鴎座俳句会&松田ひろむの広場

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2023年03月02日
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テーマ: 楽しい俳句(373)
カテゴリ: 俳句

35 回鴎座通信句会 選句結果のお知らせ




35 回鴎座通信句会は 39 195 句でした。選句と講評は作者名を伏せて鴎座代表、同人会長・編集長・副編集長・Ⅰ欄同人などに依頼しました。また投句された方の互選(任意・5句選)も行いました。句番号はランダムに変換されたものです。結果は「鴎座」に発表するとともにFACEBOOKなどにも発表します。毎月開催(締切 24 日)。鴎座俳句会 代表 松田ひろむ


〈第35回鴎座通信句会結果〉 作者名は特選のみ追加記入しました。他は一覧をご覧ください。

石口  榮(編集長)選
10 料理にも感性浅蜊のひとりごと
34 ビー玉の目を光らせて猫の恋
136 袋入りの七草すでに刻まれて
147 節分や防犯カメラ付けました
特選155 探梅や父にもらった骨密度/増田萌子
160 春風や日々新しく老いゆく
183 梅咲いて猫に戒名いただいて
(選評)特選にいただいた155「探梅や」の句。晩冬、早咲きの梅を求めて、山野を探し歩く探梅。体力も必要である。骨密度は男女とも加齢によって減少すると言われ、その減少率は男性より女性のほうが大きいといわれる。父の遺伝子を貰って骨太の作者。何よりの宝物である。探梅と骨密度の取り合わせに惹かれた。
10「料理にも」の句。料理にも感性に納得。「美味しく作れよ」と浅蜊の呟きが聞えてきそうだ。
34「ビー玉の」の句。闇夜に光る恋猫の目、それをビー玉に例えたところが面白い。
136「袋入り」の句。何もかも便利な世の中。刻まれたものは何となく味気ないがするが、どうかな?
147「節分や」の句。悪鬼や厄を祓う節分。最近多い空巣狙いの防犯対策と思える。口語体でさっぱりとしている。
160 「春風や」の句。日々新しくに惹かれた。春風のようにこんな素敵な人生を送れたら申し分ない。
183「梅咲いて」の句。ペットを飼う人にとっては猫も家族同然。亡くなったあとに戒名を付ける。「梅咲いて、いただいて」のリフレインが軽妙である。

小髙沙羅(同人会長)選
31おろおろと三寒四温の舌下錠
特選94餅太り涙もろいがわがままで/信岡さすけ
106蒲公英や座の文学に迷い込む
118転んでもただでは起きぬ葱坊主
147節分や防犯カメラ付けました
160春風や日々新しく老いてゆく
180三寒四温角から溶ける角砂糖
(選評)特選にいただいた94「餅太り」の句。妙に面白い。涙もろくて、わがままも滑稽。私もときどき夫から、こんなことを言われているから、他人事とは思えず、思わずの特選。
31「おろおろと」の句。やっと春めいてきた。しかしこの季節は体調変化もある。舌下錠はニトログリセンリンなど即効性のある薬。「おろおろ」が効いている。
106「蒲公英や」の句。俳句は座の文学。いつまでも迷いはあるものの、座の文学だから継続している面もある。蒲公英の季語が軽妙。
118「転んでも」の句。「ただでは起きぬ」に勢いがある好句。葱坊主は自身の比喩だろうか。
147「節分や」の句。最近の強盗のニュースの多いこと。防犯カメラが頼りとは嫌な世の中。節分の季語だから、鬼を打つ気持ち。
160「春風や」の句。「日々新しく老いて」が、思いっきり新鮮な表現。春風の季語で、老いと対比させているところもなかなか。
180「三寒四温」の句。寒いね暖かいねといっているうちに春になるそれが三寒四温。角から溶ける角砂糖という写生に納得。

