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第 47
回鴎座通信句会は 42
名 210
句でした
。選句と講評は作者名を伏せて鴎座代表、同人会長・編集長・副編集長・Ⅰ欄同人などに依頼しました。また投句された方の互選(任意・5句選)も行いました。句番号はランダムに変換されたものです。結果は「鴎座」に発表するとともにFACEBOOKなどにも発表します。毎月開催(締切 24
日)。 鴎座俳句会 代表 松田ひろむ
〈第 47
回鴎座通信句会結果〉
作者名は特選のみ追加記入しました。他は一覧(略)をご覧ください。
石口 榮(編集長)選
25 春北風散歩の歩幅大きめに
29 夏みかん怒りのあとはさっぱりと
92 さくらさくらパンフレットで足りる旅
95 擂り鉢を押さえる役目木の芽和
特選 121 くぬぎの芽昆虫酒場開店だ/信岡さすけ
117 第三次世界大戦猫の恋
193 紅梅や隣の留守は聞いてない
(選評)特選にいただいた 121 「くぬぎの芽」の句。樹液酒場を昆虫酒場とも言って樹液が出るコナラ、クヌギ,ヤナギなどに沢山の生き物が集まる。昆虫好きにはたまらないスポット。昆虫たちが木に集まりワイワイと賑わう様子が明るく楽しい。昆虫酒場と言う愉快なネーミングに惹かれた。
25 「春北風」の句。因果関係の句ではない。散歩は歩数ではなく速歩と言われる。そのことに気付いた作者。だらだら歩きは運動効果がないそうだ。
29 「夏みかん」の句。喧嘩の後はノーサドといきたい。夏みかんのようにさっぱりしたいもの。季語の夏みかんが効いている
92 「さくらさくら」の句。旅行シーズン到来。観光地のパンフレットで旅行気分になっている作者。以前旅行したことの有るパンフレットと思われる。その時のことを思い出しながらの旅である。
95 「擂り鉢を」の句。擂鉢を「あたりばち」とも言って「する」は賭け事でお金などをする、ことから縁起が悪いとして忌み詞になるからである。子供の頃よく母親に言われて擂鉢を両手で押さえていたものだ。生活感のある句。
117 「第三次」の句。ロシアがウクライナとの戦線を拡大しNATOと全面戦争に突入するなどと囁かれ直接衝突することが懸念されている。季語「猫の恋」がロシアを後押しているようで戦慄を覚える。
193 「紅梅や」の句。「お隣さん知らない」と誰かに聞かれ「何も聞いてない」と返事。ダチョウ倶楽部の「聞いてないよォ~」を思い出し思わず笑ってしまった。ユーモアたっぷりの句。
小髙沙羅(同人会長)選
33 牡丹雪東京湾を眠らせて
61 風船に能登へのことばふきこみぬ
77 チューリップよりも元気な九十歳
89 白寿まで生きられそうな梅月夜
95 摺り鉢を押さえる役目木の芽和
特選 198 兜太の忌「ひろむも苦労苦労だな」/松田ひろむ
(選評) 特選にいただいた 198 「兜太の忌」のの句。私の俳句人生は、この二人の師がいなかったら、まずあり得なかった。このように二人の師の名前を使った句は、記憶にない。「ひろむも苦労苦労」と重ねているが、それはいかにも兜太の口調のようである。その苦労をバネに常に明るく前進あるのみの心意気がいやというほど伝わってくる。ひろむ先生には、百歳を目指して欲しいものだ。
88 「文旦の」の句。ずっしりと重い文旦。それを「フレンドリー」という軽い表現が楽しい。
33 「牡丹雪」の句。雪の降らない東京。久しぶりの牡丹雪で確かに「東京湾」を眠らせているのだ。作者も同じように、春の牡丹雪に濡れている。
61 「風船に」の句。「がんばれがんばれ」の思いの息を吹き込んでいるのだ。「能登へのことば」が重い。
77 「チューリップ」の句。チューリップは、幼児の絵に多い。ここではそれに負けないくらい「元気な九十歳」。作者もそんな元気な方であろう。
89 「白寿まで」の句。前句と同じように元気なご高齢だろうか。寒さに負けずに咲く梅の花である。さらに「梅月夜」という情感。いくつになっても豊かな感性の作者なのだ。
95 「擂り鉢を」の句。押さえているのは老夫婦。いやいや新婚さん、あるいはお孫さん。いすれにせよ微笑ましい姿。
33 牡丹雪東京湾を眠らせて
46 あくまでも合意の上の猫の恋
74 春はあけぼの液状化する私
154 眩しさを持て余したる春障子
176 囀りてガラスの天井打ち破れ
