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2022.01.23
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カテゴリ: 長歌行 全49話


长歌行 The Long Ballad
第10話「国境の守り人」

朔(サク)州は国境にある辺ぴな地、草原が近く戦が絶えない場所だった。
しかし街は活気にあふれ、人々も豊かなのかおおらかで優しい。
李長歌(リチョウカ)はひとまず酒楼でひと休み、すると給仕はすぐ外地から来た客だと気づいて名物の燻製鶏を出した。
「注文していないが…」
「番頭から外地の客人には無償でお出ししろと言われています、挨拶代わりですよ」
長歌は辺境でも朔州が栄えていることに驚いた。
給仕の話では、これも父母官の刺史(シシ)・公孫恒(コウソンコウ)のおかげだという。
公孫家は隋(ズイ)代からこの地を治め、ここ数年で朔州は要塞のごとく兵力を強めていた。
また公孫刺史は墾田(コンデン)を推奨して流民を招き入れ、周辺でも朔州が一番にぎわうという。
…評判の父母官は隋代の将領なのね、きっと戦を憎んでいるはず…
どうにかして刺史に挙兵を勧められないものか。
結局、長歌は燻製鶏には手をつけず、代金を置いて店を出た。

長歌は誰かが後をつけていると気づき、咄嗟に裏道に隠れた。
すると追いかけてきたのが阿竇(アトウ)だと分かる。
「やっぱり師父だった!似た人だと思ってさ~」
再会を喜ぶ長歌だったが、幽州での失敗は心に大きな傷を残していた。
「誰も信じられなくなるのは騙されるよりも辛い…」
阿竇にはその意味が良く分からなかったが、長歌はともかく刺史に近づく方法を考えることにした。

一方、阿詩勒隼(アシラシュン)は無事に鷹団の幕営に帰っていた。
「特勤(テギン)!お帰りなさい!」
鷹団の子供たちが嬉しそうに出迎える中、腹心の穆金(ムージン)は隼の背中にある大きな傷に気づいた。

穆金は隼の手当をしながら、阿詩勒捗爾(アシラシャアル)に襲われたと知り憤慨した。
「それにしても誰が手当てしたんだ?めちゃくちゃだな」
すると隼は長歌が切り裂いた布を見て思わず笑顔になる。

( ゚д゚)<何で笑ってる?
( ̄▽ ̄;)<別に…
(  ̄꒳ ̄)<隠し事か…あ!唐の女だな?!
隼ははぐらかしていたが、そこへ招かれざる客がやって来た。

いけ好かない熊団の首領・土喀設(トカシャー)が現れた。
そこで隼に軍令を投げ渡し、実は可汗が熊団に南下を命じたと教える。
確かに軍令は今回の朔州への侵攻で鷹団は熊団の指揮に従うよう命じていた。
どうせまた誰かが可汗に讒言(ザンゲン)したのだろう。
何も言わずとも隼と穆金は誰の差金か分かっていた。

その頃、朔州の刺史府に急報が舞い込んだ。
公孫恒の妻娘が参拝へ向かう道中で山賊に遭遇し、馬車が壊れ、御者が死んだという。
しかしそこへ夫人が無事に戻って来た。
「媛娘(エンジョウ)も無事よ、2人の郎君のおかげで…ほら」
すると娘を抱いた長歌と阿竇が中庭に入って来た。

公孫恒は妻と娘を助けてくれた2人に感謝した。
そこで長歌は阿竇と兄弟を装い、実は急を要するゆえ虚言を吐いたと告げる。
「私と弟は隴西(ロウセイ)からこの地へ流れ着き、山間で休んでいました
 その時、山賊が近くで相談していたのです
 ″公孫恒の娘が病になり、参拝のため母娘がここを通る、必ずさらうのだ″と…」
しかし2人で山賊に勝てるはずもなく、刺史に報告する暇もないため、先回りして馬車を止めることにした。

夫人は山道を歩いている少年たちに気づき、馬車を止めて乗るよう勧めた。
すると長歌は弟の病を治すため、和尚から歩いて参拝するよう言われたと嘘をつく。
夫人は確かに歩いてこそ誠意が示せると納得し、馬車を先に行かせて娘と一緒に歩くことにした。
「馬車から降ろさせるにはこうするしか方法がなかったのです」
「確かに別の理由だったら馬車を降りなかったわ…でも御者が殺されてしまった」
公孫恒は御者を手厚く葬るよう命じ、遺族も善処するよう頼んだ。
しかし本当にこれが偶然なのかと疑う。
さすがは公孫刺史、そこで長歌と阿竇はひざまずき、確かに下心があったと認めた。
「明主に仕えたいのです、私の父は隋王朝から投降した将・李氏
 一生、芽が出ず、臨終前に私に名を上げろと言い残しました」
夫人は恩人を置いてはどうかと提案、仕方なく公孫恒は2人を受け入れることにした。