後藤よしみ(副編集長)選
2人間に熱のあるなし枝垂れ梅
特選4街角に兵士の遺影春の日矢/安藤草太
17平家音読かたわらに寒の水
27落椿つぶやくようにまた落ちる
31おろおろと三寒四温の舌下錠
53春の闇打ち込まれたる星一つ
95俎板の焦げ跡いつの多喜二の忌
(選評)特選の4「街角に」の句。ウクライナと受け取れる。凍てつく大地での血で血を洗う戦争の悲惨さ。いつも犠牲となる民衆。それに神の救いの手が差し伸べられる。春の日矢となって。光景と慰霊の念が浮かび上がる。
2「人間に」の句。人間と病原菌との争いは、自然の中では小さな出来事。梅の色がそれを教えてくれる。
17「平家音読」の句。祇園精舎の鐘の声。諸行無常の響きあり。このあわれを声に出すことで魂が洗われてくる。
27「落椿」の句。落ちる様は劇的で、つぶやくようにと上手く言い留めている。
31「おろおろと」の句。急な胸苦に抗うすべもない。季節の寒暖に身を任せるようにするしかないのだ。
53「春の闇」の句。早春の冷たさが残る夜空。打ち込まれたるの措辞が、厳しさの中の希望を表す。
95「俎板の」の句。日常と特高の拷問を想起させる。忘れてはならない句。

白石みずき(Ⅰ欄同人)選
41春寒や夫と意見は平行線
80三寒四温そして明日はやってくる
83早春の草の匂いやまだ傘寿
106蒲公英や座の文学に迷い込む
特選122バラの花元気で長生きそのつもり/小髙沙羅
142鈴の音の茶房の扉沈丁花
155探梅や父にもらった骨密度
(選評)特選にいただいた122「バラの花」の句。難しい事は言っていないが高齢者が日頃思っていることをきっぱりと言ってくれた。それでいただいた。季語のバラの花で華やかな老後が待っている予感さえする。
41「春寒や」の句。嫁と姑は平行線ということはよく聞くが夫婦も齢を重ねるとお互いにわがままになり意見が合わなくなるのだろうか、春寒がいやに効いている。
80「三寒四温」の句。寒くなろうが暖かくなろうが間違い無く明日は来るのだ。いままでとこれからの人生の感慨みたいなものを感じる句である。
83「早春の」の句。まだ傘寿、に感動していただいた。はいまだまだこれからです。早春の草の匂いが元気な明日を予測しているようだ。
106「蒲公英や」の句。作者は晩年になって俳句を始めたのだ。こんなにお面白いとは思っていなかったのだろう。完全にのめり込んでしまったのだ。たんぽぽの絮の様にふわふわ夢心地なのだ。よかったよかった。
142「鈴の音」の句。古き良き時代の喫茶店を思い出した。いまどきは扉に鈴なんてダサいと言われそう。待ち合わせも鈴がなるたび入口を見たものだ。中へ入れば大きな花瓶に沈丁花が活けられてほっとしたものだ。
155「探梅や」の句。お父さんはきっと頑丈な骨太の人だったのだろう。そのお父さんに似て作者も丈夫な骨を受け継いだのだ。探梅でいくら歩いても疲れ知らず、その幸せを噛みしめているのだ。 

小平 湖(Ⅰ欄同人)選
2人間に熱のあるなし枝垂れ梅
46いつもらふ弥生生涯通信簿
59スカートの深呼吸する春の宵
106蒲公英や座の文学に迷い込む
147節分や防犯カメラ付けました
168飢えてなおミサイル落とす春の海
特選193風呂吹や何も変わらぬ誕生日/水島かよ子
(選評)特選に頂いた193「風呂吹や」の句。誕生日は毎年来る節目の日だ。長く生きて来れば誰でも色々な人生を持っている。子供も孫も成長した今は次の誕生日も健康で欲張らず淡々と風呂吹きを作り、そんな平穏な「何も変わらぬ誕生日」を迎えたいものだ。
2「人間に」の句。感覚的な句で何とも言えないところが魅力的で惹かれた。
46「いつもらふ」の句。もらうのもいいけど、たとえば生涯通信簿は自分で自分に出すものと思うけど。
59「スカート」の句。春めいて少しの風にスカートが膨らむそれを深呼吸のように感じまた少し色っぽい、気持ちが和む句。
106「蒲公英」の句。座の文学とは俳句のことか、習いごとは苦しさがあってこその楽しさ、季語の蒲公英の明るさがいい。
147「節分や」の句。この頃の世の中の一場面を連想させる句で詐欺や強盗殺人など怖すぎ。季語の明るさに救われる。
168「飢えてなお」の句。何度も同じことの繰り返し段々エスカレートしている感じ。「飢えてなお」が切実。 

