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エッフェル塔に登るとパリの街は魅力的に見えない。なぜならエッフェル塔が見えないから――という人がいる。そんな意見に同意する人にお奨めなのが、セーヌ川の観光船バトー・ムッシュ。
なんのことはない。エッフェル塔とシテ島の間を往復するだけだが、所要1時間15分と、時間も手ごろで(食事つきのコースだともっと時間を取られる)、1人5ユーロと値段もお手ごろ。大きな船なので、予約なしに行っても問題なく乗れる。
パリには15回ぐらい来ているMizumizuだが、いつも美術館やら有名レストランやらに時間を取られ、乗ったのは今回が初めてだった。
さほど期待していなかったのだが、案外よかった。とくにエッフェル塔がいろいろな角度からバッチリ見えるのが素晴らしい。
船着場でお土産店に入ったら、メイドインチャイナの香り高いお土産物がゴロゴロ。そして、船に乗ると今度はお客の90%近くが中国人。
昔、日本人が海外に行くと、お土産がほとんどメイドインジャパンだった・・・というような話があったようだが、今はそれが中国になっている。
白人の観光客はあまりデジカメを持っていないのだが、中国人はほぼ全員携帯していて、バンバン撮っている。そして、一般の女性がモデルのように身体をひねってポーズを取って写真におさまるのも共通している。日本人はみな「ピース」だが、あれが中国では「モデルポーズ」になるみたいだ。
前に座っていた痩せたチョン・テセみたいな青年と長い髪をきれいに巻いてお洒落をした中国美人のカップルに、写真を撮ってくれと言われてシャッターを押した(ちゃんと撮れていたかしらん?)。
「中国のどこから来たんですか?」
と英語で聞いたら、「○▲◎▽■~」と聞いたこともない中国の地名。漢字で書いてもらえばもしかして見当ぐらいはつくのかもしれないが、音だけでは全然わからない。
首をひねると、「北京の北で、ナンタラナンタラ」と、うまいとはいえない英語で熱心に説明してくれた。こういうとき、中国人の男の子はとても積極的で外交的だ。日本人の男の子の内向的で自信なげな態度とは対照的。「パリは初めて?」とか「気に入った?」などと、話が少し盛り上がった。
エッフェル塔が見えてきた。
アイスランド火山噴火の影響で空港が長い間閉鎖され、ようやくフライトが再開された当日だったせいか、飛行機がすごい勢いで飛んでいく。遮るもののない快晴の空を切り裂く飛行機雲が、あちらにもこちらにも。
こんなパリの空を見たのは初めて。
エッフェル塔だけではなく、もちろんアンヴァリッドやグランパレ、ルーブル(上の写真左)や、コンシェルジェリーやノートルダム(下の写真)などが次々見られるのだが・・・
セーヌ河岸から遠かったり、建物の周囲の塀が邪魔をしたりして、案外よく見えない。そこへいくと、セーヌ川ぎりぎりに建てられたエッフェル塔の眺めは迫力がある。
ちょうど間近で仰ぎ見るようになるので、高さと建造物としての力強さが強調される。
そして、船の動きにあわせて、あっという間に遠ざかる。風景の一部に溶け込んだエッフェル塔もいい。
最後はちょっと飽きたのだが、思った以上に楽しい気分になって船を降り、地下鉄で1本のGrands Boulevardsに行き、パッサージュ・パノラマ(下の写真)
に入り、ここの一角にある パッサージュ53 で、ランチを取って大満足した。パッサージュ・パノラマも賑やかで、歩いて楽しいアーケードだった。
この午前中バトー・ムッシュ→ランチパッサージュ53というコースは、ルートも簡単なので、お奨め。ランチのあとはギャルリー・ヴィヴィエンヌやランボーやヴェルレーヌゆかりのルメール書店のある パッサージュ・ショワズール を見てパレロワイヤルへ南下し、そこからシャンゼリゼへ出たのだった。
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