りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月21日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記
( ポケモン映画「アルセウス超克の時空へ」感想とドラマ「ブザー・ビート」感想☆ )



<ユナ16>



いや、でももういいやって気持ちもあった。
誰かとしゃべりたい。
自分の本音をしゃべれる誰かと。

この男が言ったことが、もしも本当なら、
本当なら…
本音を話してくれたことになる。

男は私を全身眺める。
「ホント?ホントにいいの?
やめるなら今だけど。」

「じゃあ、やめます。」

「あ、いや、行こう。
ドコがいいかな?って言っても、
俺は飲み屋しか知らないんだけど。」

「いいですよ。飲み屋で。」

「何だかヤケになってない?」

「何でそう思うんですか?」

「いや、…何か。
ううん、何でも無いや。行こう。」

私は男の後について行く。
自分でも、こんなのバカじゃないかと思う。
思ってきた。
逃げる?逃げようか?

頭はそう思っているのに私の足は逃げ出さなかった。

男は個人でやってそうな居酒屋に入った。
まだ時間が早いせいか、店はガラ空きだった。

男はビールを頼んだ。
私はサワーを頼む。
美味しそうな感じの和風のつまみをいくつか頼んだ。

「じゃあ、はい。お疲れ!」

男が私とジョッキを合わせる。
美味しそうにビールを飲んだ。

あ、何かこの雰囲気って、会社帰りにみんなで飲んだのと似てる。
つまみは手作りって感じがして美味しい。

「おねーさんさ、どうしてパチンコなんかしてたの?」

「え?あ、ちょっと入ってみたかっただけなんだけど…。」

「なんかさ、危なっかしいよね。
キョロキョロしてたし。
あんまりやったこと無いんでしょ?
それにさ、一人でパチンコしに来るタイプじゃない気がしたし。
何かあったの?」

私はお酒を一口飲んだ。

「何か無いとパチンコしちゃいけないんですか?」

「いや、そんなこと無いけど。
結婚してるんでしょ?」

薬指の指輪を指す。

「うん。」

「わかんないな…。
どうして一人でパチンコしてたり男についてきたりするのか。」

私はちょっとどうしようか考えて、自分のことを話すことにした。
どうせ、今だけの相手だ。

「実は夫の転勤で仕事を辞めてついて来たんですよ。
で、今はハローワークに通って、失業保険をもらってるの。
今って毎日、変な感じで…。
私はどこにも属して無いっていうか、何か宙ぶらりんで。

何て言うのかな…。
授業サボって街に出てきた気分。
だから、どうせなら悪い事やってみたくなったの。
パチンコでもやってやれー!って。

で、スるかと思ったら当たったから拍子抜けしちゃって。
男の人に声かけられるのも久しぶりだったし。
もうとことん落ちてやれ。
ってちょっと思ったりしたの。」

「ふーん。そうなんだ?
じゃあ、俺がホテル行こうって言ったらついてきた?」

「ううん。そこまでは度胸無いです。」

「度胸でホテルに行くワケ?」

私はちょっと考える。
そうよね。それは度胸じゃないな。
だいたい好きでも無い男とホテルって。
お金もらっても行きたくない。

「あ、ごめん、冗談。
スケベな話すると逃げちゃうよな。
え~と、何歳?
あ、コレも失礼なのかな?」

私が考えているのを、他の意味で取ったらしい。
話題を逸らそうとする。

「26歳です。」

「はは。若いね。結婚して何年?」

「3年かな。
若いって歳でも無いと思うんですけどね。」

私はパチンコ屋で見た女の子たちを思い出す。

「そんなこと無いよ。俺から見たら、充分若い。
子供は?」

「いないです。」

「ふーん。なるほどね。」

「そっちは何歳なんですか?」

「オレ?オレは32。」

6つ上か。そんなに上には見えなかったんだけどな。
2・3歳上かと思った。

「さっきの話は本当なんですか?」

「え?何?何の話?」

「別居したって話。」

「うん、あー。ホントホント。
性格が合わないんだってさ~。
だから別れて欲しいんだって。
いや、多分他に男ができたんだろうけどね。
ったく、結婚してからンなこと言うなって言うの。」

多分、この人も今だけの相手だから、
こんなに自分のこと暴露してるんだろうと思った。

「子供は?」

「いないよ。だからかね。
簡単に別れようなんて言うのは。」

「そうなんだ…。
奥さん何歳なんですか?」

「うん?29歳…」

「ホントにホントの話?」

「まー、シャレや冗談では言わない話だね。」

「今どこにいるんですか?奥さん。」

「さあ…。もうどうでもいいし。」

顔がフッと暗くなった。
あんまり聞かない方がいいのかもしれない。
当然かな。
土足で心に入ってるようなもんだよね。

「私とこうして飲んでても楽しいんですか?」

「うん。別に一人で飲んでてもいいんだけどね。
ちょっと飽きた。
俺さ、ちょっと行ったとこで店やってんの。
バーレストランってやつ。
たまには自分ちのじゃない酒が飲みたくなるんだよね。」

どうもこの人と話してると深い話になっちゃうなぁ~。
私はぼんやりと思った。

「私もね、同じ感じ。
ほとんど一人でご飯食べてるんですよ。
二人分のご飯作って一人で食べるの。
何だかちょっと最近疲れちゃってね。
もういっそ、一人分なら楽なのになぁ~って思っちゃうの。
あ、こういうこと言うの悪い奥さんってやつなんだろうね。
ここにいるのもだし。」