特選 198 兜太の忌「ひろむも苦労苦労だな」/松田ひろむ
199 ひとり減りまたひとり減りしゃぼん玉
(選評) 特選の 198 「兜太の忌」の句。兜太の忌日は二月二〇日。兜太と松田ひろむ代表の合わせ技は反則すれすれである。しかし、ぜひともいただきたい句でもある。
33 「牡丹雪」の句。雪景色のモノトーンの光景が大筆で描かれている。眠らせてが三好達治の詩作を思い出させる。
46 「あくまでも」の句。日本の意識の低さをうつ句。猫の恋でまとめているのが手練れである。
74 「春はあけぼの」の句。震災での大地の液状化は避けたいが、液状化する人物には対面したいと思える。春である。
154 「眩しさを」の句。仲春の光があるれ出してきたころの情景。余裕のある詠み振りが心地よい。
176 「囀りて」の句。古くて新しい問題。女性の囀りこそが平和ももたらせる。後押ししたいところである。
199 「ひとり減り」の句。公園での実景でも風情がある。また、シニアであれば同窓会。毎回、人が減っていく。そんな読み変えもできる句である 。
白石みずき(Ⅰ欄同人)選
29 夏みかん怒りのあとはさっぱりと
69 春愁や昨夜の悲観今朝の楽観
89 白寿まで生きられそうな梅月夜
103 七十路春むかし長生き今若死に
特選 130 寄せ書きのラストは君に卒業す/藤岡尚子
152 鳥雲にいつか誰もがお一人様
168 制服にはみだす個性卒業す
(選評)特選の 130 「寄せ書きの」の句。会社を辞める、部活を辞めるなど深くかかわりの合った場合必ず寄せ書きの色紙を頂く。この句は卒業のそれも中学か高校の青春まっただ中の寄せ書きであろう。一番気になる人には最後に書いてもらいたい、まさに青春だ。
29 「夏みかん」の句。なんで怒っているかは定かでないが怒るだけ怒った後はすっきり。作者の性格がみえるようだ。そのさっぱりしたところが夏みかんの季語にぴったり。
69 「春愁や」の句。夜は得てして物事を悪い方に考えるものである。だが朝目が覚めて太陽を浴びると昨夜の事など、「なんとかなるさ」と言う気分に。作者の心にゆとりさえ出て来て苦笑いしているかも知れない。
89 「白寿まで」の句。白寿は九十九歳、現代は百歳も夢ではない。梅月夜がなんとも優雅でこの月を見ていれば何時まででも生きていけると作者は感慨に深けっているのかも知れない。
103 「七十路春」の句。昔の七十代は相当長生きだったが今は八十代で亡くなってもまだ早いと言われる時代である。楽しみも沢山あるし、薬はどんどん良くなっているし食べ物も豊富だし、長生きの為の条件がそろっているのである。七十路はまだまだ春なのだ。
152 「鳥雲に」の句。当たり前の事だがたとえ 168 夫婦でも事故で無いかぎり一緒には死ねない。この句は夫婦の句である。どちらかが残るでよくわかる。鳥雲にどちらかが隠れてしまうような感じさえしてくる。
168 「制服に」の句。はみ出す個性が発見である。制服は個人の個性が見えないと言われるが決してそうではないと思う。作者もきっとそうだと思っているのだ。制服を脱げば寄り一層個性は磨かれるであろうが。
鈴木 砂紅(招待)選
35 脱皮するなりいっせいの春汽笛
67 三寒四温おばあさんにも反抗期
81 ガザの病院吾の入院冬の宵
121 くぬぎの芽昆虫酒場開店だ
165 立春大吉ほうきの乗り方教えます
205 春宵一刻ナースに下の世話さるる
(選評)特選に頂いた「文旦の」の句。文旦の甘さ、酸っぱさ、そして何よりその重さの圧倒的な存在感。それをフレンドリーと思う作者の軽やかさに惹かれた。現代社会は重く暗いことばかりだが、この軽やかな姿勢に救われる。
35 「脱皮する」の句。のんびりと聞く春の汽笛を、脱皮の合図と捉えた所が秀逸。人も虫も脱皮して大きくなる春の景色を、大摑みに描いた一句。
67 「三寒四温」の句。おばあさんの反抗期という措辞に、家庭内別居、卒婚などイメージの膨らむところが面白い。社会に対する女性の最後の反撃とも。
81 「ガザの病院」の句。作者は入院した身を戦禍に苦しむ遠くの人々の思いに重ねて、その理不尽さを噛みしめる。時事句を超えて素直に共感を呼ぶ句。
121 「くぬぎの芽」の句。クヌギやコナラなどブナ科の落葉広葉樹は樹液が多く、まさに昆虫酒場そのもの。その芽吹きを開店と称した軽いノリが愉しい。
