マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.11.13
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 極度の疲労と暗い道 

暫く走ると海洋博記念公園の美しい人工ビーチが見え出した。16時30分、公園の中央ゲート前通過。間もなく閉園時間か、たくさんのタクシーが客待ちしている。私はこの公園に3度来たことがある。1度は家族と一緒に遊びに来、後の2回はマラソン。この公園を発着する「海洋博トリムマラソン」だ。

「トリムマラソン」は速さを競うのではなく、事前に申告したタイムに最も近かった人が優勝するというルールで、私が出たのは20kmの部。コースは渡久地港を経て瀬底島を一周して帰るのだが、結構アップダウンがあった。当時を思い出しながら走ったが、道路は見違えるほど良くなり様子が変わっていた。

周囲の食堂は軒並み閉鎖。観光ツアー客は他に食事場所が決まっているのだ。新しい道路は渡久地港には寄らずに海の上を直進。これで2kmは短縮したはず。前方に瀬底大橋と瀬底島。島へはマラソンを含めて3度渡っている。

ある時、島の浜辺で山羊の頭がい骨を見つけ、ビックリしたことがあった。沖縄では山羊は精がつく食べ物。きっと島の人が解体したのだろう。当初は橋を往復する予定だったが、景色を脳裏に焼き付けるだけに留めて前進。

夕暮れが迫り、海の向こうに扁平な水納島(みんなじま)が霞む。17時15分、本部町のコンビニで買い物。店の外でアイスとサンドウィッチを食べ、牛乳とシークワーサージュースを飲んだ。本当はあんパンが食べたかったのだが残念。17時35分スタート。

その後、国道ではなく本部港への道を進む。後で思えば200mほどしか距離は違わないのだが、急に心細くなった。本部港へはかつて那覇から本土へのフェリーも寄港したが、今は素通りで伊江島行きのフェリーしか出ていないみたい。間もなく4車線に拡張されしかも極力直線の国道と合流。

日が落ちると街灯がないため、道路は真っ暗状態。山際を走るとハブが出て来そうで怖い。餌がないため、彼らが道路へ出ることはないと信じるしかない。車のライトとわずかな月明かりだけが頼りのラン。だがランパンのゴムが股に擦れ、汗が染みて猛烈に痛む。18時25分「塩川」前を通過。ここは地中の塩分が湧き水に溶けて出る不思議な泉が地名の起り。

小さな突端を過ぎると名護湾沿いに明かりが見え出す。ところがこれが曲者で、距離感が狂う原因。疲れたランナーは湾曲した海岸線でなく、直線で距離を測ってしまうためだ。おまけに速度が極端に落ちているため、さらに距離感が狂う。集落のない道路には、当然のことだが自販機もない。フラフラになりながら遥か彼方の明かりを心の支えにして前進。

もう名護市内に入っている。安和(あわ)も山入端(やまなは)も過ぎた感じ。先刻自分のホテルと思った明かりは、ずいぶん手前のリゾートホテル。ガッカリしてさらにスピードが落ちた。20時2分、宇茂佐集落到着。疲れと吐き気でとうとう走れなくなった。自販機で暖かいミルクコーヒーを買い、騙し騙し飲む。

この集落は沖縄勤務時に一緒だったOさんの故郷。琉球王朝時代は武士(さむれー)だったOさんの先祖は「琉球処分」の結果無禄となり、都落ちしてこの地で農業を始めたと聞いた。想像していたよりは遥かに都会的で、現在は人家も多そうだ。だが名護市街までがやけに遠い。ここからは真っ暗な道をテクテク歩いた。それにしても、ゴールの我がホテルはまだなのか。<続く>





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Last updated  2011.11.13 16:22:41
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