼女達に救われた子供達は多く、町の人々にも良い影響を及ぼすのでした。そののちに、サラと賢也はかつての長馴染み・旭と再会。彼もまた現代で突然死していてあの手紙を携えていました。更にダンジョンから出られないと言う過酷な制約があり、ずっと一人で暮らしていたと言う彼を召喚という形で制約から解放すると、それから3人で行動することに。裏では娘の無事を心配する公爵の様子や、自分勝手な継母の心情なども綴られます。当のサラはもしかしたらあの子にもこの世界で会えるかも、と未来に向けて希望を膨らませつつ〆あの子って?と少し疑問を残して終わってたのを見るに続編があるんでしょうかね。あと、アパートの施設とその周囲の店舗などが使えるなら、異世界転移してもなんとかやってけそうな気はします。評価:★★★★★
2024.06.03
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2020年9月刊ソーニャ文庫著者:栢野すばるさん女王の血を引きながらも、父が異国人であるために“穢れた王女”と蔑まれるリーシュカ。最愛の父を殺され、悲しみに暮れる彼女の前に現れたのは、初恋の男ルドヴィークだった。獣のような残忍さをのぞかせる一方、昔と変わらぬ優しさでリーシュカを案じてくれる彼。女として見られていないと知りつつも、どうしても惹かれてしまうリーシュカだが…。「本当はお前を誰にも渡したくない」あるきっかけで独占欲をあらわにした彼に、甘く激しく求められー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リーシュカ=奴隷の父と女王の母との間に生まれた王女。ルドヴィーク=武器商の跡取り。 ギリアン=リーシュカの父。 ジェニカ=バチェスク国の女王でリーシュカの母。 マリーシカ=リーシュカの異父姉。代々、女王が治めるバチェスク王国。現女王・ジェニカが異国人の奴隷・ギリアンと通じ、子を成した。当然、裏でこの国を取り仕切る貴族院は黙っておらず、ギリアンだけでなくジェニカにも重い罰を課した。愛し合う二人は引き裂かれ、お互い生きている間は会うことを固く禁じられたのだ。その後、産まれた子供・リーシュカは王女でありながら、王宮で暮らすことは許されずギリアンが男手一つで育てることとなった。5年後、武器商の跡取り息子であるルドヴィークは、両親の敵討ちを果たしたものの、仇の護衛の反撃に合い重傷を負った。担ぎ込まれた教会で彼を手当てしてくれたのは、闇医者のギリアンであった。ギリアンは頭が良く、亡くなった母親が薬学に精通していたことから命令により、医師のまねごとをさせられていたのだ。ルドヴィークはギリアンに好感を持ち、その娘・リーシュカに妙に懐かれた。暫く厄介になった後、故郷のイストニアに帰るつもりだったのだが、この父子と離れ難く一緒に行こうと誘った。だが、ギリアンは妻を残していけないと固辞。どうやら、彼の奥さんは連れ出すのが難しい立場の人らしい。ルドヴィークと離れたがらないリーシュカに必ずまた会いに来ると約束し、イストニアに戻った彼は、その13年後、ギリアンからの招きで再びバチェスクを訪れた。18歳になったリーシュカは美しく成長していて、更に彼女が王女であることを知った。今は女王付きの侍女頭を務めていたいうマルヒナがばあやとして彼女の世話をし作法なども教えているそうだ。母親である女王とも謁見が叶い会うことが出来たと言うが、当然ながら姉妹達とは折り合いも良くないと言う。特に姉のマリーシカは次の女王だと言うのに素行も悪く、あまりいい噂を聞かない。そもそも、この国の王が女性なのは偏に、女にしか引き継がれないある特殊能力を有しているからだった。女王個体とも呼ばれる彼女達は、夫になる男たちの素質を爆発的に開花させる。そうして、長らくこの国を発展させてきた。そういう経緯から昔は女王自らが夫を選び番っていた。それがいつからか王家のみに力を持たせたくない貴族院たちによって王配を餞別。嫌がる女王と結婚させていた。ジェニカの王配は公爵家の息子で顔と血筋だけの無能な男。かなり前に事故死したそうだが、以降は複数の貴族と関係させて次代の女王個体を沢山産むことを強要させられているらしい。リーシュカが王女として認められたのも女王個体の一人として利用価値があるからだろう。ギリアンもそれを心配しているようで、娘を連れ出して欲しいとルドヴィークに頼んで来た。そんなある日、ギリアンが往診の帰り路、物取りに襲われて命を落とした。父を亡くしたリーシュカは嘆き悲しみ、制約によって葬儀にさえ参加できない母の立場を気の毒に思っていた。