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2021.05.09
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三千鸦杀 Love of Thousand Years
第28話「清瑩石の主」

南疆(ナンキョウ)の海底。
傅九雲(フキュウウン)の師匠でも見つけられなかった清瑩石(セイエイセキ)が覃川(タンセン)を主に選んだ。
こうしてついに清瑩石を手に入れた覃川と九雲は次の渦潮が起こるまでの1日、巨大な貝殻に横たわってしばし休息を取ることにする。
「私ね、最近よく考えるの、未来の2人のこと、子供は何人か?どちらに似るのかな?って…
 今まではこんなこと考えもしなかった
 霊灯をともすこと以外は何も必要ないと思ってたから、志を遂げたら死のうって…」
覃川もいつの間にか女子なら誰もが思い描くような普通の幸せを夢見ていた。
「大丈夫よね?時間はたくさんある、これからはずっと一緒ね?」
「霊灯の中ではずっと一緒だ」
すると九雲は自分を好きになったのはいつかと聞いた。
星空の下で想いを全て打ち明けた夜なのか、それとも自分が描いた皇女の頃の絵を見た時だろうか。
しかし覃川はいたずらっぽく全部だとはぐらかした。
「あなたは知っていたのね、時間など無意味だって…一緒ならそれでいい
 あの世で悪霊が私たちを引き離したり、私だけが先に死んだりしなければ…私はそれで幸せよ」
「川兒…愛している」
覃川は優しく微笑むと、答える代わりに九雲に口づけした。

九雲は千年も想い続けた絵の中の娘とついに結ばれた。
「私が妖魔を倒したら、もう何も心配しなくていい、何も考えず私の腕の中に身を任せて欲しい
 命ある限りそなたを愛し、守り続けるよ」
こうして愛を誓い合った2人は海底を離れ、無事に海岸に打ち上げられた。

覃川と九雲は焚き火で暖を取りながら冷えた身体を暖めた。
すると覃川は夕日がこんなに美しいと思わなかったという。
九雲はそれは覃川の心が満たされているせいだと言った。
「あなたがいるから満たされたの」
「ふっ、霊灯はいいのか?」
「…江湖には名前を聞くだけで妖魔が恐れる夫婦がいるの
 霊灯に頼らなくても妖魔を倒すことができる、驪(リ)国人の生活も守られるのよ?」
「うむ…それは忙しくなるな、たくさん子供を産んで手助けしてもらわなくては…」
甘いひと時を過ごす覃川と九雲、しかしそろそろ出発する時になった。
今頃、眉山(ビザン)君が鯪魚(リョウギョ)城で心配しているだろう。
すると覃川は九雲にしがみつき、わずかな時間を惜しんだ。



鯪王府で眉山と亭渊(テイエン)が九雲と覃川を出迎えた。
2人の様子で何があったのか察する眉山と亭渊、すると九雲の身体を心配していた眉山が慌てて九雲を寝殿に引っ張って行ってしまう。
そこで覃川は亭渊に清瑩石を見せることにした。
「もし九雲に騙されたりしたら私にすぐ言ってくれ、天原国の力を総動員して殺しに行く」
(; ゚ェ゚)お、おぅ
「天原国の太子妃の座は君のために空けておくよ」
覃川は意味が分からず、笑ってごまかすしかなかった。

眉山は九雲を手当てしたが、あくまで一時的なものだった。
このまま無理をすれば霊灯に関係なく九雲は死んでしまうだろう。
しかし九雲は清瑩石が手に入ったからには早く妖魔を倒さねばと焦った。
清瑩石の結界は5人の力を使って五行の陣を作るが、実はもう1人、清瑩石を持つ核となる陣主が必要となる。
ただし陣主は妖魔と共に結界に入る必要があり、取り残されれば命に関わる危険があった。
「私がやるわ」
そこへ覃川が入って来た。
「南蛮(ナンバン)妖王に復讐すべきは私よ?私がやる」
驚いた九雲は危険すぎると反対し、覃川と口論となった。
眉山は慌てて2人を落ち着かせると、亭渊と左紫辰(サシシン)が協力してくれるが、どちらにしてもかなり危険だという。

紫辰から結界の話を聞いた玄珠(ゲンシュ)は協力を申し出た。
「驪国のためだもの、諸侯の娘として責任を果たすわ」
紫辰は思わず玄珠を抱きしめ、全てが終わったら桃林へ行こうと言った。
「俗世を離れて暮らそう」
幸せそうな紫辰、まさかその腕の中で玄珠が冴えない表情をしているとは知る由もない。