鈴木 砂紅(招待)選
16薬疹の骨までかゆし寒の月
43断捨離の手元に残すうさぎ雛
特選91霾やざらざら暮らす自衛隊/川崎果連
101うららかや密談果てぬランドセル
138ねむい春ほほの飯つぶ彼らしく
158あんぱんの餡の片寄り春の鬱
174憲法前文って希望のフリージア
(選評)特選に頂いた「霾や」の句。霾とざらざらは当たり前の表現だが、それが自衛隊員の暮しとなれば、何か得体のしれない気味悪さを帯びて来る。災害救助から防衛と攻撃に転じつつある自衛隊の現実を詠んだ時事句であり、その本質を詠んだ句でもある。
16「薬疹」の句。持病の為に飲むべき薬が苦しい副作用を起こす。しかし服薬は必要。骨まで痒い体と心を寒の月に託し、詩情溢れる一句となった。
43「断捨離」の句。断捨離の句は多いが、掲句は残すものに着目。今年の干支であるうさぎの雛人形の愛らしさが印象深い。
101「うららか」の句。下校児のランドセルが道端に集い、なかなか歩き出さない。密談はこども達だけの大切な時間だったことを思い出す。
138「ねむい春」の句。頬に飯粒を付けて何時もの彼らしい、というから子供ではなく大人だろう。親しい彼への温かな気持が見える。
158「あんぱん」の句。あんぱんと鬱の取合せの妙に惹かれた。病というほどではない、明日は笑顔になるはず。春の軽さが良い。
174「憲法」の句。平和・公正・信義・安全・生存という言葉が並ぶ憲法前文は、あの頼りない小さな希望のフリージア。皮肉の効いた詠みぶりに共感。

松田ひろむ(代表)選
1春蘭のサラダの話推しひとつ
準特選12多喜二忌や期限の迫るパスポート/川崎果連
76女房風紅梅かさねの枝垂れかな
105草青む道了堂の跡地のみ
107春一番やけぼっくいの火の粉散る
132如月菜(タァツァイ)の濃き緑色ゆでにける
準特選140亀鳴くや住みたき県のアンケート/高橋透水
144悪口は言いたく無いが猫の恋
156甘樫より望む首塚花曇
193風呂吹や何も変わらぬ誕生日
特選198へそ大根丸森線の外知らず/増田萌子
(選評)特選にいただいた193「へそ大根」の句。へそ大根とは宮城県丸森町の特産。凍み大根の一種。ここではへそ大根というインパクトのある言葉と「丸森線の外知らず」が効いている。
準特選の12「多喜二忌や」の句。過去の多喜二忌と現代のパスポートとの取り合わせがなかなか。「期限の迫る」で緊迫感のある句となった。
同じく準特選の140「亀鳴くや」の句。なにも語らない良さ。住みたい県といってもいろいろ。こんな「亀鳴く」との取り合わせも軽妙。
1「春蘭の」の句。現代の若者言葉に「推し」がある。ここではそれが「春蘭のサラダ」で俳句になった。「推し」に反応する感覚が若い。
76「女房風」の句。「風」は「ふう」なのか、「かぜ」なのか。作者の意図はともかく「女房風(かぜ)を吹かせる」として華麗な紅枝垂れとの対比が面白いだろう。
105「草青む」の句。「道了堂跡地」は道了尊にちなむ八王子市にある遺跡。かつては絹の道で栄えたという。ここでは「のみ‐草青む」が実景であり実感。
107「春一番」の句。「やけぼっくい」に火が付くを踏まえた句。そんなどきどき感もいいかも。いや、危ない危ない。
132「如月菜の」の句。如月菜は搨菜のこと。緑色を茹でるはそのままだが、タァツァイの語感と素材の新しさに魅かれた。
144「悪口は」の句。猫の恋も煩く感じることもある。作者はそれを悪口といっている。これも一種の嫉妬かもしれない。そんな面白さ。
156「甘樫より」の句。甘樫丘は蘇我一族の居館があったところ。古代史を彩る蘇我入鹿の首塚はその下にある。ここではぼんやりした花曇が歴史の真実を隠しているかのようだ。
193「風呂吹や」の句。人生いろいろ。まあ変わらないことがいいときも。風呂吹大根の熱々が心を揺さぶる。

