マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2008.09.06
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雷鳥荘への道

 「連絡がつかなくて心配していたんですよ」とスタッフの人。多分収容バスにも乗らずに最後まで室堂を目指したランナーが誰か分からなかったのだろう。私は制限を1時間20分オーバーしての到着だった。でも昨年までの制限なら20分オーバーで済んだはず。しかも自分の足でここまで来たんだから立派なものと胸を張ることが出来る。テントに入って腰を掛け、水を所望。喉が渇いてカラカラの状態だったのだ。2杯の水を一気に飲む。

 次に暖かいお粥。袋に入ったインスタント物だが、中に刻んだ塩昆布と梅干が入っていてとても美味い。今は何よりのご馳走だ。2杯目は半分ほどにしてもらった。隣の席にランナーが座ってお粥を食べ始める。青色のポンチョを着た青年。おそらく彼が室堂へ到達した最終ランナーのはず。彼の苦しみが分かるだけに、「良く頑張ったね」とねぎらう。

 暖かいお粥は嬉しかったが、暫く休んだせいで体がさらに冷えて来た。急いで2個の荷物を受け取り歩き出す。バスで着替えが出来ると聞いたが、男女一緒だと困る。何しろ裸になって着替えないと寒くて仕方がない。そこで室堂のバスターミナルへ向かい、最上階へ登った。屋上から室堂平の広場へ出て、雷鳥荘まで歩くのだ。建物の屋上へ出るとウォークの部に出ていたK藤さんが立っていた。どうやらH多さんを待っていたようだ。

 「一緒に雷鳥荘へ行こう」と誘うK藤さんに「寒いからまずトイレで着替えをする」と断る。「個室」の狭い空間で真っ裸になる。寒い。思わず声が震える。Tシャツも半ズボンもびしょ濡れ。それを便器の上で絞る。凄い水だ。靴下は泥だらけで絞ると泥水が。乾いたタオルで全身を拭き、順次着衣。靴がびしょ濡れなので靴下は昨日履いたので十分。やはり薄手のセーターを持って来て正解だった。一旦捨てたビニール袋をスポーツバッグに被せ、雨に濡れない工夫をする。

 雷鳥荘までの道はアップダウンが険しい。青いポンチョの青年と再び一緒になった。彼が一緒にお粥を食べた最終ランナーだと思う。名前を尋ねると東京のK島さんとのこと。立山を走るのは初めてだがスキーで良く来ており、雷鳥荘の前の急斜面も冬はスキーで降りるのだとか。「頂上まで走ってこの道を歩くと膝がガタガタになってね」と私が昨年のことを話すと、周囲のランナーが一斉に振り返った。きっとこの悪条件の中を頂上まで行けたランナーはどんな奴だと誤解したのだろう。

 後日何人かのブログやHPを読んだら、236人の出走者のうち制限時間内に頂上まで行けたのは106人だったとか100人以下だったとか書かれていた。もし106人だったとしても完走率は45%以下だ。中には寒さのあまり頂上で倒れ、山岳救助隊のお世話になったランナーもいたとか。K藤さんの話によれば、頂上から降りて来たランパン、ランシャツのランナーが寒さでガタガタ震えていたそうだ。また室堂の関門をクリヤーしても、体調不良で頂上へ行くのを止めたランナーもいたことを後で知った。

 頂上部での体感温度は5度か6度だったと誰かに聞いた。(雲峰師匠だったかも)。それが薄手のランニングシャツでびしょ濡れならば、きっと零度以下にも感じるだろう。そして体温を奪われたランナーの体が硬直することは十分考えられる。ゆっくりランナーの私があれだけ苦しんだのだが、スピードランナーの中にも苦しんだ人がいたのだ。やはり山の天候は甘くない。

 深い緑色のみくりが池。赤茶色の血の池。ガスに霞む立山連峰。登り下りが激しい道に無情の氷雨。疲れたランナーにとって、重たい荷物を持っての雷鳥荘への30分もの道のりはさらに過酷な試練となるが、これもまたレースの一部。じっと耐えるしかない。道が川になり、靴の底から容赦なく水が侵入する。

 やっとの思いで雷鳥荘に辿り着く。脱ぎ捨てられたビニール袋や合羽。受付を済ませ指定された部屋へ入ってみてビックリ。何と男女が一緒の部屋だった。でも山梨と静岡のランナー以外は皆仲間。雲峰師匠も一緒だったのには驚き。「失礼します」と部屋の外から声を掛けたK村さんだが「はい」の返事が男の声だったのに驚いて「失礼しました」と慌てる様子が愉快だ。「K村さん、ここで良いんだよ」と私。徐々に仲間が集まって来た。<続く>





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Last updated  2008.09.06 19:45:56
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