山賊の情報のおかげで長歌と阿竇は久しぶりに暖かい寝床を手に入れた。
「あとはどう信頼を得て兵権を掌握し、挙兵す…」
「秘密を口に出すな!」
長歌は慌てて阿竇の口をふさいだが、実は公孫恒も聡明そうな十四郎から抜け目なさと狡猾さが透けて見えていた。
この不安定な時勢、人手が欲しいのは事実だが用心に越したことはない。
公孫恒は家職・秦(シン)老に見張を任せ、ひとまず様子を見ることにした。

長歌と阿竇は屋敷であからさまに警戒されていた。
しかし翌朝、十四郎が偶然、耳にした民からの訴えを的確に処理し、公孫恒はその手腕に舌を巻く。
そこで十四郎に商人が胡(コ)商と密かに取引する問題の対処法を聞いてみた。
十四郎は異国との取引で民に必要な品も補えるため一律に禁じるべきではないとし、物品と数量は規制しながら実情に応じて過度には罰せず、商人の判断に任せるべきだという。
公孫恒は臨機応変に対応できる十四郎をすっかり気に入ったが、秦老は念のため2人を見張らせた。

一方、魏徴(ギチョウ)は磁(ジ)州に着くや都へ身柄を押送されていた李健成(リケンセイ)の旧配下を解放した。
そのせいで李志安(リシアン)と李思行(リシコウ)は姿をくらまし、報告を聞いた杜如晦(トジョカイ)は直ちに魏徴を連れ戻して厳罰を与えるよう皇太子に訴える。
しかし李世民(リセイミン)は追及しないと命じ、今後は旧配下を告発しないよう触れを出すことにした。
それより依然、行方が分からない楽嫣(ラクエン)、李世民は長歌を失ったそばから娘まで奪われ、天が罰しているようだと落胆する。
すると房玄齢(ボウゲンレイ)が公主と郡主には天のご加護があると励ました。

その夜、勾引かされた楽嫣は山間のあばら屋にいた。
すると蘇蘇(ソソ)が服従を装い油断させ、海(カイ)老と麻子(マシ)を泥酔させることに成功する。
そこで片隅で眠っていた楽嫣を起こし、今のうちに逃げようと誘った。
戸は麻子が外から施錠していたが、ちょうど通り抜けられそうな隙間が開いている。
「でも高すぎて届かなくてね」
「大丈夫よ、2人なら」
こうして蘇蘇はまんまと楽嫣を踏み台に利用し脱出、しかしそのまま独りで逃げてしまう。

街を散策した長歌と阿竇が刺史府へ戻った。
すると前庭でちょうど秦老と出くわす。
「都からの知らせが届いてな、刺史に報告に行くところだ、では…」
その夜、秦老の予想通り十四郎が刺史の書室に忍び込んだ。
長歌は机にあった報告書を確認、しかし自分の捜索令状ではなく延利(イエンリー)可汗の動向だと知る。
…なんて野心なの…
その時、秦老が十四郎に襲いかかった。

長歌と秦老は数手の後、互いに相手がただ者ではないと分かった。
実は秦老は隴西の訛りに詳しく、十四郎が身分を偽っていると気づいていたという。
刺史は″人を用いれば疑わず″、危険を察知するのは秦老の役目だった。
「北からの間者か?行軍総管府か?それとも長安から?」
秦老は長安と聞いた時の長歌のわずかな動揺を見逃さなかった。
恐らく十四郎は刺史の兵権を奪いに来た朝廷の人間だろう。
秦老は朔州が今日まで持ちこたえて来たのは長安のお陰ではないと非難したが、長歌は朝廷の者ではないと否定した。
「身を寄せるところを求めたまで…浅はかでした」
「…何を画策しているか知らんが、公孫一家を害さなければそれでいい
 賢いそなたなら分かるな?自重しろ」

楽嫣はいつの間にか眠っていた。
ふと目を覚ますと部屋に陽が差し込み、寝台で寝ていたはずの海老の姿がない。
そこで戸を開けてみると、目の前に軒下からぶら下がった蘇蘇の亡骸があった。
楽嫣は驚いて腰を抜かし、恐怖のあまり声も出ない。
すると海老が現れ、賢い楽嫣は同じ目に合わないだろうと不気味な笑顔を見せた。



翌朝、公孫恒は十四郎と阿竇を呼んだ。
実は数日ほど考えた結果、十四郎に刺史府で主簿を務めて欲しいという。
予想外の提案に長歌は感謝したが、秦老は密かにくれぐれも公孫一家に害を及ぼさぬよう約束させた。
「もちろんです、刺史府のために尽くします(๑•̀ㅂ•́)و✧」

つづく


( ๑≧ꇴ≦)草原、楽しい!でも海老蔵が怖い!←違うw
※阿詩勒部は〜師となっていますが、可愛くないので〜団で統一しました…←何が?w





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最終更新日  2022.01.23 21:15:37
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