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Hiro Maryam

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2017年06月12日
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テーマ: 短編を作る(405)
カテゴリ: 奇譚


技巧を凝らした作り物だって最初からわかっていた...けど、ケモノミチを抜けた先に現れた星、満点の夜空のように朝露輝く蜘蛛の巣に、私は魂を惹き込まれてた。


指が触れれば指が、手のひらを置けば手のひらが、足をかければ足が、虹色の細い糸に絡み取られていくのを恐怖よりも、驚きと好奇心で眺め入った。
そして私はとうとう身体の自由を失ってそこにじっとしていたのだった。


私が自分の好奇心を満たすことと引き換えに、身の自由を失って行くのを、じっと潜んで眺めていたのだろうか、何処からともなく蠢く黒い影が近づいて来た。


それは近づくにつれ長く細い刺々しい手足を持った、背の中央に紅い点も鮮かに毒々しさを放つ蜘蛛の姿に変わっていった。


その姿を真近に目にした私の肌は、外界からのあらゆるものを拒絶するかの如く、毛穴という毛穴がきつく縮こまってしまった。

近づいてくる脅威を、恐る恐るも目が離せずに見つめていると、ふと蜘蛛と私の目が合った。

目が合った瞳は、強かそうな光を放っているものの、強かな光の裏に、動揺の波が寄せたり引いたりしているのも見えたような気がした。が、気のせいだったかもしれない。


蜘蛛の動きと目を見れば、彼がずいぶん長いこと空腹で獲物がかかるのをずっと待っていたのも見て取れた。


私の身体は神経がうち震えるように萎縮していた。それなのにどういうわけか、身体とも思考とも、心とも裏腹な言葉を私の口は発していた。


「私を食べてください」


よく見れば彼の瞳はおどけたようにまん丸で、その丸い瞳をさらに大きく丸く見開きながら、長い手足を不自由そうに動かしながら、それらはとうとう私の身体の上に覆いかぶさってきた。

そして蜘蛛はもっそりと大きな口を開け、私に牙をかけようとした瞬間、私は自ら意識を手放した。





しかし、私が再び五感を取り戻した時、唇のない大きな穴のような口から伸びる長い舌は、私の心をなだめるようにいつまでもいつまでも私の身体の隅々まで摩っていたのだった。











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Last updated  2017年06月12日 22時21分52秒
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