りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月27日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ22>



だけど、
ガラス戸越しに、
カウンターで女性と楽しそうにしゃべっているヨシカワが見えた。

一瞬、中に入るのを躊躇する。
ガラス戸を通して、こっちを見たヨシカワと目が合ってしまった。
入らないのも変かと思って、中に入る。

「いらっしゃい!久しぶりだね~。
そっちどうぞ。」

ヨシカワが笑顔で声をかけてきた。
いつものカウンターは空いてないので、
私は2人掛けの席に座る。

ヨシカワが水を持って来る。

「あれ?今日はもう飲んでる?
何にしようか?ノンアルコール?」

「スクリュードライバー。」

私はまたアルコールを飲むことにした。
どうせ今日は飲み会って言ってある。
りょーかい!と言って、ヨシカワはカウンターに戻る。
カクテルを作りながらカウンターの女性と話して笑う。

「シュウちゃんってば、バカね~!」
女の声が聞こえる。
大人っぽい、キレイな人だと思った。
私も大人なんだけど、ただ歳が大人になっただけ。
彼女は「女」って感じがした。
私より年上かな。
もしかしたら同じ歳だったりして。
でも、ヨシカワに似合うと思った。

ヨシカワがカクテルを持って来る。
「飲み過ぎないように、水置いておくね。」
そう言って、頼んで無いのに枝豆をつけた。

「合コン言ってきた。」
小声でつぶやいた。

「え?」
ヨシカワが一瞬止まって、私の顔を見る。

「ごめん、聞こえなかった。」

「ううん、何でもないです。」
私は笑顔を作る。

ヨシカワは迷った感じの動作をみせたけど、
またカウンターに戻って行った。

私って子供っぽい…。
見た目がどうこうじゃなくて、中身が。
もう27にもなるくせに、
あんなこと言って、気を引こうとする自分がバカみたいに思えた。

考えてみたら、
ヨシカワはモテないわけじゃないだろう。
声をかけてきたのは、
本当に一人でご飯を食べたくなかったからだったんだ、
と思った。

「じゃ、行くわ。ガンバらないと。またね。」
女は会計をして去って行く。

私はチビチビ枝豆をつまみ、カクテルを飲んだ。

「おかわりいる?こっち、来る?」
ヨシカワが席に来る。

私の周りはカップルばかりだった。
大テーブルには若者グループが騒いでる。
じゃあ…って席を移ると、
すぐにカップルが入ってきて、私の席が埋まる。

そっか、週末の夜ってこうなんだ。
いつも人が来ると帰るから知らなかった。

「コンパ行ったんだ?」
ヨシカワがいきなり言う。

「何だ。聞こえてたんじゃない。」
つい思ったことが口から出た。

「いや、行かないって言ってたから、意外だと思って。
違うこと言ったのかと思った。」

「今の人キレイな人ですね。
私より年上…ですか?」

私は話を逸らした。
でも、まだ気になってたからかも。

「ああ、うん。俺より少し上かな?
いつまでも歳取らない感じで凄いよ。
俺もああなりたい感じ。」

そう言って笑う。
サトシだったら、オバサンが頑張ってるって言うんだろうな。
自分より少し上の女性でもそう言ってたから。

それとも私にヤキモチを焼かせないように言ったのか。
歳をとってからオシャレしたらガンバってることになるのかな?
って、ガッカリした覚えがある。

「できれば、Tシャツにジーンズの似合うジジイになってみたいもんだよ。」
楽しそうにそう言って、
ツマミを作ってオーダーされたテーブルに持って行った。

この人にとっては、女も一人の人間なのかも。
そんなことをちょっと思った。

「どうだった?面白かった?」
戻ってくると聞いてきた。

「うん、まあ、面白かったですよ。
みんな大騒ぎしちゃって。
電話番号も教えてもらっちゃった!」

咄嗟に口から出る。
でもそうじゃなくて、本当は、そうじゃなくて…。

「そっか~。
なら良かったね。楽しめたんだ?」

無難な返事が返ってくる。
もしかしたら、この人にとっては、
私は妹みたいなものなんじゃないかと思った。
考えてみたら、女性扱いされたことは無い。

そう思ったら、
もう私だって妹役に徹した方がいいんじゃないかと思った。
そうだよ、私結婚してるんだし。
嘘ついたり、気を引く必要なんか無いじゃない?

もう、カッコ悪いことするのはやめた。
変に意地を張りたくない。

「いや、ホントは…
実は、そうでもなくて。
後ろめたかった。
何て言うか、男の人たちに。

電話番号も教えてもらったけど、こういうの悪いって思いました。
ダメだね~、私。
アクマちゃんは楽しそうでしたよ。
付き合っちゃおうかな~って言ってました。
そんなに楽しめて、正直羨ましかった。」

ヨシカワが吹き出して、お客さんの手前笑うのをこらえた動作をした。
そして優しそうにこっちを見て、言う。
「向いてなかったんだ?そういう遊びに。」

「そうなっちゃいますね。
あ~、参ったな。」

「それがわかっただけでも、行って良かったじゃない?
いい経験したんだよ。」

なんだかなぁ…
ホントに優しいことを言う。
こんな兄がいればいいな…って思った。

「ヨシカワさん、お兄ちゃんみたい。
あ、私、兄はいないんですけど。
弟は、いるんだけどね。」

ははは。ってヨシカワが笑う。
「俺は妹はいないけどね。姉と弟がいるよ。」

あ、やっぱり私って、この人にとって妹なのかも。
そう思った。
でも、それでいいと思った。
私は妹。
この人は心の兄。

それでいい。
それでいいんだ。

そう思った。
そう思っていた。

あの日までは…。






続きはまた明日

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最終更新日  2009年07月28日 20時49分59秒
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