[Stockholm syndrome]...be no-w-here

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2019.09.06
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カテゴリ: 宝塚
今公演のポスター画像を見た時、「何となくトートっぽいな…」と感じたのだが、実際に【A Fairy Tale -青い薔薇の精-】を観て、これは明らかに明日海りおのお披露目公演である【エリザベート -愛と死の輪舞-】を意識して描かれた作品である事に気付いた。


恐らく、演出家の植田景子は、この作品から【エリザベート】を想起させる事で、「明日海りお」という存在を永遠に回帰する物語に昇華させようとしたのではないか。
物語の「終わり」が再び「始まり」に繋がるように描く演出は、上田久美子が【金色の砂漠】で用いた手法であり、植田はそれを明日海のキャリアに応用したのだろう。


少し話が逸れるが、「時間」には2通りの捉え方がある。
1つは、時間を直線的な、過去から未来へ向かって一方向に流れるものとして理解する仕方。
あらゆる出来事は時間的に不可逆的であり、全てに始まりと終わりがある。
現代人のほとんどが、この認識をしてるのではないか。

これに対し、別の捉え方もある。
例えば、古代の人々は、星の周行や季節の繰り返し等から、時間は循環するものだと考えた。
この場合、時間は過去から未来へと一方向に流れるものではなく、無限に回帰するものであり、始まりと終わりとが一つになった円環のイメージで語られる。


確かに、今公演を以って明日海りおはタカラジェンヌとしての生活に終止符を打つ。
来年になれば、次期トップスターとして柚香光が大劇場の舞台に立ち、宝塚に新たな歴史を刻んで行くだろう。
それは現実であり、どれだけ悲しくても時計の針を過去に戻す事はできない。

しかし、明日海りおが携わった作品達は、宝塚という夢の世界に永遠に残る。
僕達は、それを好きな時に手に取り、彼女の思い出に触れる事ができる。
同時に、それらの作品は、彼女をリアルタイムで知らない子供達が宝塚を知り、新たなファンになる可能性も秘めている。
そうして彼女を愛し、語り継ぐファンがいる限り、明日海りおの物語は何度でも再生し、終わる事はない。

それは、「懐かしい思い出」と「大切な人達への想い」を永遠の中に閉じ込めようと、シャーロットが書き上げた絵本『A Fairy Tale』そのものだ。
QUEENの名曲【The Show Must Go On】にも、次のような歌詞がある。
「Fairy tales of yesterday will grow but never die (お伽話はいつまでも語り継がれ、決して終わる事がない)」

どれだけ無常に時間が流れても、人の想いが繋がり続ける限り、物語は永遠に繰り返す。
この点において、【A Fairy Tale -青い薔薇の精-】は他の宝塚作品とは違い、植田景子から、そして明日海りおからファンに向けてのメッセージが織り込まれた、明日海でなければ成立しない特別な作品と言える。
明日海りおと言えば、個人的には【MESSIAH】が最も印象深い作品ではあるが、【A Fairy Tale】のメッセージに気付いてしまうと、やはり先ず「終わり」と「始まり」とを繋ぐこのDVD(=お伽話)から買わなければ、という気持ちが強くなる。
(というか、もう買う事に決めた…笑)

明日海りおのイメージを最大限に活用した「薔薇の精」という設定、【A Fairy Tale】というタイトルと【エリザベート】との類似性から読み解けるメッセージ(と、そのアイデア)、女性ならではの繊細さを感じさせる脚本と演出、そしてそれらを100分に纏め上げる構成力。
いやはや、これはなかなかの快作を堪能させてもらった。

ありがとう!!



という訳で、今回は「感想」というより「深読み考察」みたいになってしまったが(笑)、次回はキャスト別の感想を交えながら、ストーリーにも触れてみたい。





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Last updated  2019.09.10 00:10:41


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