(互選高点句)○数字は点数  3点以上
一位160春風や日々新しく老いてゆく   ⑩白石みずき
二位99 ありあまる自由と孤独沈丁花   ⑥岡崎久子
二位101うららかや密談果てぬランドセル ⑥鈴木ひろ子
四位27 落椿つぶやくようにまた落ちる   ⑤古川塔子
四位83 早春の草の匂いやまだ傘寿   ⑤近田吉幸
四位106蒲公英や座の文学に迷い込む   ⑤近田吉幸
四位193風呂吹や何も変わらぬ誕生日   ⑤水島かよ子
八位2 人間に熱のあるなし枝垂れ梅   ④松田ひろむ
八位10 料理にも感性浅蜊のひとりごと ④白石みずき
八位43 断捨離の手元に残すうさぎ雛   ④高矢実來
八位62 産む力生まれる力牡丹の芽   ④宮 沢子
八位87 軒氷柱バキバキ折って反抗期   ④石口 榮
八位147節分や防犯カメラ付けました   ④古川和美
八位155探梅や父にもらった骨密度   ④増田萌子
八位180三寒四温角から溶ける角砂糖   ④白石みずき
十六位4街角に兵士の遺影春の日矢   ③安藤草太
十六位31おろおろと三寒四温の舌下錠  ③宮 沢子
十六位39果報待つためのうたた寝春の雪 ③鈴木砂紅
十六位51白魚の黒き瞳に箸そらす   ③望月のぞみ
十六位61つぎはぎの想い出ばかり黄水仙 ③安藤草太
十六位124目刺焼くおひとりさまになる前に③百目鬼英明
十六位140亀鳴くや住みたき県のアンケート③高橋透水
十六位142鈴の音の茶房の扉沈丁花   ③岡崎久子
十六位158あんぱんの餡の片寄り春の鬱  ③吉村きら

