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こちらから 画像拝借m(_ _)m
つとめて
女は高価でも美しくもない、着物をきていた。
そこらの女が着ている地味な柄の、
それでいて女に馴染み、女の身体を象(かたど)った着物をきていた。
女の額の真ん中にはうっすらと皺が刻まれ、
眼(まなこ)の影深い隈は、女の疲労を物語っていた。
女の容貌からは齢(よわい)を感じられなかった。
髪は黒く、つややかで
肌にもまだ張りがあり、色もくすんでいなかった。
女は一夜限りの宿の窓に近づき、
朝陽に染められ、静かに横たわる 冬の海 を眺めていた。
しかし宿から眺む絶景でさえ、
女の心象においては、白と黒の殺風景な
実に寂しいものだった。
女の情(なさけ)はこうつぶやいた。
朝陽など、顔を覗かさずとも良いものを。
一緒に居るも 離れ居るも
うぬの心が満たさるること、一時(いっとき)としてあらぬゆえ・・・
女は平常を保つため、
心に真っ白な薄絹を被せ、海を眺めていた。
冬の海も
海をじっと見つめる瞳の色も
そして女の心も 虚ろ であった。
熱の球 2017年11月21日
蜘蛛の巣の空 2017年06月12日
螺旋 (二) に記事を更新致しました 2017年01月10日
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