[Stockholm syndrome]...be no-w-here

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2022.06.08
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カテゴリ: 宝塚
昨日は、花組公演【巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜】の観劇日。
午前中は薄曇りだった空も、午後の宝塚は晴天に恵まれた。
見上げると木々の葉は深緑に染まり、花のみちを吹き抜ける風は既に初夏の匂いがしたが、目線を下げると紫陽花が幾つも咲き始めており、梅雨の訪れが近い事を教えてくれる。
宝塚は、僕に四季を感じさせてくれる数少ない場所だ。
(普段、どれだけ出歩いていないかバレるな…笑)



【巡礼の年】は思った以上に奥が深く、かつ群像的であったため感想を纏めるのに手こずった。
何を何処から書き始めても、どんどん長くなってしまうのだ(笑)。

とりあえず鑑賞した第一印象は、「花組と生田大和による渾身の力作」そして「かなり緻密に計算された作品」というもの。
序盤は、場面によって登場人物をはっきり分ける事で、何を表現したいかを明確にしている。
かつ、できるだけ多くの組子達を出し、歌や踊りで見せ場を作る配慮がなされている。
その一方で、フランツ・リスト(柚香光)がマリー・ダグー伯爵夫人(星風まどか)やジョルジュ・サンド(永久輝せあ)と2人きりの場面は敢えてじっくり見せるなど、対照的に描いているのが上手い。
(途中まで観て、「このペース配分で時間内に収まるのか…?」と心配になった…笑)
舞台転換は多いはずなのだが、内容的にはすっきり纏まっており、人間関係も分かり易い。

ただし、ラスト前で急に観念的な話になり、ショパンの問い掛けに対してもリストがきちんと答えないため、観る人によっては消化・昇華するのに時間が掛かる作品かも知れない。
個人的には、リストの出した答えは、『S5 リストの記憶』とラスト『S17 修道院での再会』で登場する音楽院の子供達の表情や動きの違いで、間接的に表現されているように感じた。

更に印象的だったのは、例えば【CASANOVA】や【エリザベート】【fff】【アウグストゥス】など、過去の宝塚作品を思わせる演出が幾つも散見される事だ。
これは、観客がどの作品を観ているかによって感じ方が違うと思うので、ぜひ各自で楽しんでもらいたいが、そうした遊び心も交えつつ描いた所に、本作に対する生田大和の熱量の高さを感じた。
舞台セットも素晴らしく、「こんな舞台で芝居したら、絶対に気持ち良いだろうな~」と花組生達が羨ましくなった(笑)。



生田と言えば、前作【シャーロック・ホームズ】では「鎖」がキーワードになっていたが、本作では「壁」がそれに当たるだろう。
リストが口にする「人と人とを隔てる壁」とは「身分」であり「才能」である。

身分に関しては「名声によって壁を乗り越えようとした平民のリスト」と「革命によって壁そのものを壊そうとした貴族のマリー」とのすれ違いで表現されている。
結果、2人の立ち位置が逆転し、登り詰めていたが故にリストは落ちる(落とされる)という構図が、何とも皮肉だ。
そして、才能による壁は、盟友ショパン(水美舞斗)との関係性で表現されている。
ショパンからの友情や真心が、リストには持つ者から持たざる者への憐れみに感じられてしまう。

そうした劣等感がリストの心に葛藤を生み、野心を抱かせ、名声に走らせたのではないだろうか。
(彼には、子供時代に自分の技能不足が原因で、父親を失ったというトラウマもある)
芸術家の仲間達に対してもあまり心を開いていない所を見ると、壁を築いていたのは他でもないリスト自身である事が分かる。
端から見れば羨ましい限りの美貌と才能に恵まれながら、彼の魂が安寧できる場所は無い。

そんなリストの野心を焚き付けるサンドもまた、実は男装する事で劣等感を隠していた女性のように感じた。
彼女はリストを名声へと向かわせる一方で、(恐らく本人は親切心からなのだろうが…)マリーをジラルダンに推薦する事で革命運動へと向かわせてしまう、ファムファタル的な役割を担っている。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
サンドが最後に着ている服装を見ると、彼女の中でリストとショパンに対する愛の形が違っている事に気付くだろう。

このようにリスト、ショパン、マリー、サンド4人の関係性は群像劇のように絡み合っており、それぞれ対比させながら観ると面白いのではないかと思う。



それと、これは完全に僕個人の話だが、前回の記事で「要らなくなったら、いつでも手を放してくれて構わない」と書いた直後に、芝居では「手を放すな」と言われ、ショーでは「手を取れ」と言われ、何だか本心を見透かされたようで気まずかった…(笑)。
そうか、手を放そうとしていたのは僕の方だったな。

ゴメンよ…。

いや、こういう時は「ありがとう」か。

ありがとう!!

という事で、今回はここまで。
次回は、各キャラクターをもう少し掘り下げつつキャスト別の感想を書きたい。
ただ、来週14日(火)に2度目を観劇するので、印象が変わったり新たに気付く事もあるだろうし、感想はそれ以降になると思う。

て言うか、俺の心理、劇団に見抜かれ過ぎじゃね?





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Last updated  2022.06.16 20:08:05


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