(第35回全句データ)掲載番号・作品・点数・作者の順
1春蘭のサラダの話推しひとつ 2 宮 沢子
2人間に熱のあるなし枝垂れ梅 4  松田ひろむ
3朧朧天女の呼吸朧かな     0 磯部薫子
4街角に兵士の遺影春の日矢 3 安藤草太
5鳥曇馬耳東風と聞きながし 0 横山妙子
6根菜の煮物天皇誕生日     2 小平 湖
7亡き犬が強く生きろと諭す春   1  望月のぞみ
8嘆いても詮なきことよ風信子    0安原南海子
9団結の飯炊けてくる多喜二の忌   2翠 雲母
10料理にも感性浅蜊のひとりごと  4白石みずき
11里の梅歴史紐解く七国峠      1渡辺すみれ
12多喜二忌や期限の迫るパスポート  1川崎果連
13大奥の女綱吉春愁      0近田吉幸
14煮凝りで済ます朝飯午前四時 1百目鬼英明
15春暁へオリーブの枝迎え入る 0 後藤よしみ
16薬疹の骨までかゆし寒の月 2 高良和子
17平家音読かたわらに寒の水 1 鈴木砂紅
18若きとも老骨とも芽の臥竜梅 0 鈴木ひろ子
19フェリーの汽笛音色(ねいろ)変はりぬ春の音0荒井 類
20ありがとうと言って別れて河豚の膳0 小髙沙羅
22これからもがまんがまんの寒牡丹 0 小髙沙羅
23鼻歌を聞かれてしまう桜東風 1 小平 湖
24肉筆の便りは君へ落椿 1 石口りんご
25熱燗や泣くでもなくて酔ひもせず 0 中村ふみ
26亀鳴くや平城京の人となる 0 翠 雲母
27落椿つぶやくようにまた落ちる 5 古川塔子
28沈黙す一万円の恵方巻 2 鈴木砂紅
29ぷつぷつぷつ煮豆のつぶやき春の昼1 岩渕純子
30会津郷頬つく風に雪ねぶり 0 神田千風
31おろおろと三寒四温の舌下錠 3 宮 沢子
32鬼は外瞬く間の二月尽 0 津田文江
33山友の十三回忌や雪しんしん 1 高良和子
34ビー玉の目を光らせて猫の恋 2 高橋透水
35一面の黄色菜の花ありがとう 0 神田千風
36春の宵子宮は地球という女 0 高橋透水
37春や浮かれし神がぞろぞろ建国日 0 鈴木ひろ子
38遠くより水音ゆたか竹の秋 0 石口りんご
39果報待つためのうたた寝春の雪 3 鈴木砂紅
40我が晩年を鏤める兜太の忌 0 翠 雲母
41春寒や夫と意見は平行線 1 津田文江
42春はあけぼの妙齢を遠く見て 0 古川塔子
43断捨離の手元に残すうさぎ雛 4 高矢実來
44子の泣くは日をつかむため春入日 0 後藤よしみ
45真鍮のピエタの肩に牡丹雪 1 磯部薫子
46いつもらふ弥生生涯通信簿 1 神田千風
47はじめの一歩もっと遠くへ鼓草 2 安原南海子
48天神巡り牛をなでなで八千歩 0 岩渕純子
49絶望と云ふ名のパスタ雪しまく 0 百目鬼英明
50春光へ硝子の鐘の鳴りひびく 0   後藤よしみ
51白魚の黒き瞳に箸そらす     3   望月のぞみ
52冬の凝り貝殻骨の奥深し   0 中村ふみ
53春の闇打ち込まれたる星一つ 2 横山妙子
54寒梅に集う九人の蕎麦屋かな 0  渡辺すみれ
55銀(しろがね)の風に寄り添う猫柳 0  望月のぞみ
56パスポート持たぬがままに鳥帰る 1  安原南海子
57豆撒かず病気という鬼なだめたく 0   郡楽清子
58暖房やカフェのパソコンうとうとと0  水島かよ子
59スカートの深呼吸する春の宵 2 高橋透水
60コロナ禍の夫にしおりし座論梅 0 増田萌子
61つぎはぎの想い出ばかり黄水仙 3 安藤草太
62産む力生まれる力牡丹の芽   4 宮 沢子
63明け方の夢や春泥のウクライナ 0 増田萌子
64ウクライナより兵はもどらずロシア春0  荒井 類
65耕や戦車の轍なお硬し     1 川崎果連
66蛇穴を出でて浮世の軛かな 0  行成佳代子
67春塵や子達に追われる大黒天 0 高矢実來
68三色の親の顔色ひなあられ 0 吉村きら
69朝ドラの頑張る女に春到来 0 岩渕純子
70バレンタインのチョコの柵解き放つ 0行成佳代子
