りらっくママの日々

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2010年01月10日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ69(職場と同僚2)」



6時には着くつもりでいたのに…。」

「会社に電話しておこうか?」

「うん。頼む。」

その時、会社用の携帯が鳴った。
モリタさんからだった。

「イシタニくん…」

「何?どした?」

「取引先が、何か雪のせいだか何だかで、
こっちに来るのがどうしても無理なんだって。
だからもう今日は大丈夫だって。
慌てなくていいから、お疲れ様だって。」

「なんだよ~。」

イシタニくんは脱力したようにガクンと腰を折った。

「あ~、でも良かったかも。
何だよ、この道~。
何でこんなに動かないかなぁ?」

イシタニくんはジレったそうに言った。

「もし眠いようなら車の運転代わろうか?
昨日遅かったんでしょ?」

「え?ううん。大丈夫。
それに遊んでた俺のせいだからね~。」

「でも、渋滞だと眠くならない?」

「ん~。じゃあ眠くならないように何かしゃべってよ。」

「何か?何かって…何だろう?
しりとりとか?」

「あ、ソレますますイライラしそう。
そうだな~、
彼とドライブしてる時って、
こういう渋滞の時どうしてんの?」

「ん~。大体何か歌える曲がかかってるから、
歌ったりしてる~。
後は、眠くなったら交代したり。
眠っちゃうこともあるけど。」

「ふーん。安心してるんだ。
お互いに。
いいね。
俺はダメだな~。
彼女が踏むブレーキのタイミングが怖くて。
だからすぐに代わっちゃうよ。
彼、そんなこと言わない?」

「うん。
運転しないと慣れないからガンバれって言うかなぁ。
でも怖いとこは変わってくれるけど。」

「ふーん。
優しいんだね。」

イシタニくんの言葉にミツルのことを思い出した。
そう言えば、ミツルも同じようなこと言ってたと思って。

「イシタニくんは何歳で免許取ったの?」

「俺?高三の夏休みかな。
でも、結構無免で乗っちゃってたけどね。
先輩の車とか。」

「え?ウソ?!おっかない!
もしかして、走り屋とか?暴走族やってたとか?
そーいう系?」

「え~?男なんて結構そういうことやってんでしょ?」

「そうかなぁ?」

青山くんは、やってないような気がした。

「ミゾグチさんて、お嬢様?」

「そんなワケないでしょ。そしたら働いてないよ~。」

「ん~、そういうことじゃないけどさ。
なんか、育ちが良さそうな感じがするんだよなぁ。」

またミツルが昔言ってた言葉を思い出した。

 オマエはお嬢様だから。

ああもう。
どうしてイシタニくんと話してると、
忘れてた過去がチラつくんだろう。

彼女とケンカした話や、
タバコの香りと車のせいもあるのかもしれない。

好きだけど、嫌い。

私が捨てた男。


「え?今日は私持ち合わせ無いよ。
給料日前だし。」

私が話を逸らすと、
イシタニくんは、またアハハって笑った。

「俺んち、母親が高校の時いきなり死んじゃってさ。
何だろ、何にもやる気なくなっちゃって。
その時に、仲良かった近所のにーちゃんがさ、
いなかだからさ、庭が広いんだよ。
庭って言うか、そこは空き地って言うか、
私有地なんだよね。
そこで車の運転教えてくれたりなんかして。
まあ、他にも悪さ覚えさせてもらったけど。
マージャンもタバコも、いろいろ。」

「あ…そうなんだね。」

サラリと母親が亡くなったことなんて言うので、
何て言っていいのかわからなくなった。
少し淋しい空気が流れた。

それでも無言でいることで、
イシタニくんに気を遣わせるのは嫌だった。

もしも私が彼女だったら、
何もやる気なくなるかもしれないね…って、
肩を抱くことも手を握ることもできるかもしれない。

女友達なら、そんな言葉をかけてたかもしれない。

でも彼は男だから、
だから、
何だかしんみりしたくなくて、
親のことから少し話を逸らすように言った。

「じゃあ、不良って言っても、怖い不良じゃないんだ?
人より少し大人になるのが早かったって感じ?」

「大人のマネごとだよね。
って、怖い不良って何~?
でも不良って言い方、今あんまり聞かないよね?」

「そうだね。何て言うんだろ?悪いヤツ?」

「あはは!悪いヤツ?
どんなヤツだよ~!」

車の中で悪いヤツのイメージをお互い言い合ってゲラゲラ笑った。
イシタニくんの笑顔を見てたら、
空気を換えられて良かったって思った。

そんなことを言ってるうちに赤いブレーキランプが減ってきて、
車が流れ始めた。
あ、事故だったみたいだね…って、
へこんだ車を通り過ぎながら眺めた。

ふと、自分が付き合ってるのは青山くんじゃなくて、
イシタニくんみたいな錯覚を起こしそうになる。

まるで、ずっと昔からいっしょにいたみたいに、
隣にいることが自然に感じた。

なんで?

それでも、心の中で首を横に振る。

青山くんに早く会いたいな…

流れて行く景色を見ながら、私はそう思った。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2010年01月10日 22時34分37秒
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