Free Space
~ 開かれた小路 ~ ショートストーリー
あなたと出会ったのは、ほんの偶然、
その日わたしは、傘をさしながらゆっくり歩いていた。
そして通りの喫茶店の前で、
その中へ入ろうか、どうしようか、、、っと迷っていたの。
地味だけれど落ち着いた佇まいの、ぬくもりを感じる喫茶店、
そのカウンターにかかっていた、
アンティークっぽい壁掛時計にわたしはこころ奪われたから。
でも・・・きっとここのコーヒー一杯は、
ファミレスの倍以上の値段がするんじゃないかしら?
金銭的余裕のないわたしの心に、そんな考えが浮かんできたから。
その時、後ろから声が聞こえてきた。
あの~、入るんでしょうか?それとも入らんのでしょうか?
わたしが振り返ると、そこには目尻にたくさん皺を作って笑っている男性が。
それがあなただった。
優柔不断なわたしは、わたしが感じている以上の時間、
その喫茶店の入口の前に足を留めていたのかしら。
振り返ったわたしは尋ねられても、ただその男性をみつめて黙っていた。
けっして無口でも、口が重いわけでもないのだけれど、
突然誰かに、何かを言われると、わたしはとっさに受け答えができない。
そして、こういうとき無理して反応すると、
もっと相手がびっくりしたり、戸惑ったり、気持ち悪がったりすることがあるので
わたしはただ黙ってみつめていたのだけれど。
その男性は、クスっと笑って
じゃあ、一緒に入りませんか?どうぞお先に・・・
っといって喫茶店のドアを開けたのだった。
So Much In Love - TIMOTHY B. SCHMIT
オリジナルは1963年ですが、私は TIMOTHY B. SCHMIT版を高校時代愛聴しておりました。
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