「ん?あ~。まあいいんじゃないの?
俺が同じ立場でもそう思うよ。
もしそれが悪いことだって思うなら、もう作るのやめちゃえば?」

「そしたら、帰ってきた時、何も無くて可哀想じゃないですか。」

「そんなの、あるのが当然って思ってるソイツが悪いんだよ。
ちょっとは感謝するべきだよ。」

「だって、私働いてないから、家の仕事しなきゃ、
家にいる意味が無いし。」

「でも、アナタさ、メイドじゃないでしょ?
奥さんでしょ?そういうのを放棄したら離婚なの?」

「じゃあ、奥さんがいる意味って何ですか?」

「う~ん。何だろうね~。」

男は楽しそうに酒を飲んで考える。

「あのさ…、
あ、やめた。ちょっとスケベな話かも。」

「何ですか?いいですよ、別に。
もう女の子ってワケじゃないし。」

「いや、つまんないこと。」

「予想はつきますよ。
でも、そんなの結婚しても性欲のある人だけじゃないんですか?
私はある意味、
ハウスキーパーって仕事をしてるんじゃないかと思ってるんですけど。」

「はは。そう考えると雇用契約みたいだね~。」

「契約ですよ。結婚なんて。」

「冷めてるね~。」

私はちょっと泣きたい気分になる。
お酒のせいかもしれない。
普段の不満なんて、小さな気持ちだったのに、
大きなことになってしまったような気分になる。

「だいたい変ですよ。
結婚するまでは男と女がHすることはいやらしいなんて言ってたのに、
結婚したら、みんなが子供はまだ?って言うんですよ?
ある意味、「やってるの?ダンナさんともっとやりなさいよ!」
って言ってるようなもんです。

親まで率先して言ってるんですよ?
Hまで仕事みたいで、ワケわかんないです。結婚なんて。
最近思うけど、大っぴらにHしていいですよ。
って認められる儀式なんじゃないかな?って思います。」

男は面白そうに笑った。

「あ~、なるほどね。
俺は子供のためにある法律なのかと思ってたよ。
ほら、子供って親が必要じゃん。
だから別れさせないようにする契約書なんだよ。」

「じゃあシングルマザーはどうするんですか?
子供がいない夫婦は?」

「子供がいない夫婦にとっては、
愛の誓いの証明書なんじゃないかな?
ずっといっしょにいますってさ。

人間弱いから、そういう契約でもしないとダメなんじゃないの?
心は縛れないからね。
でもせめて見えるモノに頼りたくなるんじゃない?

シングルマザーは、人によるんじゃないかな?
きっと一人でも親二人分愛してあげるんじゃないの?」

男がスラスラと思ったことを口にするのが心地いい。
そういえば、サトシとこんな会話したことあったっけ?

なるほどね~。と私は頷いてみる。

「恋愛の延長が結婚なのかと思ってましたよ。」

「まあ、それもある意味正解だとは思うけどね。
国語と同じで答えが一つじゃないんじゃないかな?」

…と、俺は思うよ。
男は酒を飲んで、
低い声でボソリとつけ加えた。

「私はまだわからないです。
そういうの。」

わかるような気もしたけど、
自分の中でよくわからないことに同意するのも何だと思って、
口がそう言っていた。

「うん。そうだね。
俺も結婚とか、
何でするのか、よくわかんないよ。
よくわかんなくなった。」

「じゃあ、離婚しちゃえばいいじゃないですか。」

「他人事だと思ってアッサリ言うね~。」

「他人事ですよ。」

「明日は我が身かもしれないよ?」

「そんなことないです。」

「そうかな?俺が帰さなかったらどうなるかな?」

男がジッとこっちを見る。

「声をかければ、誰でもついて行ったの?」

「それは…」

私は口篭る。
ついて行ったと言えば嘘になるだろうし、
ついて行かないと言えば、じゃあ何でって話になる。

「ヤケになってたりするんですか?」

「そうだね~。ちょっとね。
アナタと同じで、宙ブラリンな感じではある。
自営業だしね。
今日だって、勝手に閉店しちゃったんだよ。
初めてだよ、こんなことしたの。
あ~あ。どうしようもねーよな…。」

最後は独り言みたいに言った。
何となく酔ってなさそう…。
飲んでも飲んでも酔わないタイプなのかもしれない。

私はそうじゃない。
ヤバい。
何とか帰らないと…。
この男は危険だ。
本能がそう言ってる。

「冗談だよ。
家庭壊すなんて簡単だよってこと。
もう別に、そういう一時の慰めとか欲しいワケじゃないからさ。」

男がクックと笑う。
私はちょっとホッとした顔をしてしまったらしい。
男は続けた。

「だからさ、もし良かったら、こうしてたまに話せないかな?
アナタは打てば響くタイプの人みたいだし、
話してて飽きないや。」

帰れるなら何でもいい。
でも、私も同じことを思っていた。
この人は面白い。
このまま別れるのは、何だかもったいない。

「いいですよ。
こんな感じでいいんだったら。」

「じゃあさ、一人で飯食うの淋しくなったら、ここに連絡して。」

男は名刺のようなものをサイフから出してきた。
そこには男の店の地図と電話番号が書いてあった。

「暇ならおいで。
今度はサワーじゃなくて、カクテル作ってあげるよ。」

私は頷いた。
男の名前は、ヨシカワシュウジと言った。







続きはまた明日

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最終更新日  2009年07月21日 20時34分50秒
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