71夕東風や焼き方伝授もんじゃ焼 0  安原南海子
72春の夢母の小言も絵空事     0   望月のぞみ
73雪なだれ豊作の音響かせて 0 石黒宏志
74魚氷上がりて想像はほしいまま 0 横山妙子
75春待つや朝寝朝湯に朝コーヒー 0   岩渕純子
76女房風紅梅かさねの枝垂れかな 1 郡楽清子
77ゴンドラの窓拭きやっぱり鳥の恋 0 古川塔子
78駅前の花屋はいつか移転して 0 古川和美
79白湯ひとくち寒風を突く三千歩 0 鈴木砂紅
80三寒四温そして明日はやってくる 1 中村ふみ
81宛先を書かぬ賀状の数かぞえ 0 石黒宏志
82シャンシャンと一緒に帰る鳥雲に 0 岡崎久子
83早春の草の匂いやまだ傘寿 5 近田吉幸
85春光や介護ベッドを借用中 1 高矢実來
86初東風や庁舎に日替わりキッチンカー0 安原南海子
87軒氷柱バキバキ折って反抗期 4 石口 榮
88枝先の白梅空にとけいるかな 0 郡楽清子
89花の夜の恋のゲームを人妻と 0 高橋透水
90浅蜊汁私は貝になりたいの 1  水島かよ子
91霾やざらざら暮らす自衛隊 1 川崎果連
92エンジェルを見つめる春の鴎かな 0 近田吉幸
93紅梅の深空うつつをもう少し 1  松田ひろむ
94餅太り涙もろいがわがままで 1  信岡さすけ
95俎板の焦げ跡いつの多喜二の忌 2 小平 湖
96ウクライナ一年雪泥の轍なお 0  松田ひろむ
97食べ物は二十時までに猫の恋 1  石口りんご
98軽暖や路傍の神も手をつなぎ 1  松田ひろむ
99ありあまる自由と孤独沈丁花 6 岡崎久子
100ぶらんこよ赤い鼻緒のじょじょとんだ0 吉村きら
101うららかや密談果てぬランドセル 6  鈴木ひろ子
102雪女とて命がけの毎日を 0 中村ふみ
103振り返る日々の後悔春浅し 0  望月のぞみ
104ホステスの経営戦略座論梅 1 磯部薫子
105草青む道了堂の跡地のみ 1  渡辺すみれ
106蒲公英や座の文学に迷い込む 5 近田吉幸
107春一番やけぼっくいの火の粉散る 1 吉村きら
108マスク無し三年振りの深呼吸 0  水島かよ子
109O脚の媼腰曲げ蕗の薹     0 安藤草太
110湯たんぽと電気アンカの息こもる 0 高良和子
111臥竜梅小中高の塾講師     0   石口りんご
113キリストに足裏の跡の踏絵かな 0 磯部薫子
114多様性のひとり歩きや春動く 0 宮 沢子
116早春の堅香子愛でる二上山 0 翠 雲母
117いつの間に鶯餅が飛ぶように 0  石口りんご
118転んでもただでは起きぬ葱坊主 2 石口 榮
119冬晴れの真白き富士の安堵感 1  水島かよ子
120父よりもこの世に長くつくづくし 0 古川塔子
121目白来てあらいつの間に遊び爪 1 増田萌子
122バラの花元気で長生きそのつもり 1 小髙沙羅
123恋猫に鈴付けるのは誰ですか 2 石口 榮
124目刺焼くおひとりさまになる前に 3  百目鬼英明
125落葉の処理に特大のゴミ袋 0 古川和美
126春めいて一歩一景歩幅かな 0 神田千風
127詳しくはホームページのお水取 0 宮 沢子
128ポケットの歳時記は春医者通い 0 高矢実來
129親父より長生き上手蜆汁 0 小平 湖
130皸をゴム手袋に隠匿す     0 鈴木砂紅
132如月菜(タァツァイ)の濃き緑色茹でにける1荒井 類
133春灯チーズケーキを母子家庭 0 木野俊子
134寒牡丹声をかければ壊れそう 2 石口 榮
135水温む小吉みくじ又読んで 1 古川塔子
136袋入りの七種すでに刻まれて 1 古川和美
137製造つづく湯たんぽの赤春よこい 1 高良和子
138ねむい春ほほの飯つぶ彼らしく 2  信岡さすけ
139春星へかすかにふるるとき故郷 0  後藤よしみ
140亀鳴くや住みたき県のアンケート 3 高橋透水
141五重の塔は天(そら)に伸びゆく木の芽時 0荒井類
142鈴の音の茶房の扉沈丁花 3 岡崎久子
