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ちょっと書き加えました。
Break Time (一休み)
ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo) (1527年~1593年)
ウイーンの写真を見返していて、美術史美術館で面白い絵を発見。
イタリアのマニエリスムの画家なのにちょっと奇妙な絵を描く人
だ。
その絵は江戸末期の奇抜な作風の浮世絵師、歌川 国芳(うたがわ くによし)(1797年~1861年)の「寄せ絵」を思い起こさせる。(1566年製作の「法曹(giurista)」はまさに同じ。)
彼の作品はウイーン(美術史美術館)、パリ(ルーブル)、スウェーデンの城にあると言う。(後で詳しく・・。)
もともとミラノ出身だった彼はステンドグラス作家として出発。
ウイーンではオーストリア大公フェルディナント1世に招かれて宮廷画家として活躍。以降、フェルディナント1世、ルドルフ2世の下でも宮廷お抱え絵師として勤務し、
その絵は欧州の身分ある人の所に贈答品としても贈られた。
また彼の非凡な才能は絵画だけでなく衣装のデザインやイベントなどにも発揮されたと聞く。当時人気の画家だったのは間違いない。
ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)(1527年~1593年)
アルチンボルドの仕えた神聖ローマ皇帝
フェルディナント1世(Ferdinand I)(1503年~1564年)
マクシミリアン2世(Maximilian II)(1527年~1576年)
ルドルフ2世(Rudolf II)(1552年~1612年)
ウイーン美術史美術館所蔵 連作「四季」の夏 1563年制作
宮廷画家になったのは1562年。連作「四季」は着任の翌年に描かれている事になる。
実はこの絵、 ルーブル美術館にも同じ物がある
。
しかし、あちらの制作は1573年。しかも淵に植物のフレーム付き。
なぜ?
実は ジュゼッペ・アルチンボルドの作品は贈答品として欧州の王族に随分配られているからだそうだ。
ルーブルの作品はどれも1573年制作。それはマクシミリアン2世(1527年~1576年)がザクセン選帝侯アウグストにプレゼントする為にコピーされたものかもしれない。
実 りの夏のモデルは女性のようだ。(四季の春と夏は女性。秋冬は老いた男性。)
春を撮影していなかった。その時になかったのかもしれない。また秋に関してはウイーンの作品は消失。よってルーブルのみ。
年代からして最初に描かれたのは間違いなくフェルディナント1世の為。
首には「Arcimboldo」の銘。肩の方には「1563年」と刻
まれている。因みにルーブル作品は1573年になっていた。
胸に刺さっているのはアーティチョーク(Artichoke)
アザミの改良は古代ギリシャ・ローマから始まり食用としては15世紀にナポリ近郊で栽培されたそうだ。
当時フェルディナント1世の宮殿にはイタリア文化があふれていた事も示しているのかも・・。
連作「四季」の中で「夏」は一番完成度が高い作品。
ウイーン美術史美術館所蔵 連作「四季」の冬 1563年制作
こちらもルーブルの作品は1573年製作。
枯れかけたブドウの木のようだ。
仏教で言えば、まさに「諸行無常」の世界感である。
ミラノ出身の彼をウイーンに呼んだのは神聖ローマ皇帝にしてウイーン大公、ボヘミア王でハンガリー王であるハプスブルグ家のフェルディナント1世(Ferdinand I)(1503年~1564年)。
彼は前回ふれたカール5世の弟でもある。
フェルディナント1世は遡る事、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世のウイーンのダブル結婚の結果、ボヘミア・ハンガリー王の娘アンナ・ヤギエロ(Anna Jagiello)と結婚。
フェルディナント1世は妃の為にプラハ城内に離宮を建設しているそうで二人の仲はとても良かったらしい。
ウイーン美術史美術館所蔵 連作「四大元素」の火 1566年制作
「四大元素」とは、大気、火、大地、水を擬人化したもの。
ウイーン美術史美術館の本によれば、この作品はマクシミリアン2世(Maximilian II)(1527年~1576年)の為に描かれたものらしい
。
確かにマクシミリアン2世が神聖ローマ皇帝になったのが1564年。若干36歳の時である。この絵はその2年後に制作されているから38歳の皇帝の姿かも・・。
なぜなら首には金羊毛勲章を下げているからだ。
金羊毛勲章は、金羊毛騎士団の証であり、当時はすでにハプスブルグ家に継承されていた。
これについてはどこかで詳しくやりたいです
現在もスペインでは王家の与える勲章として存在していて、日本の天皇陛下も明治天皇以下全て叙勲されているもので基本 王族しか与えられない。(騎士団には入れない)
※ 金羊毛勲章は2018年6月「金羊毛騎士団と金羊毛勲章(Toison d'or)」にて書きました。
リンク 金羊毛騎士団と金羊毛勲章(Toison d'or)
体の部分は大砲や鉄砲など武器ざんまい。燃える闘志でも示したのでしょうか?
ウイーン美術史美術館所蔵 連作「四大元素」の水 1566年制作
ちょっとグロさが際立ちますが、これは真珠のイヤリングとネックレスをしているので女性の肖像のようです。
なぜ水なのか解りません。むしろこれは魚類図鑑です。
コロンブスが新大陸を発見してから欧州には無かった動植物が輸入されてきました。
とは言え、なかなか庶民が目にする事はできません。
また王族と言えど、美術品と違って鮮度の重要なものはやはり簡単に目にする機会はありません。
まして生もののコレクションは無理です。
実物の代わりにコレクションする・・と言うたぐいの絵なのか解りませんが、このようなコラージュはともかく、17世紀に入ると博物学のような静物画が増えてくるのです。
さて、3人目の 皇帝ルドルフ2世(Rudolf II)(1552年~1612年)はプラハ城をメインの居城としたようで、宮殿には専用の美術室を造り、コレクションした作品を飾って
いたと言います。
特に前出紹介したアルチンボルドの連作「四大元素」の火などマクシミリアン2世のコレクションもそこに加えられていたようです。
実はそれらコレクションは17世紀に入って、多くの作品がスウェーデン軍により略奪され散逸。
その中にはルドルフ2世自身を描かせた「ウェルトゥムヌスに扮したルドルフ2世」(1590年頃)が含まれており、現在それはスウェーデン、スクークロスター城(Skokloster Castle)にあるらしい。
参考の為にウイキペディアよりパブリックドメインになっていたので借りてきました。
スウェーデンSkokloster Castle 「ウェルトゥムヌスに扮したルドルフ2世」 1590年~1591年頃製作
ウェルトゥムヌス(Vertumnus)・・ローマ神話に出てくる果樹と果物の神様。様々な形態に変身できるらしい。
タイトルに 「ウェルトゥムヌスに扮したルドルフ2世」と付いているのでまさしくこれは神聖ローマ皇帝ルドルフ2世(Rudolf II)(1552年~1612年)の為の肖像画である。
しかし、晩年のアルチンボルドはルドルフ2世への忠誠を誓いつつ体調が悪く故郷のミラノに戻っていたそうだ。
この作品は故郷で製作されて送られてきたアルチンボルドとその弟子の共作らしい。
違和感を感じるのはその為か?
当時、神聖ローマ皇帝3代(親子3代)が夢中になった絵師である。人気は彼の死後も続き結構 贋作が造られたらしい。
しかし、その後バロックが流行るとアルチンボルドの名さえ忘れられ、 20世紀に入ってシュルーレアリストが見つけるまで埋もれていたらしい。
ウイーン美術史美術館では特に目が留まったのでしっかり撮影してました 。アルチンボルドの絵は良くも悪くも目立つ絵です。
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