一方、火山では妖王が歓喜に湧いていた。
「我が神よ!時は来た!ついに復活の時が!」

その夜、寝台に入った覃川と九雲は2人で結界の件を話し合った。
「本気なんだな?」
九雲が最後に確認すると、覃川が黙ってうなずく。
すると2人は決戦を前に固く抱き合って眠った。

翌朝、覃川が厨房で料理していると玄珠がやって来た。
珍しく素直に手伝い始めた玄珠、すると覃川に初めて本音を明かす。
「私を誤解しているわ、子供の頃、初めて見たあなたは綺麗な着物を着て華麗に舞っていた
 その時、私が何を思ったと思う?嫉妬したと?
 私はこう思ったの、あの着物はあなたにしか似合わないなって…」
玄珠は燕燕(エンエン)が自分を嫉妬深く、皮肉屋で嫌な女だと思っていることは分かっていた。
すると覃川は自分の方こそ幼稚だったと反省する。
「…以前は自分の目的のことでいっぱいで、他人を思いやれなかった
 でもある人と出会って生きることの意味を知ったの、失いたくない存在もできた」
覃川は思わず玄珠の手を握った。
「あなたにもそうであって欲しい」
「私も同じよ」
「必ず生きて帰ると約束して」
「清瑩石も霊灯もある、妖魔を永遠に葬れるわ」
そこで玄珠は霊灯を見せて欲しいと頼んだ。
覃川は乾坤(ケンコン)袋から霊灯を出して渡したが、玄珠は急に黙り込んでしまう。
実はその時、玄珠は香取山主から聞いた霊灯の話を思い出していた。
…霊灯をともせば妖魔を封じることができる、三世界の全ての妖魔をな
…血の契約をすれば霊灯が主と認め、主が魂を捧げると灯がともる
…しかし主は未来永劫、苦しみ続けることになる
「どうしかした?」
「はっ!何でもないわ」

九雲は食事をすっぽかし、覃川を連れて竹林へやって来た。
すると竹に短刀で印をつける。
「この竹が伸びれば私の名も人目に付く、皆が私の名を知ることになる」
「でももう伸びてるけど?」
「そうか?」
そこで覃川は短い竹を見つけて自分の名を彫った。
九雲は思わずその隣に自分の名を彫り、この竹は2人の物だという。
「たとえ肉体が滅んで魂も記憶も何もかも失ったとしても、私たちが生きた証になる」
「竹が伸びる頃、私は生きていたらおばあさんよ?それでもいいの?」
「その時は仙人をやめて共に老いるさ」

覃川たちはついに極寒の地までやって来た。
以前よりはるかに溶岩の量も増え、眉山たちに緊張が走る。
すると火口にいた妖王はどうやら客が来たと高笑いした。



覃川と九雲は火山の洞窟に入ると、いきなり結界を張って眉山たちを閉じ込めた。
あの夜、覃川はこれ以上、誰かを巻き込みたくないと訴え、2人だけで決行したいと提案する。
『本気なんだな?』
こうして九雲は覃川の願いを叶え、2人だけで火口へ向かった。
「九雲っ!」「燕燕っ!」
残された眉山たちは必死に叫んだが、2人は行ってしまう。

妖王は火口で待っていた。
九雲は宝剣を招喚、幻影の術で4人の分身を呼び出し、妖王を囲む。
一方、眉山は必死に結界を破ろうとしていた。
しかし九雲の術を破ることができず、業を煮やした亭渊が結界の前に立つ。
その頃、九雲は分身と五行の陣を張り、覃川が清瑩石を取り出していた。
すると妖王が五行の陣を破り、清瑩石など無用とばかりに覃川を吹き飛ばしてしまう。
驚いた九雲は急いで覃川の元に駆けつけたが、覃川をかばって妖王の妖術に捕らわれた。

亭渊が結界を破ろうとしたその時、黒煙が洞窟に飛び込んできた。
すると黒煙は九雲の結界をあっさり突き破り、眉山たちも妖術に捕らわれてしまう。
こうして九雲、眉山、亭渊、紫辰、玄珠はそれぞれの心魔に惑わされ、抜け出せなくなった。

つづく


( ๑≧ꇴ≦)妖王の第三形態が妖神の像だと思ってたけど別ものか〜





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最終更新日  2021.05.09 12:42:24
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