165 「立春大吉」の句。立春大吉という禅寺発祥の言葉と魔女の取合せに、和洋折衷、和魂洋才などを思い浮かべ、まんまと作者の術中にはまってしまった。
205 「春宵一刻」の句。価千金の宵に下の世話を受けるのは、情けないのか、一種の風流と言うべきなのか。情を捨てた言葉に俳句の力が宿る。
13 ペイペイの一円の利子梅二月
22 絡みつく縁(えにし)ほぐれつリラの冷
特選 47 消費税ほど吹きこぼれ浅利汁/宮沢子
64 コロナ病棟の解体跡地雪だるま
76 一夜明け木々の雨氷やこんにちは
81 ガザの病院吾の入院冬の宵
準特選 90 謝肉祭ちょい飲みコースの街中華/高矢実來
95 摺り鉢を押さえる役目木の芽和
130 寄せ書きのラストは君に卒業す
準特選 170 スノームーン指より化粧水こぼれ/増田萌子
(選評) 特選にいただいた 47 「消費税」の句。「消費税ほど」が、さりげない生活感覚。浅蜊でも蜆でもよさそうだが、ここは浅蜊のほうが十%の消費税のようだ。なお表記は「浅利」ではなく「浅蜊」だった。
準特選の 90 「謝肉祭」の句。謝肉祭つまりカーニバルという華やかものと「ちょい飲みコース」の対比の面白さ。これは二月の金曜句会で実際にあったこと。その街中華は青緑園。「青緑」は日本的な熟語。中国語では普通は藍緑。
同じく準特選にいただいた 170 「スノームーン」は二月の満月。アメリカ先住民の農事暦の言葉。そんな満月のときにこぼれる化粧水。さらに豊かな気持ちになるようだ。
7 「受験の子」、エンドロールは映画の最後に流れる字幕。本坪鈴がちょっと馴染みがないが神社の鈴。願いが込められているのだが、神頼みの受験では心もとない。
13 「ペイペイの」句。ペイペイ( Paypay )いとはQRコードで使えるキャッシュレス決済のこと。一パーセント程度のポイントがつく。句はそれを「一円の利子」といてるのだろう。梅二月がささやかな春である。
22 「絡みつく」の句。「リラの冷」が、縁をほどくにいい清涼感。いくつになっても、いい縁も、やっかいな縁もある。
64 「コロナ病棟」の句。新型コロナウイルス感染症も、どうやら鎮静化に向かっている。これもささやかな雪達磨であろう。
76 「一夜明け」の句。雨氷は雨滴が凍って樹木や岩などに付着することに。あまり使われない季語だが作者の実体験からだろう。「こんちには」が明るい。
81 「ガザの病院」の句。入院されている作者も辛いだろうが、ガザに比べればの思いが切実。ただ「冬の宵」は説明的なのでもう一考。
95 「摺り鉢を」の句。これは無条件に子供のときの思い出。「木の芽和」が美味しそうで期待が高まる。
130 「寄せ書き」の句。やっぱり「ラスト」が本命なのだろうか。いつの時の卒業かは限定 s れていないが、高校生ぐらいの青春と思える。甘酸っぱい記憶。
(互選点句)○数字は点数 3点以上
一位 67 三寒四温おばあさんにも反抗期⑨小髙沙羅
二位 89 白寿まで生きられそうな梅月夜⑥鈴木砂紅
二位 95 摺り鉢を押さえる役目木の芽和⑥岡崎久子
四位 8 文旦の重さこのごろフレンドリー ⑤小平 湖
四位 23 鳩居堂前に居ります春マフラー⑤石口りんご
四位 47 消費税ほど吹きこぼれ浅利汁 ⑤宮 沢子
四位 198 兜太の忌「ひろむも苦労苦労だな」⑤松田ひろむ
八位 29 夏みかん怒りのあとはさっぱりと④鈴木ひろ子
八位 33 牡丹雪東京湾を眠らせて④増田萌子
八位 82 切山椒忘れたはずの恋ひとつ④横山小鼓
八位 130 寄せ書きのラストは君に卒業す④藤岡尚子
八位 207 戦争の終り何色桃の花 ④小平 湖
十三位 59 雪柳一枝一枝に日のしずく③鈴木ひろ子
十三位 74 春はあけぼの液状化する私③木野俊子
十三位 77 チューリップよりも元気な九十歳③白石みずき
十三位 125 北窓を開け口紅の色を選る③石口りんご
十三位 165 立春大吉ほうきの乗り方教えます③呉羽陽子
十三位 206 たんぽぽや海坂藩の五間川③近田吉幸
(第 48 回鴎座通信句会) 投句締切= 3 月 24 日。5句まで。参加費500円。その他要綱は従来通り。
松田ひろむ「名句のための俳辞苑」【カフ… 2024年03月06日 コメント(1)
第41回鴎座通信句会 選句結果のお知らせ 2023年09月02日
第41回鴎座通信句会の締切は24日です 2023年08月24日