143父避けて洗顔は泡牡丹の芽 0  信岡さすけ
144悪口は言いたく無いが猫の恋 1 石黒宏志
145放流水バイオマーカーの春の海 1  後藤よしみ
146税申告やれば出来る子二月尽 0 高矢実來
147節分や防犯カメラ付けました 4 古川和美
148それぞれの夢抱き背伸びつくしんぼ0  岡崎久子
149晩学の人みな元気梅真白 2  白石みずき
150恋の猫縁切り寺に紛れ込む 2 石口 榮
151路地裏の闇うごかすや恋の猫 2 川崎果連
152断崖のかなたに鉄橋雪解川 0 近田吉幸
153余寒なお日にいくたびの電子辞書 2  白石みずき
154春の日の鐘の音響く地蔵尊 0  渡辺すみれ
155探梅や父にもらった骨密度 4 増田萌子
156甘樫より望む首塚花曇     1  行成佳代子
157雨あびてかわいさまさるふきのとう 0 郡楽清子
158あんぱんの餡の片寄り春の鬱 3 吉村きら
159植物園の温室の庭斑雪     0 岩渕純子
160春風や日々新しく老いてゆく 10  白石みずき
161春一番国道渡るベビーカー 0 安藤草太
162冬銀河ひとりひとりの胸の内 0 中村ふみ
163春眠の終結覚ますレオパルト 0 神田千風
164風光る承認欲求という病気 0 横山妙子
165損すればそのまま損に涅槃雪 0  百目鬼英明
166春色の海透く辺野古いま穏やか 0 翠 雲母
167旧友と舞台談義の日永かな 0  行成佳代子
168飢えてなおミサイル落とす春の海 1 川崎果連
169手庇や帽子取られる春疾風 0 石黒宏志
170ひなあられ耳たぶほどの反抗心 2 吉村きら
171モザイクの刺繡のように鳥帰る 0 木野俊子
172シンプルにおかかふんわりほうれん草0 津田文江
173風船はにが笑いもの終末時計 0  信岡さすけ
174憲法前文って希望のフリージア 2 木野俊子
175疵舐めて再び消える猫の恋 0 磯部薫子
176梅園に肩聳やかす少年期 0  松田ひろむ
177絹の道黄梅ひかる吟行か 0  渡辺すみれ
178いきつけの飯屋の卓の菜花漬  0 荒井 類
179生と死の第三章を兜太の忌 0 木野俊子
180三寒四温角から溶ける角砂糖 4  白石みずき
181ゆったりと花茎揚げたり春蘭かな 0 郡楽清子
182わが家と共に加齢の鬼やらい 0  行成佳代子
183梅咲いて猫に戒名いただいて 1 小髙沙羅
184クリオネの天使の口や悪魔へと 0 石黒宏志
185塀の中は木の葉の山に北颪 0 古川和美
186けがの功名足元に福寿草 0 小髙沙羅
187押し込みし湯たんぽ探る夜明け方 0 高良和子
188お腰大事にお前こそはと臥竜梅 0  鈴木ひろ子
189貝寄風やドタバタ喜劇ナンセンス 0 横山妙子
190そう言えばこう切り返すつくしんぼ2  小平 湖
191扁平のこけしの頭春障子 0 安藤草太
192チューリップ先ず赤色に画布に咲く0  岡崎久子
193風呂吹や何も変わらぬ誕生日 5  水島かよ子
194句の真と無頼の真三鬼の忌 0  信岡さすけ
195レンチンと云ふわけにはゆかぬ目刺0 百目鬼英明
196雪富士や裾嶺の端に畏まる 0  鈴木ひろ子
197自転車に空気をつめる多喜二の忌 2 木野俊子
198へそ大根丸森線の外知らず 1 増田萌子
199福寿草想い出つまるトキワ荘 0 津田文江
200カラフルなショーウインドウ春の声0  津田文江
(訂正)
105正=道了堂 誤=堂了堂
(第36回鴎座通信句会)投句締切=3月24日。5句まで。参加費500円。その他要綱は従来通り。





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Last updated  2023年03月05日 00時41分32秒
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