そして、父の死によりルドヴィークに執着を見せ始めるリーシュカ。頭の中に彼を自分の物にしろ、開花させなければと響く、もう一人の自分の声。初恋の人でもある彼に全てを捧げようと夜這い迄仕掛けてみたが、自分の商いは敵が多いからとルドヴィークは彼女を遠ざけようとする。ギリアンの死から数日後が経ち、巷ではジェニカが懐妊しているという噂が。母に対して異常な偏愛を見せるマリーシカは相手がギリアンだと言い、腹いせとしてリーシュカを浚い、男たちに襲わせると言う暴挙に出た。間一髪、ルドヴィークの乱入によって事なきを得て、その後、リーシュカの気持ちを受け入れた彼は彼女と結ばれた。リーシュカの身の安全の為にも武器商を継ぐのは辞め、二人で食うに困らない程度の商いをすればいい。だが、女王個体の能力を狙い、イストニア王家がリーシュカを狙っているのを知り・・・。「穢れた王女」とその初恋の人である武器商を営むヒーローとの恋物語なのですが、ヒロインの父親とその母である女王のお話でもあります。特殊な能力を有しているだけに、その結婚は本来の方法(女王が夫を選ぶ)を取らなければいけないのに、権力が偏るのは良くないと法則を捻じ曲げた貴族院。そのせいで、ギリアンとジェニカは長く離れ離れに。でも、女王に選ばれ開花してしまったらお互い無しではいられなくなってしまう。ギリアンもジェニカも次第に狂い始め、どうにもならなくなった頃、女王個体に忠誠を誓うマルヒナの手引きに寄り、密会を重ねるように。女王が妊娠したと言う話で相手はアイツだろうとマリーシカが激昂していたのもそういうわけだったんですね。そしてこのマリーシカもその顛末を見ると何とも可哀想な人でした。母を愛するあまりに実父である王配を殺し、自らの能力にも苦しめられ。最後の時まで一緒にいてくれたアザロと逝けて良かったのかも。そしてルドヴィークの母方の実家が、あのクズ王配の家だという、衝撃の事実。ギリアンが実は生きていて、娘を騙してでもジェニカと生きる道を選んだ。これも開花させられてしまった男の運命なのかな、と色々考えさせられる結末でした。ジェニカとギリアンをギリアンの生まれ故郷まで逃がしたルドヴィークは、その後リーシュカと結婚。イストニアの企みも彼の入れ知恵でバチェスクに介入してくることは無くなり、1年半後、長男が産まれた二人の元にギリアンからも娘が産まれたこととジェニカも元気だと報告の手紙が来て物語は完。このレーベルのコンセプト通り、いい具合に皆誰かに執着していたなぁ。あと、ついヒロインを一番上に紹介しがちなんですけど、今作はルドヴィーク目線だったこともあり、彼の方が主人公だったかも。評価:★★★★★
2024.06.02
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1冊読み終わらなかったので少々前倒しで毎月恒例のPV数ランキングです。やはりと言うか今回も結構変動しております。1位最早不動の記事。2位こちらも不動。来月発売の3巻が楽しみです。3位不動?と思っていましたが、今月はギリギリ逃げ切った印象です。未だに定期的にPV数を稼いいるものの来月は順位が変わっているかも?4位ついに入れ替わりを果たしました。ドアマット系ヒロインものがお好きな方におススメのお話です。5位4位とかなりの接戦でした。それでも最近またPV数を増やしていたのが印象的です。6位順位自体は先月と変わらず、ですがアニメ2期効果は継続の様です。7位コミカライズ版の影響ですかね。8位本当に紙媒体で販売してください。9位未だに定期的にPV数を増やしてこの順位。10位流石に落ち着いてきました。11位5位の続編です。12位シリーズ4作目。新婚編はこのお話を読み直ししておくと判り易いです。13位公開するコミックサイトが増えたんでしょうかね?続編が楽しみ。14位シリーズ2作目。コミカライズ版がこのエピソードに入ったのか、物凄い伸びでした。15位先月よりランクUPタイトルで損してる感があるも内容はかなりシリアスです。16位ニコイチでPV数が増え同率に。カタブツ公爵の記事はオリジナル版の方です。17位ランクダウンしましたが、PV数自体は定期的に増やしています。18位シリーズ3作目。星奈の里の真実が明かされるお話。19位先月は22位でした。ここ数日の伸びが凄かったです。20位コミックサイトで公開されてるんですかね?毎日PV数を重ねてランクイン。前述の通り、5月期は結構順位変動していたように思います。次回の集計も楽しみになってきました。
2024.06.01
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